コラム・特集

6.9 短期的生産費用と長期的生産費用

IEハンドブック

第9部 エンジニアリング・エコノミー

第6章 生産の経済学

6.9 短期的生産費用と長期的生産費用

生産者は短期的には,一定の投入制約と費用の諸特性を有する現状のシステムを最適にしようとする。

しかし,長期的な計画では,「長期的生産費用曲線」を考慮してシステムの能力を決定する。この曲線によって産出費用は,最適な生産能力のもとで最小になることが明らかになる。長期的費用曲線はもろもろの短期費用曲線の下方限界域ないし包絡線である。66節の(22),(23),(24)式の短期費用関数は,一般型として以下のように表わされる。

q≦ s,c(q,S)=ks s+2q;c′ q=2; Cq=2+ksS/q              (39)

q≧ s,c(q,S)=(ks +1)+q2/s;c′ q=2q/s                     (40)

Cq=(ks +1)s/q+q/s+q2/s                                      (41)

ここに,sは投入x2に対する上限を意味し,kSは「能力」水準sの1単位に対する単位時間当り費用でありtこの例でも$3とする。

(39),(40),(41)式の他のパラメータも,(23),(24)式の場合と同じである。(39),(40),(41)式で定義づけられた短期の総費用は,sをx2の16,25,40単位とする3つのケースについて,図表9.6.13に示されている。

長期的費用曲線は,短期費用関数を能力に関して微分し,その値を0とおいて求められる。この能力の最適値を短期費用関数に代入して長期費用関数を導くことができる。この手順を(39),(40),(41)式に適用すると,最適能力水準は目標産出水準の半分に等しいことが分かる。Sがこの値のとき,長期の総費用,平均費用,限界費用はおのおの以下のようになる。

cq=4q                    (42)
c’q=cq=4              (43)
s=q/2                   (44)

最適能力水準の決定は,長期費用関数,収入関数,それに生産者の目標に依存する。先の例では,(1)利益を最大にする,(2)損益が分岐する産出量を最大にするために,最適産出量や対応する最適能力水準を導いている。
ただし,収入関数はつぎのとおりである。

rq=6q―0.02 q2 :r′q=6-0.04q       (45)
r′q=c′q;q=50::So=25(利益最大のとき)  (46)
rq=cq: q=100: So=50          (47)
(損益分岐のとき)

この例では,利益の最大化を期待する生産者はX2が25単位のシステム能力を選び,そしてqの50単位を産出して,正味$50の利益を得る。もし,その生産者がX2の16単位の生産能力を有するシステムを稼動させれぎ,q=36単位が最適な産出量で,$45の最大利益を得るが,x2の40単位に固定されていれば,最適な産出量はおよそq=67単位で,たった$40の正味利益しか得られず,x2の25単位の最適能力水準の場合より20%も少ない。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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