コラム・特集

4.2 分析方法

IEハンドブック

第9部 エンジニアリング・エコノミー

第4章 プロジェクト洗濯と投資分析

4.2 分析方法

取替分析
現有設備と新設備の経済的な特性がかなり異なるので,これら2つの設備を比較するときは特別の注意が必要となる。現有設備と新設備の間での明らかな特徴は,キャッシュフローの期間と大きさが非常に異なっている点にある。新設備の特徴は,初期投資額が高く操業費用が安いことである。この逆も現有設備で成り立っている.したがって,現有設備の資本コストは低くて減少する傾向にあり,一方,操業費用は通常高くて増加する傾向にある。

さらに,現有設備の残りの寿命は通常短く,この設備の将来は比較的確実に推測され得る。また,現在取り替えを行わないという決定は,将来においていつかは行うことを意味する。したがって,現有設備の次年度の費用に基づいて決定が行われ,もし取り替えしないことになれば, 2年後の費用に基づいて決定が行われるというように繰り返していく。

設備の経済寿命
取替分析では,仮定した寿命によって解が左右されるので,各案に対して最も好ましい状況まで,機械が使われるよう注意深く考慮する必要がある。そこで,現有設備と新設備の比較をするとき,仮定すべき寿命は,各設備それぞれに最も好ましい年数にする.すなわち,比較は各案の経済寿命に基づいて行う。

設備の経済寿命とは設備の総費用の年価の最小,あるいは報収の年価を最大にする期間である.経済寿命は,最小費用寿命あるいは最適取替間隔とも呼ばれることがある。

取替分析では現有設備と新設備を共に経済寿命で比較すべきなので,設備の経済寿命をどのようにして計算するかが問題となる。もし将来が確実に予測され得るなら,設備の購入時点で経済寿命を正確に予測し得る。この場合,設備の各使用年度末の総費用の年価を計算すればよい。

年価が最小になる年を見出すことは,設備の経済寿命を見出すことになる。 このことを以下の例で示す。

初期投資が$3,000で,残存価値が年々減少し, 操業費用が$1,000から始まり年々$700上昇すると予測される設備の費用が,資本の利率12%のもとで図表9.4.6に示してある。

この設備の経済寿命を見出すためには,1,2,3あるいは4年間のそれぞれの年,設備を保持する場合に対応するキャッシュフローを明確にする必要がある。これらのキャッシュフローは,図表9.4.6の年価をもとに図表9.4.7に示してある。この設備の経済寿命は2年になる。この設備が2年後に売られるならば,年価が$2,633で最小となり,この寿命が比較の目的のために最も好ましい。

経済寿命に基づく取替分析
取替分析では2つの設備,すなわち現有設備と新設備を考慮しなければならない。各設備を1,2,3, ¨¨¨年間保持する場合の,総費用の年価を評価する必勁ゞある。そして各年度毎の総費用の年価を計算した後,現有設備と新設備の経済寿命が決まることになる。すると比較すべき案が2つにしばられる.すなわち,対応する経済寿命だけそれぞれ保持する現有設備と新設備である.取替分析を行う際に,考慮すべき基本的な要因を以下に要約する。

1.埋没費用を無視せよ
2.考慮している設備の経済寿命を見出せ
3.取替案を比較せよ

経済寿命に基づく案の比較を示すために以下の例を考えよう。近くの川へ汚水のたれ流し防止のために3年前,ある化学処理のプラントが$20,000で設置された。現在,このプラント・システムの残存価値は0であり,操業費用は年$14,500である。操業費用は年々$500ずつ上昇する見込みである。新システムが取替のために設計され,導入費用は,$10,000と見積もられている。新システムの操業費用は,最初の5年間は年$9,000,その後は年々$1,000ずつ上昇する見込みである。新システムの使用年数は12年である。旧システムも新システムも特定の化学処理のために特男1に設計されているので,将来のどの時点でも残存価値は0である。この会社は計算利率が12%のとき,現有の公害防止システムを取り替えるべきであろうか。

まず,現有プラントの初期投資の$20,000は嘲として無視することになる。次に,旧システムの経済寿命を見出さなければならない。しかし,現在および将来の残存価値が0であり,操業費用が年々上昇するのだから経済寿命は1年となる。

旧システムをn年間保持する場合の総費用の年価は,次のようになる。

総費用の年価=設備の年価十操業費用の年価

n年間の総費用の年価=(P― F)(A/P,12,n)十F(0.12)+〔$14,500+$500(A/G,12,n )〕

P=F=0なので,現有の公害防止システムの操業費用の年価が,このシステムを保持する総費用の年価になる。年々の操業費用が上昇するので総費用の年価も上昇し,それゆえ経済寿命は1年になり,総費用の年価は$14,500である。

次に,新システムの経済寿命を見出すことが必要になる。この場合, 6年間のそれぞれの年度の総費用の年価が図表9.4.8に示してある。6年度以降の総費用の年価は上昇し続ける。よって新システムの経済寿命は5年で,総費用の年価は$13,544になる。41節で述べた寿命の異なる設備の比較法を適用すると,旧システムを1年間使うよりも,経済寿命だけ使う新設備に取り替えたほうがよい。新システムが導入された後は,この費用パターンと,新システムを改善するであろう将来のシステムの費用を比較することになる。この比較は,取替のたびに行われる。

インフレーションを考慮したプロジェクトの評価
経済性分析にインフレーションの効果を含めるために,インフレーションの効果を考慮した利子要因を用いる必要がある インフレーションを考慮した購買力の低下を扱う方法は,普通以下の手順で行われる。

1.プロジェクトに関するすべての費用を現在の価格で予測する(現在の価格とは,ある固定した時点,通常はプロジェクトの開始時点での購買力を示す金額であり,そのプロジェクトにかかわる将来の物あるいはサービスを購入するのに必要となる,現時点での価格である).
2 手順1で予測した価格を将来の時点で支出する価格になるよう修正する(将来の価格とは,プロジェクトに必要となる物あるいはサービスを購入する際,将来の時点で実際に支払われる金額である).
3.手順2で得られた将来の価格をもとに,計算利率を用いて正味現価を計算する(ここでは,計算利率をインフレーション効果を考慮した利子率iと考える).

図表9.4.9に示す,現在の価格で予測した4つの案のキャッシュフローを考えてみよう。 インフレーションが9%で進むもとで,将来の価格に修正したキャッシュフローが図表9.4.10に示される。

たとえば,Bl案の2年後の実際の費用は,

-$2,500( 1188 )F/P,92=-$2,970

計算利率を10%としたとき,これら4つの案を比較するために,各案の正味現価を計算する.インフレーションが9%で進むとき,B4案が最小費用案になる。一方,インフレーションが無いときにはB3案が最小費用になる。

この手順は,かなりの計算を必要とする。しかし,コンピュータが利用可能な場合,この方法は多くの分析者が用いる1つの方法である。

より少ない計算で同一の結果を得る別の方法は,インフレーション率λを考慮しなくてもよい利率i′ を見出すことである。すると,現在の価格の推定値から直接,正味現価が計算できる.この算例を以下に示す。

(1+i’)=1+i/1+λ=1.10/1.09=1.009174
  i′ =0.9174%

B1案についてi′ =0.9174%のもとでの正味現価を計算すると,

PWB1=-$10,000-$2,500( 1.97281 )P/A,0.9174.2

+$1,000( 091294 )P/F,0.9174,3
=-13.959

この値は,インフレーション率が9%で計算利率が10%のとき,Bl案で計算した正味現価と一致する。この方法を「差額の投資案の正味現価」の節で示した例に適用してみよう.インフレーション率が10%で計算利率が15%のとき以下の結果が得られる(キャッシュフローは現在の価格で示されているものとする).

i’=(1+i)/(1+λ)-1=1.15/1.10-1=4.55%

インフレーションを考慮した場合,A3案が選ばれる(この結果はインフレーションを考慮しないときと一致している)。しかし,インフレーション率が10%のとき,A2案のほうがA1案よりもよくなるが,前にも確かめたように,インフレーションがない場合には逆の結果になっている。それゆえ,案の経済性の比較を行う際には,分析の中にインフレーションの効果を考慮することが重要になる。

投資案の優劣分岐点分析
2つの投資案の費用が,同一の変数の関数として表わされるとき, 2つの投資案の費用が等しくなる変数の値を知ると便利である。最初の手順は,以下に示すように共通の決定変数の関数として,各投資案の費用を表わすことである。

T C1=ƒ1(X)とTC2=ƒ2(X)
ここで,
T C1=投資案1の固定費と変動費の和
T C2= ″   2      ″
X=投資案1,2に影響を与える共通の決定変数

次に,投資案1と2で費用が等しくなるXの値をみつける。これは,T C1=T C2とおくことによって,ƒ1(X)=ƒ2(X)になるXを求めればよい。この値を優劣分岐点と呼ぶ。

設備選択
ある全自動取付機の価格は$1,400であり, 4年後の推定残存価値は$200であるとしよう そして維持費が年間$120,操業費用が時間当り$085かかるとする。別の投資案として,半自動取付機があり,価格は$550,4年後の残存価値は無く,維持操業費が時間当り$140かかるとする。

計算利率が10%のとき,全自動取付機の総費用の年価は,1年当りに使用する時間数を変数として以下のように求められる。

T CA(=($1,400-$200)( 0.3155 )AP,10,4
+$200(0.10)十$120+$0.85N
=$378+$20+$120+0.85N
=$518+$0.85N

同様に半自動取付機の総費用の年価は,
T Cs=($550)( 0.3155 )A/P,10,4十$140N
=$174+$140N

優劣分岐点は,T CA=T CSの場合であるから,
$518+$0.85N=$174+$140N
$0.55N=$344
N=625 hr

図表9.4.11は, 2つの費用関数と優劣分岐点を示している。年間625時間以上使用する場合には,全自動取付機が経済的であり,年間625時間以下の場合には,半自動取付機が経済的である。

増産の場合の設備選択
企業の初期の段階,すなわち生産量が少ないとき,固定費の少ない設備を購入するのが,普通最も良いことであろう。後期の段階,すなわち生産量が上限に近づく場合には,固定費が高くても変動費用が小さくなるような設備が経済的である。そこで以下の例を考えてみよう。

年間販売量が,初年度は1,000個,以降年々 1,000個ずつ増え, 4,000個まで増えて,その後は4,000個売れ続けると思われる新製品を考えてみよう。この新製品のために2つの設備が考慮されている。
設備Aは,初期投資額が約$10,000で,年間の固定費が$2,000。製品1個当りの変動費が$0.90であり,寿命は4年である。

設備Bは,初期投資額が約$20,000で,年間の固定費が$3,800,変動費が$030で寿命は4年である。
年間生産量の上限の4,000個をもとにすれば,設備Aの1個当りの費用は

$2,000+(4,000× $090)/4,000=$1.40

設備Bの1個当りの費用は,
$3,800+(4000× $030)/4,000=$1.25

年間生産量の上限をもとにすれば,設備BがAよりも有利である.設備の寿命期間中の生産量をもとにした分析が図表9.4.12図表9.4.13に示してある。

設備Aが設備Bよりも有利であるという計算結果は,資金の時間的価値を考慮に入れれば大きくなっていくだろう。しかし, 1個当りの費用の違いよりも重要なことは,設備Aの初期投資額が,よリ小さいということである。このことは,この資金を調達しなければならない新
しい企業にとって,あるいは販売量に不確実さがある場合には,実際に重要なことである。

利益分析
生産活動には2つの側面がある。1つは物やサービスの生産のために生産設備や原材料や人を組み合わせることである。他の1つは,物やサービスを売ることである。ある企業の経済的な成功は,収入と生産費用の正味の違いが出るよう,これらの活動を究極まで実行する能力に依存する。
もし収入と費用が,販売量と生産量のそれぞれ線形関数と仮定できるなら,利益に関する分析は非常に単純になる。この節では,利益分析のために数学的および図的な優劣分岐点モデルを紹介する。

・線形優劣分岐点モデルの定式化
線形性を仮定するなら,収入と費用のパターンは図表9.4.14に示すようになる。生産固定費は線分HLで表わされる。生産変動費と生産固定費の総和は線分HKで表わされる。販売による収入は線分OJで表わされる。

現在のあるいは提示された生産活動の分析は,線形性の仮定があれば数学的に行える。

ここで,
N=年間の生産および販売量
R=製品1個当りの売価(Rは線分0」の傾きと等しい)
I=RN,年間の総売上額(I=RNは線分OJの方程式である)
F=年間の固定費,ŌHとHLで表わされる
V=製品1個当りの変動費
TC=N個生産したときの固定費と変動費の総和,F+VN(TC=F+VNは線分HKの方程式)
P=年間の利益(P=I―TC,値が負のときは損失を示す)
M=優劣分岐点(この点ではP=0となる)

図表9.4.14では,収入が費用と等しくなる点は線分ŌJとHKの交点である。
この点ではI=CでRN=F+VNである。Nについて解くと,

N=F/(R-V)

もしI=RNのNにF/(R一V)を代入すると,優劣分岐点での収入が求まる。すなわち

I=R(F/R-V)

同様に,TC=F+VNのNにF/(R-V)を代入すると,優劣分岐点での費用が求まる。

TC=F十VF/(R-V)

Pが年間の利益なので,Pを年間の生産量,あるいは
販売量であるNの関数で表わすと便利である。これは,
P=I-TC
=RN-(F+VN)
=(R-V)N-F

・優劣分岐点分析での利益の改善
売価あるいは生産費用のどのような変化も,優劣分岐点に影響を与える。
企業はより少ない生産量で費用を回収できるので,優劣分岐点を下げるような変化は望ましいことである。
ある企業の最近の操業で,年間の固定費が$400,000,1個当りの売価と変動費がそれぞれ$11,$6であるとしよう。この条件のもとで優劣分岐点は

N=F/R-V=$400,000/($11-$6)=80,000個/年
もし年100,000個生産するなら,年間の利益は,
P=(R-V)N- F
=($11-$6)100,000-$400,000
=$500,000-$400,000
=$100,000

作業者に教育が行われ,その結果,直接労務費の減少があったので, 1個当りの変動費が$5.75に下がったならば,優劣分岐点は

N=400,000/($11-$5.75)=761200個/年

年間100,000個の生産での利益Pは次のように知る。

P=($11-$5,75)100,000-$400,000
=$525,000-$400,000=$125,000

したがって,$125,000-$100,000=$25,000までを作業者の教育費に当ててよいし,この費用は1年で回収できる。

固定費を下げることによって,優劣分岐点を下げ利益を増やすことが可能になる。たとえば,ある企業がある生産設備の整理を考えており,その結果,監督費や対応する固定費が年$3,000減るものとしよう。売価が$11で変動費が$6のとき,優劣分岐点は,

N=$370,000/($11-$6)=74,000個/年
1年間100,000個の生産での利益は,
P=($11-$6)100,000-$370,000
=$500,000-$370,000
=$130,000 

優劣分岐点を下げる3番目の方法として,売価を$11.25にすることが可能になるような広告活動を考えてみよう。
優劣分岐点は,

N=$400,000/($11.25-$6)=76,190個/年

年販売量が100,000個のときの年間利益は

P=($11.25-$6)100,000-$400,000
=25,000-$400,000
=$125,000

したがって、$125,000-$100,000=$25,000までの額が年間の広告費用として使える。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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