コラム・特集

4.1 プロジェクト選択の決定方法

IEハンドブック

第9部 エンジニアリング・エコノミー

第4章 プロジェクト洗濯と投資分析

4.1 プロジェクト選択の決定方法

排反的な投資案の差額の投資分析
排反的な投資案の比較をするとき,ある案が他の案に比べて経済的に有利であると決めるためには,案の間の将来にわたっての違いを調べることが必要である。この基本的な概念が本章で述べる選択方法の基礎になっている。

排反的な投資案の比較をするとき,案の間の違いを調べることが基本的なことは,図表9.4.1のA1案とA2案の比較で示される。図に示される2つの投資案の比較を行うには,A1案とA2案の差額の投資流列(キャッシュフロー)を調べることになる。というのは,A2案がA1案より有利であるとか不利であるとかが,A2案からA1案を差し引いた差額のキャッシュフローによって記述されているからである。A2案のキャッシュフローは2つの異なったキャッシュフローの和としてみなすことができる。1つのキャッシュフローは,Al案のキャッシュフローと同一であり,もう1つのキャッシュフローは,A1案とA2案の差額のそれである。これら2案のうち,どちらが経済的に有利であるかは,次に述べる簡単な決定方法を用いることで決まる。

すなわち「A2-A1」案のキャッシュフローが経済的に望ましいならばA2案がとられ,「A2-A1」案のキャッシュフローが経済的に望ましくないならばA1案がとられる。

図表9.4.1に示す例では,A2案がAl案に比べて現時点で$500,1年後に$100の追加投資を必要とし,この追加投資によって2年後と3年後に$500の報収が生じることになる。この報収が追加投資を正当化することになるであろうか? 2つの案のうちどちらが経済的に望ましいかを決めるには,この疑間に答えなければならない。

差額の投資案の正味現価
排反的な投資案からの選択を行うときは差額の投資案を考え,その正味現価を計算して案の選択を行う。
ある投資案と別の投資案を比較するには,まずこれら2つの案のキャッシュフローから差額の投資案のキャッシュフローを作る。それから追加投資することによって生じる報収が,計算利率に見合うかどうかで経済的に有利な案を判定する。すなれち,差額の投資案の正味現価が正ならば追加投資は望ましいものであり,この追加投資を必要とする案が選択される。

この判定方法を以下に示すいくつかのりF反的な投資案に適用すると,次の手順がとられる。

1.初期投資額の小さい順に案を並べる。

2 “現状での最良”案として初期投資額の最小の案を選ぶ.多くの場合なにもしない案が現状での最良案になる。

3 現状での最良案と,今までに比較していない案のうちで初期投資額が最小の案を比較する.この比較は,両案のキャッシュフローの差を調べることによって行う。差額の投資案の計算利率をもとにした正味現価が正ならば,今回考慮した案が現状での最良案となり,0以下ならば現状の最良案は変化せず今回の案を考慮の対象からはずす。

4.手順3を,すべての案が比較されるまで繰り返すことによって,残った現状の最良案が正味現価を最大にし,利回りも計算利率を超える。

この例について手順3と4を適用すると,以下の計算が行われる。ただし計算利率は15%とする。この例では,最初の比較がA1案となにもしない案(現状での最良案)で行われる。

記号PW(15)A1-0は,A1案となにもしない案の差額の投資案の正味現価を示。なにもしない案は記号0で示すことにする。

PW(15)A1-0=-$1,500+$1,400
P/A,15,10
( 5.0188 )=$2,026.32

なにもしない案とある案の差額の投資案のキャッシュフローは,ある案のキャッシュフローと同一になることに注意しよう。

差額の投資案の正味価格が正($2,026.36)なので,手順3に示すようにA1案が現状の最良案になる。次に比較すべき案はA2案である.A2案とAl案の差額の投資案の正味現価は以下のようになる。

PW(15)A2-A-1=$3,000+$500
P/A,15,10
( 5.0188 )=―$490.60

この値が負なのでA2案を考慮の対象からはずすと,A1案が現状での最良案として残る。次の比較すべき案はA3案である。A3案とA1案の差額の投資案の正味現価は以下のようになる。

PW(15)A3-A1=-$5,000+$1,100
P/A,15,10
( 5.0188 )=$520.68

この値が正なので追加投資は経済的に望ましく,現状での最良案がA3案になる.他に比較すべき案がなくなったので,手順4より残った現状の最良案が正味現価を最大にし,計算利率を超える報収が得られる。それゆえ,A3案が最適案となる。

上の手順では,差額の投資案の正味現価を計算して最適案を導いたが,それぞれの比較で,正味現価あるいは正味終価を計算しても最適案は一致する。このことは,以下の関係式が成り立つことからも分かる。

AE(i)B―AE(i)A=AE(i)B-A
FW(i)B一FW(i)A=FW(i)B-A

差額の投資案を正味年価で評価するときは,以下の計算が必要になる。

AE(15)A1-0=-$5,000
A/P,15,10
( 0.1993 )+$1,400=$403.75

AE(15)A2-A-1=-$3,000
A/P,15,10
( 0.1993 )十$500=-97.75

AE(15)A3-Al=-$5,000
A/P,15,10
( 0.1993 )+$1,100=$103.75

上述の手順で,差額の投資案を正味年価で評けると,最適案としてA3案が選択される.これは,正味現価で評価した場合と一致する。

差額の投資案の利回り
差額の投資案の正味現価の値で案の選択を行ってきたが,差額の投資案の利回りの値でも同様に案の選択が行える。2つのやり方の唯一の違いは,どちらの案が経済的に望ましいかを決める,前述の手順3での判定方法にある。差額の投資案の利回りの値を用いる場合には,追加投資が望ましいとの判定は,この利回りが計算利率より大きいとき行う。

(1*B-A>計算利率)

したがって,前述の手順3では次の手順が必要になる。

差額の投資案の正味現価が0になる利率i*を求める。すなわち,現状の最良案と比較すべき案の差額の投資案の利回りを求める。ふたたび前述の例を用いて説明することにする。計算利率はやはり15%とする。追加投資案A1-0について、

0=-$5000+$1400(P/A,i,10)
i※A1-0=25.0%

差額の投資案の利回りが計算利率より大きいので,A1案が現状での最良案となり,なにもしない案を考慮の対象からはずす。次にA2案とA1案を比較する。差額の投資案(A2-A1)について

0=-$3000+$500(P/A,i,10)
i※A2-1=10.5%

この差額の投資案の利回りが計算利率より小さいので,A1案が現状での最良案として残り,A2案が捨てられる。それからA3案とA1案を比較する。差額の投資案(A3-A1)については

 

0=― $5000+$100(P/A,i,10 )
i*A3-A1=17.6%

A3案が現状での最良案となりAl案が捨てられる。すべての案の比較が終わったので,最後に残った現状での最良案A3が最適案となる。この結果は,差額の投資案の正味現価をもとにして導いた結果と一致する。

この例で重要なことは,各案の固有の利回りの最大の案が計算利率をもとにした正味現価を最大にするとは限らないことである.各案の固有の利回りは,

i*A1=25%
i*A2=19.9%
i*A3=21.9%

もし,利回りが最大という理由でAl案を選んだとしたら,計算利率が15%のとき正味現価は最大とならない。

排反的な投資案の投資分析

現価法
排反的な投資案からの選択を行うとき,よく使われる方法は現価法である。というのは,考慮している案のうちで正味現価が最大な案を選択する,というように簡単な方法だからである。したがって,すべての案の正味現価を計算することが必要となる。また正味現価が正であることは,その案の利回りが計算利率より大きいことをも示している。

計算上も単純であることを示すために「差額の投資案の現在価値Jの節で用いた例に適用してみよう。計算利率が15%なので各案の正味現価は次のようになる。

PW(15)0 =S 0.00

PW (15)A1=-$5000+$1400( P/A,15,10)(5.0188)
=$2026.32

PW (15)A2=-$8000+$1900( P/A,15,10)(5.0188)
=$1535.72

PW (15)A3=-$10,000+$1900( P/A,15,10)(5.0188)
=$2547.00

正味現価が最大の案は,A3案になる。この例では,たまたま初期投資額の最大の案が選択されたが,初期投資額のより小さい案のほうが,より大きな案より正味現価が大きくなる可能性もある。たとえば,A3案が考慮の対象外だったならば,A2案よりも初期投資額の小さいA1案のほうが正味現価が大きくなる。

多くの案からの報収が等しいときには,おのおのの案を費用だけのキャッシュフローで記述することが普通である。もし費用が正の値で示されるならば,決定の方法は正味現価が最小の案を選ぶことになる。

年価法
もし正味現価の代わりに正味年価,あるいは正味終価を判定基準として用いたとしても同一の結果が得られる。

したがって,考慮している案に年価法,あるいは終価法を適用してもA3案が再び選択される。

AE(15)0 =S 0.00

AE (15)A1=-$5000+$1400( A/P,15,10)(0.1993)
=$403.50

AE (15)A2=-$8000+$1900( A/P,15,10)(0.1993)
=$305.60

AE (15)A3=-$10,000+$1900( A/P,15,10)(0.1993)
=$507.00

あるいは、

FW(15)n=$0.00

FW(15)A1=-$5000( F/P,15,10)(4.046)+$1400( F/A,15,10)(20.304)=$8195.60

FW(15)A2=-$8000( F/P,15,10)(4.046)+$1900( F/A,15,10)(20.304)=$6209.60

FW(15)A3=-$10.000( F/P,15,10)(4.046)+$2300( F/A,15,10)(20.304)=$10.300.00

寿命の異なる投資案の比較
寿命の異なる投資案を,比較することがしばしば必要になる。このような状況下で,今まで議論してきた選択方法を適用可能にするために,考慮する期間に関して何らかの仮定をおく必要がある。

寿命の異なる投資案の比較をするときの判定は,考慮する期間を同一にして行わなければならない。

各案を同一の期間で比較するためには,考慮している案について,寿命後にどのような案を選ぶかについて予測することが必要になる。この目的のために2つの方法がよく用いられる。

1.同一の期間で将来の案を明確に考察する。

2.設備寿命の最小公倍数の年数まで類似反復型の取替を行う。

最初の方法を示すために,図表9.4.2の2つの案について考える。A2案の寿命がつきた後も運営していくために,4年末と5年末に$15,000余分な費用がかかることが分かったとしよう。各案の5年間での正味年価は計算利率が7%のとき,

このような状況下では,A1案がA2案よりも年価で$899得になる。
2番目の方法を示すために,図表9.4.2の例を再び考える。各案の寿命の最小公倍数の年数,同一設備での取り替えを考えると,図表9.4.3に示すキャッシュフローができる。このような仮定をすると年価法が計算上簡単になる。というのは,同一案のキャッシュフローが繰り返されるので,それぞれの案の最初の1回分の正味年価をそのまま比較してよいことになるからである。

すなわち,A1案の5年間の正味年価は図表9.4.3に示す最小公倍数の15年間の正味年価と等しくなる。したがって,類似反復型の取り替えを仮定すると,図表9.4.3に示す両案の正味年価は,したがって,最小公倍数の15年間で両案を比較すると,A2案がA1案より正味年価で$1,037得とする。

資金制約がある場合の分析法
資金制約を考慮した意思決定の方法を示すために,現価法をうまく適用して,図表9.4.4に述べる投資案について考察する。同一の文字で示される案の関係は互いに排反的であり,異なった文字で示される案の間は互いに独立である。それゆえ,同一の文字で示される案はただ1つしか選択されないが,異なった文字で示される案は一緒に選択することができる。図に示される案での問題は許容投資額が$35,000で計算利率が8%のとき,正味現価が最大となる案の組合せの選択を考えることである。

計算方法
資金制約があるからといって,意思決定の過程で何も変わったことを考える必要はない。ただ,互いに排反的になるような案の組合せを考えることが必要になる.互いにりF反的になる案の組合せの数を減らすためには,各案について正味原価を計算しておくと便利である。もし,正味原価が負になるような案があれば,ただちにその案を考慮の対象からはずすことができる。

各案の計算利率が8%のときの正味現価を図表9.4.4の右端に示してある.Cl案を除いたすべての案の正味現価は正である。よって,C1案は考慮の対象からはずれる。残った案の中から互いに排反なる案の組合せとそのキャッシュフロー,および正味現価が図表9.4.5に示してある。

次に, これらの案のうち初期投資額が$35,000を超える案を考慮の対象からはずす.したがって,A1案とB2案を組み合わせる案と,A2案とB2案を組み合わせる案が考慮の対象からはずれる。

最後に,残った組合せの案から正味現価が最大となる案を選択する。これは図で案5,すなわちB2案だけを選択することになり,正味現価は$7,255となる.したがって最適案はB2案だけを採ることで,ほかのすべての案は選択しないことになる。B2案が採られた後で$5,000は余裕資金となり,計算利率で運用される。この種の問題に対しては,現価法を用いるのが普通だが,年価法,終価法を用いても正しい判定が行える。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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