コラム・特集

2.6 労務費分析

IEハンドブック

第9部 エンジニアリング・エコノミー

第2章 コストの見積り

2.6 労務費分析

オペレーションにおけるコストの中でもっとも重要なのが労務費である.労働の形態は直接と間接に分類できたり,定時の労働と臨時的な労働,奨励給と固定給,ブルーカラーと管理職,組合員と非組合員といった具合にさまざまな形に分類できる。さらには社会的,政治的,教育的にも区分が可能である。オペレーションにおけるコスト見積りでは,直接費と間接費による区分がもっとも一般的に用いられている。その公式は

労務費=時間×賃率        (1)

で,時間はオペレーションの種類に依存して決まる。あるいは時間の代わりに個数,袋数,東数,容器数でもかまわないが,それによって賃率の単位を変えなければならない。

労働を計測するには,(1)時間研究,(2)PTS,(3)ワークサンプリング,(4)工数報告書がある。

たとえば工数伝票に「パーツ番号8671,166ユニット, 6人工使用」とあれば,0.044時間/ユニットという簡単な分析ができる。そして次にこの部品を使用するときは,この0044時間を用いればよい。

仕事を直接計測する方法は,反復性のある仕事を分析する場合によく使われるが,その他の場合にはあまり使われない。しかし,この方法は大変科学的であり,目的にそった形にデータが整理されていれば (たとえば標準時間という形に変換されていれば) 非常に使いやすいという利点がある。

労働に関するデータの収集はPTS法を用いれば作業要素ごとに集計することもできるが,この手法は少し詳細すぎるきらいがある。たとえば板金の穴あけ作業の推定工数が段取時間(02+05× 工具数)時間, 1ユニット当りの加工時間が(0.015× 0.003× 工具数+0.001× 穴数)時間であるとしよう。

このとき2種類の穴を全部で22個あけるとすれば,段取0.3時間,加工0.043時間となる.見積り値としてこのような作業要素ごとの推定値を用いることは正確さを欠くことになるかもしれないが,素早くできるという点ですぐれている。一般的に見積りが早ければ精度が落ちるし,逆に遅ければ上がるという関係がある。

時間の推定は計測やデータによる他に,勘や経験に頼る方法もある。(1)式の右辺第2項の賃率はオペレーションの内容(1作業者1機械,複数作業者1機械,複数作業者複数機械等)に依存して決まる。単純な場合を例にとって考えると,たとえば1作業者1機械の場合は作業指図書,職務設計がよりどころとなる資料である。賃率の時間的変化を追うには回帰分析,労務規約,人事計画等が役に立つ。

賃率の単位は(1)式に含まれる時間の項の単位に依存して決まる。たとえば時間の単位を1時間とすれば賃率は時給金額である。ただし賃率の中に福利厚生費用が含まれることもある。作業時間がいかに精度よく測定できても賃率の値が不正確であれば,結果として労務費の推定は意味がない。残業時間,労働条件,熟練者と未熟練者のまざり具合を考慮に入れることも大切である。このことは,特にクルー作業の場合に注意を要する。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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