コラム・特集

5.1 はじめに

IEハンドブック

第8部 品質保証

第5章 信頼性と保全性

5.1 はじめに

すべてのシステムの最終日標というのは,ある意図された機能を実行することである。この機能は,しばしば「ミッション(任務)」と呼ばれる。システムが,どのくらいそのミッション(任務)をなし遂げる全般的な能力を持っているかを記述するのに, しばしば使われる言葉として,「システムの有用性」というのがある。このシステムの有用性の定義は,ある指定された条件下で稼動している際に,決められた時間内に,そのシステムが問題なく実行上の要求を満たすことができる確率である。有用性は,そのシステムが,どのように設計され,製造され,利用され,そして,メンテナンス(保全)されているかにより変わってくる。だから, 1つのシステムの有用性というのは,設計の正確さ,パフォーマンスの尺度,安全性,信頼性,品質,生産の容易性,そして保全性のようないくつかの特性の関数となる.品質および信頼性を考える色々な科学的方法のお陰で,すべてのシステムについて,その全般的な有用性をあげられる。

この色々な科学アプローチは,製品にインテグリティ(一貫性:すなわち,製品がその役目をきちんと果たす)を持たせるという共通の目的を有する工学上の分野となっている。「製品保証」という言葉もまた会社によっては使われる.この章では,製品保証システムに関する信頼性,保全性,修理しやすさ,そしてアベイラビリティ(利用可能率)の概念について取り扱う。

信頼性というのは,システムの有用性を決定する多数の特性の1つであり,指定された稼動条件下で意図された寿命期間中,特定のシステムがどのくらいの確率で意図された機能を果たせるかという,この確率で一般に定義される.この定義に伴って問題としてはっきりしてくるのは,次のようなものである。

(1)膚頼性に関する確率という考え方を受け入れること.
(2)満足な機能の実行ということの定義,とくに時がたつにつれてしだいに劣化していくシステムのパラメータに関しては,これが問題となる.
(3)稼動条件を適切に設定する際に必要となる判断.

システムのライフサイクルにおける信頼性と保全性活動
信頼性と保全性に伴う活動は,そのシステムの全ライフサイクルに及ぶ.図表8.5,1に,代表的なシステムのライフサイクルにおいて,一般的に行われている信頼性に伴う活動のうち,必要なものを示している。これら活動をここで手短に説明するが,活動ステップの間にはフィードバックが絶えずあり,設計は信頼性に関する手順を何回か通っていくのである。

ステップ1-ニーズ(要求)
信頼性と保全性のための具体的な仕事に対する要求内容は,最初から見通されていなければならないし,その重要性は,どんなに強調してもし過ぎるということはなく,ライフサイクル・コストやその他の稼動上の必要条件といった,具体的なシステムの要件に基づいて正当化されるのである。前に述べたように, 1つのシステムの有用性は,その信頼性と保全性上の特性によって決まる。

ステップ2-目標と定義
すべての必要条件は,明白かつ数量化された目標として,具体的に設定されなくてはならない。その目標や必要条件は,次のようなものとして定義されなければならない。

1.信頼性の尺度 システムのミッション(任務)の信頼性,すなわち,はっきりとした故障分布,次の故障までの平均時間(MTTF),そして,故障率といった信頼性の関数。

2.保全性の尺度 修復に要する時間分布,修復までの平均時間(MTTR),修復時間のパーセント,そして,メンテナンスの割合といったものに基づく保全性の関数がある。

ステップ3-コンセプトと具体的な手順の計画
信頼性やその他の稼動に関する必要条件に基づいて,これらの必要条件を満たすことのできる様々なコンセプトを作る。また,この段階で製品保証プログラムの全計画を作り,色々なグループに対し,責任を割り当てなければならない.将来のシステムに多大な影響を与えるので,このコンセプト作りの段階は,システムのライフサイクルにおいて重要な部分となる.アメリカ国防省によってなされた研究では,システムのライフサイクル・コストの70%は,この段階でなされた諸決定により決まるということが分かっている。また信頼性プログラムに関する詳細部分がどうなっているかというのも,全プログラム計画の有用性に影響してくる。

ステップ4-製品保証活動
ステップ3で開発された計画を実行し,図表8.5.1に示されているように,この全実行計画は絶えずモニターされていく.諸計画の実行に対し,明白に定義された職務をもつ組織部門が存在しなければならない。

ステップ5-設計
ステップ3で選ばれたコンセプト上のシステムが設計され,その設計されたシステムの信頼性と保全性が評価される。デザイン・レビュー,故障モードと影響の分析,故障のツリー分析と確率的な設計アプローチとかの様々な方法論が,この段階で使われる。信頼性は1つの設計パラメータであり,この設計段階でシステムに組み込まれなければならない。

ステップ6-プロトタィプと開発
プロトタイプは,設計仕様書に基づいて作られる。その設計の信頼性は,テストすることによリチェックされる。もし,その設計に欠陥があれば,設計をやり直して修正される.信頼性プログラムの拡大と進展を引き続き追跡するために,この段階での信頼性の向上を管理していく計画を開発しなければならない.そのシステムの信頼性が,要求されているレベルに達した後に,その設計に基づき生産が始まる

ステップ7-生産
そのシステムが,設計仕様書に基づいて製造される。品質管理用の色々な方法は,このステップにおいて必須のものである。部品,材料,そして工程のすべてが,品質保証に関する前章で論議された色々な方法に基づいてコントロールされる。品質管理のプログラムの目的の1つは,その設計によって持たされた信頼性が下がることのないようにすることである。

ステップ8-実際の場と顧客の使用
システムが顧客によって実際の場で使用される前に,サービスや保全に関する指示をすべてはっきりさせ,きちんとした文書としてまとめることは,とても重要である。ちょうど信頼性と同じように,保全性もライフサイクルを通して考慮されることであるが,その目的は,実際の使用において要求されたレベルの信頼性とアベイラビリティを維持することである.保全性プログラムの計画は,計画の段階で作られる。

ステップ9-システムの評価
顧客でのシステムは絶えず評価され,初めに設定された信頼性と保全性の目標を,システムが達成しているかを判断される。この目的のために,信頼性をモニターするプログラムやフィールド・データ収集のプログラムを作らなければならない。

ステップ10-連続的なフィードバック
システムのライフサイクルを構成するすべてのステップの間で,常にフィードバックがなければならない。さまざまなステップを担当するいくつものグループの間に,適切なコミュニケーションシステムが作られなくてはならない。顧客の使用において発生した欠陥のすべては,対応するグループに報告されなければならない。これは,システムの改良の際の助けとなる。システムのライフサイクルにおいて行われるいくつかの活動に関係する方法は,この章で説明されている。

信頼性とライフ特性曲線
信頼性というのは,時どき,「時間の次元でとらえた品質」と言われる。時がたつにつれて, 1つの製品の信頼性特性は変わっていくが,その特性の1つが,この章のもっと後で数学的に定義されている故障率という概念である。故障率や危険率というものは, 1つの製品の使用年数と共に変化し,図表8.5.2a8.5.2bに示されているように, 3つの異なる期から成っており,ここでは,これらの3つの期について述べる。


初期故障期
一般にシステムというのは,初期に比較的高い故障率を示し,それから急速に故障率が減少して,ある適当な時点tlで安定するのである。この初期の期間は,一般に“ならし”期,“ 立ち上がり”期,または“デバッグ”期と呼ばれる。システムを構成するものの中には,“ 弱い”ものがあり,これらが最初に故障する。このような初期故障の性質を理解するために,これらの原因となるもののいくつかを,リストアップする。

・標準以下の労働者の技量
・おそまつな品質管理
・規格はずれの材料
・不十分なデバッグ
・貧弱な製造技術
・おそまつな工程や処理技術
・組み立て作業による問題等々)一一
・汚染
・不適当な設備
・不適当なスタート・アップ
・人為エラー
・保管や運搬時の部品の故障
・不適当な箱づめや輸送上の扱い

根本的には,これらの故障は,製品の“製造しやすさ”を反映しており,その多くは品質管理上の問題によるものである。だから,このような初期故障は,工程検査,工程内検査や最終検査,寿命テスト,環境テストといったものの中で発生し,見つかってしまう.ほとんどの製造者たちは,製品にならし期を勘定に入れているので,初期故障は工場で起こり,修理するのにとても多くの費用のかかるような顧客のところにまでいってしまってから起きることはない。ならし期の長さにより,初期故障のうちどれが除かれるかが決まってしまう。

実用期
“ならし”期の後に,システムは,最低の故障率のレベルに達して,この期間中,比較的一定な状態でいる。この故障率は,製品が設計によって本来与えられた信頼性に関係するので,その設計時において,最も重視されるのである。また,この時期は,信頼性予測や評価活動にとっても最も重要である。この時期における故障の原因は,次のようなものである。

・安全係数を低く見積もったもの
・ストレスに関連した故障― 予期したより大きな重量がランダムにかかっている
・予期したより低いランダムな強度
・“最高”の利用可能な検査技術をもっても発見できない欠陥
・誤用
・人為エラー
・デバッグ期に発生してこない故障
・“最良”の予防保全を行っても防げない故障
・理由のわからない原因
・“不可抗力”の故障

摩耗期
製品のほとんどは,これこれと指定された期間はもつように設計されている。図表8.5.2a8.5.2bの時刻t2は,実用期の終わり,または,老朽期のはじまりを示している。この時点以後,故障率は,急速に増加する。摩耗や質の低下は,多くのよく知られている化学,物理,そして,その他の原因から起きる。そのような原因のいくつかは,次にあげるようなものである。

・腐食や酸化/t
・摩耗や疲労…
・古くなって性能が低下すること
・亀裂
・おそまつな保全やアフターサービスのやり方
・不適当なオーバーホールのやり方
・設計で想定した耐久期の短さ
・プラスチックの収縮や亀裂

 

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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