コラム・特集

4.4 検査作業の改善

IEハンドブック

第8部 品質保証

第4章 検査作業の改善

4.4 検査作業の改善

不良発見作業
一番よく使われるのは,視覚によるもので,例えばガラス皿中の泡をみつけるなどがそうである。しかし複雑な電子シャーシの電気的不良点なり視覚上の不良点をみつける場合のように,いくつもの手順をふむような場合もある。どちらの場合にせよ,いくつもの仕事の間に前者の場合なら,眼球の動き,後者なら眼球と手の動きが入ってつながったものである。何段階かの手順をふんで進められる発見作業の場合なら,標準的な課業分析(タスク・アナリシス)方法で対処できるし,その信頼性はこういった分析から推定できる。

視覚による検査においては,検査者が得る情報の総てが注視において得られる。注視は1回の継続時間が約3分の1秒で,不良を探す時間の約90%以上の時間がこの注視である。眼球運動は非常に速く,その所要時間は注視に比べあまりにも短いため,通常無視される。このことから注視の連続として視覚検査を表わすモデルがいくつもつくられてきた。

検査者の眼球運動を調べてみると,対象を追い求める際に単純なパターンに従っているわけではないことがわかった。タスクによっては,きわめてランダムな探索パターンを示すものもあれば(例:回路基盤),このランダムなパターンの外にシステマチックな部分をもつタスクもある(例:ニットウェア)。しかし眼球運動の研究を行ってきている人々の考えが一致しているのは,ある与えられた時間内に不良点をみつける確率をもってパフォーマンスを測定するなら,ランダムな探索で行われることを仮定して,そのパフォーマンスが予測できるということである。

ある時間(t)内に1つの不良点をみつける確率(pt)は,次のような式で表わされる。
 Pt=I-exp(― t /t)
ここでtは平均所要時間で,
 t=tOA/apn
と計算される。

ただし
t0=1回の注視平均時間
a=視覚ローブ(lobe)の面積
p-視線を視線を集中した場合に,不良点がみつけられる確率(これはaがどう定義されるかによるかによるが,p=1/2とするこが多い)
n=対象物上の不良点数
A=視覚検査対象面積

判 定
簡単に言ってしまえば,検査者が対象物に対して下す判定とは,それが合格か不合格ということである。もし検査作業がからんでくる場合には,まず不良点を探し,もし見つかると合格,不合格の判定は程度の差はあるもののむずかしくなることがある。もし標準によりいかなる不良も許されないことになっているなら,検査とは不良探しだけになり,判定は簡単になる。このような場合には,良品を不合格にする理由がないのだから,第1種の誤ちは,ほとんど完全に無くなるのが特徴である。これと全く逆の場合は,不良探しは簡単だが,判定は複雑で誤ちをしやすい場合(羊毛のグレード決定)である。

不良点探しが簡単な場合の多くは,その不良点をどう判定するかが簡単ではない.このような検査について,照明の改善をやる前と後でその成績を測定してみた結果が図表8.4.4に示してある。この結果は,不良探しと判定を必要とする検査作業でよくみられるもので,1つ1つにもっと時間をかければ,不良を発見する成績はよくなるが,誤ったアラームが増大している(p1の減少)これは,時間をもっとかければ,不良探しでもっと多くの不良点がみつかるが,それらが全部が全部不合格の原因になってはならないものである。

そこで検査時間を長くすると,良品を不合格にする確率がふえる。図表8.4.2に示されているように検査結果が4種類に分けられ,おのおのの確率が計算されるが,同時におのおののコストなり利益も計算できる。すなわち誤った判定をした場合のコストと正しい判定をしたときの利益であり,それが図表8.4.5の表わしているものである。これが普通「ペイオフ・マトリックス」と呼ばれ,コストは負の数,利益が正の数で表わされる。手に入れる金額を合理的に最大にしようと考える人なら,図表8.4.2の確率を図表8.4.5の対応する数字にかけて総和を計算しまずペイオフ(支払われる額)の期待値を計算する。

次にこの期待値を最大にするようにp1とp2を調整しよう1章とするであろう。P1とp2が検査者によりどう変更され得るのかに関する仮定をたて,演習をやってみることができる。この際,一番よく使われる仮定は,信号検出理論とよばれる分野における研究結果からのものである。

この理論によればp1とp2は2通りの変わり方がある.まず検査担当者とタスクを一定にしておけば,p1の増加につれp2は減少し,その間のバランス点は,a,b,c, dおよびp′ によって決まる もう一通りは,合格と不合格の間の識別する検査担当者の能力を変えるように,人間とタスクを変えて,p1とp2を一緒に増大させる。

判定プロセスを改善するというのは,誤った判定を減少させることである。誤ちというのは,複雑な検査作業 において,不良点を忘れたり,標準を忘れたりすることから直接発生してくるし,標準と対比して不良のひどさ を判定する際に,間違うということからも間接的に発生する。理想をいえば,不合格としてよい不良だけをより顕著にするように,不良点探しのプロセスを設計しなくてはならない。しかし,この結果不合格にしてはならない不良点までも,同じように目立つようになる。判定に おける誤ちを減らすというのは,通常不良品と標準品を識別する能力を改善することに帰する。

織上の要因
組織上の要点として最も一般的なものは,検査を担当する人々は製造部門に属するか,別の品質管理部に属すかのいずれかでなければならないことである.これまでの研究により,検査を対象とする人達は敵意を持った社会の中での団結意識をもっており,検査と製造間の争いでも,製造者側に立つことはめったにないことが分かっている。Jamieson の研究では,別部門の品質管理部を使うほうが,製造の中で検査をやるより誤ちは少ないのが分かったが,これには局所的最適化のところがある。

目的は,製造も検査も同時に良くすることである.これらを別々にすれば検査作業は良くなるが,製造品質を良くするには,品質上の情報を最も速くフィードバックする必要があり,このためには検査をなるべく製造に密接させなくてはならない。30以上の業種において行われた視覚による品質フィードバックの製造に対する影響調査において,Stokは管理図による視覚フィードバックは,組織上の要因 いつの場合においても製品の品質向上につながっていることを明らかにした。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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