コラム・特集

2.4 測定保証

IEハンドブック

第8部 品質保証

第2章 測定保証

2.4 測定保証

これは,測定値の品質を確立し,評価し,コントロールするための実イ子言十画である。この計画を説明するには,次の6つの事柄についてみてみるのが一番よい。

1.測定プロセスの明確化
2.測定プロセスの精度の決定
3.かたよりの発見
4.測定プロセスの安定性チェック
5.精度対公差の比(P/T比)
6.P/T比の決定に対する影響

測定プロセスの明確化
製造プロセスをコントロールしていく必要から測定するニーズが生まれる。しかし,これによって,使わねばならない測定法までは決まらない。そこで満足のいく測定方法を選択し,開発するのが,開発担当エンジニアおよび品質管理担当者の責任となる。これは測定を云々する段階においては,きわめて重要なステップである。

この章の終わりには測定方法に関する文献がいくつかのせてある。測定方法が決まりさえすれば,次に測定プロセスの要素の決定へと進み,その評価をすることになる。

考慮すべき質問としては次のようなものがある。

1.同じメーカーのもので同じタイプだが異なる器具を使ったらどうなるか。
2.器具のタイプなリブランドにより測定プロセス結果が影響を受けるか
3.測定プロセスは温度,湿度,ごみ,震動といった環境条件に影響を受けるか.
4.オペレーターの経験は測定プロセスにどんな影響をもつか.
5.手順の変更に対して,測定プロセスはどのくらい影響を受けやすいか.
6.サンプルの前処理(洗浄,混合,バリ取りといった)がどのように測定に影響するか.

これらの質問例は,選択された測定プロセスが十分なものであることを確かめる際には,答えてもらわねばならない質問のタイプを示す。

測定プロセスの精度決定
いかなる測定プロセスにせよ,一番重要な特性の1つは精度,すなわち,その製品である測定値の一様性である。後で精度と公差の関係の重要性を眺め,この関係が測定値のもつ判断,判定能力に対するインパクトを比較する。比較するに際し,「なかなか良い」とか「非常に良い」とかいう精度の質的表現よりは,もっと量的な表現が必要となる ある特定の測定プロセスが,どのくらい精度よく機能しているかを見出す最善の方法は,ある同一の測定を十分な回数だけ繰り返し,得られるデータから精度を推定することである。

一番重要なばらつきの尺度はSD(標準偏差)で,次のように計算される。


ここで,di,は各測定データと測定データの平均値間の差で,n は測定値データの個数である。このSDは主として次の二通りの役に立つ。

(1)その測定プロセスの精度に関係している尺度として.
(2)測定値に対する信頼限界を設定するのに使うかたより(システマチックな誤差)の発見

かたより(システマチックな誤差)の発見
かたよりとは,使用する基準尺度の真の値と,それを連続して測定した場合の平均値との間の差として定義される。この定義により,かたよりの意味およびそれをどう評価するかまではっきり分かるが, この種の誤差はなかなかみつけにくい。この難しさは,真の値が分かってい,信頼のおける基準尺度をどうやってみつけるかということにある。

正確な基準が手に入ったら,測定プロセスのかたよりを見つけるには,その基準尺度を何度もそのプロセスで測定し,得られる平均値が,どのくらいその真の値として分かっている値と一致するか評価決定するだけのことである。

この際の判断を下すのに,統計的有意性の検定法を利用する(測定学におけるt分布およびF分布に関してはMandel とNatrella の論文を参照すること)この検定法は十分注意して使わなくてはならない。たとえ真のかたよりが存在するということが「統計的には」有意であっても,そのかたよりが「実際上には」重要でないことがある。

測定プロセスの安定性チェック
これまでの話に出てきた,精度およびかたよりの求め方は,測定プロセスを設定し,デバッグをする上には非常に役に立つ。しかし,どちらも測定プロセスの安定性についてはふれていない。 安定性という特性は,時間の経過に伴い,そのパフォーマンスを分析してみてからしか評価できない。

この目的のために,特に設計された標準的統計手法はシューハーツの管理図である.この手法の根本的目的は,統計的にみて,動いているプロセスが安定したものであるかどうかを確かめることである。この手法を利用すれば何らかの原因により,プロセスが変化し,そのプロセスのレベルなり,ばらつきが前とずれたことが知らされる。こういった変化がない限り,データを作り出すプロセスは,統計的にコントロールされた状態にあるという。これは単に,プロセス自体が本来もっているランダムな変動性にもとづいたある限界内において,予期しうる状態で動いているということを意味するだけである。この本来もっているランダム性は「ノイズ」と呼ばれることが多い。管理図は,すでに得られている変動性に関する推定値を使っても,あるいは,新たに得られたデータからの推定値を使っても,どちらでその限界を設定してもよい。

次に測定プロセスの安定性をチェックし,同時にプロセスの変動性に関する推定値を提供する管理図の作り方をみてみる。

管理図の作成
このためのデータは次のように集め分析される。

1.20以上のサンプルを選び,順に番号をつける.

2.これらサンプルのおのおのをある期間にわたり,番号順に3回から5回測定する(非常に重要なことだが,これら測定はすべて独立に行わなくてはならない すなわちおのおのの測定毎に全手順が完全に繰り返されること).

3.各サンプル.毎に得られたデータのレンジ(範囲),すなわち最大値から最小値を引いた値は,測定される順番と同じ順にプロットする.

4.平均レンジ(R)は次の計算式により求められる.
   R=ΣR/n
ここでΣRはRの値の総和で, κは測定対象サンプルの数.

5.L方管理限界(UCL)と下方管理限界(LCL)は,次の式から求められる.

UCL=D4R
LCL=D3R

D3とD4の値は図表8.2.2に記されている.

6.これら管理限界線を管理図に加え,管理はずれがあるかどうかチェックする。すなわち,管理限界線外に出ている点があるかどうか,あるいは平均のどちらか一方に偏した点が連続して7点以上あるかどうかをチェックする。このいずれが発生していても,それは管理されていないことを示し,それを引き起こしている見逃せない原因をさがす必要がある。

 

 

精度/公差の比
測定における大きな関心事の一つは,測定精度と製品公差の間の関係である.新たに測定しようという場合には,測定値の値とコストが悪い方向に影響されうるので,精度と公差の関係をいつも考慮しなくてはならない。無視すると,必要以上の精度を得るために貴重な時間,作業,金を無駄にすることになり,逆の場合は,非常に大きなリスクが存在することも知らずにいることとなる。

この一般的問題は,おのおのの仕事に対し適切な測定プロセスを選択する,測定上の必要性といわれる これを検討するため測定対象たる特性の総公差(最大許容値から最小許容値を引いたもの)に対する測定精度の測定値の比を考えてみる。

この比は次のように計算される。

ただし∂Mは測定値の分布の標準偏差
ここでの説明を簡単にするために,あるパーツのサイズを測定する場合の測定誤差は,そのサイズとは関係なく,独立でかつ正規分布をしているものとする.パーツ・サイズの測定値がパーツの合格/不合格にどう影響するかは,対象とする測定プロセスのOC曲線を作って考えてみると分かる ここでのプロセスは図表8.2.3にそのOC曲線が表わされている。

この曲線をもっと一般的に役立つようにするために,横軸はパーツ・サイズの目標値を○とし, ド方許容限界を-50%, 11方許容限界を+50%とする,公差に対する百分率の単位を使う このようにして作った曲線を使えば,パーツ・サイズの値がどうであろうと,合格確率を求めることができる 次にP/T比が,この測定プロセスにどう影響するかは,前もって決められた危険率αとβに伴う「危険域」(CR)を求めればはっきりする。

これは,良品を不合格とする確率αと不良品を合格とする確率βの値を設定すれば,決まってしまう. 図表8.2.4ではα=β =0.05とした場合のCRが示されている。ここではP/T比を1対5としている。


P/丁比の判定に対する影響
正しい判断ができる能力に対してP/T比がもつ影響というのは,測定プロセスを通る製品のうちどれだけが,与えられたP/T比により決まるCR(危険域)に入り,判定のうち何%が正しいものかを計算すれば,はっきりする。

例えば図表8.2.5に太線の分布で示されているように,その製造プロセスが目標値にきちんと合っているならば,両限界値に近づく製品の割合は小さい。したがって正しく判定される比率は非常に高く,P/T比が1対10,3対10,1対2のいずれの場合も99%以ヒである。

ということは,パーツ・サイズそのものの標準偏差の6倍が公差に等しい場合には,P/T比の異なる上言己3つの測定システムのとれを使おうが,ほとんど違いはないということだ。しかし,パーツ・サイズ分布の位置が目標値からずれ,許容値に近づくとP/T比間の差がもっとはっきりしてくる。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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