コラム・特集

2.2 基本的なコンセプトと用語

IEハンドブック

第8部 品質保証

第2章 測定保証

2.2 基本的なコンセプトと用語

いかなる科学分野についてもいえることだが,度量衡学(測定の科学)においても,その利用を考えている人達にまず知っておいてもらわねばならない基本的な表現とコンセプトがある。実際には,こういったものが,その後に続く測定保証の話の基礎になっているわけである。

1つのプロセスとしての測定
測定とは,本質的に製造プロセスの1つであり,その製品は数字である 測定プロセスの特徴は,可変性,すなわち同一のものを繰り返し測定すると,異なった数字がどんどん出てくることである。この可変性は,測定対象が一律でないことにある程度起因する,と考えるのは極めて自然なことだが,この章では,測定プロセス自体にどうしてもつきまとう,可変性の源にもっと焦点を合わせてみたい。こういった可変性の原因は,図表8.2.1に示されている。測定プロセスを構成する主たる要素を考えてみれば,もっとはっきりしてくる。

この図では,測定対象物が,オペレーターを介在して測定プロセスに入ってくる。オペレーターは,ある具体的な手順に従い,何らかの測定機器を用いて,測定対象物の特性をある基準尺度と比較し,測定値を作る。このプロセスは何らかの環境下で実行されているわけで,作り出される測定値の品質は,この環境に大きく影響されるだろう。事実,測定値の品質は,この測定プロセスを構成する次のような要素の総てに影響を受ける。すなわちオペレーターの知識とスキル,作業手順がどの程度完全で明確なものか,測定基準と機器のメンテナンスはといった要素である。満足のいく結果を得るには,これら要素が適当なレベルで存在しなくてはならない。

測定を製造プロセスの1つとして扱うというのは,可変性の潜在的な源を明らかにするだけでなく,製品コントロールとプロセス・コントロールという,測定保証に対する2つのアプローチがそこから考えられるということもあり,大切である。こういったコンセプトを考える前に,あらゆる測定に関する議論をする際に根本となる,他のいくつかのコンセプトと用語をまず紹介しておく。

真の値
真の値とは,測定されている特性の理論上の正確な値をいう。定義では簡単に言っているが,測定対象,特性の定義にも依存するので,実際にはそう簡単に適用できない。例えば,ゲージブロックを使ってマイクロメーターの正確さをチェックしようとするパーツ検査担当者が定義しているゲージブロックの「真の長さ」が,同じゲージブロックをマスターとして使い,他のゲージブロックのキャリブレーションをやろうとする実験技師が言う定義とではどう異なっているか考えていただきたい。

精 度
測定プロセスの精度とは,同一サンプルのいくつもの測定値が,互いにどのくらい一致しているかをいう。あるテスト方法に関していえば,精度とは,一回のテスト結果における観察値の数が指定されているときに,前もって指定された同じような条件下で得られる個々のテスト結果間で,どのくらいの一致がみられるかということである。

測定プロセスの精度は,1つの数量をそのプロセスで何度も繰り返し測定した測定値間にみられる特有の不一致さを数量化した,標準値で通常表わされる。この値は,ある特定の測定値が,たとえ測定対象は同一サンプルであったとしても,同じ測定プロセスから作り出されうる他の観測値と, どの程度異なっていそうかを示すものである。

かたより(バイアス)
かたよりとは,使用している測量基準点の読みの平均値と,その真の値との間の差異,すなわちシステマチックな誤差を手旨す.測定プロセスに伴うかたよりを構成するものとしては,一定値の誤差と変動するエラーとがある。一定値の場合は,測定プロセスが作り出す総ての測定値が,同じ幅だけずれることになる.これは一般にセットアップ手順,すなわち不正確な標準値,誤ったゼロ点の調整,間違った変換係数といったことによる。

これに反じ変動エラーは,測定プロセスの使用範囲内において,その大きさが変化する.これは測定機器のつくりそのものに関連していることが多く,修理したり調整すれば減少させるなり,無くすことができる。

正確さ
正確さとは,個々の測定値が,正しいとされている測定基準尺度上の値と,どのくらい一致しているかというものである。テスト方法に関連していえば, 1つのテスト結果中の観測値の個数が,そのテスト方法で十旨定されている場合,個々のテスト結果と,正しいとされている測定基準尺度上の値との一致度である。

正確さ,かたより,精度,という用語を測定プロセスにおいて使う場合,その意味と違いを理解しておくのは特に重要である。ごく簡単にいえば,正確さとは真の値にどのくらい近いかであり,かたよりでは真実の値からの予測しうる差異が問題であり,精度では反復測定値が互いにどのくらい近いかを問題にする。

トレーサビリティ
この重要なコンセプトに関しては,現在いくつかの定義が使われている.比較的古い伝統的な定義では,次のように表現されている。「ある特定の器具なり,人間の作った標準がNBS(米国規格規準局)によって,認められた時間間隔内においてキャリブレーションされているか,NBSがキャリブレーションを行った標準をもとにして,順次キャリブレーションをされている一連の標準群の中に位置づけられているものであることを明白に示すことができる」ことである。
新しい定義では,標準のトレーサビリティに対し,測定そのもののトレーサビリティを強調しているが,これらはBelangerの論文で詳しく議論されている。

キャリブレーション
これは,要求されているパフォーマンス仕様から,正確さがまだ検定されていない測定システムなり装置がはずれているのを見つけて修正するために,その正確さがはっきり分かっているか,より正確である測定システムとか機器とを比較することである。

ディスクリミネーション
これは器具の目盛の細かさ,すなわち信頼して読める。最小目盛区分をいうセンシティビティこれはアウトプットにはっきり識別されうる変化となって出てくる,最小のインプットと定義されている。測定器具のこの特性は「器具の反応闘値」といわれる。

レゾルーション
これは目盛の1単位区分(アウトプットの単位)に対する針(読み取り用)の幅の割合をいう.例えばあるダイアル・インジケーターがその目盛上どのくらい明確に読み取れるかという特性である。

安定性
これは測定プロセスの信頼性の尺度である。管理図で簡単にみつかるような,プロセス上のずれだとか変化がないことが一番良い特性となる。

メインテナビリティ
これは指定された使用およびメンテナンス条件下で,測定機器がどのくらい要求される機能を果たす能力を維持し続けるかの確率を表わす特性である。

これはオペレーティング・コストはもとより,生産活動に与える影響という観点からも考えねばならない。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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