コラム・特集

1.1 品質および品質保証の概念

IEハンドブック

第8部 品質保証

第1章 品質保証システム

 

1.1 品質および品質保証の概念

品質の概念
品質についての簡潔な定義はないが,一般に,顧客の願望なり期待をどの程度まで製品が満足しているかの程度を特徴づけているということでは異論がない。そのような定義の一つにヨーロッパ品質管理機構(EOQC)のものがある。すなわち,その品質の定義は「与えられたニーズを満足する能力にかかわっている,製品なリサービスの機能なり特徴の全体である」。ユーザーの満足とか用途への適合とか種々の表現で品質を表わすことがよくあるが,この品質の概念にとって中心となるのは,コンシューマーの主観的評価であることは明らかである。こういった定義に伴う問題は多々あるが,その中でも定義の適切性(現実における)は,生産者側としては新製品を売り出す前に品質を決めるといっても限られた方法と手段しかないわけだから,とくに問題となる。

生産を営む企業の観点からは,製品の品質に関する一般定義なぞ意味がなく,品質を表わす特性とかパラメータあるいは仕様といったものを代わりに使う。こういった標準を設定するに際しては,それがコンシューマーの利益のためであると外に向けては言うかもしれないが,日的はある与えられたレベルの品質を達成するコストと,販売増による利益とのバランスをとることである。まず品質を定量化する必要がでてくるのは,生産者側と消費者側の間に情報ギャップが存在する場合で,生産者側としてはこのギャップを埋めておく必要がある。

品質――消費者と社会
もし製品の品質というのが,消費者にもっと受け入れられる製品を作るためにメーカーが採用しているコンセプトを意味するなら,企業と社会の目標が同一である場合に,そのコンセプトも望ましいものとなる。しかし,過去の経験から,企業目標だけを考えた製品品質の定義は,どれも社会にとって満足のいかないものであるだけでなく,危険なものであることが分かっている。そこで,企業は,その製品および製造方法の及ぼす危険な影響から守るため,法律により消費者と環境をより守っていくことになることに留意していかねばならない。また数多くの消費者を守る団体ができている。

法律では,製造活動から引き起こされる損害に対し,企業はより責任を問われるようになっている。その根底にある3つの考え方は,怠慢,保証,賠償責任である。これらの狙いは製品が欠陥のないもので(生産者側はそれを示すべく増々求められるようになるが),製造方法および販売方法は十分に規制されていることを保証することにある。

政府の介入は別として,この領域で存在する数多くの保護メカニズムの中で最も重要なものは,コンシューマリズムである。

もし他の効果的な消費者保護メカニズムがない場合には,コンシューマリズムから,政府および産業界の方針に影響をもつ特別の圧カグループが生まれてくる。自分達のためだけに品質という概念を導入した企業は,消費者の利益と折り合いをつけなくてはならなくなったが,この結果,お互いに意見を述べるニーズが増してきている。このような状況においては,品質という概念は,消費者が客観的に選択し,その商品を利用するということは,どういう意味なり結果をもつのか認識してもらえるよう十分知って貰いたいという,製造者側のニーズと密接に関連をもつこととなってくる。

いろいろな問題に直面している現在,産業界,消費者および社会全般をも考慮した,包括的な品質の概念を早急に作り上げなければならない。この概念とは,単に産業界と消費者との間だけを対象とした,制限条件付き最適化をやるだけのものではなく,関係してくるいくつもの立場の異なるグループなり組織が,意思の疎通ができるようなフレームヮークとならなくてはいけない。

このフレームヮークは品質標準を設定する際のダイナミックなメカニズムを表わしたモデル(図表8.1.1)の中にもみることができる。このモデルは産業界,消費者,社会と自然の4つの要素から成っている。

産業界で使われている品質概念
多々ある品質の定義を要約してみれば,品質とは消費者の満足度であるということになる 消費者のニーズと期待は,製品そのもののもつ特性に対してであって,前述のものも含め,他のいろいろな品質定義を実際の場で使うということから,品質特性というもののコンセプトをさらに検討しなくてはならなくなる。そこで,品質パラメータと品質特性とを分けて考えるのが適切だと思われる。

「品質パラメータ」とは,一般的に,消費者側から課される期待なリニーズを表わすものである。これは,製品を外観,適切さ,信頼性といったような一般的特性で特徴づけるやり方である 製造と消費に伴う副次的な影響(公害とか資源の消費等)につながる特性も,品質パラメータとして扱われなくてはならない。

「品質特性」は,品質パラメータで述べられたような特性が,どの程度まで製品に作り込まれているかを決定する製品としての特性である。例えば,製品の適切度を決めるのもそういった特性の一つである。したがつて消費者の期待が,どのくらいまでこたえられるかに影響をもつ製品特性というのが,品質特性となる。

 

品質保証に関連して品質という概念を考える場合,この概念を次の3つに分けて考えるのが適切である。

・設計の品質
・製造の品質
・マーケティング/サービスの品質

「設計の品質」とは計画された品質である。これは主として製品仕様の中で指定されるが,使われ方なり利用先に関する市場セグメントと,仕様に対して基本的な決定をする際においても決められることとなる。

「製造の品質Jとは,製品仕様にどのくらい一致しているかの程度である。製造品質における差異とは,製造段階から始まり,同一仕様で作られる製品群がその特性において示す差異である。

これら2つの品質に関する局面は昔からのものである。比較的新しいコンセプトが「マーケティング/サービスの品質」であり,これは,使用されている製品が,どのくらい販売,メンテナンスおよび製品使用に関する基本的決定事項と一致しているかを表わす程度として定義できる。この3つ目の局面を持ち出す大きな理由は,製品というのはその根本的な考え方からして,単なる物体としてのものだけをいうのではないということである。

品質保証という概念
「品質保証」というのはいろいろな意味があり,その概念についても大きな混乱があるようだ。EOQCによれば,品質保証とは,全般的に,品質管理が実際上効果的にいっているということを保証し,立証する1つのシステムとしての活動である。このシステムでは,必要なら修正手段をとれるために,品質管理活動全般にわたり,たえずその十分さと効果を評価していく。個々の製品なリサービスに関しては,仕様作り,製造,検査,製品の使用に影響をもつ品質要素を確かめ,検査し,評価する。

この章では「品質保証」というのはTQC(トータルQC)と同意語として使われる。すなわち企業内で,品質達成を意識して行われている総ての活動を意味する。コントロール(管理)という言葉はもっと狭い意味で使われ,保証機能の中でも,実績なり結果を計画なり仕様と比較する部分を意味する。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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