コラム・特集

3.4 VE過程

IEハンドブック

第7部 製造工学

第3章 価値工学

3.4 VE過程

VE過程は.(1)研究によって分析するプロジェクトまたは製品を選択し,(2)利用者の必要または目標または目的によって製品もしくはそのコンポーネントの現在の(状態1の)価値を測定表示し,(3)新しい代替案を開発・評価して低価値のコンポーネントを改良・除去し,(4)新しい代替案を行う最良の方法を用いる。学際的なチームを合理的かつ組織化する過程である。図表7.3.1は,VE過程の段階を示したものであり,また基本的な問題とそれぞれの段階の種々の機能,活動,マイルストーン(道標),技法を示している。

VE過程は,初期段階(origination phase)から始まる。この段階でVE研究チームが形成され,プロジェクトが定義・選択される。製品の本質を完全に理解するために,製品とそのコンポーネントのすべてが詳細に調査される。

初期段階の次の段階が情報段階であり,この段階では,製品とそのコンポーネントの機能が機能分析の技法によって示される.さまざまな価値測定方法によって機能の重要性と費用が定量化されるが。これらの価値測定方法については後で詳しく述べる.この分析は,「状態1」の分析または現在の状態の分析と呼ばれる。それぞれの機能の費用―利益の比率を計算することによって,価値指標が確立される。費用に対する重要性の関係を表示するための方法として。価値グラフが用いられる.情報段階の出力は,最高の相対価値から最低の相対価値までを配列して順序づけした機能またはアイテムのリストである。低価値のアイテムが価値改善の候補となる.この候補を改良するか。新しいものとするか,代替案をつくる。そしてこの代替案を評価する。

評価段階では,多数のリストを前もって審査することである。この審査でパスした高得点の代替案(普通は5から20までのアイテム)は,分析能力の高い価値判定方法によってさらに詳しく評価される。これらは,情報段階の状態1の分析で用いられたものと同一の価値判定方法である この段階の価値測定は,「状態2」の測定または将来の状態の測定とよばれる。この段階でまだ残っている2つまたは3つの代替案は,経済的かつ技術的な実現可能性と要求される機能を十分に果たす能力.精度,品質,信頼性,安全性,修理の容易さ.環境へのインパクト・などの基準を満足する能力がさらに詳しく調査される。

実行段階では,研究をまとめて結論を示し,意思決定者に堤案するための報告書が作られる.分析段階で残っている代替案を実行するためのプログラムと活動計画が開発される。ここで用いられる技法は,生産管理およびプロジェクト管理の分野のものである。

次の節では,それぞれの段階の活動を詳しく述べる.種々の方法論を例で示すために,簡単な卓上コンパス(表7.3.2)を用いる。

初期段階
組 織
VE研究を始めたり,成功させるためには経営側の支持が重要である。最初に以下の点をはっきりさせておく。

研究対象は?
誰が研究資金の援助をするのか?
どれくらいの資金が必要か?
誰が研究を承認するのか?
研究の依頼者は?
研究の着手日程と完了日程は?
誰を研究チームに加えるべきか?
誰が研究の成果を使うのか?
どのような形式で発表されるのか一口頭か文書か?
組織のどのようなレベルと関連させるべきか?
空間的な領域は? 予測される時間,工数,費用は?

いったん研究のパラメータが再検討されると,管理部門にVEの研究をわかりやすい文書にすると便利である。この文書は,チームの番号を示し,各チームに研究に参加する時間を知らせ,研究のスポンサーと意図を示す。

プロジェクトまたは研究の使命
いったんVE研究の目的が選択・定義され,チームが形成されると,チームの使命を記述しておけば役に立つ。これは,プロジェクトまたは研究で実行すべきこととその理由を簡潔かつ広範囲に明確にする.記述の例として次のようなものがあげられる。「要求を満たすように年末までに$100でコンポーネント“X”を生産せよ」この記述は,最初は不合理または不可能に思われるかもしれないが,メンバー間にチャレンジ精神をもたせ積極的かつ独創的な態度を生じさせるのに役立つ。これに類似したアプローチとして,「デザイン・トゥー・コスト(design to cost)」ゃ「ライフサイクル・コスティング」が用いられている。

製品のドキュメンテーション(documentation)組織化が行われ、準備が完了すると,VEチームは研究する問題に関する情報収集と事実の再調査を行い,製品とそのコンポーネントの定義に取りかかる。これは,「製品とは何であるか?」というVEの質問と同じである.考え得るすべての情報を追求する。少ない情報よりも多くの情報を収集するほうがよい。個人的な意見と偏見を少なくするために,実際のデータを十分に得ておかねばならない。個人的な意見と偏見は,研究の方向と最終的な結果に影響を及ぼす場合がある。

この段階では,製品とそのコンポーネントを詳述するエクスプロージョン・ダイアグラム(explosion diagram)が有効となる ハードウェア・アイテムをチームのミーティングにもってきて、すべての部品に分解することができる。 図表7.3.3は卓上コンパスのコンポーネントのリストを示している。

チームが製品とそのコンポーネントを十分に理解しつくすと,それらの価値が定性的に分析される。

 

情報段階
価値の定性的解析―― 機能分析
製品と製品のすべてのコンポーネントを研究して,その機能(または目的)を決定する。情報段階では, リストアップされたすべてのコンポーネントの機能が示される。機能分析は,意味論的に機能を分類する定義的かつ構造的な技法である。機能分析は,価値の定量的な分析の基礎になる。

価値分析では簡単な語句.すなわち名詞と動詞で機能を記述する。このように機能の記述を制限することによって,機能を明確に示すことができる一不必要な修飾語,形容詞,副詞を用いない。機能の記述が冗長になると,この過程の後に必要となる独創的なアプローチが制限される。機能の記述のルールは以下のようになる。

1.製品またはサービスに対する使用者のニーズの決定.性能を定義する品質または特徴は何か? なぜそのような製品が必要なのか?
2.簡単な言葉(動詞と名詞)を用いて機能を記述する。動詞は、「何をするのか?」という質問をし,名詞は「何に対してそれを行うのか?」という質問をする。できる限り名詞は測定可能でなければならないし,動詞は活動指向でなければならない。
3.与える(provide,give),供給する(supply),提供する(furnish),ある(is),準備する(prepare)などの受動的または間接的な動詞を避ける。このような言葉は情報をほとんど含んでいない。
4.改良する(improve),最大化する,最小化する(minimize),最適化する(optimize),予防する(prevent),最小(least),最大(most),100%,などの目的を示す単語または句は避ける。
5.簡単な言葉の組み合わせを多数リストアップして,最良のペアを選択する。機能をグループ化して定義するためにチームを用いる。

例として次のようなものがある。

a 光電管――光を発する
b コーヒーカップー液体を入れる
c ねじ回し――トルクを伝達する

製品とそのすべてのコンポーネントの機能を記述しなければならない 時にはアイテムが1個以上の機能をもつ場合がある。コンポーネントとその機能をリストアップする場合には,同じレベルのものを取り上げる。例えば鉛筆を再設計する場合は,リストアップされたコンポーネントーー木.グラファイト,消しゴム.消しゴムホルダー,塗料,接着剤など一が1つの組み立てのレベルに保たれる。塗料のコンポーネント(顔料.溶剤.色止め薬など)の成分はかなり低いレベルで考えられており,新しい鉛筆の設計では取り上げられない。図表7.3.3は,コンパスとそのコンポーネントの機能の記述の例を示している。

機能は基本的なものと副次的なものとに分類されることがよくある.基本的な機能は製品の主要な存在理由を示す。基本的な機能は使用者のニーズによって記述する。

基本的な機能を決定する場合には次のような質問が妥当である。「製品からこの機能を取り除いても製品の目的はまだ満たされるだろうか?」。一方、副次的な機能は基本的な機能を補助して基本的な機能を引き出す。副次的な機能は,確実性または便利さを増すかもしれないし,全く感覚的な機能または美的な機能を与えるかもしれない。副次的な機能は,削除,改善,革新の候補となる。

機能を副次的な機能と基本的な機能に分類することは,製品の費用がそれぞれのコンポーネントにどのように割り当てられているかを同定し,余分な機能または不必要な機能を明らかにする。例えば,要求を満たすために必要な基本的機能ないし副次的機能よりも,不必要な副次的機能に多くの費用がかかるならば,VEチームが潜在的な費用の改善にのりだす。

機能分析システム技法
現在,VE実行者が用いている,よく知られた有力かつ体系的な機能分析技法が,Charles Bythemy によって1965年に開発された機能分析システム技法(FAST)である。この技法は,原因と結果にもとづく階層のなかで順序づけられる簡単な言葉による機能の定義を行う。FAST図は,基本的な機能を果たすために実行せねばならないすべての機能を視覚的に示す。FAST図を時系列フローチャートまたはクリティカルパス・チャートと混同してはならない。FAST図は以下のようにして展開される。

 

1.製品とそのエレメントが果たす機能を簡単な機能の記述にする。それぞれの機能を小さなカードに書いて図表をつくる準備をする。これらのカードは,よく見え,手にとってすぐ動かせるところに置かれる。

2.多くのカードのなかから,基本的な機能を記述しているカードが選択される.最初の機能のリストアップのな力ては,冨J次的な機能を記述しているカードもたくさん含まれており,そのうちのいくつかは不要であるが,また。これらは改善とイノベーション(innovation)の主要な候補となるものである。

3 基本的な機能カードから樹木図構造がつくりだされる(図表7.3.4).あなた自身が分析中のアイテムであることを仮定して,「なにをどうするのか?」という質問をし,(アイテムなどを)人間にアナロジーすれば.樹木図構造が最も有効につくりだされる.次のような質問は製品におきかえたものである。「(製品は)いかにしてこれを行うのか?」。どの場合にも質問に対する答が基本的な機能のすぐ右にある。「いかに」という質問の結果,分岐が生じ,分岐が止まって,機能的な順番が論理的な川贋番になるまで「いかに」という質問が繰り返される。個々のカードは「いかに」という質問を論理的な川贋番に配列してレイアウトするのに便利である。

4.論理構造は,論理的な順番になっている。それぞれの機能に対する「何をどうするのか?」という質問によって,逆方向から照合される。「いかに一― なぜJという質問は,図全体の論理をテストするのに用いられる。「いかに」および「なぜ」という論理的な秩序をもつ質問に対する答は,両方向(FAST図の右から左への方向と左から右への方向)において意味をもたねばならない。すなわち,「いかに」という質問に対する答は左から右へと論理的に流れ,「なぜ」という質問に対する答は右から左へと論理的に流れねばならない。

5.「クリティカルな機能のパス」は,基本的な機能と副次的な機能の論理的な順番からでてくるかもしれない。「クリティカルな機能のパス」は,基本的な機能を果たすために成し遂げねばならない機能だけからできている。このパス上にない機能は,再設計,削除,原価低減の主要な候補になる。

6.ふつうFAST図は「スコープライン」によって両側が制限されている。「スコープラインJは研究の責任の限界を示す.例えば,OHPの価値分析を行うならば,FAST図は電流が装置に伝えられる時点にまで拡張される。「発電」は研究の対象外である。

FAST図そのものはそれほど有効でなく,FAST図の構成に関与していない人々にとっては非常にやっかいで複雑にみえるかもしれない.この図の有用性は,徹底的な質問と詳細な分析にある。FAST図は時間と関連した継続的な流れ図ではないFAST図は階層的に順序づけられた機能の相互関係を示す樹木図である。この図の機能に費用と重要性が割り当てられると,この図は価値測定段階でさらに有効になる。

図表7.3.4は,コンパスの例のFAST図である。FAST図の作成と利用については,他の文献3036を参照していただきたい。

制限分析
特殊なコンポーネント,原材料,設計,現在用いられている手順,などに対する制限または理由にチャレンジすることも有用である。この手順が「制限分析Jと呼ばれる.制限分析の目的は,ある制限が現在でも有効かどうか疑ってみることである.製品の設計が度を越すことがたびたびある。というのは,設計に対する初期の制限が有効でなくなっているかまたは誤解されているからである.ここでは次のような質問に答えねばならない。

「なぜ現在使用しているものを使用するのか?」「この理由はいまだに妥当であるのか?」.制限分析は徹底的に行わねばならない。制限分析を行うことによって,VE研究の必要がなくなった場合もあった。いったん制限分析が同定されると,不適当な制限による費用を引き出して,それぞれの機能をもたせるために必要な費用と組み合わせる。

価値の定量的分析―― 状態1の価値の測定
費用の誘導 製品の機能分析終了後,以下のことを行つ。

(1)機能をもたせるのに必要な費用の決定
(2)機能の価値と重要性の決定
(3)にれらの機能に対するFoM(figure of merit)または価値指標37‐39の決定
(4)もしFAST図を用いたならば,FAST図でリストアップされたそれぞれの機能に, これらの測定値を割り当てる.

FAST図は有効な場合があるが,必ずしもFAST図が用いられるとは限らないまた,FAST図を用いなくても価値指標の誘導が不可能になることはない.

機能をもたせるために必要な費用の分析では次のような質問が行われる 「どのくらいの費用がかかるのか劉.機能をもたせるのに必要な費用は,機能を与えるのに必要な労力やアイテムやコンポーネントの費用を決定することによって導かれる。費用は,原材料費とか労務費のような実際の費用,すなわち“ハードな”費用,あるいは困難さ,失敗の危険,実際の費用が利用できない場合の“不確定な”原材料費とか労務費のような主観的な費用,すなわち“ソフトな”費用からなる.ハードな費用を利用できるならばこの費用を用いるべきである.ハードな費用は通例の原価計算法から求めることができる.

しかしハードな費用が利用できない場合には,主観的な数値をつくりだす原価評価法によって見積もりを誘導できる.それぞれの見積もりを他の見積もりと比較・評価することによって,これらのソフトな費用を確立できる.認識された相対費用に比例する数字がアイテムに割り当てられる そして,これらの数字は,すべてのアイテムの数値見積もりの総計でそれぞれの見積もり値を割ることによってパーセンテージに変換される(標準化される)グループで費用を見積もる場合には,グループのメンバーの見積もりを平均することによって,それぞれのアイテムの費用のパーセンテージの平均を得ることができる.

グループのメンバーが1人以上ならば,それぞれのメンバーの見積もりを標準化するためにパーセンテージが用いられる.ハードな費用もパーセンテージとして標準化される場合がある.標準化された費用が頻繁に用いられる。というのは,これらの費用は製品またはシステムの総費用に対する割合として,それぞれの費用を示すからである。

 

システムのコンポーネントや手順,サービスを研究する場合には,標準化された費用がとくに関係する。次に示す式G)は,式(1)または9)で表わされた価値の比率を標準化したものである。

平均%C= %C1 +%C2+… … 十%Cn   / n           (3)

ここで
%C=アイテムまたはコンポーネントの相対費用の平均

%C(1.2.・・・・・・n)=それぞれのメンバーの費用の見積もり

n=個々の見積もりの総数

システム全体の総費用(ドル)を個々の機能またはコンポーネントのパーセンテージに掛けることによって,個々の機能またはコンポーネントのパーセンテージをドルに変換できる.これは目標費用を確立するために有効な方法である すべての費用(実際の費用と相対的な費用)は,FAST図(図表7.3.4)やエクスプロージョン・ダイアグラム(explosion diagram)。または類似じた機能のリストのなかのそれぞれの機能に割り当てられる。

この割り当て過程は,従来のアイテムーー費用の見解を費用間の関係を示すシステム全体の見解に変換する。そこで,基本的な機能または副次的な機能全体にかかる費用を,機能図表の費用を合計して得ることができる。

価値または重要性の機能についても研究される.“価値(worth)”という言葉と価値分析の技法は,ふつうはハードウエアのアイテムとともに用いられる。逆に,“重要性”という言葉と“重要性”を求める方法は,ソフトウエアのアイテムと関連している場合が多い。機能の価値または重要性は,これらの機能を与えるアイテムやコンポーネントの価値または重要性を誘導することによって間接的に決定される。

価値は外面的な費用比較の技法によって確立され,要求された機能を確実に果たす最低の費用として定義される。 価値は,アイテムまたは部品の機能をもたせるのに必要な費用と,これと同様な機能を確実に果たすことができる,類似した外部のアイテムの機能をもたせるのに必要な費用を比較することによって決定される。例えば.「ネクタイを止める」という機能をもつネクタイ止めの価値は,「ネクタイを止める」という機能を果たすことができる他のものを調査することによって求められる。最も費用のかからない基準アイテムの費用は,基準費用として選ばれる。$0.01以下の費用であるクリップもネクタイ止めの機能をもつ。基本的な機能の価値はこの価格の範囲にあることが示される。

ネクタイ止めの主要な価値は名声(prestige)または好評(esteem)の価値から成立しており,全体的な価値は,基本的な機能(ネクタイを止める)と美的かつ副次的な機能を組み合わせたものである。このタイプの独創的な比較を用いる価値分析は,他の文献22,40,4でカバーされている。

重要性は,それぞれのアイテムまたはコンポーネントを他のものと比較して見積もるといった,アイテムまたはコンポーネントの内面的な比較によって確立される.重要性は,ソフトな費用を求めるために用いられたのと同じ方法で,主観的な定量化の技法によって評価される.次の式(4)は重要性のパーセンテージを導き,式(1)と(2)で示される価値の比率の分子となる.

平均%I=%I1+%II2+… …+%In / n

ここで
%Iニアイテムまたはコンポーネントの相対的な重要性の平均
%I(1,2, ,n)=それぞれのメンバーの重要性の見積もり
n=見積もりをしたそれぞれの重要性の総数 

ソフトな費用の誘導の場合と同様に,客観的な数字がパーセンテージで標準化される システムのなかのそれぞれのアイテムの相対的な重要性は,システム全体の重要性に対する割合によって表される価値と重要性も図表7.3.4のようなFAST図の各機能に割り当てられる。

価値,重要性または費用について機能の比較を行う場合は同じ階層レベルで行う。例えば図表7.3.3に示されるものは同じレベルである。同じレベルでない例が図表7.3.4のFAST図の中にある。すなわち2つの機能,「トルクを発生する」と「脚部を分離する」は,重要性や費用を直接比較することはできない。「脚部を分離する」はより高いレベルであり,いくつかのより低い機能を含
んでいる。その1つが「トルクを発生するJである。しかし「脚部を分離する」は「マーカーを保持する」や「中心を固定するJや他の機能と同じレベルで比較することができる。

価値指標

おのおのの機能に対して費用や重要性が導かれると,これらは価値指標の計算のために用いられる。いく通りかの方法が指標計算するためにある。分子には価値あるいは重要性のどちらかを用いる。同様に分母にはハード費用,相対的なハード費用,あるいは適当に見積もったソフト費用のいずれかが用いられるが,分母にはハード費用のほうが好まれる。

例えば,
価値指標=絶対価値/絶対費用
価値指標=%I/%C

価値指標を求めるために、分子または分母に、いづれのぱらまーたーが用いられても、これらパラメーターが表している数値は、すべて相対値かすべて絶対値であることに注意しなければならない。無次元指標にするためにはこのような一貫性が必要である。

価値指標はまた機能を価値の淳に並べることのできる次元のない数である。一般的に以上の価値指標は良い価値を示し、以下の指標をもつ機能やコンポーネントは注意や改善を必要とすることを示す。

指標をうまく図に表すためには,機能またはアイテムについての,相対重要性の値(価値)と相対費用の値をプロットすればよい.このようなプロット方法をここでは「価値グラフJと呼んでいる(図表7.3.5を参照)。
グラフ上の45° 線は価値指標が1であることを示し,満足できる値を表している。この線より上の部分は良い価値をもち,下の部分は悪い価値を示している。図7.3.5のコンポーネントA,H,Dはイノベーション段階では改良されたり,削除されたりするものと思われる。これらはまた図表7.3.3のような数値化した価値指標の表よりも,価値グラフの方が相対的価値を明瞭に表している。

 

価値測定方法 価値指標のパラメータの測定を行うのに役立つ多くの定量的方法がある。大変便利な一対比較法(Paired comparison)とマグニチュード・エスティメーション法 (Direct magnitude estimation)がよく知られている。

一対比較法は,Mudgeによって紹介されている。この方法はある特性(例えば費用.重要性)について,一対の機能もしくはアイテムからより高いうのレベルのものを選ぶ方法である。すべての可能な組み合わせについてこの手順を繰り返してその後,個々の機能やアイテムに関する数字を合計することによって.機能あるいはアイテムの係を定量化することが可能である。

このマトリックスは重要性や費用のような正または負の特性を定量化することができる.おのおののアイテムを評価した値の合計の数字は,すべてのアイテムについて合計した数字のパーセントで表して標準化される。図表7.3.6はデスク・コンパスの一対比較の例である。


重要性は図表に示されているが,この方法はまた相対用を求めるのにも用いられている。この2つのパラメータは図表7.3.3のコンポーネント・リストや図表7.3.4のFAST図の中に示されている。一対比較は,はっきり区別することができ,区別したリランク付けするのが困難なアイテムに優先順位をつけるのに便利な方法である。この方法は,評価するアイテムの数がより大きければ(10以上)実用的でないかもしれない。そのような場合はDMEが推奨される。

マグニチュード・エスティメーションは,ァィテムの特性の大きさに比例した数字をアイテムに割り当てる方法である たくさんあるアイテム間で判定する必要があるときは大変便利である。この方法については次の例をモデルとして説明する。

不規則な順序にならべられている,アイテムの表が与えられている。アイテムに数を割り当てることによって,重要さを表さなければならない。まず最初のアイテムにあなたが適当と思われる数字を割り当てる。それから前のアイテムと比較して,アイテムの重要さについての主観的評価を表す方法で,次のアイテムに連続した数字を割り当てる。例えば,もし2つ目の判定が重要さとして20倍と思うなら,前より20倍の数字を割り付ける。正の分数,整数,小数を用いる。

大きさの評価値は対数正規分布であることが知られている。従って平均は評価値の幾何平均がとられる。個別に評価値を平均し,最後にパーセントをもとにして評価値を標準化することは先に述べたとおりである。個々の評価値のヒストグラムをプロットしたり,分布の幾何平均を計算するには,コンピュータ・プログラムを用いると便利である。簡単なだけでなく,DMEはアイテム間の違いの大きさを表現することができる。経験から30アイテム以内が最も有効である。ァイテムの重要さに比例した数字を割り当てるもう1つの方法は,カテゴリー尺度構成法(category scaling)である。この方法は,ある数の範囲を割り当てられる特別につくった等級を用いる。解答者ははじめに重要さの感じで最もあった数字の範囲を割り当てられている。

カテゴリーを選ばねばならない。典型的なカテゴリー尺度とは,
90~100-―<最も重要>
70~ 89-― <大変重要>
50~ 69-― <重要>
30~ 49-― <やや重要>
10~ 29-― <ほとんど重要でない>
である。

カテゴリーの尺度構成はDMEに比べ複雑でなく,理解しやすく大変便利である。それは判断,認識,および定量化の点で評価する一貫性がある。というのは,すべての人間が同じ基準尺度を持つからである。また認識は対数正規型でないカテゴリーで定量化され,関係するすべてが同じ尺度を用いるので,解答の平均の計算に幾何平均を用いる必要がない。しかし,尺度構成はアイテム間の重要さに対する認識の違いの個人的表現を限定するかもしれない。それは解答する範囲が狭いからである。

価値測定段階は.価値,重要性および費用について機能,コンポーネントの定量化をする.これらのパラメータは再設計,改良,削除されるものを選ぶのに用いられる。このようなものは普通・高いコスト・低い重要性,またはそれらの組み合わせである。

それらはイノベーション段階で改良や再考の対象となる。図表7.3.4のコンパスの例を見ると,コンポーネントのソフト費用,重要性,価値はFAST図の機能に割り当てられている。コンポーネントは鉛筆の脚部,ピンの脚部,ねじ,ナットの場合のように,同時にいくつかの機能が働くかもしれない この場合,重要性,費用はおのおのの機能に対しコンポーネントがどれぐらい寄与するかで割り当てられる。同様な割り当て方法はRugless によって用いられている。すべての機能に対する価値は,FAST図のどこにおいても重要性やコストの合計から計算される。

イノベーション段階
価値の高揚
イノベーション段階はVE過程の創造的部分であり,再設計の重要なステップである。この段階では機能を達成する代替案をつくる努力が払われる。そして低い価値の二次的機能を削除または結合する。また,この段階では,「この仕事が他のどんなものでできるのか?」「基本的機能を維持したままでどれくらい二次的機能を削除できるだろうか?」という疑間に答えなければならない。

どんな方法でもその場合におふさわしいとは限らない。まず,どんなタイプのアイデアを集めたいかを決めなければならない。普通,簡単な方法から始め,特殊な目新しくむずかしい方法に進むのがよい。最も簡単な方法はすでにあるアイデアを集めることである。その方法とはインタビュー,アンケート,文献検索などによって文書あるいは個人から集めるか,もしくは,ベテランが単にアイデアを持ちよるだけの会議からアイデアを集めるのかのどちらかである。簡単な方法で集めたものの中に満足するアイデアがないならば,よリユニークな概念形成の方法が試みられる。その方法は創造性を抑えるような習慣的,認識的,教養的,感情的な部分を抑えるようにしている。

どの方法に対しても2つの注意すべき点がある。

第1にすべての批判,評価はアイデアを生み出す段階では避けるべきである。これによってアイデアを十分に生み出すことになり,潜在する良いアイデアを排除することを防ぐ。

第2にすべてのアイデアは実用的でないものでも,後に考察される。その理由は,一見,非現実的なアイデアでさえも検討し,あさけりを恐れずに考えを自由に表現することができるようにするためである。図表7.3.7は普通よく用いられるいくつかの創造的方法を表にしている。

最もよく知られた方法はブレーンストーミングである。それは長い間広く用いられている。DelbeqとVan devenによって開発されたノミナル・グループ・テクニック(Nominal group technique :NGT)は従来のブレーンストーミング(Brainstorming)より効果的であることが知られる。この効果については他の研究によっても支持されている。

ブレーンストーミングは名ばかりのグループとは異なって,親密なグループで行われる。親密なグループは自発的にグループ。ディスカッションをするグループのことである すべてのコミュニケーションは最小の統制と公式な組織を持ったメンバー間で行われる。

他方,名ばかりのグループは互い一緒に働くが,何か機会があるか,特に指示された場合を除いて,会話は持たれない。
各種の文献には方法の有利な点,不利な点が詳しく述べられ,NGTの応用についての詳しい説明がある。われわれはこの方法を特にすすめる。どのような方法が用いられようとも,イノベーション段階では多くのアイデアを生み出す。その仕事というのは,もっと考察したり行動するために最も実現可能で実用的なアイデアを選択することになる。コンパスの例では,ハンドル,座金,鉛筆の脚部は低い価値の機能を持っている。それらは機能の改良,結合,削除のための創造性の会議では主題となった。機能革新の様々な組み合わせがいくつかの代替案を生じる。それらは図表7.3.2.bで示された新設計を生み出すための評価段階で評価される。

評価段階
予備審査――価値の定性分析
評価段階はイノベーション段階で作られたアイデアが調査され,そして少数のアイデアが選ばれる選択過程を意味している。イノベーション段階で生み出されたすべてのアイデアの価値を広範囲に分析することは,時間や労力が多くかかるので実用的でない。従って,扱いやすい大きさにするために,たくさんのアイデアを予備審査。
することが望ましい。いったん審査されると,高いランクのアイテムは定量的な評価を受ける。

2つの効果的な予備審査の方法はPareto VotingとQsortである.両方の方法とも審査を早くすることができ,簡単でしかも識別能力が高い。しかしながらそれらを用いる前に,アイデアの冗長度が審査されるべきである。それはよく類似したアイデアを組み合わせることで,アイデアの数を減少させることができる。

Pareto‐ Votingの原理は,パレートの不良配分法則(low of maldistribution)で,それまVEで応用される場
合には価値のおよそ80%はおよそ20%のアイテムにあることを述べている。応用する場合は関係者によって価値の投票(無記名もしくは記名投票)が行われる。投票者は重要と思うアイテムの数(約20%)を選ぶ。投票者は選んだものの中での優先順位は間わない。アイテムごとにただ1回の投票が認められ,すべてについて投票される。アイテムごとの投票が集計され,最も多くの投票を集めたアイテムは,今後のさらに進んだ研究のために論議,研究される。Shillito はこの方法の詳しい指導書を用意している。

Q― sort方法では,アイテムが個々のカードに記録されている。評価する人は,価値カテゴリーの階層にアイテムを分類する。

初めにそれらは,“高い”価値,“低い”価値と決められた2つの山に分類される(分類1)。

第2回目の分類は2つの山を4つにし,それらの山は“非常に高い”,“ 高い”,“低い”,“非常に低い”価値と決められる。

第3回目の分類は“中間の”価値という中間カテゴリーを得るために行われる。それは中間価値のアイテムが含まれる2つの山から分類される。この最終の分類でり非常に高い”,“高い”,“ 中間”,“低い”.“非常に低い”価値のアイテムを表す5つのカードの山ができる。

価値の定量的分析――状態2の価値測定
予備審査で選ばれたアイテムのグループは,開発可能な二,三の候補になるまでより厳密に評価を受ける。イノベーション段階で論議された同じ価値測定方法(一対比較法,DME)は,予備審査された代替案を評価するのに用いることができる。しかし,この段階でしばしば用いられる有効な方法は基準分析(criteria analysis)である。

基準分析は,最終基準に対する個々の利点を判定することによって,代替案を評価するために作られたマトリックス得点法を行うことである.基準には,重要さに比例した重み係数が割り当てられる。

各々の代替案の相対的な利点は,基準に対する性能を得点評価することで決められる.マグニチュード・エスティメーション法やカテゴリー尺度構成法は得点を表示することに用いることができる。各代替案に対する重み付けしたFOMはDMEの結果と重み係数の積を合計することで得られる.重み付けしたFOMはパーセントにして標準化できる。

図表7.3.8にデスク・コンパスの代替案に対するすべての基準分析のマトリックスが描かれている.このマトリックスは正の基準に対する,重み付けしたFOMやパーセントにした重要性を得るために使われた。同様なマトリックスはまた負の基準に対して重み付けしたFOMを得るのにも用いられる。

価値指標は正のFOMまたはパーセントにした重要性を,各代替案に対するそれぞれの負のFOM(パーセントにした費用)で割ることで,式(6)によって計算することができる.状態1で用いられた価値グラフは,この段階でも有効である。

基準分析は多くの利点を持っている。最も重要なことはその過程において共通した基準を用いていることである.一対比較やDMEでは共通の評価基準が設けられていない。各判定者は彼ら自身の基準や観点を用いる 基準分析はまた各代替案が各々の基準をどれくらい満足しているかを示す。コンピュータ・プログラムがその過程の計算や,価値グラフや評価のヒストグラムをプロットするのに用いられる。この方法は少数の代替案から最も良い方法を選びたい場合に適している。

他の同様なマトリックス得点方法も用いられる。そのようなものとして,重み付けした制約手法(the weighted constraintsmethod). 決定行列(decision matrix),結合(combinex),デルファイ(delphi).そして基準機能分析(criteria function analysis)がある。より高度の統計的手法として相関分析やクラスター分析(cluster analysis)などがあり,それらはまたデータの分析にも用いることができる。状態2の価値測定から導き出された最も有望な代替案は費用―有効性,技術的な可能性や実行の可能性の点で広範囲に再調査される。下準備は以下に述べるような質問に答えることである。「それは可能か?」,「~したらどうなるか?」,「規格にあうのか?」,「実際の費用は?」,「システムと一致するのか?」,「周囲へのインパクトは?」。

予測しにくい問題を突き止めるのによい他の方法は,潜在問題分析(potential problem analysis),Shillltoが述べたインパクト分析(impact analysis)である。代替案をテストするとは,キャッシュフロー分析を含む重要な経済分析だけでなく,プロトタイプなどの開発を意味する。

 

実行段階
この段階はVEチームの管理者への勧告の準備や発表に関係する.却下を最少にするために,注意深く報告書を作成する。図表7.3.1の実行段階での基本的な情報交換の質問に答えることは,有効である。文書が実行のために,意思決定者に示されるときに,簡単な2,3ページの実行概要書をつけるとよい。詳しい情報を含んだ研究チームの報告書は,実行中,作業文書として使用することができる.口頭での発表は文書に対する良い補足となる。

勧告案の実際の実行は,VEチームで遂行されるかもしれないが,それはしばしば他の者によって遂行される。VEチームは勧告案が軌道にのった後解散する。そして実行に対する責任はライン職員に与えられる。研究チームは意思決定者に対して必要な入力を用意し,チームのメンバーは詳しい報告書に沿って,実行に対する部門や個人の責任について援助をする。援助は説明または追加入力という形式になる。モニタリングは進捗のチェックをしたり,実行されたものの監視を行う。

受け入れを得ることや,勧告案を用いる上で主な要因は,勧告された変更に対して意思決定者に好感を持たせることである。チームメンバーの中に意思決定者がいることは大変役に立つ。実行のためにはVEチームが完成のための指示された活動の計画や,タイムテープルを用意すればよい。PERTのようなプランニングや,スケジューリングは,勧告案を実際に実行するのに大変有効である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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