コラム・特集

1.5 製造計画と管理機能の技術とタイミング

IEハンドブック

第7部 製造工学

第1章 製造工学

1.5 製造計画と管理機能の技術とタイミング

製造実行可能性(Manufacturing Feasibility)
前の図に示したように,設計図を生産現場へ渡して設計趣旨を正確に伝達するために,マニュファクチュアリング・エンジニアはプロダクション・エンジニアと密接な連絡をとる。この2つのグループ間の検討は製造実行可能性とよばれる “製造実行可能性″とは,製作の観点から設計を実現するための部品加工や組立作業を検討する工学的手法である。 製品や個々の部品の製造実行可能性は,設計段階でマニュファクチュアリング・エンジニアの指導のもとに検討される。 既存の工場を使用する場合の製造実行可能性は,現在の機械, レイアウト,人員などに影響されることを強調しておきたい。

設計が最終的に生産作業へ移行するまでの全設計段階を通じて,製品設計者とマニュファクチュアリング・エンジニアが協力して設計や設計の改善をすれば製造実行可能性が効果的に実現される。その後の生産段階や全修正段階を通じてこの関係を維持するべきである。修正段階では市場の要求に応じたり,製品のコスト,品質,信頼性などを向上させたりするために設計の改善を行うある場合にはこの修正にコスト改善法や価値工学の手法が用いられる。

それぞれの生産工学グループは,製造実行可能性の問題に対する回答に責任がある。製造可能性や生産可能性,またそれらに関する専門用語についての考察は後章に詳しく述べられている。マニュフックチュアリング・エンジニアやプロダクション・エンジニアは,新素材や新工程の新達についてよく知らねばならない。

後章では現在の設計に対する評価が詳細に述べられている。生産設計の評価と改善のためには,マニュファクチュアリング・エンジニアとプロダクション・エンジニアの協力が必要である.提案された設計または既存の設計の製造実行可能性を高めることに成功するかどうかは,関係者の技能と相互関係にかかっている。

工程と設備の選択
製造工学の本質は,設計を実現するための工程と設備の選択にある。マニュファクチュアリング・エンジニアは現在製造中の製品についても,製品の品質の向上や生産作業のコスト削減に有効な工程と設備の選択を検討するべきである。工程と設備の選択の手順を次に示す。

1.製造作業のゼネラル・ステートメント(general statement)の開発
2 工程選択の準備段階の確立
3.工程代替案の明細書の開発
4 製造工程の選択
5.工程選択の伝達
6.詳細工程の実行

ゼネラル・ステートメントの開発
製造手順のゼネラル・ステートメント(general statement)は,設計した結果を製造するための設備を決めることである。 与えられた製造作業を実行するのに必要なラインが明確になれば,全体の製造手順を決める助けとなる。

ゼネラル・ステートメントの開発の第一歩は実用的で経験的な資料を集めることで,同様の製品が取り扱われている資料が有効である そして,生産速度,機械の性能,保全費用,機械の予想寿命などを細かく検討する。現在の設備ではできない作業については,新しい工程や設備の導入を考える。その場合には同種の作業をしている産業ばかりではなく,違った製品を扱っている産業からも広く情報を収集する 製造工程の実行可能性を調べるため,試験的作業を行ってゼネラル・ステートメントを開発することが望ましい。

工程選択の準備段階の確立
生産システムのゼネラル・ステートメントめ開発は必要でない場合もある。しかし,工程選択の準備段階の確立は,どんな場合においても欠くことのできない手順である。工程選択の準備段階では次のような項目を実行しなければならない。

1.設備と部品の目標費用の設定一―製造工学の有効性の検討による目標コストの設定。

2.原材料の明細な仕様-―設計図では原材料の正確な形状,大きさ,化学的性質について明細に記入されていないことがあるかもしれない。そこで,マニュファクチュアリング・エンジニアは簡単な材料の明細書を作成する必要がある。その明細書には,熱間圧延された鋼材や鋳造・鍛造された素材の化学的性質,部品の化学的・熱的処理,鋳造や鍛造などによる荒加工品の切削量などを記入しておく。

3.時間当りの生産量の決定――マニュファクチュアリング・エンジニアは機械の使用法や年間労働時間などの作業要因に基づいて,必要な正味の生産速度を決定しなければならない。

4.納期の達成―― マニュファクチュアリング・エンジニアは,部品や製品の納期を達成するように注意しなければならない。

5.工程選択の準備段階における考察―― マニュファクチュアリング・エンジニアは,設計図に決められた設計を実現するために必要な手順や部署の数を見積もる。そのためには必要な人員の見積もりをしたり,工程の各段階を調節するレイアウトを考えなければならない。工程の正確な手1頂がわかっている場合には,前もって収集した経験的情報が役に立つだろう.実際の工程における経験が工程選択の準備段階における判断を助ける。

6.コストの見積もリーマニュファクチュアリング・エンジニアは,工程選択の準備段階の選択に基づいて設備や材料のコストを見積もる.これらのコストは後で述べる詳細工程の場合と同様の方法で見積もることができる。

7.目標コストとの比較―一大規模な計画や設備で加工を行う前にマニュファクチュアリング・エンジニアは,工程選択の準備段階におけるコスト計画を設備や個々の部品の日標コストと比較することが大切である.適切な比較は迅速な意思決定を促し,その後の解析の資料となる。

工程代替案の明細書の開発
工程選択の準備段階が完了すると,マニュファクチュアリング・エンジニアは工程代替案の明細書を開発しなければならない。とくに工程選択の準備段階の細部のコスト解析において高コストであったり,実行上に疑間があったりする場合や,作業の信頼度が受け入れる最低限界であると判断される場合の工程代替案の明細書である。同様の作業に関する資料が代替案の開発の助けとなる。

マニュファクチュアリング・エンジニアにとって工程代替案の最初は,新しい工程を計画する過程の調査における問題点を確認することである。新しいアプローチは,考案中の製品と同様の製品の生産に用いられる新工程や新材料に関する研究開発である。また同様の工業や工程から推論して,多くの技術革新がいろいろな製造作業に導入されてきた。もちろんこのためには,調査した作業と新しく開発する作業との類似点をはっきりさせなければならない。

製造工程の選択(Manufacturing process selection)
工程選択の準備段階と工程代替案開発の段階を注意深く比較すると,マニュファクチュアリング・エンジニアはコスト,品質,柔軟性(flexibility),危険性などのすべての要素を最適化する調整的な立場をとることができる。柔軟性とは単に同種類の部品を生産する能力があるということばかりでなく,違った種類の部品を生産する能力もあることや,最低のコストで増産が可能であることも意味する。経済性から投資や財務基準に対して,もっとも有利な収益をあげることを条件に生産工程を選ぶことが必要である。

工程選択の伝達
マニコファクチュアリング・エンジニアの理想的な立場は,決定を調整したりその結果をすべての範囲に伝達することである。だから工程の選択が完成すると,マニュファクチュアリング・エンジニアはその結果をプロダクション・エンジニアに伝達しなければならない 同時に次の部門にも工程の決定を通知しなければならない。

・経営者
・設備保全技術者
・生産関係
・財務関係
・作業者

この伝達は新しい工程や技術を必要とする場合にとくに重要である。現在の設備やスタッフに新技術をうまく適用するためには,前に例をあげた要素間の相互作用が必要である。

詳細工程の実行
工程が選択されその影響する各部門へ伝達されると,詳細工程の実行を開始する。全生産活動がうまくいくかどうかは詳細工程にかかっている。詳細工程の実行が進むと,マニュファクチュアリング・エンジニアは機械や設備に関する工学的知識を広範囲に活用する。

後章では,マニュファクチュアリング・エンジニアのガイダンスに有効な工学知識について詳しく説明する。これらの章の話題は手作業から管理された作業への流れである。その流れは伝統的な工作機械から,オートメーション,NC工作機械, グループ。テクノロジーなどを通じてCAMへと進展していく。最近では生産,検査,部品管理などの全生産活動を総合的にコンピュータで管理する傾向がでている.この傾向は主に金属切削の分野で発達している。このために技術者は,各工程技術には鋳造・塑性加工・溶接・組立など図表7.1.4に示したような複数の技術に関する知識が必要であることを認識しなければならない。

工程選択の準備段階と同様に詳細工程を確立するための出発点は製品設計,生産速度,設備費用,部品の目標コストなどに関する最新の情報を集めることである。詳細工程の実行の前に,図表7.1.5に示したような工程設計見積り表(process estimate sheet)を作成する。 その情報は素材から最終の製品までの各工程の材料を含めたものである。各製造作業を通じて整然とした部品の流れができるように,後続する作業についても各工程表に記入しておく。

工程表には作業者が部品を生産するための職務を果たせるように,また作業の人員や部品が適切であるように,十分な説明がされている。工程表には作業番号,作業内容の説明,機械の番号と種類,有効な作業速度,労働配分,詳細費用,設備と工具費用を記入するための欄が設けてある。大規模の作業ではそれぞれの記入事項の責任を各部門が受け持っている。すなわち,プロセス・エンジニアが作業内容や機械の選択に関する部分を記入し,プラント・エンジニアが機械の設備費用に関するデータを記入し,インダストリアル・エンジニアが各作業の直接労働時間を求めて記する。小規模な作業では,プロセス・エンジニアまたはイングストリアル・エンジニアが工程表のすべての欄を記入する。どのような場合でも,工程表が製造計画部門と製造部門の連絡の手段として使われる。

マニュファクチュアリング・エンジニアは製造工程の各段階や各部門を説明するために,図表7.1.6に示したように簡単な事項を工程表に記入する エンジニアは作業に番号を付けたり, ドリル加工のような名前を付けたりする。またエンジニアは穴というような呼び名で作業の特徴を示し,その寸法と深さで限界を決定する。この情報をもとに作業に必要な機械を決めることができる単軸ボール盤を例にとると,要求される特徴に基づいて,機械に単軸ボール盤を使うか多軸ボール盤を使うかの決定がなされる。このような情報はすべて工程表に含まている。そして目標の生産量を達成するために必要な機械の数や空間が決まれば,各工程段階の説明が完了する。もし治具や工具が必要なら工程表の用意された欄に記入し,恒久的工具か特別な工具かを考慮して費用を見積もる。これらの決定と同時にその後の作業の詳細が決定される。

複雑な形状の部品や多くの作業を必要とする部品の場合には,作業間の相互関係を表わす公差図を作成することが有効である。 工程の修正やそれに伴う時間的な遅れにとても高い費用がかる場合がある。 このような場合には公差図によって,公差が許容限界を超過していないかどうかを工程設計の段階で確認する。

機械の費用に関する情報については,以前に購入した経験や供給者の推定に基づいて記入される。 機械や設備の納入の推定は工程表には記入されないが,マニュファクチュアリング・エンジニアは納期を設定しその達成に責任をもつ 工程表の解析によってマニュファクチュアリング・エンジニアやインダストリアル・エンジニアは,手作業の明細書を開発したり詳細なコストや直接・間接の労働費用を算出することができる。

マニュファクチュアリング・エンジニアは各工程で必要な工具,型,治具についても工程表に記入する専門家が工具,型,マテリアルハンドリングなどの明細書を作る エンジニアは適切なマテリアルハンドリング設備とともに,特別な工具・ダイスの設計と製作を管理する小規模な組織ではコンサルタント契約にたよってこれの業務を行っている。

ランチ・プラン(Launch Plan:装置を稼動するまでの計画の開発)

工程表が出来上がると,これをさらに拡張して,生産計画の責任者は,実行化(装置を効率よく使うこと)あるいはランチ・プラン(Launch plan)を開発する。

ランチ・プランとは,おのおのの作業を規定しタイミングを定めるもので,詳細な工程計画のとおり実行すべきすべての作業が調和するように,生産体制のおのおのの要素を統合することである。 これは,生産技術に限られたものではなく,他の部署においても実行される またこれらは,日標費用とタイミングに合致することが不可欠である。

プラント・エンジニアリングは,建屋の設計・建設のための計画を与え,そして工場の中の個々の機械類や装置を十分な効果があがるように配置する。

運搬管理機能は,最初の作業のところへ素材を搬送する準備をしたり,完成品を出荷地点へ配送する準備をしたりする.材料の流れを決めるとともに,材料や部品を有効に搬送するための機械や装置を決めなければならな

品質管理と信頼性は,検査・分析装置の調達を促進す
るように,また品質管理の費用への影響を同定するよう
に詳細に確立される。

生産管理は,直接材料(製品になる材料)と間接材料
(設備を稼動するために必要な機械類や装置を維持する
ための材料)の調達と用途の計画を立てる 間接材料は,
潤滑剤,洗浄材料,切削工具,保全部品などである。

調達の開始
実行化と詳細な計画の監視とに併行して,担当の技術部門が書類を作成する。たとえば大規模なトランスファ・ラインが必要である場合には,この高度に洗練された特殊な工作機械を設計し,建造するために時間を費やさなければならない 調達に至る筋道は,汎用設備とは別な工場利用をする設備の稼動のためには不可欠であるマニュファクチュアリング・エンジニアは,製造設備の調達開始にあたって先頭に立たなければならないが,調達活動を必要とするすべての部署が併行して努力しなければならない。

一般に,購買課が受け持つ調達の職務は,特殊な機械類が決まるまで着手することはできない。 マニュファクチュアリング・エンジニアおよび関連のある部署は,購入するべき個々の品目について明確に記述された仕様書を作成する 標準機械あるいはカタログに記載されている機械を改修せずに使用できる場合は,仕様書は比較的簡潔になる。 しかし,普通の取引関係においてそのような手間の掛からない調達をすると,業者による競争入札の利点が無くなる。さらに多くの製造技術組織は,導入を決定した機械類の性能を満たすために,あるいはより保証された性能を付与するために,工業規格に従うことが望ましく必要不可欠なことである。

このように大抵の標準品あるいは在庫品を調達する場合でも,多くのマニュファクチュアリング・エンジニアたちは,自分たちの経験を,新しく導入する機械類や装置に移植するために,詳細を極めた仕様書を作成する特殊な工作機械の場合には,仕様書の内容としては次のものがある。

1.要求する納期
2 生産速度
3.機械の構造
4.主軸,制御装置のような項目すなわち希望するコンポーネント
5 部品を供給したり取り外したりする特殊機械などの自動化の程度濁
6.機械受け入れの基準
7.大気汚染,水質汚濁,騒音などのオ旨定された要求

すべての製品と維持装置の調達のために,経営の全部署から認可を取りつけたり,その認可と仕様書とを組織内の購入活動へ届けたりすることは,マニュファクチュアリング・エンジニアの調整者としての職務である。

適切な購入書類を発行するにあたって,マニュファクチュアリング・エンジニアは設計や工程が意図するところを,契約を取り交した設備供給者に,継続的に説明することになる 業者との日頃の密接な接触がなければ,誤解が生ずる可能性がある。製造に入るまでに機械と装置についての誤解を正しておかないと,引き渡しのときに多大な出費と遅延をもたらすことになりかねない。この意味で機械と装置の業者は,生産計画チームの一員である。

据え付けと実行化
新しい設備の据え付けと実行化は,個々の設備の実用を含めて,建屋の建設計画の進捗に責任をもつ部署が共同で分担しなければならない。電気,空気,水,油圧そして一般に共有している実用上の動力資源も同様である。機械組み上げ担当者のところで機械類と装置の詳細な設計がかたまってくると,マニュファクチュアリング・エンジニアは,設計データをプラント・エンジニアリング組織へ届ける。設備が配置され,据え付けられたときに問題が発生することを考えて,マニュファクチュアリング・エンジニアの命令の下で設備が組み立てられる 供給者か業者の工場で完成した装置は,供給者とマニュファクチュアリング・エンジニアが共同してあらかじめ決められた手順に従って検査される。一般にこの手続きには,製造した装置の部品や要素が設計意図に沿っていることを保証するために,装置を実際に運転してみることが必要である。

ここで承認され保証された機械類や装置は,生産現場に移されてレイアウトに従って据え付けられる 業者から渡される据え付け説明書には,基礎, ピット,そして実用性付与のための位置選択の要点が,明確に説明されている。

しかしながら,機械類が据え付けられて工場の環境の中で最終的な設計意図を満足する個々の部品を,設定された速度で生産するところまでが,業者の責任である。

ランチング自体は,最初の見積りから最終的な生産速度を達成するまで,段階的に計画されている 通常トータル・システムの複雑さのゆえに, ランチングは数日から数力月にわたる期間におよぶ 装置に関するランチングでは,作業者の中から特にすぐれた熟練者を養成する。必要がある このためには,しかるべき訓練プログラムが必要である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー