コラム・特集

1.1 製造工学の役割

IEハンドブック

第7部 製造工学

第1章 製造工学

1.1 製造工学の役割

背 景
製造工学(Manufacturing Engineering)は,現在でもますます総合生産システムとして発達し続けている。ツーフレ・エンジニアリング(tool engineering)は,第2次世界大戦前より知られていた。 ツール・エンジニア(tool engineer)の主な役害1は,機械の治具および取付具を設計することであった それは位置決めをしたり,基準面を決めたり,公差を決めたりするものであった それと同時にツール・エンジニアは,切削技術の開発にも責任があった。それは,機械加工作業において切削工具を使う時の速度や送りを指定することも含んでいた ツール・エンジニアリングのこのような仕事は,金属切削のみに限られていたのではなく,金属加工,組立て,その他の生産部門へも広がっていった そして製造の自動化を行うためにもこれらの専門的な技術が要求された。

その頃(1940年以前),製造計画は,ツール・エンジニア,工場の機械主任,現場監督者によってたてられていた。機械主任は,その名前が示すように,すべての機械装置に対してその計画の段階から廃棄までについて責任をもっていた。すなわち装置の選定,運用,保全,新計画の開発である。現場監督者は,製造の計画に対して限られたものであったが,重要な発言権をもっていた。これらの者,すなわちツール・エンジニア,機械主任,現場監督者は,機械操作の実行にあたって時間記録係や標準時間分析者の提供する情報を用いた。

しかし製造の実行や装置は複雑かつ精密になって,製造の計画は工学の一つの分野に発展していった製造工学の発展に伴って新しい分野ができた。原材料から最終組立て品になるまでの部品の移動につれての機械操作の情報を伝える手順表は,工程表に変わった。工程表とは,工作機械や工程のおのおののステップの詳細を記述しているものである。

それによっておのおのの工作機械や工程の装置の実際の操作状況が明確になる。ビン(bins),バレル(barrels),その他の工程内貯蔵コンテナのような簡単な運搬装置は,コンベヤ化された。そして結局は,今日の言葉でいうオートメーションとなった。個々の工作機械の制御は,手動スイッチ,手動計測,手動操作から電子制御や自動計測に進歩した。

定 義
製造工学は,比較的簡単な工学的理論の応用から,高いレベルの理論を応用した工学的分野へと進歩していった 。そこでは広い範囲の工学的技術が使われている。 ASTM(American Society for T∞ ID Bineers)は,名称をSME(Society of Manufacturing Engineers)と拡張した。

今も拡大しつつあるマニュファクチュアリング・エンジニアの役割の下般的解釈は,SMEによる『 Manufacturig Engineering Deined 』とよばれる小冊子によって作られた 1978年5月8日のSMEの役員会から定義の部分をここに引用しよう。

製造工学とは,職業的技術である一つの専門分野であり,それは工業的製品の工作法および生産法についての工業的処置を理解,適用,管理するための教育を受け,さらに経験が要求される さらに製造の実施の計画を立てること,工具,工程,機械,装置の研究,開発をすること,そして最適の費用でもって高品質の製品を作るための設備と組織を統合する能力が必要である。

製造システムの階層構造における位置づけ製造計画の過去における論議から推察し,そしてSMEの定義からマニュファクチュアリング・エンジニア(manufacturing engineer)の主な役割は,与えられた製造組織で高い品質の品物を低いコストで時間どおりに製造することである。この役割は,マニュファクチュアリング・エンジニアを重要な位置に置くことになる。つまり彼の決定は会社の利益に影響してくるだけでなく,製品の品質を作り出す会社の実行能力にも関わっているすなわち最終的には消費者とも結びついている。このためにマニュファクチュアリング・エンジニアは,製品の設計にも気を配らなけれはならない。というのは,設計や製造の最適化が,新製品開発に必要となっているからである。

この役割を効果的にするためにマニュファクチュアリング・エンジニアは,製造組織上,その地位を適当に占めなければならない。その組織は,プロダクト・エンジニアの意向で活動するマニュファクチュアリング・エンジニアは,作業実行の際のコストと利益を最適にするように,工程および装置を選定し実行する。これが,概念的生産設計を機械・装置を使う作業工程に変える方法となるのである。

マニュファクチュアリング・エンジニアの地位は,表7.1.1のようになる。 この図は生産作業からの情報の流れを表している プロダクト・エンジニアから生産情報を受け取るとマニュファクチュアリング・エンジニアは,工程内でのすべての必要なデータを判断する。この工程情報はその後,製造工学の必要な情報になる。ここでは機械および装置が確認され,必要な生産設備として機械供給者に明細が伝達される。これが調達の象限である。

供給者の解答(色々と話し合った適当な折衝の後)は機械,工具,装置として最初の設計書となる。使用法が十分にわかっているこのハードウエアは,据え付けられそして製造活動をする。

このコミュニケーションの流れは,装置を買い入れるもととなる。このコミュニケーション・ループは作業の象限へ続くそこでは,製造量が達成され,全体の計画と活動がつまくいっているかどうか作業監督をしている。このループは閉じているというのは実際の作業は,マニュファクチュアリング・プロセス・エンジニアや,プロダクト・エンジニアによって実行されるからである。

実 施

マニュファクチュアリング・エンジニアの役割は,正確な実施への製造設計をすることである。ヘンリー・フォードー世は, しばしば「もしあなたが一つの物を作ることができるなら,百万の物を作ることができる」という言葉を引き合いにだした。

これはマニュファクチュアリング・エンジエアが味わうべき労苦を極度に単純化した言葉である。それは,工場や個々の機械が稼動しているとき,コストが一定で,要求された品質のものを製造するようにすることである。

これはある分野における経験の積み重ねがマニュファクチュアリング・エンジニアによって役立たされたときに達成される。そのような経験の文章化が,最も有用である。小さな組織においても作業経験の十分な目録は,複雑さや誤りの増加を防ぐための助けとなる。作業内容の実施において生産規格を使うことは,大変よいことである。生産規格体系のスタートのポイントは,工業標準の蓄積である。多くの構成部品や原料が,特定の作業に共通に使われるように機械や装置を工夫する。

基本的情報の2番目のポイントは,実際の製造作業に存在する, あらゆる種類の構成部品と機械の性能の評価である。似かよった部品や機械の性能の主な違いというのは,コン ポーネントのほうを優先するか,コンポーネントの特徴 を優先するかということを決定する。これらのデータは, 有用な工業標準におり込まれて,製造規格体系の表とな る。大きな製造会社の多くは,有用な正式の製造および工程の標準をもっている

他の製造機能との関係
生産作業は,実際に商品を作るただ一つの作業を示さなければならない。図表7.1.2は,あらゆる製造活動における重要な機能を示している。製造工学以外の機能は,おもに品質の管理と信頼性,生産管理,財務,工業関係(インダストリアル・リレイションズ,Industrial relations),設備工学と保全性,マテリアルハンドリング,工具室,原料供給,研究室,受取りと出荷などである。典型的なコミュニケーション・ネットワークは,製造機育旨が作業に指示を与える図である。後で示すように製造工学の機能とは,技術上の機能および技術と管理の機能の間の調整者となることである。

経営工学との関係
製造工学の機能と経営工学の機能の関係は,製造作業が効果的な支援を必要とするので,親密な関係をもつこととなる。マニュファクチュアリング・エンジニアは,インダストリアル・エンジエアと特別に親密な関係をもっている。それは生産環境における人と機械の作業が,大変込みいって結びついているからである。インダストリアル・エンジニアをサポートするためにマニュファクチュアリング・エンジニアによってなされる重要な機能は新しい生産情報と,新しい生産プログラムを伝え,調整することである。そして製造に関連した情報のデータを,現在の設備や実行力に照らして解釈し,実行にうつすことである。このことはインダストリアル・エンジニアにとっては,とくに重要なことである というのは,マニュファクチュアリング・エンジニアによってなされる工程の初期選択が,最終製品のコスト見積りに反映するからである。インダストリアル・エンジニアによって作られるこの情報は,プラン開発に責任があるマニュファクチュアリング・エンジニアによってなされるのである。製造計画に従事するすべてのグループにわたっての調整者の役割に加えてマニュファクチュアリング・エンジニアは,方法改善計画や,組立てラインのラインバランスなどにおいてインダストリアル・エンジニアに支援をする。

ラインとスタッフの違い
種々の職階制組織が,製造機能のために使われている。このことは,色々な機能の職員の個性に部分的には依存し,そして個々の作業にも依存している。与えられた組織におけるラインとスタッフの間には違いがあり,スタッフ・レベルでの関係は,作業レベルでの関係とは全く異なっている。報的な基本原理は,機能の間およびラインとスタッフの間でのコミュニケーションを, トップ・マネジメントの意思決定を助けるために高めなければならないことである。例をあげるならば,マテリアルハンドリングとマテリアルハンドリングエ学の機能は,工場や部局としては別の機能としてあり,それは共同のレベィレで結ばれている。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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