コラム・特集

8.5 事故防止にかかわる直接的な活動

IEハンドブック

第6部 人間工学

第3章 安全管理

 

8.5 事故防止にかかわる直接的な活動

優先順位の決定
どのような安全計画であっても,実際的な活動として,物理的な危険をどう管理するかが求められる。これらの物理的な危険は,急に管理できるものではないため,安全管理者は,短期的,長期的な優先順位を決めて取り組む必要がある。

最も理想的な取組み優先順位方式とは,最少の人員と資金で実行可能で,最も多くの災害が防止でき,かつ災害防止による経費節減効果が最大となるような物理的有害危険を管理する方式である。これはあまりにも単純化しすぎた理想的図式である。実際には,安全管理者は,たとえ完全な情報があっても,複雑な多目的な優先川順位決定の問題に直面するからである。
たとえば,OSHAの査察のときに,監督官に違反を指摘されないようにOSHAの規準を忠実に守ることにだけ専念することもありうる。これは必ずしもまずい目標といえないわけでもない。というのは,企業の経営者は,自社の安全管理者が,OSHAの査察に対していつも合格するよう,設備をOSHA基準に十分適合するようにしてくれることをおそらく大変喜ぶにちがいないからである。ただ,このような方針の立て方は,OSHAの監督官が査察のときに最も注目するような物理的有害危険因子にのみ気をとられ勝ちになる.それらはどんな因子なのか,その種の情報源として,OSHAが年出す,違反統計資料がある。

連邦または州政府のOSHAの査察がいつあるかわからないという恐れだけでも,ある経営者たちにとっては安全面にどれだけの優先順位をつけたらよいかを考慮検討する上で有効であろう。OSHAが査察の対象とする事業所を選定する上で使っている優先規準は,それなりに情報を収集しているとわかるものである。

査察の優先順位は次のようである。

1.差し迫った危険への対処.
2.死亡または5人以上が入院するような重大事態の調査.
3.雇用者から訴えられた正当な告訴.
4.事故発生率が高い産業.
5.一般的に行われる産業監察.

上記1~ 4のカテゴリーに安全衛生の80%の監察資料が含まれているという。

したがって安全管理者としては,
(1)OSHAがやる前に自発的にさし迫った危険に対する問題発見と対策を講ずる,
(2)死亡災害や複合的な重大災害の起こる可能性の高い作業を集中的に取り上げる,
(3)従業員の安全・衛生に関する不平・不満をOSHAの窓口ではなく安全管理者のところへ届くような制度を確立する,
(4)OSHAの一般監察が行われる確率はある業態特有の災害発生率と密接に関連している。

 

他の有害因子を発見する方法は,労働者の補償を行ったときの報告システムから得られる傷害と事故データを利用することである。必要とあればデータを呼び出すシステムがあり,それによって,事故や傷害の形態別に,代表的な問題領域を知ることができるようにもなっている。安全管理者が優先順位を決めるときに,それに一致するようなものがいつでも準備されているわけではない。

以上みてきたような,OSHAの監察結果,あるいは実際に発生している事故状況,労働者に対して支払われた補償状況等の資料(図表6.8.2および図表6.8.3参照)を活用して,多角的に優先順位を設定することになる。

一般的な事故防止対策
危険は常に存在していると考えられる。なぜならば,(1)圧程,用具,機械,建物を設計する段階で作り出されるし,さらに(2)労働者が用具,機械を使用したり,工程のなかに入って作業をすれば,人間と機械の関係あるいは周囲の環境との関係で危険に曝されていることになるからである。事故を防止するための明白な解決法は,最初に危険を作り出さないようにすることであり,仮にあったとしても,設計しなおして取り除くことである。例えば,通路にふたの開いたマンホールがあったと仮定しよう。

最も一般的な防止策は,標識を建て危険を人に知らせることであり,次には,その回りを歩く人は,マンホールのも、たが開いていることに気付くように訓練された人にする。あるいは,マンホールに保護用のカバーを取り付けることである.もちろん,後者のほうが望ましい防止策である。そこには危険が存在しなくなるし,それにともなって事故が発生することもない。また,完全に自動化してしまうといったように人がいなければ,事故や傷害も起こらないことになる。

一般的に事故の90%は作業者によって,あるいは,事故の原因となるような危険に関連した不安全行動によっているといわれている。したがって結論的には,(1)不安全行動が起こらないようにすること,(2)不安全状態が除去されているかどうか,が重要なポイントといえる。 もし,この2点のどちらも行われていないときには,危険に曝されないように制限したり,許可しないような処置をとる必要がある.あるいは,労働者を物理的な保護具(機械の安全装置,安全帽,呼吸支援機械)を使用して,安全を図ることが必要である。こうした事項について,NSCは産業労働と災害防止(Accident Prevention for Industrial Operation)の中で,以下のようにまとめている。

事故にともなった傷害を効果的に防ぐための基本的な方策として一

1.機械,方法,原料,設備の構造にわたって,危険となるような要素を除去する。
2.危険の原因となる物について,囲ったり,安全装 置を施すことによって,危険を制御する.
3.危険を予知するように訓練をする。とともに作業 の安全化を図る.
4.保護具の使用を義務付ける。

上記のような基本的な方策のうち,最初の2点は,いかに安全な作業場所を設計するかにかかわっているといえる。

物理的な危険の管理
一般に,作業場所,機械,用具を設計する技術者は,人間の能力や限界に関して,僅かな知識と経験しか持ち合わせていない。そのため,設計するときに気がつかないうちに「死の落し穴」を作っている可能性がある。一方,十分に設計された機械的,電気的諸設備あるいは工程であっても,そこではエラーを起こす人間が作業をしている。そうしたなかで,安全管理者は,技術者と協力して,より安全な作業場所,機械,用具を設計することが求められている。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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