コラム・特集

8.4 事故原因の確認

IEハンドブック

第6部 人間工学

第3章 安全管理

8.4 事故原因の確認

度数率と強度率
1913年以来,国家安全会議(National Safety Council,略称NSC)が,傷害にかかわるデータを収集するのに重要な役割を果たしてきた。特に,アメリカ国内で発生した事故を,労働災害,自動車事故,家庭内事故,公共の場所における事故に分けて採っている。そして,毎年収集された事故データは,要約されて,事故報告(Accident Facts)という報告書が作られる。このNSCの報告書は,廉価で販売され入手しやすく,国内で発生している事故の概要をとらえるには最適といえる。NSCのデータのなかで,労働災害については,次のような2つの災害率が用いられている。

OSHAの「発生率」
NSCの度数率,強度率は,時間損失を伴う事故の頻度,損失日数によって求められているが,職業的な疾病が急激に増えていること,OSHAで収集され,記録されている災害データでも十分なほど,事故が大きくなってきたことなどによって,新たな考え方を導入する必要性に迫られた.そこでOSHAでは,新たな傷害,疾病の比率として「発生率」(Incidence Rate)が考え出された。

この発生率は,次のようである。

発生率(Incidence Rate)=障害および疾病件数/延実労働時間(人時)×200,000

こうした発生率は,州別,標準産業分類に基づいた産業別に求められている(図表6.8.1参照)。

1978年の平均発生率は9.2である。すなわち200,000労働時間当たりの傷害および疾病発生率が92であるということになる。 1人の労働時間は年間約2,000時間であるから, この発生率は,年間100人の常雇労働者に対して, 9件の傷害および疾病が発生していると解釈することもできる。こうして求められた発生率は,国全体でどの程度であるのか。また地域的にみるとどのようになっているのか等について知ることができる.OSHAは,この結果を有効に利用して,法制化の優先順位を決めたりしている。

 

事故記録の標準化
ANSIとNSCは,どこでも安全管理者が,事故の原因がどのようになっているか,知ることができるように,1つのシステムを開発した。そのシステムは,「労働にともなった傷害の発生と種類に関する基本的な事実の記録法」(アメリカ規格協会Z16.2)として知られている規格に準拠したものである。規格は,傷害や事故を引き起こす,「鍵となる事実」(Key facts)を見出し,傷害や事故の発生パターンが判るような1つの書式にしたがって記録することを目的にしている。鍵となる事実として,次のような項目があげられている。

(1)傷害の種類.
(2)反傷した身体部位.
(3)腸害の原因.
(4)事故の形態.
(5)危険な状態(周囲の状態).
(6)事故媒介物.
(7)不安全行動.
(8)寄与した要因.

また,鍵となる事実とともに,傷害や事故の分類についても,一定の形式を提案している.例えば,よく知られている事故の形態の分類として,激突,激突され,巻き込まれ,はさまれ,転倒,墜落,過労,滑る等々がある。NSCでは,こうしたシステムにもとづいて,データの収集あるいはデータの公表を行っている。このように,一般化されたデータの収集システムは,おのおのの企業において,常に十分に役立つとは限らない場合がある。多くの企業では,自分たちの状況に適合したシステムを展開している。ANSIの規格は,事故の原因となっているのが何であるのかをとらえるときの出発点にすぎず,それで終了したというものではない。むしろ,より現実的な修正を加えて,活用する必要があるといえる。

活用すべきデータや援助
安全管理者が活動するにあたって,あるいは,自分たちの職場の事故防止を考えるにあたって,いろいろな組織・団体から援助を受けることができる.例えば,詳細な事故データを作成する,コンサルタントサービスを受ける,事故の原因を調査する,訓練計画を立案する,視聴覚教材にもとづいた安全計画を立てる,といった個々の問題に対して,適切な援助が受けられる。そうした援助が受けられるものとして,次のようなものがある。

・専門的な学会として:American Society of Safety Engineers(ASSE), American Industrial Hygiene Association, Systems Safety Society,ACGIH.

・安全に関する刊行物として:National Safety News, Proffesional Safety(ASSE発行),Journal of Safety Research, Journal of Systems Safety Society,Journal of Occupational Accidents.

・公的な研究機関として:NIOSH

・安全に関する講座を持ち,強力に研究を進めている大学として:Michigan,North Carolina,Ohio州立大学,Texas工科大学

以上の諸機関の刊行物,論文資料集などを照会する住所などはNSCの『産業労働の災害防止手引書』に出ているし,重要な機関の住所は章末にのせたので参照してほしい。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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