コラム・特集

7.4 作業場

IEハンドブック

第6部 人間工学

第7章 手工具・機械・作業場の設計

7.4 作業場

作業を見ることは,どんな作業場の問題を考える上でも一番重要なことである。視線は,水平面から30° 以上下に,5° 以上上にならず,水平面から下に10~15°こなるように設定すべきである。本や新聞の字と同じ,あるいはさらに細かいものを見る場合には,日から作業までの距離を250~350mmにすべきである。光源の高さと方向は,コントラストとグレアに影響し,視作業にとって非常に重要である。この範囲の詳細については,2章を参照されたい。

作業対象を見るのに適当な位置を決めた後,この視野は,操作の必要度に応じてさらに限定される。作業場を整えるにあたって,以下に示す原則に基づいて行うことにより,これらの点を兼ね備えることが容易になる.これらの原則は,長時間の作業において,安全上および健康上明らかに必要な条件を集めたものである。これらの原則は,十分によく考えられており.設計の際に矛盾が生じたときは, リストのより上位にあるものが,その下のものに優先する。
作業場の設計のための原則は,次の通りである.

1.作業中,作業者は直立して前方を見る姿勢を維持できる.
2.視覚を要する作業では,必要な作業点が頭と体幹をまっすぐにして,あるいは頭を前方に少し傾けるだけで十分に見えなければならない.
3.すべての作業活動は,健康かつ安全に様々な姿勢を作業者の作業の能力を減少させることなく,とることが可育旨であるべきである.
4.作業は,作業者の意のままに,座位または立位のどちらの姿勢でも可能なようにすべきである.座ったときには,作業者は動作の変更なしに,自由に椅子の背もたれを使うことができるようにするべきである.
5.立位姿勢における体重は両足に等しくかかるべきで,フットペダルもそれに応じて設計されるべきである.
6.作業は,心臓の位置よりも高い位置で行われるべ きではない。たまに心臓の位置よりも上で力を加え ることがあるような作業も避けるべきである.心臓 の位置よりも上の高さで軽度の手作業を遂行する場 合には,上腕を休ませることが必要である.
7.休憩は,環境および情報による負荷や一連続作業 時間など,仕事において経験されるすべての負荷を 考慮して決めなければならない.
8.作業行動は,関節の運動範囲の中間点付近でなされるべきである.これは,特に,頭,体幹,上肢にあてはまる.
9.筋力が必要な場合,適当な最大筋群を使い,手足と同一直線上の方向に筋力が発揮されるべきである.
10.力が繰り返し必要なところでは,設備を調節することなしに,腕あるいは足を交代することが可能であるべきである.

どのようにしたら,座位作業と立位作業の両方とも快適な作業場を作ることができるかについては,すでに述べてきた。もし,脚空間に作業者が足を組める広さがあると都合よい。すなわち,脚空間は作業者の膝を合わせた幅よりも広くあるべきである。座っている人が座面上で動き回わることができれば,長い間座っていることから生じる膝下の圧迫を軽減することができる。そのためには,膝の両側に姿勢の変換のためのかなりのゆとりが必要である.また,長時間の座位は下肢を腫脹させる。足の動き,たとえば短時間の歩行は下肢の腫脹を防ぐことができる.座っている間に,足を伸ばしたり,足の筋肉を動かす空間があるならば,腫脹は減少するだろうが,予防することはできない。

産業用イスの多くは快適ではない.快適なイスが,作業に関連する不快さと健康上の危険を減少させるならば,それを備えるということはごく当たり前のことである。ある作業者が作業の最中に背もたれを使うことができず,そしてその仕事が1日の作業の大部分を占めるならば,イスの改善を検討すべきである。しかしながら,時々作業者が背もたれを使う必要のない機会もあるべきである。作業場の設計にあたっては,作業者をイスに固定すべきではない。

産業用イスは,上下約6インチ(150mm)以上調節可能でなくてはならない。さらに,この調節は簡単にできる必要がある。さもなければ,それは使われないだろう。もし,イスの高さが,不適当であるならば,人は,午前中は不都合な姿勢であっても作業が可能であろうが,午後には疲れきってしまうといわれている。したがって,簡単なバチェト式,または,差し込み式ロックシステムが,ねじ山式や複雑な機構よりもよいのである.5本の足でイスを支えることにより,安定性が増す。

しかし,多くの企業では,平面の台を推奨している。おそらく,調節性の次には安定性が最も重大な事項となる。イスと背もたれは,暑い気候でも汗で湿気ることなく,簡単に拭くことができる弾力のあるカバーがついているべきである。柔らかさよりも弾力が必要である。そして,イスの前縁には丸味を持たせ,腰部の湾曲に合うように回転する背もたれをつけるべきである。

ここで概説したことを基にしてイスの設計をするならば,その設計の仕方にはいろいろある。 しかし,作業や機械と切り放してイスを設計してはならない。あくまでも,イスは人の作業を助けるためにある。 もちろん,イスの標準化は可能であるが,それは機械や作業台などの検討が終わってから可能となる。そして,一つの企業で標準とされたものが,必ずしも他の企業の標準にはならない。

適合テスト
作業場の設計に際して,満足のいく状態を生み出すためには,このハンドブックの第3部と第6部の資料を用いるだけでは不十分である。新しく設計されたものは,たとえそれが幼稚なものであっても,実物模型を使って試すべきである。テストには,母集団の5~ 95%に相当する背の高い,あるいは低い,そして,やせた,あるいは太った男女を用いて,作業者の様々な動作や活動をシミュレートすべきである.

もし,機器に調節機構が必要かどうか迷っているならば,寸法の階級すべてに対して階級を上下させ,各人にどれが良いか報告させ,寸法を合わせる手続きが必要である。その結果,快く受け入れる階級は人によって異なっていることがわかる。すべての階級を同一のグラフに並べてかけば,調節が必要かどうかすぐに明ら力,こなる。もし,すべての階級のグラフに対して直線が引ければ,明らかに調節は必要ない。そうでない場合は,もっとも高い階級の最低値ともっとも低い階級の最大値との間隔が調節の量を表わす。図表6.7.5.aとbに,固定する場合と調節する場合,それぞれどのような結果をもとに決めたのかについて図示する。

もし,いくつかの寸法をテストしなければならない場合は,おのおのを独自に分けてテストした後,実物模型上に彼らが選んだすべての寸法を集め,最後に効果テストを行う。これは,作業場の別の寸法との関係が予想できない場合に,好ましい方法である。

繰り返し作業
工場で,とりわけオフイスで増えているストレスの高い,しかし一般的な作業状況に,比較的短い周期で,長時間変化のない作業がある。ストレスは,同じ筋群を持続的に反復して使う結果生じる。生理学的には,エネルギー活動にほとんど変化がない.精神的には,興味や刺激を与えるような変化はほとんどないので,仕事をするために,意思の力や作業外からくる刺激によって必要な注意力が維持される。

作業者が,機械やコンピュータ,自動的に流れる組立工程の速度に合わせて作業する非能率性は,今日広く認識されている.作業者の遂行時間における多様性は,次の通りである。もし,作業速度を規制されていない作業者のサイクルタイムの95%を上回るように設定した場合,非常に効率が下がる。可能なかぎり,作業者を機械の作業速度と独立にする方が好ましい。現在では,各作業者のそばにあるバッファーに材料を入れるようにすることが一般的になっている.短いサイクルの作業に対しては4つか5つのバッファー,そして長いサイクルの作業には1つあるいは2つのバッファー,というお、うにすることで,様々な速度に対応することができ,機械やラインに材料供給する速度に影響されずに,品質に対して注意を向けることができる。

図表6.7.6に,作業者1人の場合の作業速度の作業成果へ及ぼす規制効果を示した.部品の見逃し傾向が明らかである。これは,部品を見逃す前につかむことができる時間を増加するといくらか減少させることができた。図の下に表わしたデータは,小さなバッファーによって得られた改善効果を示している。連続作業においては,小さな作業者グループがバッファーを共有することにより,作業を先行して行い,前工程のバソファーを空にし後の工程のパッファーを満たすということができる。そのため作業者は,前後工程の作業に悪影響を及ぼすことなく,休憩や気分転換をすることができる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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