コラム・特集

7.3 機 械

IEハンドブック

第6部 人間工学

第7章 手工具・機械・作業場の設計

7.3  機 械

この節で述べる機械はポータブルのものではなく,機械の使用に際して作業者が機械あるいはその置かれた場所に近づいていかなければならないものをさす。この場合,相対的に作業者の動きが小さいが,動きの固定化はできる限り最小限にすべきである。長時間動きがとれないということは,生理学的に悪いことである.動くことを許容する機械――たとえば,オペレーターの意思で座ったり,立ったりできるような機械を設計する一―を与えることにより,作業を中断することなく一定の姿勢からの回復を容易にする。

機械と作業者との間の一般的関係に関して,もう1つ重要な問題がある.もし機械を連続稼動させる前に何回か一定の点検が必要であるならば,作業者が動けないと云うことは機械も生産的でないことを意味する。定期的に発生する材料供給や流れ作業,さらには機器の定期点検の際には,装置の繰り返し操作のため,そこにいなければならないと云うのではまずい.作業者が機械に直接材料供給するよりも,作業者が自分にあった速度でマガジンを入れ,マガジンから機械が自動的に材料供給するほうがより生産的である.これは,人間の平均材料供給時間よりも,マガジンから自動供給する方がたとえ遅くてもあてはまる。このように,流れ作業における材料供給装置やバッファーストックおよび機器の稼動中における定期点検システムの採用により,作業者は機械の作動中も自分にあったスピードで作業が可能になる。そして,作業者には直接作業よりも,機械全体に対して責任を持たせる。作業者の作業成績向上のためには,このようにすることが必要である(図表6.7.3を参照)。


機械職場
色々な作業場に関する一般的事項は,この章の次節で述べる。機械職場の計画にあたって,これらの事項が設計の中に入れられていなければならない。この節では,特に機械操作に関して概説する。

機械の使用者が,操作に際して基本的に要求されることは,見る,手を伸ばす,そして力を発揮することである。力を発揮させるにあたって,同時に重要な他の工程に手が届かない状況あるいは見ることのできない位置に配置してはならない。このような簡単な原則がしばしば見落されている.機械の作動中に作業者が背伸びをしたり,寄り掛かったり,体をねじったり,曲げたり,片足で立ったり,また,その他不安定な姿勢をするのをよく見かける。このことはあまりにも当たり前のことなので,一般に見落とされてしまう。作業者が機械を扱う際に投ずる努力と疲労は,彼らが生産物を作ることの助けになるというよりも,その妨害になるということに我々は気付いていない。

2番目に重要なことは,すでに述べたことではあるが,姿勢変換の必要性である.作業が,一定の姿勢のみで行わなければならない場合は,作業を中断する時間が必要である。作業中に座ったり,立ったりできるならば,どの姿勢においても作業者の肩の位置を作業に対して相対的に同じにすることが必要でる。そのため,快適な座位姿勢を確保するためにフットレストや必要ならば足による操作具を設置するのがよい。

設計に関して3番目に重要なことは,人間の特性に合うように機械からの必要な情報を示す表示方法と操作具とを備えた人一機械のインターフェイスを装備することである。文献に示した資料には,ハンドルのサイズ,力,いろいろな距離における数字や文字の見えやすさなどが詳細に書かれているが,次のような一般的原則に注意すべきである。

原則・1― 装備が古くなったり,きたなくなったりしても操作の範囲を逸脱することがないように設計すること――。通常,保守不足や摩耗あるいは誤使用のために,年がたつにつれて操作具を動かすのに必要な力は増加する.ダイアルの目盛や文字板は,摩滅と汚れのために文字と背景とのコントラストが減少し,読み取りにくくなる。頻繁に発揮する力は,できる限り小さくするべきで,5%ileの女性の最大値の10%以下であることが望ましい。しかし,摩擦があることは常に操作具にとって不都合なわけではない。なぜならば,あまりにも自由自在に動く操作具はかえって,正確な位置決めを困難にするからである。

ここでは生産機械によく使われている手動ハンドルとクランクの寸法を選定する際の,一般的原則を概説する。設計に関連した作業基準をよく考えるべきである.産業においては,発揮できる最大の力や最大回転速度はほとんど関係ない。また,この種の操作具を選ぶための適切な基準も関係ない.次に述べる2つの基準が最も有益である。

最大発揮力 水平面で,最も背の低い作業者の胸の高さ(最も背の高い作業者の腰の高さ)に,直径20インチ(500 mm)以内のできるだけ大きな手動ハンドルを水平に設置して使う。正確な設定 基本的には,設置されているダイアルやその他の表示盤によって正確さが決まる。すなわち,表示盤が大きければ大きいほど正確さが増す。指針と目盛の印が同じ太さならば,印の幅は重要ではない。手動ハンドルやクランクの直径の違いは,設定の正確さにはさほど影響を及ぼさないが〔直径4インチ(100 mm)以上〕,抵抗トルクや摩擦を考えて選択するべきである。手動ハンドルの直径が適切であるならば,熟練作業者は広範囲の抵抗トルクに対して,同じ正確さで設定をすることができる。

図表6.7.4に,ダイアルの直径と設定の正確さとの間の関係を示す。これらの値は,抵抗トルクが3から60インチ・ポンドで手動ハンドルの直径が4から12インチ(100-300 mm)の場合にあてはまる。

 

原則・2― 操作具は,その感触および位置によって,間違いなく確認できること一一.したがって使用者は,操作に必要な操作具をつかんだことを確認するためわざわざ,その工程から目を離す必要はなくなる。操作具は,たとえば,その工程の流れと

同じ順序になるといった具合に,制御される工程との関連において論理的配置がなされるべきである。また,操作具は,独自のかつ一貫した形状によって,各種の機能を確認できるようにすべきである。たとえば,すべての増幅用の操作具はきのこ型にし,頻繁に切り替えるスイッチのすべては節のついた円筒形にするといったようにである。一つのパネルで工程の様々な局面を操作するところでは,それぞれの局面を他と明確に分離し,区分けすべきである。たとえば,材料を熱間鍛造機に材料供給するための操作具のグループは,加熱工程やドロップハンマーなどの操作具のグループと区別すべきである。

原則03― 表示される情報と同様に,操作具も対象機器の動作と同じ動きをするよう設計すること一―.操作具を右に動かして,運動する機構を左に動かしてはならない。同時に,可能な限り広く普及しているステレオタイプを採用すべきである.赤い表示燈は警告を表わし,緑の表示燈は安全な状態を表わす。一般に時計方向へのノプの回転は,制御対象のレベルや強さの増加を意味する。しかしながら,注意する必要がある。アメリカ合衆国では,電気スイッチを下方に動かすことは電流のオフを意味する。一方,イギリスでは装置のオンを意味する。

操作を確認するため,注意をひき,日につきやすいようにシンボルを用いることがますます一般的になっている。 しかしながら,残念なことにいくつかの調査によると,広く使われているシンボルが必ずしも十分に理解されていない。

オランダの鉄道で用いられているシンボルに関する研究によると,出口を示すサインの意味が多くの人に知られていないという興味ある結果が得られた。したがって,シンボルを使用する場合には,一地域で使われている標準よりも,できるだけ国際的な標準を使うことが重要である。

我々は,作業者を機械に関係する唯―の人と考えがちである。機械が,組み立てられ,運ばれ,補修維持され,そして,しばしば生産変更のために再整備されるということを忘れがちである.これらの仕事に従事する人員の必要条件を決めて用意しておかなければならない。小さなプレス機械は,ベッドの高さほどに低いので工具を設置するためにうずくまったり,また,ひざまづかなければならない。

イギリスで,プレスに関して人間工学上の別の問題が生じている。それは,定期的にプレスのクラッチとブレーキの視覚検査をしなければならないという法令に関連した問題である.溶接でできた鉄製フレームの片側の大きな穴にクランクシャフトを差し込んだ構造を導入した結果,ベアリングキャップといっしょに一部のベアリングを取り除くことよりも,ユニットの検査に必要な分解手順のほうが長くなった。整備工は,重要な部分の視覚検査をしないで,作動中の部品の音と観察により合格にしていたという例がいくつか明らかになった。

補助作業者の必要条件を規定するにあたって,作業分析をする必要がある.力を発揮する個所,正確な動作が必要な個所,感覚器官を用いて情報を得る個所をすべて明示しなければならない。そして,作業姿勢を評価し,物を持っている時間と頻度を見積らなければならない.作業の作業者の負担は,この章他の個所にある手引きを使って評価すべきである。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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