コラム・特集

7.2 手工具

IEハンドブック

第6部 人間工学

第7章 手工具・機械・作業場の設計

7.2 手工具

手工具は,動力のついた工具と単に作業者の力を伝えるだけの工具とに分けられるが,最初に両タイプの共通の面について考えてみる。

重 量
はつり作業に用いられる大きなハンドグラインダーのような特定の例を除いて,工具の使用範囲は重さにより限定される.肩と腕の筋肉は,最大到達域の3/4では1kgのものすら数分間以上は支えていることができず,その動作を1日のうちに何回も繰り返すことなどはまったく不可有しである。

図表6.7.1に,設計の手引きとなる値を示す。まず最初に設計にあたって考えるべきことは,軽いことである。もし作業条件が許されるならば,重い工具には支えが必要である。重い工具は,いかなる速度であっても正確に保持することは不可能であり,疲労によリパフォーマンスが低下する。

握りとハンドル
エ具本体を握ったり押したりする部分の直径は,他の動作を必要とする部分よりも大きくなくてはならない。もし,工具がハンマーのように使用するものであるならば,握りの周りを巻くことが必要である。握りの直径は男性および女性の使用も考慮し,約1 1/4インチ(30ミリ)が好ましく,それを超えるべきではない。これは,女性の手の大きさの下限に相当する。

工具を握っている作業姿勢は,手と腕の軸が水平から偏位することがなく,手がハンドルにピッタリくるように,また,それが握られるような位置にハンドルをおかなければならない。力を必要としたり,手首を曲げなければならないようなグリップは,使用者の手首にけんじょう炎を起こす恐れがあるので不適当である。

振 頓
手工具の使用中に,微調整や熟練を要する動作がときどき発生するならば,重量や操作に必要な力を減らすことが必要である。強い筋肉活動を中断するとその直後に,細かい調節動作をしようとする筋肉の動きによって振顔が起り,調節はうまくできなくなる。同様に,なめらかな動きの中の変化を認知する能カーーたとえば,家具のやすり掛けや引き出しのスライドがあつているかどうかのテストーーも,重労働の後では感受性がおちる。

作業者が力を加えて使用する工具
他の機械類と同様,手工具に対する力は手工具の機能をできるだけ効率的に引き出せるように伝達すべきである。また,その機能以外に使う力は最小限に減らすべきである。従って,穴あけ器やグリップ,びょう打ち器は,作動位置に戻るためのバネや補助具をつけるべきである。また,これらは操作に際して余分な力が必要となるような堅さがあってはならない.余分な力が必要なところは,工具や技術が不適切であり,再設計の必要がある。力は生体力学的に最も適した姿勢で作業者によって加えられるべきであり,広い圧迫面を通して手から伝えられなければならない。

もし両手で力を加えるならば,胸の位置において両手で力をカロえると最も大きい力が得られる。いかなる場合でも,腕を体から離して力を加えることはバランスのとれないモーメントを生じ,加える力を減少させるのと同時に支えるために余分な筋力を必要とする。ペンチのように片手で握ると,図表6.7.2に示すような最大値を得ることができるが,頻回の反復には適さない。もし生産上そのような動作を必要とするならば,動力工具を導入すべきである。

動カエ具
動力工具において非常に重要なことは,手に伝わる振動を最小限にすることである。そうでないと,さらされた手の指は蒼白になって,指先への血液の循環が悪くなり,そして次第に悪化する.この病気は,一般に自ろう病といわれており,この初期の段階を過ぎると回復不可能となる。

さらに,工具の使用中に押し続けなければならないような引き金や押しボタンを使わないことも重要である.指を動かす筋肉は比較的小さく,疲労しやすいので,特続的な活動をさせると痛みやけいれんを生じる。さらに加えて,指への血液の供給を制限することは,健康上危険である。ハンドルにそって手のひらで締めつけるように付けたレバーは,ねじリグリップや2段階スイッチと同様好ましい処置である。


動力工具は,通常手工具の中で最も重いものであり,それを1日中長時間支えて持ち続けると疲労する。したがって,動力工具は別個に支えるようにすべきである。

これが不可能なところでは,負荷の一部を手から肩に移すように,吊り下げることができるような形態を研究すべきである。重い工具を体に近づければ近づけるほど,腕で支える重さは小さくなる。また,肘の曲がりが小さければ小さいほど,作業者は著しい不快感なしに支えることができる.腕の位置をまっすぐかつ垂直に維持するために,たとえば軽いサンダーの使用時のハンドグラインダーの位置は,作業台の高さよりも低くすることが好ましい。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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