コラム・特集

5.1 ストレスの特性

IEハンドブック

第6部 人間工学


第5章 職業上のストレス

この章の目的は,現場のIE技術者に職務設計や生産性,労働生活の質などに重大な影響を及ぼし得る職業性のストレス領域について紹介することにある。特にこの章で論じているのは,(1)ストレスの特性とそれに関する要素,(2)ストレスの測定方法,(3)職業に起因するストレスの原因,そしてに(4)ストレスのための施策などである。

5.1 ストレスの特性

議論のあるところだが,ストレスについてのセリエの視点は文献に最も頻繁に引用されている.セリエによれば,個体におけるストレスの存在は,例えば,アドレナリン分泌の増加,糖の血中への放出,その他,関連した生理作用等のように,しごく一般化された生理的な反応様式から推測できる.そして,それは,薬物,恐怖,仕事の多様さなど広く多彩な物事や状況によって引き起こされるのである。

こういったストレスの概念化は,さまざまな病気,特に作業に対して一層の努力を要求される分野での衰弱によってもたらされる心身症においてその発症の基礎を提供しているのである。セリエは,このような疾患を「適応の病気」と述べている。というのは,それらは,生体反応の誘因となる物事や状況の直接作用ではなく,生体が適応反応に失敗した結果だからである。このような状況は,ストレス反応が頻繁に繰り返されることによりおそらく助長されるであろう。このような反応がしだいに増強されるのは悪いことではない。事実それらは,生体機能の総合的な能力の本質だからである。しかしながら,このような反応の誘発は,生体の防御機構の強力な働きが不適当となるストレスにおいて,しばしば起こる(たとえば,ホワィトカラーの作業に見受けられる)。このような場合,特にこの誘発過程が慢性となるなら,これらの生体反応は,生体の消耗をまず増加させるであろう。

セリエのストレスの概念化は,図表6.5.1に図示されている。その最も根本的な特徴は,それが,快・不快に関係なく,ストレスによって引き起こされた機能の再調整と適応に対する必要性の強さに関係するのである。この視点においては,ストレスの生理機構に対する影響しか扱っていない。そして生理上の反応は,個体の感情状態に依存しないと仮定している。さらに,この視点で重大なことは,ある程度のス トレスは必ず常に存在するということである。

強調すべき点を一般的なストレスの概念から特に職業性ストレスに移す際,作業者の生体機能の失調から再調整への要求は,労働もしくは職務への要求と平行するものと考えられる。その類似をさらに一歩進めれば,仕事に関する要求を快適か,不快かによって区別しても,作業者の生理的なストレス反応という点では違いがないであろうと思われる。最小のストレスレベルが観念的には,作業者に賦課された最も「望むべき」要求の程度と一致するであろう,すなわち,それが,作業者の健康状態に最も害が少なく,同時に最良の作業生産性と作業者の満足との両方につながる要求レベルなのである。しかしながら,同時にこのような最良の生理反応,生産性,作業者の満足へとつながる要求レベルを期待するのは無理のようである。現実的には,これらの要因の間で何らかの調整が必要であり,その結果は,図表6.5.1の曲線にそったある一点に一致するであろう。しかしながらその特別なレベルの,大部分は以下に述べる個人的要素に存するであろう。

1.遺伝的素質,それはストレスに対する個体の反応,およびその結果として引き起こされる潜在的な疾病に影響を与える.
2.初期の社会体験,これは,人格形成に重大な影響を与え,さらにストレスに対する感覚や反応に影響を与える.
3.生活歴と教養に関する要素,これらは,結局個人

がいかにストレスに対する対処方法を会得するかによるものである。これらの個人的要素に関する知識を活用することは,作業者を作業に適応させるのに役立つし,主観的ではあるが,ストレス曲線(図表6.5.1参照)に基づいて作業者が生理的反応や作業の生産性および満足感を最適にすることができる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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