コラム・特集

4.6.身体的不快の軽減と予防

IEハンドブック

第6部 人間工学

第4章 作業に伴う身体的不快

4.6.身体的不快の軽減と予防

身体的不快の軽減や予防を考えるに際しては,次の2点を十分に考慮する必要がある すなわち,身体的不快には多岐にわたる要因がからんでいることと,それでいながらその詳細は重要なものに関しても不詳の点が多いということ。

身体的不快を予防するためには,その原因が十分に判っているわけではないので,せいぜい不自然な姿勢をなくそうというような,すでに知られていることに着目することになる。先に述べた予防に大きく関係する2つの特徴を考えれば明らかなように,身体的不快の予防を考える際には,最初から細かい点に着目したりしないで,まずは広くとらえる必要がある。

ヴァン・ウェリーは,フィリップス社の作業における筋・骨格系の疾病に関連する設計上の諸因子を分析して,身体的不快の予防に関する1つの知見を明らかにしている。
彼はまず,筋・骨格系の疾病にもとづく高い欠勤率に目をつけた 50人の患者を選び出し慎重に診断を下した。一方で,作業場所の設計上の諸因子と筋・骨格系の症状との間に考えられるすべての関連を仮定して列挙した。ついで,先に選んだ50人の患者が働いていた作業場所を実際に訪れて,その作業場所の人間工学的条件を調査じ言己録した。その上で,患者の症状と作業場所に実在する設計上の諸因子とを比較検討してみると,最初に仮に考えた作業場所の設計上の諸因子と筋。骨格系の症状との関連は,39人の患者については実際に関連があることが確認され,8人については確認されなかった その他の3人の作業場所については,人間工学的欠陥は見出されなかった この結果にもとづいて,身体的不快を予防するには,次の3点が重要であることが示唆された。

・より良い機器を設計する
・新人に対してより良い説明と訓練を実施する
・試用期間をおいて耐性の低い人を見出す。

ルオパジェルヴィーらが,キーパンチャーについて実施した実験的研究は,上言己のヴァン・ウェリーの示唆を支持する結果となっている。

この研究には60人のキーパンチャーについて,実験の前後で彼女たちの頸部と上肢に関する症状を分析した_実験内容は,デスク,いすの調整,原稿台の設置,休憩の導入などである 実験開始から半年後に実施した第2回目の検査までに,多くの身体的不快の兆候が消失していた。長期間にわたる効果としては,例のホーソン効果を上回る生体に対する影響が指摘された これらの影響は,まさに作業と作業場所とに関する小規模の修正がもたらしたものである。

身体的不快の予防に関しては,筋・骨格系の不調と不快に関して収集した作業者の経験にもとづいて,さらに2つの観点を挙げることができる 第1は,初期診断を軽視しないことであろう それも,個々人の臨床的診断と作業場所に関する診断との両方についてである 第2は,体力と労働負担に対する個人の耐性とは関連がありそうなことである。作業場所と作業方法を固定してしまうと,体力を衰退させる。

ここで,身体的不快の予防と軽減に関する重要な観点を整理しておく。

1.作業場所のレイアウトと人間の形態を考慮した設計とが,身体的不快の予防に最も重要である

2.身体的強度の強い作業,不自然な姿勢,固定した作業方法などは,身体的不快をもたらすので,再設
計して修正する必要がある

3.環境要因は,それぞれの要因が個々に持っている好ましくない影響と共に,身体的不快をもたらす。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー