コラム・特集

4.4 身体的不快と生産性の阻害

IEハンドブック

第6部 人間工学

第4章 作業に伴う身体的不快

4.4 身体的不快と生産性の阻害

身体の不快は,ある器官の有効な仕事のためとか,余暇活動のためではなくて,不必要な働きのために使われていることのきさしであると考えることができる 例えば,もしある仕事を不自然な姿勢でしたとすると,その姿勢保持のために使われる循環機能や筋力は,有効な仕事をするためには役に立っていないのである そればかりではなく,不自然な姿勢がもたらす疲労は,回復を妨げるだけではなく,余暇時間を楽しみにくくするのである。

身体の不快は,その他の面にも影響する。例えば,身体エネルギーを他の活動のために活用することを妨げたりもする。すなわち,あまり適当ではない作業条件の下で,供給されるエネルギーの重要な部分が注意や覚醒のために使われるならば,仕事に対して創造的に行動できる部分は少なくなってしまう。そこで,身体的不快が生産性をどのように阻害するかについて研究するには,不自然な姿勢の影響および静的筋作業の影響を調べるという2つの考え方がある。

姿勢に関する不快
ゼーマンは,不自然な姿勢がエネルギー消費の総量と作業成果とに与える影響について幅広く研究している。彼は,総エネルギー消費量を,基礎消費量(安静時にも消費されるエネルギー量),不自然な姿勢を保持するために消費されるエネルギー量,仕事に有効に消費される。エネルギー量の3つに分けて考えた 図表6.4.1は, 2つの作業における有効なエネルギーについて比較したものである。すなわち,不自然な姿勢を保持するために多くのエネルギーを消費してしまい,仕事に有効なエネルギーとして使える部分が減少してしまうことを説明している。

実際問題としては,異なるエネルギー消費の割合をはっきりと弁別することは容易ではない。仕事と姿勢とは密接に関連しているからである 総エネルギー消費量は,不自然な姿勢でなされる仕事に費やされているよりも高く示されることが多いか,作業者の疲労がもっとはっきり表われることが多い。

エネルギー消費の測定に際して一緒に用いられるりら心拍数の測定は,不自然な姿勢の保持に使われるエネルギーの損失を推定するのに有効である 次の2つの基準,すなわち,(1)心拍数増加,(2)エネルギー消費量と心拍数増加との関係が,作業の態様を推定するのに有効である。これらの理論的考察は,実際に証明することができる。ショルツは熔接の際に生ずるノロの除去作業におけるエネルギー消費量を測定した。 彼は,同じようにきつい仕事を2つの姿勢で実行させた すなわち,除去するノロの位置の高さを変えて, 1つは普通に立ってできる位置とし,もう1つは腰をかがめないとできない位置とした。 課した作業速度その他の条件は全く同一である その結果,楽な姿勢でする場合に比べてつらい姿勢ですると,25~ 34%ものエネルギーが余分に消費されることが判った 他にも同様の文献はたくさんあるが,それらを要約すると次のようになる。

とりたてて問題とは見えないような場合でも,消費されるエネルギーの1/4は不自然な姿勢保持のために使われている。また,きつい仕事を不自然な姿勢で行う場合は,それを楽な姿勢で行う場合にくらべて,消費エネルギーは2倍にも達することがある。これらのことは,人が,45kgの体幹部を動かしたり,ある位置に保持するのに要するエネルギーの大きさを考えてみれば,決して驚くほどの結論ではないのである。

 

静的筋作業
静的筋作業については,すでに前の章で述べてある通りである。静的筋作業による不快は,筋作業の限界を伴
うものである。苦痛の度合いは,静的作業の最大持続時間に対する割合と直線的な関係にある。

静的筋作業による苦痛は,その人が作業を中断したくなるほど,非常に厳しいものである もしその苦痛が激しければ,すぐには回復しない疲労をもたらすことになる また繰り返し反復する静的筋作業も,持続的な静的筋作業も,どちらも筋肉の痛みと剛直をひき起こすものである。前の章で述べた通り,強度の強い動的筋作業もまた静的(無酸素性)な成分をもっている どの程度まで,静的筋作業を課してもよいか,という点については未だ明快な解答は出ていない 耐えられる静的筋作業の総量は,仕事の管理方式,休憩の回数,その他で変わるからである。しかし,労働生理学では,一応のガイドラインが示されている。すなわち,連続する静的筋作業において,
使用される筋力は最大筋力の10~ 15%を絶対に超えてはならず5~ 10%以下に設定したほうが良い,としている。

なお,補足的に,一連続作業を短くして休憩を多くすること,および作業強度を変化させることが望ましい,としている。疲労してやむを得ず休憩するよりは,早めに休憩するほう力出まるかに良い回復をもたらすという,古くから言われていることの意義が最近改めて確認されている。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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