コラム・特集

4.3 不調と破綻

IEハンドブック

第6部 人間工学


第4章 作業に伴う身体的不快

4.3 不調と破綻

身体的不快がやがて疾病またはある種の不調に至るかどうかは,様々の要因による。その意味において,心理学的な見方が非常に重要である。加えて,静的作業や不自然な姿勢などの影響の受け方には個人差がある。一般的に,不調をもたらす要因にさらされる期間が長いほとまた強くさらされるほど,疾病や不調が発生する可能性が一層高まるといえる。

頸肩部の疾病
頸肩腕症候群とよばれる頸と肩の疾病は,身体的不快に関連した疾病の1つである。日本のある研究は,1970年から1971年の1年間に,600万人の作業者のうちから1万件もこの疾病が発見されたと報告している。同じ研究で,生産ラインの作業者の21%が, この不快に関連した疲労を経験しているのに対し,販売員は6%,管理者は4%しかこうした疲労を経験していないことが明らかとなった。

前述の通り,頸部の緊張症候は調査対象の約半分に見出されている。この頸と肩の疾患には,2つの特徴がある。1つは,この疾患は,手作業を行う作業者にも一般の人にも広く共通していることである。もう1つは,頸と肩の不調は,病名を特定したり,診断することが容易ではないということである。したがって,疾病統計が必ずしも真の状況を説明しているものではないことに,注意しなければならない。

腰 痛
腰痛もよくある身体の不調の1つであるが,それでいてその原因は未だに明らかにはなっていない。また,腰痛や腰部の不快が,腰背部の様々の疾病のきさしであるかが問題になるが,腰痛は少なくとも腰背部のある種の疾病のきさしである。

腰痛と職業上の様々の要因との関係に関する知見を要約すると次のようになる。すなわち,両者の関係を,腰背部の障害を理由とする休業期間でみると,ある種の仕事では,休業期間が他より長くなっていることが判るある種の仕事とは,肉体的強度の大きい仕事,一定の姿勢を強いられる仕事,腰をかがめないとできない仕事,背中に急激な負担がかかる仕事,物を持ち上げる仕事,などである。仕事のこういう特徴は,明らかに身体的不快の発生に関係をもっている。

精神身体医学的不調
スウェーデンの社会心理学者たちは,身体の不調に関しては心理学的および社会心理学的な観点が重要であることを強調している。すなわち,ボリンダーとオールストレムは,ある職場で調査を実施して,社会心理学的および身体的諸因子と精神身体医学的不快は,明らかな関係があり,それは身体的不快というかたちをよくとると指摘している。

職業性の特徴的な状況やある種の疾病をひきおこすその他の関連した不快に関係する例としては,立位作業,静脈りゅうを生じるような作業,あるいは長時間の座位作業,腰背部の障害をもたらすような作業などがある。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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