コラム・特集

4.2 身体的不快の表われかた,部位,要因

IEハンドブック

第6部 人間工学


第4章 作業に伴う身体的不快

4.2 身体的不快の表われかた,部位,要因

身体的不快の主な兆候は,痛みである。 痛みはいろいろな形で表われる。漠然とした感じ,という場合もあり,何もできなくなる程の激しい痛み,という場合もあって,その表われ方はいろいろである。また,身体的不快は,しびれるような痛み,ちくちくするような痛み,などのなんらかの異常な感覚としてとらえることもできる。

身体的不快の表われ方には, 2つの特徴がある。

第1は,各種の手作業においては,慢性的ではあるがさして強くはない軽い痛みを伴うことがよくあることである。作業者は,そういう痛みがあっても,“ 当たり前” と自分で考えて,自発的のそれを報告したりはしないことが多い。 しかしながら,そうした軽い痛みでも,身体の安寧には影響するし,あとになって病理学的結果をもたらすこともある。

第2の特徴は,年配者と若年者とでは,痛みや不快の表われ方が異なることである 社会医学的調査では,年配の作業者は,検診において客観的に発見される症状に比べて主観的な訴えのほうが少ないが,若年者では,主観的訴えのほうが多い。

身体的不快が発生する部位は,どんな働き方をしているか,すなわち仕事に関係がある しかし,仕事がごく普通のもの,例えば,座ったきりで動けないような仕事,概して不自然な姿勢しかとれないような仕事の場合には,主に腰背部と頸肩部に発生する。

筋肉を触診して,430人の作業者の身体的不快の特性を扱ったある調査では,作業者が共通して筋肉が硬くて痛みを持っていることを明らかにしている。さらに,それらの筋肉は,作業者が仕事で主に使う部位であることを見出した。したがって,たとえ仕事によるものであるとはっきり判るような職業病にまでは至っていないとしても,身体的不快はやはり仕事に関連しているものなのである。

腰背部に関するある疫学的調査によれば,人口の約80%は,活発に社会的活動を営んでいる期間中に,耐えがたい腰痛を経験するという.腰痛もしくは腰の異常は,すべての先進工業国における欠勤率の主要な原因の1つである 腰痛の原因としては多くの仕事上の要因が考えられているが,実際にはどれ一つとして未だ明確な関連性は証明されていない。そうした中で,身体的不快を軽減させることが,腰痛の予防に有効であることを明らかにしている研究もある。

身体的不快は,頸肩部にもよく表われる.例えば,生産ラインの包装工,金属工場における手作業従事者,店員という3職種378人の作業者に関する最近の調査によれば,いくつかある訴えの中で頸部の緊張を訴えた者の割合は,それぞれ38%,58%,54%であった。 この調査では頸部の緊張というものは,種々の異なる職業に共通していると結論を下している。

身体的不快の一次的な原因は,日常生活において必ずしも簡単には見出せるものではない。心理的,社会的なさまざまの要因が複雑にからみ合って,その全体の結果として発生しているからである。したがって,身体的不快の原因について論じるよりは,関連する要因について考えるほうがより実際的と考えられる。

この身体的不快に関連する要因としては,次のようなものが考えられている。

・静的筋作業.
・作業者の形態的側面を配慮していない設計
・作業場所で作業者を固定させるような作業方法
・不自然な姿勢.
・全身振動.
・その他の環境要因.

静的筋作業が身体的不快をもたらすことはよく知られている。しかし,人体の構造は筋肉とは異なり,静的な荷重には耐えられないようになっている。例えば,靭帯にしろ関節面にしろ,機能を良くするためには,動きや変化が必要なのである。 同様のことは,脊椎板や血管などについてもいえ、作業者の形態に対する配慮が十分でないと,手足の動きを封じる,適切な作業域を得られない,大部分の人の寸法に合わない,不自然な姿勢を強制する,負担の大きい動きをさせる,などの現象が発生する。これらの現象は,すべて身体的不快をもたらすものである。全身振動によってもやはり身体的不快が起きるが,その振動の周波数帯域によって起き方が異なる.すなわち,周波数が異なると,身体の異なる部位に身体的不快が起きる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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