コラム・特集

3.6 動的および静的収縮の複合作業

IEハンドブック
第6部 人間工学

第3章 作業・休憩計画の生理学的基礎

 

3.6動作および静的収縮の複合作業

産業労働では動的および静的収縮が組み合わされたり,半動的な収縮による作業がきわめて一般的である。ゆっくりした反復的な収縮を小さな筋群が行う作業がある。

たとえば包装や手動制御のときの前腕や,ペダルによる微細な調節におけるリト腹の筋などである.反復的収縮ではV02は大きく増加しなくても,局所的疲労が急速に生じる。そのような作業ではさらに,姿勢筋の静的収縮が要求される.ふつう,生理反応(VE, BP,HR)は静的収縮筋に対するものが,動的収縮に対する反応に重なり,疲労は静的部分の強度に比例して生じる。しかし動的,静的両成分が,大きな筋群によりなされるときには,静的収縮が動的収縮より大きな影響を及ぼす程度は,収縮強度とともに収縮の性質によっても決められる。

動的成分が25km/hrの歩行で,静的成分は保持(肘90° ),引っぱり,あるいは押しを59と235N(6~24kg)の範囲で行うという作業についてVo2とHRが測定された。V02とHRの余分な負担として,複合作業におけるコストと,動的,静的成分が別々に行われたときのコストの和との差が用いられた。保持(運搬)においては余分なコストはみられなかったが,押し作業では,静的成分の強度に応じて50%から100%の余分なコストがつねにみられた。引張り作業では235N(24kg)に対するときのみ,余分なコスト(50%)がかかることがわかった。

持上げ作業
動的・静的筋収縮が複合した作業のうちで持上げ作業(リフティング)は産業労働でもっともありふれたものである。リフティングは筋骨格系の障害,特に腰部の障害の主要因とされて大いに注目されてきた。等尺性成分は,主に背の伸筋によるものであるが,重要と考えられリフティング開始時にとられる姿勢をほぼ静的なものとして扱うことができる。このような扱いは,重い(最大または最大に近い)物を1回持ち上げる場合には実態に近し、最大下の重量物を反復して持ち上げる作業は,動的作業として扱える。事実,軽い物から重い物まで(6から36kg)を,床から腰の高さまで,速さを増してVo2,maXにまで至ったリフティングによって次のことがわかった。(1)軽量物を高頻度に持ち上げる作業の限界は循環系によって決まる。曖い重量物を低頻度で持ち上げるときの限界は前腕(把握)筋の等尺性疲労によって決まる。

床面からの持上げ作業
床面から1m程度までの高さに持ち上げるときの静的作業は,主として腰背部の筋の等尺性張力とトルクとに基づいて考える.背部伸筋のMVCあるいは90° での最大持上げ力(MLS,図表6.3.11)をそのような検討に使うことができ,実際に用いられた。

リフティングを動的作業として扱う際には,頻度Vo2,リフティング独自のVo2,maXが基礎となる 産業労働でみられそうな重量と頻度についてのV02,maXは,図表636に示した腕と脚の組み合わせ作業でのVo2,maXのおよそ085である。

図表6.3.13に,0.50Vo2,maX以下となり,したがって特別な休息配分をしないですむことが期待される強度での, リフティング重量と頻度との関係が示してある。

0.70MLS以上の重量物を反復して持ち上げることも望ましくない。ヨーロッパの研究者によると,女性のMLSと反復頻度は男性の7割であり(図表6.3.13),アメリカの男性についての値(図表6.3.11)の4割である。作業者に長時間作業が可能と思われる重量を選ばせる,精神物IP学的方法でも生理学的結果と同様になる22.実験室実験によると,毎分3ないし6回のリフティングでは20から22kgの重量を好み,毎分9から12回では約15 kgを選択した。主観的に選んだこれらの重量のリフティングに対する’Vo2は,推定Vo2,maXの035であった。また,持ち上げた総重量に対するVo2から判定すると, リフティングの効率は,重量が増加するほど,そしてリフティング頻度が減るほど急速に良くなった。ただしある範囲までである。0.35V02,maXから0.50Vo2,maXでのリフティング効率は,男では15kg,女ではおそらく10kgを超えると改善しない。

高い位置での持上げ作業
およそ手の高さからの反復持上げ作業についての生理的なデータはまだ十分にはない。床からの持ち上げに比べると,腰回りのトルクの減少や体幹の運動範囲が小さくなることから,力学的負担や代謝の効率がぐっと改善される。といってMLSが大きいわけではない。実際には背筋や脚筋の関与が少なくなりMLSは小さくなる(図表6.3.11の45° MLS)。肩より上に持ち上げるときには生体力学的負担が大きくなる。背部の筋に対する姿勢維持のための活動の必要が変わり,肩と肘の伸筋がもっとも活動を高める。一般に肩ないし腕の高さからのMLSは,床からのリフティングの力の0.6から0.8である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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