コラム・特集

3.4 高温環境

IEハンドブック

第6部 人間工学


第3章 作業・休憩計画の生理学的基礎

 

3.4 高温環境

熱ストレス
熱ストレスの原因は,気温(Ta),湿度,そして労働現場に多い輻謝熱(Tr)である.湿度すなわち水蒸気圧は,発汗による放熱に影響する。気温と平均輻射温が身体表面温より低ければ,熱が周囲に放散されるし,高ければ,外部から身体に熱が加えられる。

生理的負担
高温環境における生体負担は,心拍数の増加と体温上昇によって判断できる。異常な環境条件に対しては,放熱のために皮膚血流が増加するという循環系の反応が最初に表われる.効率20%以下の作業では,主な熱負担は代謝(M)によって生じる。外気温によって,輻射熱や定流熱(R+C)が加わったり,代謝熱が放散したりする。産熱(M)と放熱(R+C)との合計が純熱負荷となり,それは放熱のために皮膚に送られ,心拍数の増加として表われる。R+Cが不適当か熱負荷の原因となる場合には汗の蒸発による冷却が必要となる。

熱交換の経路と循環系の反応が適切であれば,深部体温(Tc)は作業に特定なレベルで安定する。深部体温は,直腸,外耳道あるいは口腔で測定される。正常な口腔温は他の2つより02から0.3° C低い。安静時に約37° CあるTcは作業強度に応じて新たなレベルにまで上昇する外気温10° Cから50° Cでの作業で予測される上昇は25°C/1fV02,maXである。前に述べたように心拍数もfVo2,maxに対応したレベルに落ち着くのであるたそうなるための外気温の範囲は狭い。図表6.3.9に,fV02,maXに対して予測されるHRとTcが示してある。

予測範囲
環境温が25° C以上になると,HRと皮膚血流量が増加する。皮膚表面からの放熱が適度であればTcは作業に応じたレベルで維持される。鍛練され高温順化した人は,初心者ほどHRが上昇しないが,これは内臓器官から皮膚への血液再配分能力が優れているためである。しかし熱負担の評価にあたっては,図表6.3.10に示したように,HRが気温あるいは湿度に比例して増加するものとしておくのがよい。


図表は,気温25~ 50° Cと気温上昇につれて低下する蒸気圧(Pa)のある範囲内で,0.3Vo2,maXの作業強度におけるHRの予想値を示している。作業強度に対応するレベルを超えてHRが増加するのは,その強度に見合うTcを維持するためであると解される(図表6.3.9)。予測可能なこの範囲外では,Tcは強度レベルより上で平衡するかもしれないし,平衡せずに上昇しつづけるかもしれない.Taが38° Cから44° Cの範囲では,HR上昇率は大である(2拍/分×torr)が,強度に応じたTcは維持可能である.放射熱が加わると,この予測可能範囲は狭まってしまう。

 

高温環境下での作業・休憩計画

熱負担による心拍数増加によって循環系の余裕CR―HR max)が少なくなる。したがって高温によるHR増をfVo2,maXの増加に換算して作業・休憩計画に用いることができる。すなわち,気温による増加を作業強度に応じた心拍数に加え,その結果から等価な負担であるfVo2,maXを求められる。fVo2,maXで表わされる生体負担は,作業・休憩計画の基礎となる以上の方法を実験室で試してみたところ,Tcを予測値に維持する上で有効であった。以下の例は,この方法の使用例である。鍛造作業の0.02は13L/min(65 kca1/min,図表6.3.4)である。作業者の年齢は20代男性である。図表6.3.6から作業強度は0.41Vo2,maXと推定される(1.3/3.16)。現場の環境はTa=50° C,Pa=10torrである。

したがってHRは作業強度に応じたレベルより25拍/min高いことが予想できる(図表6.3.10).図表6.3.7にみる勾配は, 1拍/分当たり0.74Vo2,maXである。 そこで25拍/分の上昇と等価なfVo2,maXの増加は0.19Vo2,maXである。したがって0.41Vo2,maXの作業強度は0.60Vo2,maX(041+0.19)にあたると考えられる。(5)および(n式から,作業期間27分と休息4分とが安全な計画となろう。

20代の平均的女性については次のようになる。13L /minのVo2は0.61Vo2,maX(図表6.3.6)である。高温による25拍/分のHR上昇は0.21Vo2,maXに対応する(図表6.3.7).生体負担は0.82Vo2,maXと考えられ(0.61+0.21,それに対する作業と休息は10および35分となる。

 

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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