コラム・特集

2.4 エラーはなぜ起こるか

IEハンドブック

第6部 人間工学

第2章 人間エラーの低減

2.4 エラーはなぜ起こるか

この項では“作業状況”が原因となって起きるエラーについて記すことにする。この“状況”が原因となって起きるエラーにはいろいろあってそれぞれが問題なのであるが,なかでもある特定の人に起きるエラーは当然排除しなくてはならない。この種のエラーは,配偶者との関係,その他の人間関係,情緒的な問題,物事に対する態度,などによって形成されているある個人に特有の条件に関連しているものである。

“状況”が原因となって発生するエラーに関する責任は,経営サイドが負わねばならない。“作業状況”というものは経営サイドが計画して作り出したものであるからである。そもそも従業員の家庭や個人的な問題を経営サイドが思うようにすることはできないが,“作業状況”は変更することができるのである。したがって個人に特有の条件によってではなく,“ 作業状況”が原因で発生する生産過程におけるエラーを減少させることに,経営サイドは努力を集中すべきである。ZD運動にその例をみるような,従業員のやる気を頼 りにエラーを減少させようとするやり方は,ルクが指摘しているように,2 従業員一人一人の個人的な考え方までをそうそう変えさせることはできないので,あまり効果的とは考えられない。

スウェインは,彼自身が「作業成果を低下させる要因群」とよんで,人間のエラーを誘発する因子を次のように大きく3つに分類している.(1)状況,仕事内容,設備などの条件にもとづくもので,個人に特有の条件とは関係の無いもの,唸)個人の特有の条件によるもの,(3)上記2項のはしわたしをする生理的なストレス群。(図表6.2.3)第一の要因群としては次のようなものを挙げることができる。

・作業空間が適切ではなくレイアウトが悪い 高度の正確性を要する手作業には,適切な作業空間とレイアウ卜が必要である.例えば,組立てラインにおいて部品箱が適切な位置に置かれていないと,間違った部品を選んでしまう確率は増加する。

・環境条件が悪い 例えば,不適切な照明,高温,高いレベルの騒音などで,照明が悪いと小さな部品の位置決めや正しい配線が難しくなり,高温や高騒音は労働意欲を減退させてしまう。

・人間工学的にみて不適切な設計 これには機器類,道具類,検査器具類についても含まれる。例えば工場で検査作業に従事する人が,使用する検査器具の置き場所に困ったりするようなことである。

荷扱い′搬送′格納′検査などに要する設備が不適 ある生産部門では,非常に高価な電子機器部品に関 して例外的な不良率であったが,運搬用台車に移し換え るとき床に部品が落ちてはじめてその理由がわかった。その台車の設計を改善することにより不良率は許容範囲 におさまった。
不適切な作業計画情報 不適切であったり,実際には できないような操作方法の指示とか設計図などがこれであ る.従業員に必要な情報が届くのが遅れていたために, 古い仕様で部品を作ってしまうということもよくあるこ とである。
管理のまずさ ある生産部門では,従業員が腰をか
けることを管理者が認めるようになってから,それ以前 に示していた非常に高い不良率が減少した。こうした管理上のまずさは大変問題である。

以上述べてきたような要因は,生産過程におけるエラーを起こし易い“作業状況”を生み出すという結果を導くものである。結局,生産過程に存在する様々な不適切な要因が増加するほど,エラーの発生する確率が高くなるのである。

図表6.2.3に,スウェインが「作業成果を低下させる要因群」として挙げているものを掲げておく。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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