コラム・特集

1.5 時分割(タイム・シェアリング)

Eハンドブック

第6部 人間工学


第1章 精神運動作業能力

1.5 時分割(タイム・シェアリング)

産業労働では,複数の異なった作業を同時に行うすなわち,時分割することがしばしば必要となる。この時分割は3つのレベルで生じる。まず,単純な作業であっても,オペレーターは情報の受容,意思決定,反応動作の制御をしなければならない.これを効率的に行うためには,これらを併行して行うことが必要となる。第2に,もっと複雑な作業では,オペレーターはいくつかの異なった反応を同時にしなければならない。たとえば,別々の手による協応動作の場合がそうである。第3に,オペレーターは2つの全く別々の作業を同時に行うことを要求される場合がある.これら3つのレベルでは,それぞれ,どのように効率よくやりくりするのだろうか。

最初のレベルでは,情報受容は意思決定や反応制御の両方とうまく重複できることがわかっている.しかし,これらの後者2つの機能は互いに干渉しあう。より詳しくいうと,動作の開始と修正が意思決定と干渉しあうのである。この反応機能は,もともと動作制御の第2相で生じる.したがって,第2相の制御を除くか,または最小限にとどめることによってパフォーマンスは向上する.つまり,閉ループによリオペレーターにさせるのでなく機械的停止によって動作を終了させることで可能となる.

第2のレベルでの時分害1については,同一の精神機能,つまり情報受容,意思決定,反応制御を2つの作業が同時に必要としていないときは向上させることができる.中枢意思決定段階の不応期(オペレーターがどんな新しい情報も処理できない期間)では,この過程への連続的な情報入力は少なくとも300m secの間隔ははなれていることが必要である。

たとえば, 2つの連続的信号を確認して反応しなければならないときは,信号は300m sec以上の間隔をおいて出す必要がある。監視,適切な修正反応の選択,およびその修正の開始を含む閉ループ動作制御にかかわる過程は,とくに高度な情報処理要求をオペレーターに課す。したがつて,これらが同時に2つの作業(たとえば両手をそれぞれ独自に動かす)により必要となった場合,情報の過剰負担やその結果としての作業間の干渉が考えられる.たとえば,“ 位置ぎめ”と“つかみ”の要素動作は,どちらも第2相の閉ループ制御を要求するので,高い情報処理負担を課すのである.したがって,それらの動作を効率よく時分割することはできない。それとは正反対に,“ リーチ”と“移動”の要素動作は(一般には正確な閉ループ動作制御を含んでおらず),一般的に他の要素動作と同時に実行できる。

時分割の効率性に関するもう1つのきわめて重要な要因は,反応―反応の整合性(compatibility)である。反応間のある組み合わせは,別の組み合わせよりもずっと容易に遂行できる.同時動作を行う場合,手(または足)が同じ方向に(たとえば共に前方へ)動くとき,パフォーマンスは最高となる.次に良いのは,補完的動作(たとえば一方は前方に,もう一方は後方に)の場合である。

直角方向の位置関係のパフォーマンスは最も悪い(一方は前方に,もう一方は横側に)。同様に,同時に開始する反応は,そうではない反応よりも時分割が容易である。併行的(または継続的)にあらわれる類似した特性をもつ反応を選択,開始または監視することは,そうでない場合と比べて明らかに少ない情報処理ですむ.対称的なもこの類似性効果を向上する。

時分割の効率性は,刺激(S)一反応(R)に高度な適合がみられるとき,著しく向上する。S― R適合性がよいと,反応選択の基礎となる意思決定段階での負担が軽減する。最も適合性が高い場合,ほとんど“自動選択”となる。これは触覚信号の場合に容易に起こる。たとえば,機械の操作具を振動させると,よりしっかりと操作具を握ると云う,信号反応に高い適合性が得られる.オペレーターは他の動作活動を中断することなく,ほとんど即座にこの反応ができる.

3つ目の同時に2つの別々な作業を行う最も複雑なレベルでは,パフォーマンスは,いろいろな要因に依存じており,オペレーターがその競合作業のどちらを優先するかも含まれる。一般的な例としては,やさしい作業がより難しい作業と組み合わせられるとき,やさしい作業のほうにパフォーマンスの大きな低下がみられる。

時分割の効率性は,さまざまな理由から作業の経験とともに向上していく。

第1に 時分割は訓練によって向上できる一般的能力であることが明らかにされているある1組の作業を効率的に時分割できるオペレーターは,しばしば他の作業の組み合わせにも優れている。

第2に,オペレーターの訓練が進むにつれて,作業の情報処理負担はより低下し,“ 自動的”にもなる。これに関しては次のようないくつかの理由が考えられてきた。

・内的モデルによって冗長な情報を処理しなくてもよくなる.
・視覚情報よりも速く処理され(図表6.1.6),またしばしば高いS― R適合性をもつ筋肉運動の情報は,次第に視覚情報の代わりとなって働くようになる。
・ある情報処理段階(たとえば“照合”操作)が最小限に抑えられるか,または完全に除かれてしまう.
・第2相の開ループ制御が少ない,より効率的な連続的動作が発達していく.“自動的に”時分割が行われるような作業は,情報処理の要求も少なく,過剰負担になる可能性は少なく,効率的な時分割が可能である。

先の議論の焦点は,2つの作業の間の中枢的(つまり認知的)干渉から生じる時分割の困難さにあった。更に,“構造的”相互作用によっても互いに干渉しあう。もしオペレーターがある作業では右を向き, もう1つの作業では左を向く必要があるとしたら,これらの作業は互いに干渉しあうだろう。このような構造的干渉と中枢干渉とを区別することは時には難しい。このことは,精神作業負担を評価する方法として,「二重課題」法を用いる一義的困難さを示している。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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