コラム・特集

1.3 精神運動パフォーマンスの特徴

IEハンドブック

第6部 人間工学


第1章 精神運動作業能力

1.3 精神運動パフォーマンスの特徴

精神運動パフォーマンスの構成要素
因子分析とぃぅ統計手法に基づいて,図表6.1.3に示されているHの異なった基本的な精神運動能力が確認されている。
これらの11の因子は互いに独立したものである。つまり,ある特定の因子のパフォーマンスの高低は,残りの10の因子のいずれかのパフォーマンスのそれとは関係がない,ということである.複雑な精神運動パフォーマンスの基礎にこのような因子構造があることは,従業員の選抜,配置,職務のローテイション,さらに訓練と広く深い関係をもっている。とくに,この因子構造は次のことを意味している。すなわち,

・異なった基本的精神運動能力因子の向上を必要とする作業には,異なった人事選抜テストや手続きが必要となる.
・従業員の職務をローテイションする場合,以前の作業と同じ基本的因子をたくさん必要とする作業にオペレーターが移るときは,転換訓練が最もうまく行われ,したがって,最も高い能率がえられる。
・訓練手続は,特定の職務に必要な特殊な能力因子に適ったものでなければならない。

実践に伴う因子構造の移行
まず,パフォーマンスは,精神的要因に大きく依存じている。それらには作業指導書の理解,教示の記憶,作業要求への注意集中,重要な作業説明書の認識などができる育旨力が含まれる.訓練が進むにつれて,パフォーマンスは図表6.1.3にあげられた要素能力で説明できるようになる。さらに,オペレーターのスキルがもっと熟練すると,作業パフォーマンスにとってもっとも重要な要素能力は変化する。このことは,経験のないオペレーターと経験のあるオペレーターでは,ある特定の作業を遂行する方法が変わることである程度は説明できる。このように要素能力または因子構造が移行することは,人事の選抜や訓練に重要な意味をもつ.訓練の始めに高い成績を示すオペレーターが,訓練の後11でも高いパフォーマンスを示すとは限らない。

つまり,最初のテストで高い成績を示す能力は,数多い作業経験の後によいバフォーマンスを示すのに必要な能力とは同じでない。たとえば,プレスのオペレーターの最初のパフォーマンスは,日と手の協応に大きく依存しているが,より高いパフォーマンスレベルは,運動感覚の感受性の発達いかんにかかっている.したがって,選抜テストや訓練手続は,ベテラン作業者の研究から導き出されることが重要だ選抜テストは,訓練の初期段階で必要な育ヒカよりもむしろ高いレベルのパフォーマンスを示すのに必要な能力に焦点をあてるべきなのである。このような人事選抜の方法を取り入れることによって得られる利点を示す実例は,別の個所で論じる。

要素時間分析
精神運動パフォーマンスは,しばしば要素動作(たとえば,手のリーチ,つかみ,移動,位置ぎめ)や少なくとも概念上構成要素とみなされる要素的動作の観点で分析される。これは普通,PTS法またはMTMを用いた標準時間の設定から行われる。要素的な精神運動的動作に関連した以下の情報は, IE技術者が要素時間分析をするときにとても重要なものである。

1 すべての要素動作は,とくに始点と終劇こ関して,明確に定義されなければならない.要素間の重複や省略はあってはならない.
2 精神運動パフォーマンスの分析に要素動作を用いることは,動作を操作として定義したり視覚的に検出できる点で利点がある。しかし,要素動作の始点と終点が,要素を遂行するときの生理的および精神的な作業の始点および終点と必ずしも一致しない点では,大きな欠点である.
3 オペレーターの精神運動スキルが増大していっても,ある作業におけるすべての要素動作が同じようによくなるとは限らない。よくなる可能性が最も高いのは,きわめて高い認知活動を必要とし(つまり,最も高い精神負担を課し),そ端果最も高いパフォーマンス変動性を示す作業要素の場合と,偶然性や装置特性の影響が最も表われにくい場合である。
要素時間の改善は,特徴的な変化を示す。つまり,要素速度が一般的に増加することによってではなく,むしろ,ある特定の要素の極端に遅い状態が次第に除去されていくために起こるのである。
この効果は
図表6.1.4に示されたヒストグラムのパターンの移行にみることができる.これらのヒストグラムは穴入れテスト(One― Hole Test)。小さな円柱状のチップをつかみ,それを移動して,その大きさとぴったり合う穴に入れる作業一一の5万回のパフォーマンスから得られた基本時間を示している。
要素時間を加算する研究によると加算による作業標準の誤差はたしかにあるが,しかしきわめて小さいことが明らかとなっている。 これらの誤差は,作業サイクルを構成する要素の数が増すにつれて有意に減少する。
複雑な精神運動パフォーマンスは,多くの比較的微細な要素動作から成り立っているけれども,動作方法の累積的変化は,全体的なパフォーマンスに非常に大きな影響を与える。ある作業(穴入れテスト)のパフォーマンスを高速度撮影し細かに分析すると,要素動作の変化が33%のパフォーマンス改善,つまり100%から133%へと良くなることがわかる。具体的な変化としては,次のとおりである。

a.オペレータが知りたい結果の知識(knowledge of results)の減少.オペレーターたちは自分たちが最初必要としていたパフォーマンスに関するフィードバックをほとんど必要としなくなった。たとえば,標準の水準,すなわちレイティン列直100を達成した後はそれまではしていた“位置ぎめ”の確認チェックのために最後までピンを押すことはなくなり,“ 位置ぎめ” が完了したサインとして単にピンをはなすだけとなり必要なフィードバックは減少した。

b.最終的にリズミカルなパフォーマンスを生む主に運搬と静上の要素の間にみられるパフォーマンスのなめらかさのレベルの増加。おそらくこれは,運搬動作の最初の4分の3以上はなめらかにまた自動的に行われるが,最後の4分の1以下は人間によって完全に制御されているためである。しかし運搬要素(主に“移動”)の最後の4分の1の距離の遂行には,その距離の最初の4分の3と同じだけの時間が必要である.これは,おそらく,最後の動作段階に必要とされる正確さによるものである。このなめらかさの効果は,人間の自動的遂行が人間の手による操作を部分的に制御するために起こると考えられる。

c.一般的により数の少ないまたより単純な動作パターンを生み出すような,手の指のより効果的な利用.オペレーターは手の指の最も小さくかつ最も“効果的な”筋肉収縮を考慮しながら,それらを将来動かしたり,位置ぎめしたりすることを予想して対象をつかむ。これは無意識の中に作業者が自分の作業方法を変更していることからわかった。

d.操作の注視終了時点と操作の終了時点との間の時間の増カロ。それは多分運動感覚が視覚にとってかわるためである。

e.先行学習による“予期できない”状態に対処する能力の向上.たとえば,前に述べたパフォーマンス評価レイティング値100のときは,へまがレイティング値133のときのほぼ2倍もあった。さらに,へ志がパフォーマンス100で起こったとき,オペレーターのパフォーマンス・パターンは著しく混舌Lしたが,この影響はパフォーマンス・レベル133ではほとんどみられなかった。

f. 作業サイクルのある特定の一要素または要素群で生じる精神阻止現象(mental b10king)の頻度と長さの減少.パフォーマンス・レイティング100のときは,精神阻止現象が起こるとその要素動作は平均の35倍かかった.パフォーマンス・レイティグ133では,これは平均要素持続時間の25倍まで減少した。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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