コラム・特集

1.2 精神運動パフォーマンスの個人差の範囲

IEハンドブック

第6部 人間工学


第1章 精神運動作業能力

1.2 精神運動パフォーマンスの個人差の範囲

精神運動パフォーマンスの水準は異なったオペレーターの間でも違うし,1人のオペレーターの一定時間の経過の中でも違ってくる.この変動は,オペレーターのもつ3つの一般的特性から生じる。

・経験と訓練.
・永続的な精神的,身体的特性.
・課題遂行時に作用する“一定的な”精神的,身体的特性.

一時的な特性は,次のような多くの特殊な要因に影響される。

・モチベーション
・一時的な疾病
・疲労
・ストレス
・アルコールおよびその他の薬物
・作業時間(例;残業,交替制勤務)
・物理的,社会的,心理的な作業環境
・食物摂取

精神運動パフォーマンスはまた,装置の可変性や欠陥,故障のような作業特性によっても影響され,とくにオペレーター間では,作業遂行のためにどのような方法を用いるかによっても影響される.個々人のオペレーターのパフォーマンスの変動(つまリオペレーター内変動)に対してこれらの様々な要因が結びついて及ぼす影響については,製造業のブルーカラー労働者について明らかにされてきた。これらの研究では,生産高の信頼性*は平均08で,0.7から09の間で変動することが明らかにされている。 このことは,オペレーターの1週間のパフォーマンスの約64%(つまり082× 100)は前の週に観察されたそのオペレーターのパフォーマンスから予測できることを示唆している。逆に,オペレーターのパフォーマンスの36%はここからは説明できず,上にあげた諸要因で,説明できるのであろう。

ある作業国内での個々人の変動は,作業日間でみられる変動よりも明らかに小さい,ということに注意すべきである さらに,1作業日内のパフォーマンスの変動は,午前の中頃から午後早くにかけてが最も小さい(図表6.1.1)。この時間帯では,平均レベルでのパフォーマンス変動は(平均の)約5%にすぎないが,午前の中頃から午後早くの時間帯より早くても遅くてもこの変動は著しく増大する。オペレーター内変動のこのようなパターンは,作業国の初めや終わりのウォームアップやスローダウンと同様に,きちんとした時間標準を設定しようとするときには考慮の中に入れるべきである。

多くの研究によれば,オペレーター間での精神運動パフォーマンスの個人差は,繰り返し観察すると,同じオペレーター内でみられる変動よりも明らかに大きいことがよく知られている。一般に,2から1までのパフォーマンスの者が作業人口の95%を占める。しかし,実際の作業状況下でみられる範囲は,これよりもずっと小さいことがよくある.なぜなら採用前の選抜パフォーマンスの低い一部オペレーターの排除,仲間同士で高い能力をもつオペレーターの働らきぶりを抑制することなどの要因があるためである。

したがって,このような制約要因が働かない場合には,200名の集団では,もっとも優れた仕事をする者5名と仕事の成績のもっとも悪い者5名を除いた残り190名で考えれば,もっとも成績のよいオペレーターはもっとも成績の悪い者の2倍以上の成績は上げられない(逆にいえば,もっとも成績の悪いオペレーターは,もっとも成績のよい者の少なくとも半分の成績は上げることはできる).パフォーマンス・レベルにこのような範囲があることを知ることは,有効な奨励制度の維持や効果的な生産計画・管理技法の開発に不可欠なことである。有効な人事ができなくて金銭奨励制度を採用した場合,このパフォーマンス・レベルのばらつき範囲が及ぼす影響度が表6.1.2に示されている.この図では,たとえば,平均奨励手当が25%の会社では,労働者の10%は奨励手当が全然なく,一方労働者の2%は63%以上もの奨励手当がもらえることを示している。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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