コラム・特集

3.3 評定方法

IEハンドブック

第5部 人的資源の評価と管理


第3章 人事考課

3.3 評定方法

選択された評定方法は,人事考課プログラムのためにたてられた目的と,当然関連していなければならない.本節では,これに有効な多数の方法について検討することにする。

説明または小論による評定法(Narrative or Essay)評定者は,個人の長所,短所,昇進の可能性,業績,開発の必要点などの要因の詳述をし,若千の寸評に説明形でまとめる。

この方法の第1の長所は,評定者は個々の評定対象者の応答に対して,かなりの考慮を払う必要があり,その結果その応答はしばしば他の技法を駆使して得たものに比べてより正当性があり,よく記録されることである.もしもこの技法だけを用いると,いくつかの明瞭な欠点が出てくる。

・時間の浪費である.
・時には冗長になる.

●評定者の文章力の有無が,実際のパフォーマンスの読み手の受け取り方に影響を及ぼす。典型的な小論質問は,次のようなものである:この従業員の管理能カーーすなわち,企画力,組織力,権限の委譲,時間の有効な用い方,報告,フォローアップなど――に関して,優れている点,劣っている点を8行から10行で,説明,注釈,評価せよ。

限界事例法(Critical Incident Method)
この方法では,監督者は年間を通じて望ましい行動,あるいは好ましくない行動とその結果を示す実際の出来事(小事件)を,業務日誌に記録し続けることを要請される.業務日誌は,通常監視観察を級分けし,記録するために項目を特定する.特定項目には,例えば仕事の質,進取性,職務の知識,能力などがあげられよう。

この方法の利点:
・評定は,行動とその結果に関しての証拠と事実に集中する
・性格上の諸特徴とか諸特性ではなく,パフォーマンスが強調される.
・改善や開発についての話し合いに確かな根拠を与える。
この方法の欠点は,そうした出来事を記録するという。ことは一仕事であるし,監督の行きすぎになる懸念があることである。

強制選択法 (Forced Choice Ratings)
この方法には,様々なやり方があるが,通常は評定者に,4つか5つの陳述文の1グループから,被評定者に一番当てはまるもの,または一番はずれているものを選ぶことを要請する.使用される陳述文には第二者のグループ,すなわち最終の総括的評定判定者のみが熟知している価値荷(重み)を加えることができる。
この方法の利点は,評定対象者間の比較基準を確立すること,評定者がそれぞれの陳述文の重みについて知らないから,監督者の偏見が軽減されていることである。
不利な点:
・評定者は,重みについて知らされていないので,焦燥
感を持っかもしれない.
・この形式の方法を開発するのは,複雑で費用もかかる。
・従業員にフィードバックを与えるため,この方法を用いるのは,きわめて明白に提示された情報がない場合
は疑問である。

この方法で用いられる典型的な言い方は,次のようなものが考えられる。
パフォーマンスを最高に記述している言い方がNo.1で,もっとも低いのはNo.4である。
一目的にかなった職務の知識を目立たせる。
一能力の限界まで働かない。
一変化する状況に適合する。
―職務資格要件に見合う体力がない。

序列比較法 (Ranking Comparison Technique)

これには4つの方法があり,同一グループ内あるいは他の複数グループとのどちらかと個人の比較をする必要があるときに用いてよい 序列を判定する基準は,それが全般の印象によって決定されるという点で,全く主観的である これらの方法は, しばしば昇進対象者を選択したり,昇給幅を決めるのに用いられる その主要な弱点は,なぜその個人が最高に評価されるのか,あるいは最低とされる者はどういうことでそういう評定を受けるのかといった情報を与えないことにある。この方法は,訓練,開発あるいは従業員にフィードバックを与えることに役立ついかなる情報も提供しない。

ストレート序列法(Straight Ranking)
グループ内の各個人の名前を名簿に記入する。監督者は従業員の全体の名簿を考慮に入れた後,序列川頂に並べる。
従業員のランク付けリストの一例を,下記に表わす。

交替反復序列法(Alternation Ranking)
この序列づけは,ストレート序列法の一変形である。評定者は,最初,最高あるいは最も有益な従業員を選出し,次に最悪あるいは最も有益でない従業員を選び出す。これを交互に,グループ全員を序列づけするまで繰り返す。

この方法の一例を順に示そう。

一対比較法 (Paired Comparison Ranking)
この方法は,おのおのを1回ずつ,他の1人1人と比較するやり方で,こみいったものである.最も得点を取った従業員が最高遂行者で,得点なしは最低者である。
これの主な欠点は,時間が多くかかり統計的処理が伴うことである。例えば,10人の従業員を序列づけるのに45回の比較が必要で,15人では105の比較が必要である。
例をあげると, もし4人の従業員A,B,C,Dを比較すると,次の比較が必要とされるだろう。

AとB, BとC, CとD
AとC, BとD
AとD

分布制限法(Forced Distribution Method)
分布制限法は,評定者が正規分布に基づいて評定を分類することを要求する 評定者は,10%の従業員を最高パフォーマンスの部類にとり,20%を次にパフォーマンスが高い部類に,40%を中間におき,20%をその下に位置させ残りの10%を最低にと配分しなければならない。表現通り,この方法は固定的で,融通性がなく,評定者は従業員の実際のパフォーマンスを正規曲線によって割りふるべきでないと感じていることで,現実に合っていないと見なされるかもしれない。しかしながら, この方法は組織の認識に合わせてゆがんだ分類をすることができる。小グループの従業員のときには, この方法は意味がない。

評定尺度法(Rating scale Methods)

図式尺度法(Conventional Rating System)
この方法は,評定者が,いくつかの特質,例えば,仕事の質,量,職務の知識,情報連絡技術,進取性,その他職務の要素について,何らかのグラフ化した尺度に従って,個人を評価する方法である.その尺度は,言葉で表現する句(きわだっている,良い,満足,限界すれすれ,不満足)か,点数(1-10)で示される.評定の正当性を実証するために,幾つかの形態については,評定者がその評定理由を説明しなければならない。この方法は,一貫性と評定者により受け入れられ易いので,最も人気のある評定方法の1つである。

しかし,この方法の欠点は次の通り,

・評定者は,特質や要因を異なって判断する可能性がある。
・評定者は, 1つのパフォーマンスの要因についての評定を,他の要因についての評定にも影響を及ぼさせる傾向があり勝ちであろう(ハロー効果)。
・特質や要因の評定は,評定者が評定理由をはっきりさせないと,従業員への効果的なフィードバックに効力がない。

この方法の例は,図表5.3.1を参照のこと。

行動基準法 (Behavior Anchored Rating Scales)
この技法は,限界事例的アプローチの考えを組み入れており,評定者が非常に好成績なパフォーマンスと見なす職務について分析することで開発に関係する.特定のパフォーマンス活動,あるいは1つの職務の特性に対する職務行動の「基準」が制定される.職務のそれぞれの重要さに対しては,基準が定められる。次にその基準は,高度に効果的なパフォーマンスからきわめて非効果的なパフォーマンスまで尺度が作られる。
この行動基準法の利点は,次の通り,

・評定者の責任は,開発に関係するので,さらに大きい。
・評定の信頼性は,職務と直接に相関関係にあるので,より高い。
・パフォーマンスの特定の局面について,従業員にフィードバックを与える。
・不利な点は,開発に要する時間が,無視できない。
・評定者は,当然自分が行った開発に責樅とらされる。
・それぞれの職務には,その職務に特別に開発された個別化した形式が必要とされる。

集団決定法(Group Judgment Method)
この方法は,被評定者の監督者,それら従業員の仕事のパフォーマンスに精通している2人か3人の他の監督者,それに管理本部か人事関係スタッフより1名からなる評定グループが評定に当たる。このグループは,職務義務,パフォーマンスの基準,在職者の実際のパフォーマンス,パフォーマンスの問題点,改善に向けてのいろいろなアイデアについて検討し,パフォーマンスの改善や従業員開発に向けて,明白な行動プランを明示する。そこで与えられる評定は, このグループのコンセンサスに基づいている。

この方法の利点は,幾人か評定者を駆使することで,評定の妥当性が高められることにある.なぜなら,この方法は1人の評定者による偏見の影響を減ずるためである。もう1つの利点は, 1人の監督者よりも複数の評定者によるほうが,パフォーマンス改善に向けて良いアイデアを提供する向きがある。不利な点は,このプロセスには時間がかかることである。

アセスメント法(Assessment Method)
この評定方法の目的は,昇進に対しての従業員の可能性と,雇用志願者の将来のパフォーマンスを予見するためである 幾人かの候補者を数日間労働環境の局面へ入れてしまう それには新しい仕事ででくわすと予想される実際の場を模疑したテスト,ゲームまたは練習が含まれるであろう。訓練を受けた評定者は,行動を観察じ判定を行い,それぞれの候補者の最終評定を準備する.この評定方法は,将来のパフォーマンスを予知するの
に優れた効力を持っている。明白な短所は,専門的に設計したプログラムを開発するのにまつわる費用がかさむのと,評定者と関係者の双方は過度に時間に拘束されることである。

目標による管理(Management by Objectives)
これは協同的,成果指向的プログラムで,監督者と部下双方で受諾可能な,現実的な目的や目標を設定するのに双方とも参加するやり方である.このプロセスには,目標到達度を測るときに用いることのできる量的・質的基準を立て,その目標がその中で達成されるようなタイム・スヶジュールを立てることが含まれる.予定した時限の終わりに当たって,部下は立てられた目標に比べてみて,成果の評定を行う。そこで評定する側, される側で評定面接を行う。

この技法は,従業員の相応の期待可能値に関して,監督者に知識を与える。これは有効労働力計画に役立つまた操業により良い統制を与え,性格上の特徴よりも成果を強調する。

この技法についての大きな関心は,経営者たちが基準や目標を強調するのに,プログラムを思うままに操作することである.また監督者は,かなりのフォローアップを要求する.予測しなかった出来事が,もとの計画を変更させるので,タイム・スケジュールに合わせるためである。

この方法の記録の仕方は,次の通りである。

職務遂行基準評定法(Work Standards Approach)
職務遂行基準は,その組織のいかなる職務やいかなる水準の要素に対してもすべて明らかにすることができる。職務遂行基準と目標とは密接に関係があるが,前者はほとんど経済的には改善に努めないような領域にまで及んでいる。1つの職務遂行基準のアプローチは, 1つの職務が完全に完了するときに存在する条件を記述することである そしてそれは生産性の一定の水準の維持,あるいは生産性の改善を目的としたものである。職務遂行基準は,明確に分かり易く正当に作成されなければならない。この技法を用いれば,パフォーマンス評定面接で他の技法を用いるよりもはるかに危険性が少ない。

この弱点は,比較の領域にある。それは誰がその基準をつくり評定するかにまさに関連しているからである.給料の増加や昇進の決定に関するときは,いくつかの評定法を併用する必要がある。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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