コラム・特集

2.6 職務評価結果の給与尺度への変換

IEハンドブック

第5部 人的資源の評価と管理


第2章 職務評価

2.6 職務評価結果の給与尺度への変換

ほとんどの職務評価のシステムは,ある仮定の職務価値の尺度上におかれた職務ということになろう。点数法と職務構成要素法の場合には,価値は点によって表わされる。ランク順位と分類法の結果は,格付けあるいは職務の種類である。これらの価値は,順に個々の職務の賃率を決めるために,実際の金銭による価値に変換する必要がある.職務構成要素法の普通の用い方は,このような変換の必要はほんの例外である。なぜならばその結果は実際の金銭の価値で表わされるからである.職務評価の結果を金銭による価値に変換することは,全体の職務の価値の基準――これは通常労働市場での現行賃率に基づいている――を定め,そして現行賃率曲線と組織賃率曲線とを表わすことを特徴とする。

現行賃率曲線の展開
現行賃率曲線は,労働市場でも類似したものがみられる組織での職務のサンプルのデータに特徴的に基づいている。それは組織が用いている評価システムによる。

職務の評価と,労働市場での給与賃率の代表的な指数の間の基本的な関係を示している.任意に与えられた職務の現行賃率の指数は,通常は様々な組織での職務の賃率であり,それらの賃率の平均値,中央値,重みづけをされた指数であるかもしれない時には職務の現行賃率のデータは,すでに組織で入手されており,それらは地方の経営者組織から,政府の公刊物から,あるいは他の情報源のものである。このようなデータが,職務の代表的なサンプルとしてもしも役立たないときは,組織独自の調査を行ってもよい。

一般的には,どんな情報源からの現行賃率データであっても, `デンとラシェフレ(Dunn and Rachel)カジスしたような図表5.2.8の形式で表わされている。これは評価された職務のサンプルの得点値と,労働市場での重みづけられた平均の賃率との間の関係を示している.ダンとラシェルは,各職務の現行賃率の重みづけられた平均の利用に賛同している.なぜなら,彼らは重みづけられた平均が最も代表的な価値があると信じているからである.しかし,平均値や中央値の値が多くの状況で用いられている.図の直線は,最も適合した直線であり調査により描かれ,または統計的に導き出されている。図表5.2.8で示されている関係は直線であるが,いくらかの実例は曲線であるかもしれない。

組織の賃率曲線の設定
次の段階は,特定の組織のための賃金。給料曲線を設定することである(個々の会社の場合は,会社の賃金曲線あるいは給料曲線と呼称されている)。現行賃率曲線を基にしてできたこの曲線は,職務評価制度によって網羅されている職務の賃率の一般的なパターンを設定している。この曲線は,労働市場での他の組織に存在している職務のサンプルとしてのデータに基礎をおいているが,その組織にとって独特の職務であると否とにかかわらず組織の全職務について給与賃率を設定することに用いられる.これは組織の全職務が,同一の基礎のうえに設定された給与賃率を保持していることを保証している。任意に与えられた場合,現行賃率曲線についてこの曲線が実際に設定されると,財政上の状況,契約の交渉,付加給付を含め種々考慮すべき要因である。このようにして,この曲線は若千上下はするが現行賃率曲線の水準にとどまることができる。

もちろん,組織の賃率曲線が現行賃率曲線に,どのくらい接近したかという問題がある.この点についてジャックス(Jaques)”は,自分が同類として区分されている実際の報酬額グループのうち「公正」の3%以内にとどまっているような個人たちは,他の人たちに比べ理にかなった支払いをされていると感じている傾向にあるといっている 同様に5%より下になった個人たちは,いささか不公正に取り扱われていると, そして10%より下がると完全に不公正に取り扱われていると感じる。15%ぐらい下がると人々は機会があったら,転職を求めるようになる.ジャックスの解釈に含んでいるものは,給与尺度は一般的には,公正の5%以下に下げるべきではないということであり,この公正はジャックスによりTSD特有の表現で定義されている。もし現行賃率と公正というジャックスの概念とが等しいとすれば,組織の賃金曲線は約5%以上現行賃率曲線より下に落としてはいけないと思える。

職務評価の得点を実際の賃率に変換する際に,次のような異なった慣習がある。与えられた職務に対する評価得点をとり,適用できるような対応する的確な賃率を推論することは可能であろう このようにして得点の若千の差異が, 1時間当たりの賃率のいくらかの相違となる.実際には,ほとんどの組織,労働組合を含めて次のように感じている。すなわち, 1組の職務評価を基礎づけている判定の中に完全な正確さが欠けていることが,おおよそ同じような評価の職務を一括して,賃金構造を設定する際にそれらの職務を同等と考えることが,望ましいと。この同類として区分けされた結果が,いわゆる職級(Iabor grade)である 特定の賃金構造での職級の数は,ほぼ8~10から20~25までである。賃金交渉における折衝で,最近の労働組合の要求傾向は職級が比較的少ないことを要求している。

評価を給与等級(pay grade)に変換する際に, しかしながら考えられる多くの変動がある。これについてはダンとラシェル(Dunn and Rachel)によって検討されており,図表5.2.9に示されている。これには賛否両論があり,最適になるような特別の案を開発する際に,考慮すべき多くの他の実行できる変動がある。くくられた職務では,換算の形式が労使交渉の問題となるのも当然である。

個人の給与等級内の価値の範囲は,職務がその給与等級内にある個人の賃率を定める際に,通常適切に変わり易いことを示している。このような変動には,主要な根拠が2つある。1つは個人たちの人事考課であり,他の1つは職務や組織の先任権である いくつ力つ組織では,その職務で定められた滞留期間後には自動的に賃金が増加していく自動昇給制度を用いる。この原則は,低い職級と新規雇用者に非常に頻繁に用いられるが,ときには高い職級でも同様にまた用いられる.ある組織では,滞留期間と人事考課の組み合わせを個人の賃率を選定するために用いることもある。

職務評価制度の実施
ひとたび職務評価制度が選択されたり展開されたりすると,総ての職務は分析・評価される 通常,評価は職務評価委員会のメンバーによって行われる.ひとたび評価が完成すると,与えられたいかなる職務の賃率も開発された換算表をもとにして決められる。通常は,ある職務には定められた給与等級を割り当てられ,その等級に決められている賃率を適用されることを意味しているまだ職務評価制度をもっていない組織で,それを実施しようとするとき,あるいは新しい制度を採用している組織にとって,新制度によって与えられる賃率と異なった賃率を現在与えられている職務がいくつかあるような結果になることが普通ある。もしも職務が付属明細表で示すより少なく支払われているときには,通常,給与等級の最低限度までその賃率を引き上げるのが実際である。もし逆に多く支払われているときには,これら「赤まる」の賃率に従業員は少なくとも契約期間, 1年かそこらはそのままに据え置き,彼らの現在の賃率に一般の給与水準が追いつくまで昇給を許さないということがなされている。いくつかの場合には,この従業員をその給与水準に調和している賃率の職務につけるよう再訓練する努力がなされる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー