コラム・特集

2.3 報酬方針の目的

IEハンドブック

第5部 人的資源の評価と管理


第2章 職務評価

2.3 報酬方針の目的

アダムズ(Adams)の公正理論とジャックス(Jaques)のTSDを簡単に検討してきたが,いま職務評価の問題と報酬方針の固有の目的を具体化することにもどろう.成功するためには,報酬方針は納得のいく「公正さ」と認識されるような職務についての給与の等級を用意しなければならない。 実践的な考え方の見地から,職務評価制度を基礎にして作成された給与の等級に関係のある公正には2面ある。その1つは,組織の内部における職務の間での収入の相対的な差異を論じている。他の1つは,組織内部における職務と,組織外での同じような職務との間の収入の差異を論じている。われわれはこれらを,外部と内部の考慮すべき問題と考えることができる。この区別は,報酬方針の2つの目的と考えることのできる事柄を具体化するのに役立つはずである

企業内部での報酬の目的
収入が報酬方針により決定をされることになっている人々に「喜ばれる」ような方針であるためには, 1つの案があってそれを実施することにより,いろいろな職務に対する給与の相対的な相違が納得がいくように公正であると,ほとんどの従業員に認められるということがなければならない。いくつかの職務の相対的な給与は,表5.2.1に示されるような直線に沿って降下するように描かれる.直線上の文字は異なった職務を意味している。

もし,なんとかして,従業員が図表5.21の中に示されているような給与の差異を一般に認め,承認するような方法で尺度に沿って職務を並べることができるなら,そのとき報酬方針は目的の1つを達成したといえる。承認は尺度に並べた職務の‖順序だけでなく,職務の間での差異の相対的な重要性を含んでいなければならないということを注意しなければならない。

企業外部での報酬の目的
従業員が職務の企業内部での給与の差異を公正であると認め,承認するだけでは十分でない 通常,いろいろな職務の給与の尺度は,また企業外部の「類似の」それと相応な関係をもっている必要がある.特に従業員を供
給する労働市場における給与の尺度に関連をもつ必要がある もしこのような「相応なJ関係がなければ,何が起こるか考えてみよう。

もし1つの企業内の職務への給与の尺度が,他所の類似の職務の給与の尺度より多少低いならば,その企業は問題の対象となっている職務に人を雇い入れ定着させるのは難しいと予想される.なぜなら,人々は一般にどこか他の場所で,より稼ぐことができるからである。

一方,もし企業内の給与の尺度がどこか他所の類似した職務の普通一般の給与の尺度より高いならば,企業は財政問題をおそらくは経験し,極端に高い賃金。給料コストによる理由で,その企業の商品やサービスを売る市場で競争ができなくなるかもしれない.企業内での与えられた職務に対する給与は,労働市場のどこにでもある同一職務に対するものと全く同じ報酬である必要はないが,ある「相応な」範囲内であるべきである。この相応な範囲内はのちに検討する。

検 討
報酬方針のこれらの2つの目的を有効であると認めるなら,われわれは暗に職務のいろいろなタイプの賃率は,主として労働市場の需要と供給の要因に影響を受けるという意見を容認しなければならない 労働組合の影響や文化の価値の変化のように,需要と供給の影響を一部無効にするような要因がいくつかある しかし一般的には,いろいろな職務の給与に影響する有力な要因は,需要や供給のそれであると信じるのが,理にかなっているように思われる.

 

この仮定が与えられると,賃金・給料管理者の典型的な問題は, ここに引用されている両方の目的を実現するための職務の給与の尺度を制定する手続きを開発したり採択したりすることである。もしもある組織に,たった二,三の職務だけしかなかったり,これらの職務が労働市場の他の組織に存在しているならば,その組職は給与の尺度を定めるためのシステムは必要としないであろう.問題の職務に現行賃率を正しく支払うことができる.しかし, もし組織が多数の異なる職務をもっていたら,いくらかの系統的な職務評価システムが普通は望まれる。これはいくつかの”ユニーク”な職務をもっている組織に特にあることである。

すなわち,彼らの労働市場に存在していないような職務の場合である.このような事例における適切な職務評価システムは,労働市場で全く似た職務の特色と自社の同じ職務の特色とを根拠にして,それらのユニークな職務の給与の尺度を制定することができる このような職務の給与は,多分また理にかなって公正であると認められるべきであろう.もし組織が,職務評価プログラムを用いると決めたときには,組織と労働市場で共にみられる職務の現行賃率をまとめて再形成あるいは推定する職務の変数によって,職務の評価を規定するようなプランとなるであろう。

2つの仮定の職務評価システム(AとB)で,15の職務のサンプルに対して職務評価点数と,これら15の職務の現行賃率との関係の差異を示している点は,図表5.2.2に描かれている.職務評価システムB(図表5.2.2b)の場合は,同システムA(図表5..2.a)よりも「最適の直線」からかなり離れている.対角線から与えられたいずれの職務への縦の距離は,現行賃率を推定する際に評価点数がどのくらい「離れているか」ということを説明している。もしも評価点数が,対角線の下とすれば高すぎるし,線の上とすれば低すぎるのである。どちらのシステム(AあるいはB)に基づいていても,いくつかの与えられた職務の推定された賃率は,職務を意味する点に対して明白に上か下にある対角線上に存在するであろう。過大推定あるいは過少推定の金額は,図表5.2.2bの2つの職務を用いて図解されている。

これら2つの仮定のシステムの場合, システムAはシステムBよりも現行賃率の推定に非常に近づいてきていることは明確である 現行賃率を推定する正確さは,根本的には労働市場での現行賃率の取決めに寄与してきた職務の変数を, システムがどの程度まで「比較して判断する」かに,あるいは少なくとも職務の変数に関連のある職務の特徴を調査するかにかかっている.

このようにして労働市場での職務に対する給与の現行賃率は,職務評価システムの目的に対して十分であること(例,妥当性)を判断するために標準または基準として利用できる.このような賃率は,一般に最も適切な基準であるが,通常は労働市場外の賃率に無理なく一致した価値に「落ち着く」ので,ある状況では組織内で支払われる賃率を利用することができることも付言すべきである。

後述する要素比較法は, このような基準の利用を含んでいる.職務評価システムの適切さを判断する基礎とするような全職務価値のこのような基準の利用は,根本的には「方針捕獲」アプローチである。このような賃率を再形成するために開発されたある職務評価システムは,組織で一般に行われている報酬方針を考慮したものと考えられている。ある特別な状況下で,専門家によって行われた全体にわたる職務価値の評価は,職務評価システムを比較したり判断したりするのに基準として用いられてきた。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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