コラム・特集

2.2 報酬の公正さの概念

IEハンドブック

第5部 人的資源の評価と管理

第2章 職務評価

2.2 報酬の公正さの概念

 

報酬の方針に関連する検討や理論での,「公正」の概念は,突然起こることが繰り返される最もよくある悩みの種である理論にあまり深く陥ることなく,支払いの公正さに関する公式化を,簡単に考えてみよう。

アダムスの公正理論
公正理論の公式化の1つは,アダムズ(Adams)によって説明されたものである.アダムズによると,報酬の公正についての個人の認識は, 自分の状況と他の者の状況との比較に主として基づいていると強調している。

彼の公正理論は,人々が仕事に携わっていることから知覚する成果と,彼らがその職務につくために投じたと認める投入量との関係――その関係は,他の“比較”しようとする人々の成果と投入量のかかわりあいをなぞらえるが――によって予言される 成果は,価値あるものとみなされる職務にまつわる状況のすべての局面――給与,付加給付,地位及びその職務での固有の興味――を含んでいる。他方,投入量は,知識,技能,資格要件,努力のような個人に対するあらゆるコストを含んでいる。比較は2つの比として表わすことができるというアダムズの仮説は,次の通りである。

アダムズの公正理論は「認知的不協和音」と称される広い概念に根拠をおいている 給与の領域では, もし比が非公正の条件とされているものであれば,当該する人は多分ある不協和あるいは非公正を経験するであろう。
このような不協和はもちろん「過剰報酬」あるいは「報酬不足」を反映して,どちらかの方向に位置づけられるはずである 過剰報酬よりもその反対の報酬不足に気付くのが,全く人間的ではあるが、

ジャックスの公正報酬概念
英国ではジャックス(J aques)が,職務に対する公正な給与は,本来「自由裁量の時間幅(time span of discretion)」(TSD)というものに基づいていると主張してきた。彼の案では,職務の規定された内容(当該する人が,権限を委譲された選択権のない作業)と自由裁量のできる内容(遂行の仕方については選択権が残されている)とには,差異を認めている。ジャックスは,TSDを次のように定義している。

自由裁量の時間幅(TSD):管理者が,自分の部下が作業のペースと品質のバランスを連続して保ちながら,通常考えられる以下の自由裁量を行ってきていないということを,気付きうるまでに執務中経過した最長期間。

実際には,管理者が自分の部下の自由裁量を信頼し,部下が自分の責任で作業している最大の期間である.この概念は「自由裁量の再検討」に非常に依存している。ジャックスは,それを次のように定義している。

自由裁量の再検討:完了の期間と結果の質に関して指示された課業を遂行している部下によって行われた自由裁量について, 直接の管理者や,報告を管理者に提出する責任をもつ代理人による再検討。

当該する人の作業についての再検討は,直接(管理者による)か,または非直接(検査者か,組織の中の誰かが,あるいは例えば取引先の不平による)のいずれかである。

専門語としてのTSDは,人々の違反が起こるまでの時間と考えることができるといえるかもしれない。製造での職務の場合,検査者はおおよそ数時間のうちに好ましくない労働を看破することができるのに対して,大会社の社長の場合には,パフォーマンスを十分に(取締役会により)検討するまでに,何年かが必要である。TSDを測定する手続きは, ジャックス9によって説明されているので, ここでは省略する。しかし,一般にTSDは,分,時間, 日,週,月,年によって表示される。

 

職務のTSDが与えられると, ジャックスは,そのような測定された量は,特定の職務に対し公正あるいは公平と見なされている給与の賃率を考慮している人々の意見と高い相関があるとの主張の正当性を提唱している。

ジャックスのTSDについての概念は批半1を受けており,また報酬の賃率を制定するための基礎として広範囲にわたっては用いられていなかったが,ここでの検討に提示したのはそれが公正の論題に焦点を当てているからである。ジャックスの公式は,アダムズ(Adams)の公正理論とは異なっているが,次のことをわれわれに気付かせる。

すなわち,給与の「公正」は,職務の「価値」を尊重する人々の認識――他の職務の価値に関連して自分自身の職務の価値への認識を含んでいるが― に基づいているということである。このことの意味は,職務に関しての現行賃率が雇用の過程を通じて, このような認識の影響を事実上受けるということである。雇用の過程において,人々は提示された賃率で職務を受諾したり,拒否したりするのである。もしも提示された賃率が,納得のいく公正なものであると思われないならば,職務の契約申込みは通常拒否されるであろう。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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