コラム・特集

1.3 態度と職務満足

IEハンドブック

第5部 人的資源の評価と管理


第1章 パフォーマンスの主観的側面

1.3 態度と職務満足

前節では,独特の主観的次元に焦点を合わせたので,ここではもっと一般的な対象―態度に注意を向ける.

態度と意見
態度と意見の両者とも,個人の主観的な状態を反映する.

1.意見とは,個人が特定の事柄や問題について心にいだいた見解とか考えである 意見は,対象,概念,出来事,関係についての人の信念や判断を含んでいる.原則として意見は,感情的な構成要素は持っていない。すなわち,意見は,積極的なあるいは消極的な言外の意味を伝えはしないということである。
2.態度は,状況,対象物,人に対する感情を含んでおり,そしてそれ自体に感情的な構成要素を含んでいる.すなわち,態度は,快,不快を反映するということである

多分,いくつかの例が,その特異性を明らかにするであろう.下記のような質問に対する回答により,意見を例示することができる.部門が,ボウリングのチームを組織すべきか。会社は,スローガンを変えるべきか.工場は,工場内に社員食堂を持つべきか.他方,態度は違った形をとり,次の質問に対する回答によって例示される.社員食堂の食べ物をどう思うか.会社の娯楽の機会はどのくらい有益か。

態度が個人の行動,あるいは潜在的な行動に反映する限りにおいて,工場の立場では,それらを評価することは重要なはずである。従業員がもっている仕事に対する態度,同僚に対する態度,監督者に対する態度,経営に対する態度は,従業員の仕事の能率と関係があるはずであり,究極的には生産性と関係があるはずである.端的にいえば,職務や会社に対する否定的な態度は,能率よく果たそうとする動機づけの欠如に反映される.このような情報を得るために,いろいろなアプローチが用いられるはずである.例えば,面接調査,質問紙法,電話調査であり,これらの詳細については後述する.

意見および態度のデータを収集するための組織的な試みは,いくつかのタイプの質問紙調査と対象とする母集団からの個人に,直接接触することを普通は含んでいる。いくらかの質問紙法の調査は,態度と意見の両方の項目が入っている。一般には,態度調査の結果は,会社の特別な集団,工場,部門に対する指標を開発するために,個人たちで平均される.他方,意見調査の焦点は,個々の項目に対する回答の分布状態についてである

態度の重要性
1930年のホーソン実験は,作業条件に対する態度の重要性を認識するための画期的なことと長い間見なされてきた.これらの調査は,仕事をめぐる状況に対する労働者の態度は,その仕事をいかに効果的に遂行するかということと関係があるという見解を確証した.文字通り,工場労働者の態度の評価にふれている何千もの研究は,それ以来文献で報告されてきている。これらのうちの大部分は「職務満足」の調査と解されており,その用語は,組織の全員が各自の仕事に対している態度の集まりあるいは部分集合を包含するために用いられている。

このようにして態度調査あるいは職務満足の研究は,組織の人的構成要素の効果に何か問題があるときに普通は行われる.「脈をとる」ような1つの方法である.もし,「病気」が発見されると,それからいくつかの「処置」がすすめられる.職務不満足の大部分の症状は,苦情,無断欠勤,労働移動の高率,災害,はびこった不平や不安,工場のサボタージュ,怠業,説明できない生産性の著しい低下を包めて検討する必要を命ずることがある.

職務満足の調査を指導する原理は「態度は変化させることができる」ということである。 従って,態度をプラスの方向に向けることのできるそれらの変化へ,注意深く限界を定めるために調査の結論を評価することが重要である.問題のある領域について経営者の予測が,調査の結果によって,有効でないと認められることも時々ある.事実,問題のある部分は,不明確かもしれないし,調査結果はいくつかの予期せぬことを含んでいることがある。著者は,会社の隣接地を購入し,その中に従業員用の駐車場を作り,従業員たちの便利を図った会社のケースを思い出す.しかし,この新しい便利さに対する職務満足が圧倒的に高いとは思えなかった。経営者は何か間違ったことをしたのだろうか.調査は,その会社の従業員たちが「自分たちのもの」である駐車場を,他の近くの工場の従業員までも使用しているという事実に怒っているということを発見した。この駐車場は,彼らの会社だけが利用するようにはなっていなかった。そして経営者はこの態度を気に留めていなかったので,「よそ者たち」を追い出すという処置を全くとらなかった。

調査を実施する際の費用は別として,職務満足調査は概して何も害はないと思われる.従業員たちに自分の気持を表明する機会を与えてやるという価値がある。その上に,従業員の福利厚生について,会社が興味を示すことは,従業員の心にその会社のイメージを強めることができるし,従業員に向けられた注意が彼らの動機づけにプラスの影響を及ぼすという点において「気休め薬」の効果があるかもしれない。しかしながら,冒険もあるが,従業員が調査の推定結果に関係のある期待をもっている.多くの従業員たちは,彼らの状態がよリー層改善されるよう期待するが,残りの者たちにはある形の変化を心配する者もいる。「変化」という言葉は,安全(安定)を脅かすのではないかという幾分の不安や言外の意味を持っている.事実,変化はしばしば労働条件,新しい監督者,いろいろな同僚などの一部変更という意味も含んでいるので葛藤と見なされることがある.

職務満足調査は,いつ実施されるべきか?これは既述の大部分の兆候を含んでいる問題を離れて答えるのは,難しい質問である。経営に携わる人々が,職務に対する不満が大きくなるのを発見するために,「従業員の動向に通じているべきだ」ということは疑いの余地がないしかも,これらの人々は過度の関心と無関心との中間の状態で見守ってゆくようにすべきである.経営者は自社の従業員たちに対して,冷淡であってはいけないし,また重要でない不満に対して過度に神経質になってもいけない。例えば,違ったリーダーシップ・スタイルは,違った水準段階の不平を伴うかもしれないが,会社に対する終局の「コストJは差異のあるものではないかもしれない。専制的な監督者は,「不満を抱いたJ労働者や無断欠勤,異動という犠牲のもとに高生産性の記録をあげるかもしれない。他方,「民主的」で,人間関係志向の監督者は,自分の部下に好かれているが,生産性では思わしくない記録を出すかもしれない。

諸会社で見出される職務満足の程度は,パフォーマンスとそんなに高い相関はないということに注目すべきである.労働者が,賃金を稼いでいる間どのくらい「幸福」であるべきか。多分,職務満足は強調されすぎてしまった。ここで考えるための良い資料は,シングレトン(Singleton)の論文の中にある.彼は職務が不快であるかもしれないが,それにもかかわらず賃金のような外発的要因のゆえに,従業員にとって満足であるということすらあると述べている21.それからまた,複合した状況の要因と,職務満足評価の必要性と関連して考慮すべき要因もある。若年労働者は,常に決まって年とった労働者より不平が多い.男性は似たような仕事をしている女性に対して,不平をもつことがある。一方,女性は自分の仕事を失うのが恐ろしく男性の監督者に,不平をいうのを気遣っているかもしれない

職務満足の構成要素
職務満足の調査の際,どのような種類の態度が引き出されるか明白かもしれないが,ここで少なくともそれらを書き出すことも,当を得たことであるはずである.

・仕事
・給料
・昇進
・表彰
・労働条件
・付加給付金
・監督
・同僚
・会社と経営者

ある点では,このリストは玉石混清である.ロック(Locke)によれば22,分析に2つの異なった水準が入っているという。すなわち,出来高あるいは条件(このリストの最初の6つ)と行為者(最後の3つの要素)である.差異はここでは検討されていないが,理論的な言外の意味をもっている。しかし,それは我々に思案そして次のことを認識させる理由を示している.例えば,マズロー(Maslo)の欲求階層説やハーズバーグ(Herzb erg)の動機づけ―衛生(または,二要因)理論を含んでいる数多くの職務満足の理論的見解やモデルがあるということである。ロックの文献は,これらのモデルの良い論評や批評を含んでいる。

測定技法
態度と意見は,質問紙形式を利用して個別面接や電話で,また郵送調査で,さらには質問紙による工場内での集合調査など数多くの方法で,評価できる。その上,市販用で使えそうな,あるいは「お決まり」の質問紙を用いるか,または特別注文のものを開発するかを選択することができる。この選択がいずれであれ,質問紙の開発あるいは調査技法に精通していることが根本的なことであり,それがいかなる態度調査,意見調査,職務満足調査に際し効果をあげることになる。

ワーウィック(Warwick)とリニンガー(Lininger)は,デ-夕収集や分析技法と同じように,質問紙法と調査設計の双方に効果的なガイダンスを与えている。ボークハード(Bouchard)の文献では,いろいろな方法論的な争点についての検討や批評と,調査中に起こった困難や避けなければならない落とし穴についての,論評が記述されている24ほとんどの調査は,直接的な言葉による自己報告の形式を用いる.諸形式は,一般的には「イエス」,「ノー」,あるいは「?」の回答のついた質問のリストが入っている。これは,奇数個の数の間隔尺度(例えば,1-2-3-4-5-6-7)とか,リッカート(Likert)やサ―ストン(Thurstone)式の尺度である。ロック(Locke)はまた,深層面接(これは本質的には,質問紙法 の形式の使用を含んでいない)と,ハーズバーグ(Herzberg)の研究で典型的に示しているが, 限界事例法の使用という他の2つの提案を示している。

「サーストン・スケール(Thurstone Scale)」は,項目ごとに,最も肯定の少ない態度または見解を一番低い―端にし,それから最も背定の多い態度または見解を一番高い一端にし,連続した数(普通は,7,9か11の段階の連続した数)に“分類する”精神物理学的方法を用いる.“熟練した”判定人たちが,その過程で使われる。最終の尺度の諸項目は,次の考察を基にして選ばれる。

 (1)尺度の大体同じ位置に項目を置くことで,評価者の意 見の一致が整合性あること
(2)尺度のそれぞれの採点標 準が,妥当な適用範囲であること
選ばれた1つの項目に,判定人たちより与えられた平均(算術平均または中央値)の評価は,その「尺度の度盛り」を定めるために用いられる。

調査表が用いられるとき,各回答者が,自分の賛成したそれらの諸項目をチェックする。得点はそこでチェックされたすべての項目の平均の値である。リッカート(Likert)の研究では,質問紙に記載されていた各態度の言い方は,次のような5つの選択肢による

・5-― 強く賛成
・4-― 賛成
・3-― どっちつかずの未決定
・2-― 不賛成
・1-― 強く不賛成

個人に対する得点は,回答が選んだ項目の絶対値の値を合計することにより計算される.いくつかのテスト用紙の出版社や,コンサルタント会社や営利本位の販売のための個々の要求は,調査の手段を標準化した.次のものはそれらのものである。

・職務診断調査
・職務記述指標
・職務満足に関するブレイフィールド・ロス(Brayfidd Rothe)尺度
・科学調査協会(SRA)態度調査

例をとれば,SRA態度調査は,標準化された78の主要な項目を含んでいる.これらはさらに,もっぱら監督者用の31項目,あるいは組織の独自の関心事に応じるために,21項目のプールしたものの中から注文に応じて選定されたもので補充される.調査のもう1つの構成要素である「匿名のコメントJが,従業員にあるトピックについて意見を書いて表示することを可能にする

いくつかの調査では,面接者の質問に回答者は口答で回答する「統一されていない」あるいは自由に答えられるアプローチを用いるかもしれない.コメントは,後で分析されるために面接者によって書き取られたり,テープレコーダーに録音することもできる。次のような場合には,すべての回答者の諸反応をカテゴリーに分類するために,内容分析の手順を用いる必要がある 端的にいえば,これはキイになる語句で分類することが生じる.

キイになる語句とは「不適当な賃金」,「経営におけるコミュニケーションの悪さ」,「職務の圧迫が強すぎる」,「政策の混乱」であり,これらの語句にあう回答者のコメントを照合していく。

図表5.1.5は,読者にこのような項目の形式のいろいろな例を提供している。私が実施した安全調査において,この諸項目は意見反応を誘い出すものであるが,それらは実例の目的には十分であると思う この例の中で,質問と回答の選択は,面接者が読み取りそれから労働者の諸回答は記録された。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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