コラム・特集

1.2 仕事のパフォーマンスの主観的相互関係

IEハンドブック

第5部 人的資源の評価と管理


第1章 パフォーマンスの主観的側面

1.2 仕事のパフォーマンスの主観的相互関係

IE技術者,心理学者,人間工学者たちは,人間のパフォーマンスを理解しようとすることについて,共通の関心をもっている 仕事のこれからの過程にいくらか関係があるに違いない,生理学および心理学的副産物が存在するのは明白である。おびただしい疑間が発生する.なぜ,労働者Aのパフォーマンスが今日は標準まで上がらないのか。なぜ労働者Bは,残業時間で仕事の能率が減少を示すのか 労働者Dは努力を続けられないが,実に労働者Eは所定就業時間で能率を向上さえさせている,と同時に労働者Cは努力を継続することができるのはなぜだろうか。休憩時間は必要か.いつとるべきか.ジョウ(joe)は仕事で疲れていると不平を言いながら,仕事のあとボーリングヘ行くことができるというのはどういうことか。仕事をしているとき非常にだるさを感じた後,夕方は新聞を読んでいる最中に居眠りするのに,次の夕方は芝生を刈った後非常に気分が爽快であるのはなぜだろうか。

これらの疑間に対して回答がある 我々は人間のパフォーマンスの決定要素と基礎的過程を理解している 間題はいかなる点でも,個人の能率を測ることのできる簡単で直接的な測定器具を持っていないことである労働者に取り付けることのできる探り針や,0から10までのスケールがついていて労働者の能率が読めるメーターを持てればよいのだが一― ところがこのような方法は存在しない 生理学的測定器具を用いての諸研究方琺は,多くの研究の課題であった。けれども結果は仕事との相関について期待はずれである(エネルギー消費を伴う重労働,すなわち高度の筋肉作業の場合には,例外が認められるべきであろう).パフォーマンスの基礎となる生理学的プロセスは,いますぐ測定できるものではない。しかし,たとえできたとしても決まりきった論拠で個々の労働者の生理学的プロセスを記録することが,やはり実践的な問題である.従って主観的な(心理的な)測定は,相変わらず人間のパフォーマンスを評価するための選りすぐったものである そこで難題は本節で検討されたように主観的な,あるいは自己報告の諸技法の用い方を「具体化」することである。

職業上のストレスとストレイン
「ストレス」という言葉は,何年もの間通俗的な使われ方をしてきた.環境のストレス,仕事のストレス,感情的なストレス,精神的なストレス,速度のストレス,生理的なストレス,肉体的なストレス,生活のストレス,職業上のストレス,航空機乗務員のストレス,戦闘のストレス・……いくつかの名称を挙げたが,我々に知られている とはいえ,我々はストレスとは何かということを実際に知っているだろうか 不幸にも,この主題の科学的関心は,術語のいろいろな定義や概念につきまとわれてきた。

それにもかかわらず,我々の多くは,「ストレスがある」と知るときのように,術語として妥当な判断をもっているといっても多分過言ではない.普通の職分を果たすのを乱したり妨げたりするようなある望ましからぬ,あるいは不愉快な状況にいることを認める。一般的には,圧迫,脅し,葛藤,心配事,あるいは環境の不快な諸要素が“イライラ”させるのに気づいている 不安を感じ緊張することを訴える このような関係において「ストレス」を我々の問題の原因とし,肉体的のみならず心理的に基礎づけられた不平を結果と理解する。

ストレスに関する近年の研究
この分野の卓越した研究者の一人であるハンス・セリエ(Hans Selye)は,ストレスをその結果によって定義してきた.彼はさらにストレスの原因を,「ストレッサー」であると定義した2.セリエの研究は,ストレッサーに対する生理学的な症候群に焦点を合わせているが,その研究はこの分野での研究に大きな影響を与えてきた すべてのストレスが必ずしも悪いのではないとセリエは主張する。これはある人たちはある一定水準のストレスの下では,より効果的に仕事をするようにみえるということを認めているのである ストレスに対する反応に個人差を認めるとき,セリエは我々一人一人に,自分に最適の「ストレス・レベル」を探じ求めるよう忠告する。しかしながらこの意見の短所は,いつストレスが「良い」のか「悪い」のかの限界をはっきりさせるかという問題であった。

近年あらわれた1つの異なる概念は,人と状況との間の相互作用によってストレスを定義する すなわち,ここでのストレスは認知の知覚対象――特別な状況にある個人により知覚されたあるもの――である。そのときのストレスの結果は「ストレイン」と定義されている この定義は,ストレスを,ある対象物に歪み(ストレイン)を生じさせる働きをする。荷重または力系と定義するのが常である技術者たちにとっては,明らかにより合点のゆくものである(Singleton3をみよ)個人がストレスに満ちた状態に,自律神経系の機能で反応するのは正常である。この自律神経系の機能は究極的には内分泌腺活動(例えば,アドレナリンの分泌の増加)の際に影響を受け,心臓の鼓動および発汗量の増加,そして消化育ヒカの減退に表われる.もし状態が持続するならば,筋肉の緊張や不安を体験するのもまた正常である。その状態が持続して処理が不適当であるときは,ストレインのソヒ候― 興奮の増大,胃の具合が悪くなる.頭痛,背中の痛み,憂うつ,不眠症,ことによると潰瘍,高血圧――がみえ始める 従ってそれは,ストレスに対して反応する際の個人差をある程度説明する人が,他人の反応を処理するのに相対的な効果がある しかし,不可欠な必要条件を記憶しなければならない.すなわち,個人はまず第一に状況をストレスに満ちたものと知覚しなければならないし,もしそのように知覚されないならストレスはその人にないのである。

人間は生活様式を変えると,それが快適であろうとなかろうと,それに対する適応が求められる.調査研究によると,主要な変化は,情緒障害,肉体的兆候,病気の高い発生率と関係があった。ライフ・チェンジ尺度で測定すると,病気と1年以内に起こった配偶者の死,離婚,家族の死,妊娠,失業,転職,定年,結婚などいくつかの名があげられるストレスの多い出来事との間には関係が知られてきている.

図表5.1.1は,職業上のストレス,ストレイン,病気の研究で,一般に影響を与えていた多数の尺度間の関係を描いている.同図表はミシガン大学のカプラン(Caplan)と同僚たちによってなされた決定的な研究「職務要求と労働者の健康」に基づいている。尺度のあるものは客観的に測定されるが,他のものは主観的反応データから推論されなければならないということを留意すべきであるこの研究のために開発されたいくつかのインデックスの作成についての特別な詳細は出版物を参照されたい5.主観的なストレスの反応,例えば職務の不満足,倦怠,肉体上の訴え,不安,意気消沈,焦燥感を評価するために開発された特別な尺度は,本章の読者にとって特別な興味あるものであろう。このような尺度を開発するために用いられた技法についての詳細は,このハンドブックの範囲外であるが,このような尺度が存在しているということは重要なことである(尺度の開発方法論については,Nunnallyをみよ)。

もう1つの最近の研究は,何人かの英国の研究者たち7によって行われたものだが,反復性のある仕事についてのストレスを扱ったものである。被験者はいくつかの工業会社と製薬会社で反復作業に携わっている500人以上の現場労働者である.仕事の性質は主に熟練を要しない組立,機械操作,検査,包装であった。サンプルの大部分は女性であった。職務記述書のチェックリストは,労働者が自分の仕事に対する知覚を評価するために開発された.その内容は,それぞれ次のような尺度を持った5つの形容詞のリストである。

いつも      4
しばしば   3
時たま      2
まれに      1
全然なし   0
決められぬ

チェックリストを用いて,研究者たちは労働者に自分の仕事をどのように考えているかを記述するように依頼した.調査のデータは,因子分析の技法で分析された。

この技法は4つの主要な因子を確認した。研究者たちによって分類された因子と,それぞれの因子に関連している代表的な変数は次の通りである.

 

1.快感 興奮,満足,素晴らしい,愉快な,面白い.
2.退屈 無意味な,陰気な,鈍感な,うんさりするような,価打ちのある,変化のある
3.圧迫 早い,疲れさせる,負担になる,強制される。ゆっくり
4.困難 難しい,複雑な,厄介な,容易な,簡単な,処理し易い.

両極の程度が,因子の構成について留意されるべきである.4つの因子は,この研究の中で労働者にとって知覚されている反復作業にともなうストレスのタイプに重要な洞察力を与えている。

ストレスの研究に関連のあるストレインの測定の諸タイプは,本節の主題へのアプローチの典型である ストレスとストレインの測定に内在している問題は,読者に明らかであろうが,それは主観的反応の厳密な評価がそんなに単純ではないという警告となるであろう。

疲 労
疲労という言葉は,非常に悪くいわれ誤用されている実際,著者は見出しとして用いるか否かすら思案した.このあいまいな言葉の使用に対して,いろいろな異論がある.さる著者たちによると,疲労と課業の継続時間を等しいと考える。だから「長い」課業は必然的に「疲労」させることになる。もし被験者たちの1つの集団の平均のパフォーマンスが,残業中に減少を示すことが観察されるようであれば,そのときには被験者たちは疲れてきているに違いない。明らかに,もし我々が研究の目的に疲れさせる課業を望むなら,それを長いものにする.これらの所説の循環論と不合理に注意しなければならないいくつかの事例で,時々(低いパフォーマンスの)原因となっているようにみられるし,一方,他の場合には(長時間の課業の)結果となっており,疲労が暗示されている。

(1)特定の時間における被験者一人一人のパフォーマンス,(2)そのときに,それらの一人一人はどのように感じているか,という2つの事柄について労を惜しまず調べた研究者は少ない。要約するならば,個人個人が特定の時間に感じることについて述べていること(もしよければ,「被験者の疲れ」といおう)と,その個人の課業のパフォーマンスの水準との間の関係は,高い確実な相関関係を示すことはできない さらにある人の主観的状態は,必ずしも将来のパフォーマンスの前兆とはならないつまり,主観的な疲労度はパフォーマンスと相関関係にあるもの,あるいはパフォーマンスを予言するものとして受け取ることはできない。ここで論じられたように,疲労は,現に従事している課業に対するある人の気分を反映している感情をいう心理学用語である〔ここでの主観的疲労は筋肉(生理学的)の疲労とは区別される.筋肉の疲労は,客観的に測定することができる.本質的にそれは課業に対する嫌悪の反映である「私は何かほかのことをしているほうがましだ」という表現から例証されるように,終業のベルの鳴ったとき,疲れた労働者が自分の車に走って行くという事実をほかにどういうちに説明できるだろうか従って,この論題を取り扱うときには,次のような特別な差異を設けることが必要となってくる。

1.疲労 疲れの主観的感覚
2.仕事の減少量 課業のパフォーマンスあるいは能率の低下
3.障害 課業を達成するための肉体台旨力の損傷(すなわち不適格)例えば,指の痙攣,視力や聴力の変化

これに関連して, IE技術者の第1の関心は,作業の漸減の問題とその緩和であるべきである.第2には,IE技術者は,感覚,聴覚,筋肉運動の有旨力の障害は,非能率や事故の原因となる要因であり得ることに気付くであろう 最後に,疲労の訴えは職務不満足の症状かも
しれないし,動機づけの不足かもしれないので(例えば,課業が人の闘志をあおり合起させるような難しさに欠けている),無視すべきではないといえる要約すると,疲労とは主観的なものである――感じ――であり,兆候なのである それは一端上の極度の疲労と倦怠の感じから,他端上のさわやかさと活発な感情に伸びる次元の一部分である.これはものうさ(眠気),退屈,突進する(例えば,動機づけられる感じ)のような他の感情を表わす次元と混同してはいけない.さらに詳細にわたって述べると,(1)疲れていても眠るのが難しいことがあるかもしれないが,まだ疲れを感じていないのに(例えば,退屈な演説の間),居眠りをするかもしれない(2)退屈した人が,必ずしも疲れを感じるわけでもないし,またその逆もある.(3)疲れた人がさらに長く仕事に張り切るかもしれない.特にもしその報酬が高ければなおさらである 結局,多くの例において疲労の感じの効果的な解毒剤は仕事である! ということを特記することは興味深いことである。すなわち,「疲れたJ経営幹部は実際一日の仕事の終わった後で, テニスの試合によって元気になるかもしれない。

個人の主観的疲労の水準を評価するのに用いられる「フィーリング・トーン・チェックリストJの一例が,図表5.1.2で与えられている 尺度は,精神物理学と測定基準の方法論を利用して開発された8得点は,次のように反応を計量して得られる.「より良い」-2,「同じ」-1,「より悪い」-0 要するに,得点は0から20点までの範囲になる。 著者とその学生による研究では,チェックリストは課業の難しさ,仕事負荷,休憩の予定,興奮剤と鎮静剤,アルコール,残業の課業のパフォーマンス,ほぼ24時間の周期で回帰する規則的な生物学的サイクルのリズム,というようなものに対して感じ易いということを示している。この尺度,他の疲労のスケール,主観的症候学の論題についての実践的な論評は,キンズマン(Kinsman)とヮイザー(Weiser)により紹介されている.若干古いが,バートリー(Bartley)とシューテ(Chute)によって書かれた書籍は,疲労とそれに関連した気分の状態を主題にした論評と吟味としては,多分いまなお最高である。 他の視点については,グロンジョン(Grandiean)の業績をみられたい。

明確な注解をしてこの節を終えるに当たり,主観的測定が課業に対する不満や産業上の倦怠を示唆し得るものである 我々は状況を改善するために多くのことをすることができるということを知るのである 職務歴任制,職務拡大,職務充実を通じて知覚器官への入力(刺激)の種類を増大することが助成することになるかもしれない。 経営参加を通じて,人々を意思決定に巻き込むことがもう1つの方法である.結局,人間工学者は,作業場所を機能ある一層刺激的なところとする職務設計で多くのことをすることができる。このような変化は,パフォーマンスで予測される増加に関連する原価と売却価とによって評価されるべきであるが,ここでは詳細に論じない.

他の気分の状態
ある特別なときに,1人の個人が主観的に表示することのできるいろいろな気分の状態があるという事実が,前述の論議にもともと含まれている。端的にいえば,気分は多次元の概念である.だから誰がどのように感じているかと聞かれたときに,その答えは例えば,飽きた,張りつめた,心配だ,憂うつだ,疲れた,イライラするなどのように数限りない次元の言い方になるかもしれない。

たくさんな項目(および想定された次元)を含んでいる気分や感情のチェックリストを開発するために,数々の努力が重ねられてきた。この手段の1つの大きな用途は,薬の副作用を測定することであり,他は周囲の状況の両極端への人間の主観的反応を評価することである。

なかんずく,日本人たちは工業での課業を評価するときに用いるため多次元の手段を開発したし,他の手段(例えば,「肉体の活動への質問表,Physical ActivityoueStionnaire」)は肉体的に要求する課業について実験室での研究用に開発されてきた9’12 精神測定的な技法(因子分析とクラスター分析)は,これらの手段のいくつかを必要とするデータに潜在する諸次元あるいは評価される独得な気分の状態とに,限界を定めるために適用されてきた.この2つのタイプの研究が,いつか仕事に対する主観的反応の特質の明確な知識を提供し,そして研究者たちにそのような特質と人間の多様なパフォーマンスとの関係を探究できるようになることを期待している.

努 力
どのような体力を要求する課業でも一一かなりのエネルギー消費を必要とするようなもの一一含まれている努力,すなわち1人当たりのエネルギーコストを測定することが望ましい。このようなデータは,多くの目的に役立つ.(1)課業を遂行できる人と,遂行できない人,あるいは潜在的な自己損傷の理由で遂行できないだろうと思える人を選び出すための雇用以前の選別のため.(2)より効率の良い手作業の運搬管理のための作業面の位置決定と適切な補助者の選定を含めた職務設計.13)作業と休憩のサイクルの妥当な計画のため 一般には,心臓・血管,呼吸,筋肉活動の生理的測定が,この測定法には含まれる。例えば,心電図(EKG)あるいは心博数,酸素の
消費,筋電図である.

いろいろ異なった作業能力,作業姿勢,作業速度,課業の強要(例えば,取り扱われた仕事の量)にかかわるエネルギー消費(1分当たりのキロカロリー,または酸素の消費が1分当たり何リットルで表わされる)については,かなりのデータが存在している.エネルギーコス
トおよび総労働時間と必要な休憩時間との関係についての式がある。このようなデータは,肉体的に強要する作業活動に携わるIE技術者に手引きを与えることができるしかし,もしそれらが,特定の目的に不適当であるなら,IE技術者は自分に必要適切なデータ収集が,労働者(被験者)の尽力,比較的高価な設備,データ解釈に専門家の助力を必要とすると認識すべきである。これらの必要条件があるので,工業の状況によってこのアプローチを用いることは,しばしば実現不可能であったり実用向きでなかったりする.

1つの代案のアプローチは,知覚された努力を評定尺度で測ることである.1つのこのような尺度は,しばしば「レイティング・オブ・パアスイーブド・エフォート(RPE)スケール (Rating of Perceived Effort Scale)」,あるいは「ボーグ・スケール(Borg Scale:開発者の名前に因んでいる)Jと呼ばれているが,図表5.1.3に示してある この15の採点基準のある尺度は,正常で健康な中年男性の心博数を,RPEの値を10倍すれば予測できるように開発されている。肉体労働量は,心博数が1分間に170拍になる負荷レベルによって決定することができる.この負荷レベルに相当するRPEの評点は,経験的に16.5であると決められた 実用上は,尺度の評点のそれぞれは1分間に10拍に相当すると考えられている。このようにして,RPE尺度の読みが9(とても軽い)ということは,大まかには1分間90才白数の鼓動に相当するであろう.

RPE尺度を用いて,広い範囲のデータが収集されてきた(詳細や評論は,KinsmanとWeiser,そしてBrgl3を参照)研究は,いろいろな荷物を乗せた自転車で引っ張る,持ち上けの反復,いろいろな荷物をのせた手押し一輪車を押す,歩く,走る,のような課業を行ってきた RPE尺度を用いての研究の結果は,それが努力を評価するために有効でかつ信頼できる用具として役立つことを立証し,そしてさらにそれがストレインの指標としての,心博数と高い相関があることを確証しており,ウルマー(Ulmer)と同僚たちは,知覚された努力はストレインよりもかなリストレス(負担)に依存していることを示すデータを提出している。 図表5.1.3で示されているストレス,ストレイン,認知された努力との間の関係を評価する際,彼らはRPE評点へのストレスの影響はストレイン(′心博数で測定した)の影響を上回っていると結論している 実際ある条件下で,心博数とRPEとの間の関係はないという証拠がある。また他の人たちは,肉体的兆候と人によって実験されたりRPE尺度に主観的に表わす気分の性質について問題を提起したこのような問題にもかかわらず,体力を要する仕事における努力を評価するために,尺度が有益であることは相変わらず明白である。

快適さ
快適さは,最も普通には熱,加速,振動のような悪条件の環境での問題である.問題は一極値快適から,いろいろな程度に変わる不快を経て,他方の極値苦痛にまで一般的には一直線になっている.さまざまな標準得点の評価尺度が,研究者たちによって主観的反応を測定するために用いられてきている 一般に,これらの尺度は「気になるが,いやではない」,「辛うじて,受け入れられる」,「まあまあ我慢できるJ,「我慢できない」,「耐えられない」というような言葉によって評価者を手引きするために,分類されている 環境ストレスと関連のある快適さについての検討をさらにするために,読者は騒音と振動,照明,気候を参照すべきである。キンズマン(Kinsman)とワイザー(Weiser)はまた痛みについて,また熱の不快についての研究を再調査している。快適さの評価は,また作業条件や作業場所の設計が,状況の不快への不満を導き出すような場合には重要である 作業場所での快適の1つの重要な側面―座位姿勢が,シンポジウムの主題となったことがある。このシンポジウムの会報には,シャクル(Shackel)とその同僚による章があり,これには椅子の快適さを評価するのに用いられた種々な手順が記述されている15彼らの研究の中で,10個の椅子のデザインが評価されているが,彼らは次の4つの主観的測定単位を用いた。

1.総合快適さの格付け H個の陳述で,格付けする尺度が用いられた 例:「私は全くリラックスしたJ,「私は全く気持が良いJ,「私は窮屈だった」,「私は締め付けられて痛かった」
2.身体の部分別の快適さの格付け 身体を15の部分に分けた身体図が書いてある.被験者は,3つの最も快適な部分から,3つの最も快適でない部分に至るまで分類するために,5つのグループの格付けの言葉によって,身体の15の部分を格付けるよう指示された。
3.椅子の各部分のチェックリスト 椅子の特定の各部分を,おのおの3つの回答の中の1つを選んで評価した 例:「椅子の高さは,①高すぎる,② ちょうど良い,③低すぎるJ「座部の形は,①貧弱,②妥
当,③立派」
4.直接の格付け ここでは被験者がそれぞれの椅子に実際に座って評価した。被験者が,格付けの順番付けに満足できるまで次々に坐ったり,比較したり,分類したりした

 

他の人々と同様に,彼らの研究に用いられた主観的諸方法の評論と批評は,シャクル他の文献に含まれている.労働場所に目を向けると,IE技術者は常とは異なる(ときには異常な)姿勢が要求される課業とか,上半身を工作物の_Lに被いかぶさるような不快な姿勢を無意識にとらなければならないような労働者たちに関心を持つべきである。コーレット(Corlett)が開発した評価技法のような不快さを格付けする形式のものを,ここでは用いるとよい コーレットの研究では16.人間の身体を12の部分(首,肩,背中の上部,尻,腿,腫)に分け,労働者が通常の作業の間にその身体図を周期的に(例えば,30分毎に)印をつけていった 最もつらい部分,次につらい部分,等々.不快な部分が全部無くなるまで続けた.コーレットによれば,『「不快がない」と報告される前に,確認された身体の部分の異なるグループの数は,経験した痛みの強さの水準の数値を表わした。』17.このようにそれぞれ個別に報告された苦情のグループは,不快に関しては明確な違いを見分けられるということが判明している.これは,報告された水準の数値に比例して,最も痛みのある不快な所を計量している.評価の目的のために,データは身体の部分によって分類され,労働者の数で平均され,そして就業時間数を横軸にプロットできよう。設備や作業場所内に,変化がもたらされた場合,新しいものと古いものとを比較するために,評価のプロセスが再び繰りかえされたほうがよい。コレットのアプローチは,作業場所での姿勢の不快さを評価するために役立ついくつかある技法のうちの1つかもしれない。

 

悩 み
他の主観的次元である悩みは,作業場所で何かが邪魔をし,気を散らせ,やっかいで,不愉快で,等々というような不平が特徴である.悩みの不平は,騒音のある場所で卓越している.私の研究が,図表5.1.4で示すような「アノイアンス・レイティング・スケール(Annoyance Rating Scale)」を開発することになった.この研究では,集団内の個人は騒音にさらされ,その後で25採点基準尺度へ自分の悩みを格付け(チェック)させられた(図での評価は,得点を記録するためであって,評価尺度には表われなかった。15点を付けられた回答が示されている)6つの異なった騒音は,音圧レベルのピーク値という点では等しかったが,これらの音に与えられた格付の平均の間には著しい相違があることが判明した.例えば,空気はつり機の音は,最高の平均点である1916であった.ジェット機の低空飛行の騒音は1248,工場騒音は1076.トラックの登坂やギヤの入替えは800であった。このようにして,あらゆる騒がしい大きな音が必ずしも同じようにイライラさせるのではないことが認められるべきである.騒音の特徴(周期的,断続的)とその周波の幅が悩みの程度を決める主要な要因である.

この研究でのもう1つの主要な発見は,被験者たちの悩みの格付けに大幅な個人差があるということであった.6つの刺激に対する各人の格付けの平均は,165の低さから2220までと様々であった。換言するならば,これは幾人かの被験者にとっては,同一グループの刺激で極端に悩まされている被験者がいるにもかかわらず,いろいろな騒音に悩まされることはほとんどなく,あったところで僅少だということを意味している。

人々に及ぼす影響の面で,騒音は明ら力ヽこ数ある環境ストレスの中で最も特異なものである.騒音は心理的なものであることを記憶すべきであろう。さらに騒音は必ずしも悪,すなわち不必要であると独断的に見なすべきではない ある人々,特に一人で生活している人々は全くの静寂よりいくらかの音のあるほうを好む。それからまた,ある音は,労働者に器具の操作にかかわる必要なフィードバックをもたらす。例えば,金属材料に穴をあけるときドリルのひっかかった音,欠陥のあるベアリングの音 結局,パフォーマンスについての音の影響を示す研究の証拠は,ほとんどなかった。実際,パフォーマンスはしばしば騒音の中でのほうがうまくいくことがある多分,その音が我々を目覚めさせていてくれるのだ。この後者については,職務評価の目的のために作業環境での騒音に点を与える(高得点のほうが悪い)しきたりに異議を唱えてもよいと思うが, IE技術者は,注目せよ!

他の主観的現象
紙幅は総ての測定尺度と引用できる主観的次元を含むことを許さないが,さらに2つのことを簡単に考えよう前述の例について,我々は多分に否定的な問題一不快,疲労,努力などの防止―一にかかわってきた.計画の積極的なゴールの1つは心地良さである 心地良い作業環境,それが事務所あるいは工場であれ,望まれていると同じくらいの熱意で,場所の美学に対してある思いやりが与えられることが必要である 美的心地良さというのは,捕えどころがない多次元的な考えであるが,近年の研究は評価の次元が開発され得るという見込みを主張するものである。

ここで適切な注釈のために,読者はベニット(Bennett)による検討を参照されたい19.最後に,手動制御の状況での操縦の問題について,多くの研究がなされてきたということに注目すべきである.ここで我々は,フィードバック,合図,ある装置,乗り物(自動車,船舶,航空機)の手動制御操作から受けた影響(効果)に取り組んでいるのである。手で操作することが, 1つの制御系統の有効性(例えば,安易さ,安定,敏感,正確)に対する操作者の認知を反映している限り,それはシステム設計の過程において評価すべき重要な要素であると考えられる.多分この主観的次元は,このハンドブックの範囲を超えているであろうが,尺度と照合表はそれを格付けするために存在するのだということに注目すべきである。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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