コラム・特集

5.7 観測回数の決定方法

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理


第5章 ワ-ク・サンプリング

5.7 観測回数の決定方法

ワーク・サンプリング調査に必要な総観測回数を決定する際に何よりもまして重要な要素は,実際的考慮である。すなわち,データ収集の費用はいくらか,情報の価値はどれくらいか,である。あまりにもしばしば善意ある人は,調査目的に対して全く十分と思われる0.05とかさらには0.10を超えて0.01の精度の費用を知ることもなく,± 001の精度が望ましいと決めてしまう。一般に推定の精度は,観測回数の平方根に逆比例する。したがって,精度を計る物指しの長さを1/2に減ずるためには4倍のデータが必要になる。

ワーク・サンプリングの担当者によって,サンプル・サイズの決定法が著しく異なっている。ある担当者は,精度を規定し,次にサンプルの大きさを求めている。それに対して別の担当者は経済上の制約から実行可能なサンプルの大きさを決めて,次に調査の遂行上正当な精度が得られているかどうかをチェックしている。

精度はZα/2 ×(SD)として計算される.したがつてD=精度とすれば,総観測回数は,

     NA=1+P'(1-P7)(Za/2)2乗/D2乗・・・・・(2)

この式に加えられている1は,以下のすべての式では無意味であるので除かれている。たとえば.P′ =0.10とし信頼率95%でD=0.01の精度が望まれるならば,

       NA=(01)(09)(1/96)2乗/(0.10)2乗=3458

の総観測回数が必要となる“理論的にはNAに1を加えるのが正しいのであるが,ほとんど影響はない。

別の方法として,担当者の中には,調査に望ましい推定値の相対精度を規定したほうが,より簡単であるとする者がある。p′ ± 0.01を求める代わりに,p′±0.1P’,すなわちPの10%以内を求めようとするものである.したがって,Dが「絶対精度」(あるいはもし,が不偏推定値ならば「正確度」)と呼ばれ, P=D/P′が「相対精度](あるいは「正確度」)と呼ばれる.この場合、

           NA= (1-p′ )(Zα /2)2乗/(P’)R2乗

P′の10%以内の精度が必要なときはR=010とし,P′=0.10に対する必要観測回数は,再び次のようになる。

             NA=0.9(1.96)2乗/0.1(0.10)2乗=3458

しかしながら,上例のようにD=001,R=010とし,P′ が0.10でなく0.90ならば,絶対精度D=0.01を得るのに必要な観測回数は(信頼率95%で),

         (09)(01)(196)2乗/(0.01)2乗=3458

しかしR=010は090の10%,すなわち0.01ではなくて0.09の精度を必要とするから,
所要のサンプルの大きさはわずか、

         NA = 0.1(196)2乗/0.9(0.1)2乗=43

となる。

式(2)と(3)から求められるNAは,95%の信頼率に対するZα/2の値として1.96あるいは2を用いたときの必要な総観測回数を計算するために,調査のはじめに用いられる伝統的な値である.P′は調査のはじめには未知であるだけでなく,真に正確には求められないから,p′ の粗い推定値が用いられる。信頼率95%のときの絶対精度と相対精度,DとRの値が,NA=100,500,1000,5000と,P′ の11の相異なる値に対して図表4.5.6に与えられている。 数式と同様に図を用いるためには,未知のP′の推定値が必要である。

式、

      D=Za/2√P7(1-P’)/NA
および
  R=Za/2√(1-P’)/P’NA

は,その他の信頼水準(Za/2値に対して図表4.5.5を参照)およびその他のNAの値に対して,図表4.5.6にない値を求めるのに用いることができる。

たとえば,,P′ =03,Zα /2=196,Ⅳ′=1000に対して図中のDとRは,

D=1.96√(03)(07)/1000=0.0284

および

R=1.96√(0.7)/(0.3)(1000)=0.0947

しかし,P′ =03, Zα/2=3(99.74%の信頼率を意味する),NA=1000に対して

   D=3√(0.3)(0.7)/1000=0.043

および

  R=3√(0.7)/(0.3)(1000)=0.145

この値は図表4.5.6にはない。

A.D.モスコビッチのご好意によるノモグラフを図表4.5.7に示す。このノモグラフの使い方は次のとおりである.P′×100%を左端の列上に要素百分率をとる(たとえば,=0.2とした場合,20%をとる).次に必要な精度百分率,D× 100%を右隣りの列上にとる(たとえばD=0.04とした場合,4%をとる)この2つの点を結び,その線を図の中央にある縦線まで延長する.この交点が転回点を表す.転回点と短い目盛上にある所望の信頼水準,たとえば95%の点を新しい線で結び,そしてこの線を右端の目盛まで延長すれば,必要なサンプルの大きさが求められる。この例では384がNAとなる。ノモグラフは,これと同じような手続きによって,精度あるいは信頼水準に対しても,他の3つの値が与えられれば,求めることができる。

図表4.5.64.5.7はともに二項仮定に基づいているので,分散の推定値,したがって推定精度を求めるには,P′を推定しさえすればよい.もし二項仮定が成立しない。ならば,サンプルの大きさや精度を決定するまえに分散を推定するためにいくらかのデータを集める必要がある。計画されるサンプルの大きさ″′は,どのカテゴリー(どのクを)に注目するかによって変わってくることは明らかであろう。ある担当者は最も小さい値のPκに関心があるかもしれないし(相対精度を用いた場合の保守的手続),ある者は05に最も近い夕κを選ぶかもしれないし(絶対精度を用いた場合の保守的手続),またある者は単に調査で最も関心の高い主要カテゴリーを選ぶかもしれない。

NAの決定は,データが集められるにつれて改良することができる。,P′ は,ただ単なる推量ではなく,P,すなわち調査途中のその時点における最良の推定値でもって推定することができる。

I日間の調査が行われた時点での総観測回数は

NA(′P )= P(1-P´ )(Zα/2)2/D2乗

しかしすでにⅣ回の観測がすでに行われているから,絶対精度Dを得るために必要な追加観測回数は次のようになる。

  NA(I)一N=N {P(1-P)/Z2乗/D2乗)-1}=N(VA Z2/D2-1}

もし1日当り平均Ⅳ/1回の割合で連続して観沢Jが行われるとするならば,絶対精度Dを得るためには,さらに次式で与えられる追加日数が必要となろう。

  (追加日数)A=I(VA/Za/2)2乗/D2乗-1) ・・・・・(4)

例えば信頼率95%で0.02の精度が望ましい場合,5日間で作業者を500回観測した中,特定のカテゴリーに対する観測が125回であったとするならば,p=125/500=025となり,総数(025)(075)(196)2/(002)2=1801の観測回数となる.それゆえ1,801回の観測が必要となる。しかし500回はすでに観測されているから,1801-500=1301回の観測が必要となる。最初の500回の観測に5日間(1日当り100回)かかるので,1301/100=1301日間の追加調査を予想するのが合理的である。

この値は式(4)から直ちに次のように求められる。

5((0.25)(0.75)(1.96)/500(0.02)2乗 -1)=13.01

調査の途中で,もしコンピュータ・プログラムが利用できるならば,絶対精度Dを確保するために必要な追加調査日数は,付録に紹介されている代替的な分散推定量Va,およびVcによって計算される。特定の精度を得るために必要な追加調査日数を計算する手続きは,付録の5.3 A節に述べられている。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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