コラム・特集

5.5 観測時刻の決定方法

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理


第5章 ワ-ク・サンプリング

5.5 観測時刻の決定方法

観測時刻の選択には2つの原理が重要である。すなわち,ランダム化と層別である.観測者が1日24回の観測を30日間行うことを決め,30日間毎日24のランダムな時刻を選ぶときには,日内のランダム化と日ごとの層別を行う。

ランダムな時刻が欲しいときは,多くのハンドブックやテキストブックの中にある乱数表やポケット型技術計算器にプログラムが内蔵されている簡単な乱数発生プログラムを利用することができる。 電話番号の最後の3桁あるいは4桁の数字もまたかなりのランダム性の確度をもって利用できる.24個のランダムな時刻が,かっきりその時間に必要な場合, 1つの簡単な方法は,3桁の乱数を調べて行き,就業直内の時刻に対応させて,24個になるまでこれを続けていくものである。 2, 3の特別な規則を用いて,429は4時29分,637は6時37分,933は9時33分にそれぞれ単純に対応させる(図表4.5.3参照のこと)783と987は,7時83分,9時87分に対応させられるが,これらは時亥Jではないので除かれる。最初の数字の0は10時のために用いる。

たとえば048は10時48分となる。 しかし就業直が11時または12時にわたるならば, 2つの「使わない」数字をコード化しなければならない.図表453に示すように7時45分から4時15分の就業直の場合,数字5はH,数字6は12の代わりに用いられる。すなわち637は12時37分になり, 531は11時31分となる 9時00分から5時15分の就業直の場合,6は11に,7は12の代わりに用いる。その結果637はH時37分となる.11時00分から7時15分の就業直の場合,8は11, 9は12の代わりに用い,813はH時13分となる.就業直外の時刻は,昼食時間帯の時刻と同様に捨てられる。

24個の時刻は順序づけられなければならない。というのは2時52分の観測の前に4時29分の観測は不可能であるからである また,モーダーおよびカーン6によって提案されている方法によって,ランダムな時刻を時刻順に生成させることも可能である。

ランダム化は,作業者が観測時刻を予想することから引き起こされる偏りを減少させるために行われ,層別化は推定値のばらつきを小さくするために行われる.層別化によるばらつきの減少はサンプリングの基本原理であり,特にワーク・サンプリングにも触れて,モーダー7によって説明されている.層別化による分散の減少は大部分の担当者によって理解されており,観測値がすべて1つの時区間内で発生しないようばらまくことによって,極端に高いかまたは低い推定値を避けるという意味において,よりよい推定値が得られることを彼らは直観的に実感している。それ以上の分散の減少は,観測者が1日8時間の各1時間当り3つのランダムな時刻を選ぶことによって達成される。これは時間による層別化を行うことになる。

さらにこの主張を進めれば,各20分区間に1個のランダムな時刻を選ぶこともできる.時間的によりもっと広い範囲で観測するためには, 1日の最初の20分間中のランダムに選ばれた時刻を出発点として,20分ごとに1つの観測を行っていけばよい。この場合,系統サンプリングが行われている。

もしサンプリング・サイクルが作業工程の自然の作業サイクルと一致しないならば,系統サンプリングは分散を減少させるのに都合がよい。もし先の例にあるような手続きによって,特に開始時刻をランダム化しないで,1日8時間で30日間を20分ごとに観測することにすれば,毎日の始まりと終わりに同じ活動が観測されることが期待されよう。すなわち作業者が毎日の就業直の開始後2分(すなわち7時2分)に最初の日の作業票に書き込み,観測者がその就業直の間各20分区間の開始後2分(7時02分,7時22分,7時42分,8時02分,など)に1つの観測を行うとすれば。30日間で,このまれな活動が30回観測されることになる。

しかし,もし観測が各区間の開始後6分に行われるとするならば(7時06分,7時26分,7時46分,など),その活動は絶対に観測されない。20分サイクルは自然の8時間サイクルに一致しているので(24×20分=8時間),分散は小さくならなくて大きくなる。

推定値の極端に大きな値もしくは極端に小さい値が容易に起こり得る.一日の出発時刻をランダム化すれば,この分散の増大をいくらか防ぐことができる.系統サンプリングの第2の問題は,観測時刻が容易に予想されることである.しかしながら,例えば機械稼働状況調査のように,作業者に直接関係のないワーク・サンプリング調査を行う場合,系統サンプリングによれば,偏りがなく分散の小さい推定値を求めることができる。しかも観測者は時間が規則正しいとき,観測業務をよりうまく編成することができるから,労力が少なくてすむ。

サンプリング手続の選択
J.J モーダーは,毎日のワーク・サンプリング調査に対してサンプリング手続を選択するための決定過程7を提案した(図表4.5.4参照)。モーダーは,すべての方式のもとで観測値が日男1に層別されることを前提としている。

次のような定義に従うとき,図表454は未熟練担当者にとって役立つだろう.

SyRS 次の場合,系統ランダム・サンプリングが行われる。1日t分間からなる1日の間にr回観測巡回(作業者当りt回観測)を行い,その日の最初のt/r分間についてランダムな時刻を1つ選び,その後の観測はちょうどt/r 分間隔で行う。 本節の最初に与えられた例では,′t=8× 60=480分,″r=24,′t/″r =20分である。

StCRS  層男J連続ランダム・サンブリングにおいて,そこで用いられている「連続」という言葉は,観測者が100%ワーク・サンプリングに従事し,「連続的に」ワーク・サンプリングを実行するという意味である.観測は依然として瞬間観測であり,連続時間研究を意味していない。

ランダム化は,(1)各観測巡回の開始時点のランダムな選択(各工程に番号がつけられ,番号がランダムに選ばれる),(2)いくつかの異なる経路のランダムな選択(種々の実行可能な経路に番号をつける),(3)コインを投げて巡回方向を決める(時計回りあるいは時計の逆回り),によって達成される。作業者の偏りを防ぐためにはどの程度のランダム化が必要であるかは,調査される作業工程に精通している者によってのみ可能な決定である。

StNCRS  モーダーは,その日の各′t/r″ 間隔についてただ1つの時刻が選ばれるとき,その手続きに「層男1非連続ランダム・サンプリング」という呼び方を用いたけれども, 1日8時間で24個の観測時刻が必要なとき,1時間につき3つのランダムな時刻を選定する方法に対してもこの呼び方は適用される。もし観測巡回が行われるならば,経路はStCRSと同じようにしてランダム化できる。

RRS 限定ランダム・サンプリングにおいて,「ランダム・サンプリング」とは,総時間間隔′からランダムに″個の時亥Jを選ぶことを意味する。1人の観測者が,ある1つの完全観測巡回を行っていて,2つの時刻が非常に接近して選択されているために,初めの巡回を完成することができないとき,限定とは,選ばれた2番目の時刻を捨てて,別のランダムな時刻に置き換えるという意味である。この手続きは開始時に採用されるから,この方法による偏りは発生しなく,分散がわずかに小さくなる。

ループ原理  およそ5分もしくはそれ以上の観測巡回が行われるとき,ループ原理について知っていないならば,いくらかの偏りが生ずることになろう.先の手続きの1つによって選ばれた1つの時刻が,慣例上特定の期間 (RRSとSyRSでは1日,StN CRSで1ま′t/r″ 分あるいは「時間」)に行われる観測巡回の出発時刻として採られる。
しかしながら,特定の期間内に巡回を終えようとするならば,その期間の終わりに近い時刻に巡回をはじめることができないし,また同様に,1観測巡回の後半部分はその期の最初の数分間には決して観測されないだろう。このように終わりと始めの活動が期間の中間の活動と異なるとき,偏りが誘発される可能性がある。

この偏りの源泉を取り除くために,その期間の最後の観測巡回を同じ日の最初の数分に延長することを考えよう。すなわち, 1回の巡回に10分かかるものとし,その日の最後の観測時刻が終業の3分前とするならば,最後の巡回の後半の70%は,就業時間の最初の7分間に,その日の「最初Jの巡回がはじまる前に行われる。

もしStNCRSがより短い期間,たとえば数時間もしくは20分間,内でランダム化されて実行されるならば,これらの偏りを避けるために各区間内でループ原理が考慮されなければならないが,あまりにも複雑になりすぎて得るところがないかもしれない。例えば, 1回の巡回が各20分区間のあるランダムな時刻に行われるものとし,1巡するのに6分かかり,ランダムな時刻の出発が「17分」であったとするならば, 1巡の半分だけが20分内に完了し,残り半分が同じ区間のはじめの3分間に行われる。

すなわち,区間の始まりが1時20分とすれば1時20分から1時23分までの時刻が先の巡回の後半部分のために用いられ, 1時37分(20+17=37)から1時40分までの時刻が巡回の前半部分のために用いられる。もしワーク・サンプリング調査が,ごく少数の作業者や機械に対して行われるならば,ループ原理は無視できる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー