コラム・特集

5.3 ワーク・サンプリング調査の目的

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理

第5章 ワ-ク・サンプリング

5.3 ワーク・サンプリング調査の目的

ワーク・サンプリング調査の直接の目的は比率p′,すなわち作業活動が細分類されたK個の異なるカテゴーに対応する比率P’1、P’2、・・・・・、の集合に対する「良好な」推定値を得ることである。統計学者は,推定量を「良好な」ものにする特性を決定するために多くの理論を展開しているけれども,ここでは次の2つの特性のみを取り上げる。すなわち,偏りがないことと分散が小さいことである。

偏りのある推定量とは,それを推定するために用いられる手続きによって高すぎる(あるいは低すぎる)値となりがちなものをいう。例えば,ある作業カテゴリーが「掃除する」であって,ワーク・サンプリングの観測者が常に就業直が終了する以前に退場するとするならば,このカテゴリーに関する,P′ の推定値クは,おそらくあまりにも小さい値となるであろう。したがって,は,P′ の偏りのある推定量と呼ばれる.同様に,もし作業者が調査結果に関心をもっていて,観測時刻を予想することができるとするならば,Pは作業者によってゆがめられる可能性がある。

良好なワーク・サンプリング調査は,偏りのない推定量を生み出し,かつ,われわれが推定したい望ましい値に近い推定量が得られるような方法によって行われる。すなわち,もし20回の異なる調査が同じp′ を推定するために同じ手続きで行われたとするならば,日標は,20回の調査から得られる20個の推定値,が互いに非常に近い値として得られることである。もし仮説値クが非常に近い値であれば, Pは,P′ の小分散推定量である。

もしPが,P′ よりも小さくなりがちであると同じ程度に,p’ よりも大きくなりがちであって(偏りがない),P′に近い値である(小分散)ならば,Pは,P′ の良推定量であると見なされる。ワーク・サンプリング調査を計画するときには, pの偏りと分散の両方を最小にするための努力がはらわれる。しかしながら,分散を減少させる方法の中には, ときたま偏りを増大させるものもある。

ワーク・サンプリング調査の直接の目的は,いくつかの,P′ すなわち,P`1,・P’2・・・、P’nの集合を推定することであり,したがって推定値,P1,p2,・・・P’xの集合を求めることが目的であると考えられるけれども,調査者はこの調査の究極の目的を見失わないようにすることが大切である。ワーク・サンプリング調査は多くの目的のために行われる。その中には,全般的な情報の獲得,提案された変更の正当化,標準の設定が舎まれる。

工程に関する全般的情報の獲得
情報はもちろんそのものが目的ではない。暗に含まれている目的は,設備にしろ従業員にしろその活用法を改善することによる費用低減であり,備の増強が必要とされる分野の確認である。

全般的情報調査は, IE技師がその企業において新人である場合とか,経営者が有効利用に関して全体的に疑問をいだく場合に行われよう.全般的情報調査をうまく計画することはむずかしい というのは計画者はカテゴリーを決めるときに,調査によって何が明らかになるかを知らないからである 例えば,調査の終わりになって,「材料待ちによる遊体」というカテゴリーが不適切であることが分かり,後になってどのような種類の材料が不足しており,その作業工程に材料を搬送するためにはどのような方法が考えられるか,例えば,コンベヤかフォーク・トラックかについて知ることが,必要であったことが明らかになるかもしれない。

この種の調査は,もし経営者に対して,自由討論,説明,既製のフィルム*による単純化された例題を用いたオリエンテーション活動によって慎重に導入されれば有効なものとなる。

全般的情報調査は,まず短期間(2ないし3日)の試験的調査から始めて,その後必要ならばカテゴリーを定義し直せばよい。

全般的情報調査の中には,間接労働についての標準を確立したり,監査したりするために用いられるものがある。 この場合には,ペース・レーティングが観測時に行われて,次節で述べるように,なんらかの単位の産出物が集められなければならない。

提案された変更の正当化
ワーク・サンプリングがIE技師によってしばしば用いられるのは,主観的見解を実証するためのデータ収集のためである。IE技師は新しいマテリアル・ハンドリング・システムを設置したいと考えているが,それには
現在使われているマテリアル・ハンドリング・システムによって消費される時間(したがって金額)の正しい推定値でもって設置に必要な支出を正当化しなければならない。

このような特別な目的をもった調査の計画は,全般的な情報調査よりも容易であるが,主眼点を立証しようとするあまり,したがって推定値に偏りが入りがちになり,観測者の客観性に問題がある。

標準の設定
一般に,十分規定された作業に対して標準を設定する場合,既定時間標準システムのほうがヮーク・サンプリングよりも優れている.同様に,ストップウォッチ時間研究は,短いサイクルの繰返し作業に対して,より望ましいと考えられている。しかしながら,ワーク・サンプリングは,他のシステムが適当でない場合に対しても適用することができる。

そしてワーク・サンプリングは,なんらかの方法で標準を設定するときに適用される,避けることのできない遅れ余裕を決定するのに大変有効な手段である(避けることのできない遅れ余裕については本部3章で議論されている)ワーク・サンプリング調査は多くの日数をかけて行われるので,その間に色々な多数の遅れ原因を見付けだすことができ,したがってワーク・サンプリング調査によって集められた情報は,余裕を設定するのに有用なものとなる。

ワーク・サンプリングはしばしば,任意の単位の産出量に費やされる時間値が変動する不規則要素をもつ作業に対して作業標準を設定するのに用いられる。例えば,欠陥品を手直しするための時間は,欠陥の程度に応じて変化する.長い期間ワーク・サンプリング調査を行うことによって,作業の大規模母集団がサンプリングされ,設定された標準はその母集団の平均値に適合するようになる。

測定された母集団が未来の作業母集団を代表しているときにのみ,その標準は妥当なものとなる。ワーク・サンプリングによって設定された標準は,刺激賃金支払制度に対してよりも,間接労働的部門に対する予算計画を立てることに対してより適しているだろう。

もし標準を設定しようとするのであれば,一般に,遂行度レーティング(本部第3章参照)について訓練された専門家による観測と,容易に数えることのできる産出単位を設定することが必要であると考えられている。 これらの手続きについては本章8節で例示する。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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