コラム・特集

3.9 作業者の遂行度のレーティング

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理


第3章 時間研究

3.9 作業者の遂行度のレーティング

おそらく時間研究手続全体のうちで最も重要な段階は,作業者の遂行度のレーティングであろう。作成された時間標準の信頼性は,そ の時間研究員がその時間研究全期 間中遂行度のレーティングを正確に行っていない限り保証することができない。実際に行われている大多数の時間研究で,作業者の遂行度は正常として定義されたものとは偏りがある。したがって,正常な作業者が平均ペー スでその作業を遂行するために必要な時間を求めるためには,平均観測時間に対して調整することが必要である。平均以上の作業者の所要時間は,正常作業者が必要とする時間にまで増大されねばならない。同様に,平均以下の作業者の所要時間は,正常作業者が必要とする時間にまで減少される必要がある。

今日,普遍的に受け入れられている作業遂行度のレーティング法はない。用いられているレーティング・システムの大多数は,完全には客観的ではないというのは,それらが主として時間研究員の判断に依存しているからである。時間研究員は前述した高度の人的資質を反映するものであることは,主としてこのような理由からである。

正常遂行度の概念

 

不幸にして,作業遂行度のレーティングにただ一通りに容認された方法がないのと同様に,正常遂行度に関して普遍的な概念はない 衣服産業のような競争性の高い製品を生産するために高度に繰返し性のある動作パターンを利用している産業は,疑いもなく,正常作業者遂行度について,特許につながる製品を生産している受注生産業とは異なった概念をもっているだろう。

著者によって与えられた正常遂行度の典型的な定義は,その作業に適応しており,ほとんどもしくは全然監督なしに手際よく与えられた作業を遂行することができるのに十分な経験を達成している作業者。このような作業者は,動作経済の原則に従って,躊躇または遅れを伴わずに1つの要素作業から他の1つの要素作業へと進むことのできるような調和のとれた精神的・肉体的素質をもっている。このような作業者は,自分の作業に関連のある。すべての器具ならびに設備に関する知識とそれらの器具・設備を適切に使用することによって良水準の能率を維持する。このような作業者は,協同して,連続的な作業遂行に最もよく適合したペースで作業を遂行する。

会社にとって,正常遂行度から見たベンチマーク(基準)作業を規定し,それによって社内の色々の時間研究員が遂行度のレーティングに際して終始一貫性を発揮できるようにることが望ましい。例えば,重さ20ポンド (約9kg)の荷物を25フィート(約76m)の距離だけ持ち運ぶ作業者は,正常ペースで作業するとき0。095分を必要とするものと期待される。タレット旋盤の特定の大きさと型式の六角タレット・ヘッドを定置させるための正常時間は,0.04分と設定されるだろう。トランプのカード52枚を4人に分けるときの所要時間0.5分が,典型的な正常遂行度であることが多くの人によって認められている。 ありふれた多数の作業について,用いるべき 作業方法と正常遂行度と考えられる時間値とを完全に規定しておけば,それはその遂行度レーティング・システムの正当性を売り込むことに大いに役立つ。

習熟曲線の適用

習熟には時間がかかることは, IE技 師が長期間にわ たって認めてきたことである。したがって,まだ熟達していなく,必然的に負の方向へ平準化されねばならない。新任者よりも,経験を積んだ従業員について時間研究を行うほうがはるかによい。どちらかといえば簡単な作業, 例えば比較的少数の部品を扱う軽度の組立作業では,作業者はわずか数日で非常に熟達した域に到達することができる。作業が複雑な他の状況のもとでは,作業者が躊躇とか遅れとかを伴わないで,1つの要素作業から他の1つの要素作業へと進むことができるような,調和のとれた精神的・肉体的資質に到達するまでに数週間を必要とするだろう。

図表4.3.5は ,典型的な習熟曲線を示す。この場合,160ユニットを生産したのちでは,累積平均時間が緩やかに逓減していくことが分かる。この作業者が少なくとも160ユニットを生産したのちに時間研究を行うとすれば,公正な遂行度レーティング係数を求めることは容易になっ てくる。経験によれば,作業者が正常または正常に近いペースで作業を遂行しているとき,遂行度レーティング の誤差は最小である。もちろん,時間標準ができあがるまで待っていることが都合がわるい場合も多々あるだろう。

このようなわけで時間研究員は,習熟曲線上の最も勾配のきつい部分にある新任作業者によって遂行されつつある作業を時間研究することが必要なこともあろう。この点では,その作業者の遂行度は正常状態のわずか 70 %あるいは80%であるかもしれない。こ のような場合こそ, 時間研究員はその徹底した訓練と経験を生かして,鋭い観察力を発揮し最良の判断を行使する必要があり,それによって公正な正常時間を算出することができるような遂行度レーティング係数を割り付けることができる。会社にとって,遂行されているいろいろな種類の作業に対して習熟曲線のデータを作図することが望ましい。このような情報は,いつ時間研究を行うのが望ましいかを決めるのに役立つし,また習熟が進行するに従って予想される生産性水準を示すことができる。習熟曲線のためのデータは,双曲線を示す傾向があるが,両対数方眼 紙上に打点することができ,その打点を直線状にすることができる。図表4.3.6は ,図表4.3.5のデータを両対数方眼紙上に打点したものである。

時間研究員は,類似作業での経験がその後の別の作業に関して習熟効果を与えるものであることを知るべきである。新任のタレット 旋盤作業者は,習熟曲線上「平坦状態」になるまでに3週間の作業経験を必要とするかもしれない。しかしながら,熟練したタレット旋盤作業者は,同じ作業について習熟曲線上平坦状態になるまでに3日間しか必要としないかもしれない。

習熟曲線理論は,総生産量が2倍になると,1ユニット当りの所要時間がなんらか一定の割合で低減することを説いている。例えばもし85%の割合で向上が見込まれるのであれば,生産量が2倍になると,1ユニット当りの平均時間が15%減少する。図表4.3.7は,改善率85%のもとでのいろいろの累積生産水準における産出物1ユニット当りの累積平均時間を示したものである。

典型的には,習熟曲線はyx=cxn乗の形の双曲線である。
両対数方眼紙上に習熟曲線をlogy2乗=logc+nlogxの ごとく表すことができる。 ここに ,

yx=Xユニットのときの累積平均値
c =第1ユニットの時間値
x=生産ユニット数
n=勾配を表す指数(図表436の tan φ)

定義により,習熟率はy2x/yx,すなわちc(2x)n/c   (x)n=2nである。この式の両辺の対数をとれば ,

n=習熟率の対数/log2

 

このようにして,85%習熟に対し てn=0.85の対数/2の対数=-0.070581/0.301029=-0.2345,そして arc tan 0.2345=13.1974。

しばしば遭遇する習熟率の勾配とユニット時間を計算するための換算係数を図表4.3.8に示す。

習熟が進むに従っての1個当り累積平均時間を求めていることを指摘してきた。ある特定の1ユニットを生産するための推定時間を知りたいことがある。というわけで,「ユニット習熟曲線」を作図することに関心がある部品の累積生産個数がある量,例えば15に達すれば,この曲線は累積曲線を対数尺に作図したものに漸近的に平行である。このようにして両対数方眼紙上の個々の曲線は,第1ユニットからそれが累積平均線に平行になるまで(これは通常第10番目と第20番目の間のどこかで生じる),下向きの曲線を描く。

累積時間からユニット時間を計算するための換算係数は,nの値に1を加えて求めることができるこのようにして,90%曲線に対する換算係数は,1.0000+(-0.1520) =0.8480に等しい。 図表4.3.8は ,いくつかの普通の習熟曲線に対する換算係数を与える。

前述の理論の応用例が役立つだろう。ある組立作業に95%習 熟曲線が予想されると仮定しよう。ある1人の作業者は,最初の1ユニットを組み立てるのに8.45時間かかる。100ユニットを生産するのに必要な平均時間と第100番目のユニットの組立時間とを知りたい。

yx=(8.45)(100)-0.074=6.0100時 間…

100ユニット組み立てるときのユニット当り平均時間 (60100)(1+(0.074))=5.562時 間…100番目のユニットの組立時間

信頼できるレーティング・システムの特徴

うまく成功するためには,レーティング・システムは適度に正確でなければならない。このことは,正しいレーティング係数 (未知)の±10%以上に偏りがあってはならないことを意味する。第2に,レーティング・システムは終始一貫性を助長するものでなければならない。

もし時間研究員が終始一貫して高く,または終始一貫して低くレーティングするとすれば,その人をより正確になるよう訓練することは比較的容易である。しかしながら,もしそのレーティング・システムが時間研究員のレーティングをときとして高すぎる(10%以上)ものにしてしまうのであれば,そのシステムはおそらく成功しないだろう。 第3に,レーティング・システムは,簡単で,説明容易で,理解容易で,学習容易なものでなければならない。

レーティングの頻度

作業者の作業遂行度のレーティングは,要素作業時間 の観測中に行わなければならない。多くの時間研究は完了までにいくらかの時間を必要とするから,作業者の作業遂行度のレーティングの頻度は重要なことである。確かに,示されている遂行度を正しく評価するためには, 必要とする頻度でレーティングすることが重要である。

時間研究全体が30分以内で完成されるような短時間サイクルの繰返し作業では,時間研究全体の作業遂行度のレーティングを行い,各要素作業に対するレーティング係数を用紙上の指定欄に記録しなければならない。動力送りまたは機械支配による要素作業は,もちろんレーティングしない。これらの遂行度レーティング係数は常に1.00である。というのは,この種の時間は調節されないからである。

時間研究が30分以上の比較的長時間にわたり,しかも多くの要素作業の時間が短い場合には,時間研究の各サイクルの遂行度をレーティングするのが最もよい。

ときには,時間研究は全く長時間にわたり(30分以上), しかも要素作業の大多数が比較的長時間 (0.20分以上) である。このような場合,各サイクルの各要素作業の遂行度のレーティングを行うのがおそらく望ましい。

レーティング・ システム

ウエスティングハウスの遂行度レーティング広く,とくに短時間サイクルの繰返し作業に応用され,時間研究全体の遂行度レーティングを行うレーティング・システムに,ウエスティングハウス遂行度レーティング方式がある。この方式が考えている特徴と属性は,(1)器用性,(2)有効性,(3)身体適用性に分類される。 これら 3つの主分類はそれら自体ではなんら数値的な重みをもっていないが,のちに数値的な重みをもった属性が割り付けられる。このシステムのもとでは9種類の属性が評価されるが,そのうち3属性は器用性と,4属性が有効性と,2属性が身体適用性と関連がある。 図表4..3.9は,色々な遂行水準でのこれらの属性の各々に対する数値を与える。

器用性 器用性の分類のもとでの第1の属性は,設備や工具の使用,な らびに部品の組立てに示される能力である。 時間研究員がこの属性を評価する場合,作業の遂行中に扱われる工具や部品を制御する能力を獲得し安定状態になってのちの作業者の有効性を主として考える。 時間研究員は,「到達」(手を伸ばす,つかむ,運ぶ) 動素を評価しないよう注意する。

器用性の分類のもとでの第2の属性は,動きの確実性である。ここでは時間研究員は,躊躇,休止,不必要な長い動きがないことに対して明確なレーティングを行うよう考慮を払う。

器用性に関連のある第3の属性は,調和とリ ズムである。ここでは時間研究員は,作業動作中の加速および減速の動きがないことによっ て立証される動作の円滑さを追求する。

有効性 第2の主分類である「有効性」は,能率的な秩序正しい仕方として定義される。この分類のもとでは,4つの属性が考えられる。それらのうちの第1の属性は,自動性と正確性とをもって工具や部品を連続的にもとに戻したり捜して持ってくるために発揮される能力である。この属性を評価するに当たって,時間研究員は「捜す」および「選ぶ」という基本的な動作を行わない。その程度に注目する明確なレーティングを行うために,時間研究員は作業者がサイクルごとに規定された位置に工具や材料を繰り返して置くことを期待する。時間研究員はまた,作業者が躊躇することなく部品や工具を捜して持ってくる動作を追求する。

有効性の第2の属性は,動作を容易にしたり,排除したり,結合したり,あるいは短くしたりするために発揮される能力である。この属性を評価するに当たって,時間研究員は次のような基本動作の堪能さを観察する-定置する,前置する,放す,調べる―熟練作業者は,その操作能力が優れているために,著しく短い時間で定置動作を遂行することができる。

有効性の分類のもとに評価される。第3の属性は,両手を同じ難易度で用いるために発揮される能力である。ここでは時間研究員は,右利きの作業者の左手,またその反対に特別な注意を払う。

有効性の分類の第4の属性は,必要な作業にのみ努力を制限するために発揮される能力である。この属性は, 消極的な重みしかもっていない。というのは,作業が必要な作業に制約されるような条件が予想されるために作業が限定される場合には,なんらのレーティング値も付加されないからである。作業者が未熟なために,時間研究中に不必要な作業が発生することもあろう。不必要な作業のなかには,加工対象または作業場の不必要な清掃,寸法の不必要なチェックの仕直し,部品をチャックに取り付けるに先立って部品に不必要にやすり掛けをする,等々が含まれる。不必要な作業の時間間隔はあまりにも 短くて,不規則要素作業として時間研究から取り除くことがむずかしく,したがって遂行度レーティング係数のなかで補償される。

身体適用性 第3の主分類である「身体適用性」は, 実現された遂行率として定義されてきた。この分類のもとには,作業ペースと注意深さの2属性が含まれる。作業ペースは,動きの速さに基づいて全体的に評価される。これに対して注意深さは,発揮された集中度として評価される。

訓練  ウエスティングハウスのレーティング・システ ムはかなりの訓練を必要とすることは明らかであるはずである。少なくとも2年間の技術経験に相当する経歴をもった時間研究員に対して,30時間の集中努カコースが 必要な最小限である。この30時間コースのなかには,25時間のレーティング・フィルム訓練と属性ならびに属性の発揮度に関する討論とを含んでいなければならない推奨される手順は,次のとおりである。

1.フィルムを示して,その作業を説明する。
2.そのフィルムを再び示し,レーティングする。
3.コースを受講した個々人のレーティング結果を比較し,討論する。
4.そのフィルムを再び示し,属性を指摘して説明する。
5.理解と合意に達するまで必要な限りしばしばステッ プ4を繰り返す。

スピード・レーティング

今日,スピード・レーティングはおそらく最も広く用いられているレーティング・システムであろう。この方法のもとでは,時間研究員は単位時間当りの完成率のみを考える。時間研究員は,時間研究の対象となっている作業について,実現されている遂行度と正常遂行度に関して時間研究員がもっている概念とを比較する。

スピード・レーティングのもとでは,100%が正常である。もし作業者が正常に比べて25%ほど速いペースで遂行しつつあるとすれば,そのレーティング値は1.25である。同様に,もし遂行度が正常の75%であれば,その作業者は0.75とレーティングされる。

スピード ・レーティングを用いる場合,終始一貫して 正確であるためには ,時間研究員は時間研究の対象となっている作業に精通していなければならない。時間研究員は,観測されつつある遂行度と比較するために用いられる。色々のベンチマーク(基準)をもっていなければならない。

スピード・レーティン グのもとでは,時間研究員が個々の時間研究を行うよう指令されるに先立って,理解しやすい訓練計画を行うことを推奨する。この訓練計画は,約25時間を当てがってフィルムならびに実際の作業者のレーティングを行い,そののち結果について,そのコースを担当している専門の時間研究技師と討論するというものである。

時間研究技師がスピード・レーティング中に用いている実技では,2種類の判断を行使する時間研究技師は, 第1に遂行度がその技師の正常概念より上であるかそれとも下であるかを決めるために遂行度を評価する。そののち時間研究技師は,レーティング尺のどの位置にその遂行度が該当するかを決める。

客観的レーティング

このレーティング・システムは,M.E.マンデルによって開発された。あらゆる種類の作業に対して正常スピード基準を設定することの明らかな困難さ排除するために,この方法が提案された。このレーティング・システムのもとでは, 1つの合意を得た遂行度の作業を指定する。そののち他のすべての作業を,ペースに関してこの「基礎」作業と比較する。ペース遂行度を指定したのち,その作業の相対的難易度に対して余裕をみてお くために,その作業に第2の係数を指定する。作業の難易度を調節するために指定されてきた因子は,

(1) 身体部位の使用量
(2)足踏みペダル,
(3)両手作業性,
(4) 日と手 の調整,
(5)操作または感覚要件,
(6)取扱い重量または遭遇する抵抗である。

各因子の度合に応じて数値が指定されている。これら6因子の各々に対する数値の合計が,第2の調節値となる。このようにして,正常時間は次のとおりとなる。

N=(P)(D)(T) ここに ,
N=計算して求められた。正常要素作業時間
P=ペース・レーティング係数
D=作業難易度係数
T=実測平均要素作業時間

客観的レーティングは通常,レーティング手続の上で終始一貫性を与える。なぜならば,時間研究員が完全に精通している。作業のペースに対して任意の作業のペースを比較することは,その時間研究員が完全には精通していないかもしれないような作業のすべての属性を判断することよりも容易に達成されるからである。第2の調節係数は,終始一貫性に影響を及ぼさない。なぜならば,この係数はレーティングを施した時間値を百分率によって調節するだけであり,しかもその百分率はあらかじめ設定された作業難易度に基づいているからである。

合成的レーティング

既定動作時間システムの開発に伴って,合成的平準化 手法を成功裏に用いている会社がある。この手法のもとでは,作業サイクルのなかのいくつかの努力作業要素の遂行度係数は,実際の要素作業観測時間値を基本動作資料によって求められた時間値と比較することによって設定される。

そののち,このようにして求められたレーティング係数の平均値をその時間研究を構成しているすべての努力要素の遂イ テ 度係数として用いる。例えば,ある時間研究員が15の要素作業から構成される時間研究をしているとしよう。この時間研究員は平準化係数設定の基礎として役立てるために,3種類の短時間要素作業,例えば,「2ポンド(約0.9kg)の鋳物を取り上げ,エァ・チャックに入れて,閉じる」,「横送り台をバックさせ ,タレットを定置する」,「 チャックを開き,品物を取り出して,受け皿に入れる」を選ぶとしよう。基本動作資料の時間値を用いて,時間研究者はこれらの3要素作業に対する正常時間を求める。例えば,次表のような結果が得られたとしよう。

3種類の要素作業に対する遂行度係数の平均値を,こ の時間研究全体に適用されるレーティング 係数として用 いる

1.09+1.14+1.11/3=1.11・・・合成した遂行度係数

このレーティング法に対する1つの異論は,両手動作図表を作って,基本動作時間値を割り付けて要約するために時間がかかることである。基本動作資料システムのうちの1つを用いて,時間研究全体に対する。正常時間を計算するほうが,より迅速であると提案する人があるかもしれない。これは,サイクル時間が比較的短時間で, 例えば1分以下である場合には,確かに適切であるだろう。しかしながら,努力要素から構成されるサイクル時間が5分以上の場合には,上述の合成的遂行度レーティング・システムを用いるほうがかなりの時間の節約となる。

レーティング。システムの選び方

実用的な観点からは,もし各サイクルの各要素作業の 遂行度をレーティングしたいのであれば,スピード・レー ティングと客観的レーティング法としか応用することができない 。サイクルごとの遂行度レーティングまたは周期的レーティングが行われる場合には,すべての手法を容易に用いることができる。確かに30分以下の時間研究の大多数では,その時間研究を構成するすべての努力要素に対して,ただ1つの遂行度係数が適用されている (機械によって支配される要素作業は常に1.00とレーティン グされる)。

-般に,最も容易に説明,理解,適用される遂行度レーティング方式は,標準資料基準を加味したスピード・レー ティングである。この標準資料基準は,ストップウォッチ法によって作成された在来の時間標準か,基本動作資料から求められる。

スピード・レーティングのもとでは,正常は常に100であると考えられねばならない。 典型的なスピード・レーティング尺の遂行度の範囲は,0.60から1.40である。協力的な作業者が0.60以下の遂行度であることはほとんどなく,また確かに1.40以上を示す遂行度は非常にまれにしかみられない。

スピード・レーティング法を成功させるためには,5つの評価基準を満たさなければならない。

1.時間研究員は遂行されつつある種類の作業に経験があること
このことは,時間研究の対象となっている。その作業に作業者が経験をもっているのと同様に,時間研究員もその作業に経験を積んでいる必要があることを意味しているのではない。ただし,理想的には経験があればこれに越したことはない。その意味するところは, 時間研究員が観測者としての経験をもっており,用いられている作業方法のすべての詳細に精通していることである。

例えば,もしそれが金属切削作業であるならば,時間研究員は,遂行されつつある作業の特徴である。工具の形状・送り・切削速度・切込みなどを含む工具の使用条件に精通していなければならない。時間研究員は,用いられている冷却剤や予想される表面仕上げの工程能力を理解していなければならない。

2.時間研究の対象となっている2つ以上の要素作業に標準資料を適用して基準とする。標準資料要素作業を作成して秩序正しく目録に載せることによって,時間研究員は,時間研究の対象となっている。いくつかの要素作業について正常遂行度を知らなければならない。このような情報は,その時間研究全体の遂行度係数を求めるための有用な案内となる。

3 代表的なフィルムまたは生の作業者を観測するこ とによってスピード ・レーティングを正規に訓練する
すべての現役の時間研究員は,遂行度レーティングの正規の訓練を受けることが重要である。この訓練には,その会社に特有の色々の作業を示したフィルムまたはビデオテープの観測を含めなければならない。このフィルムまたはビデオテープは,通常0.60から1.40までのレーティング尺の全範囲を示すものでなければならない。数人の時間研究員がそれぞれのレーティングを独立に実施し,その後その結果を他の時間研究員と討論して,正しいレーティングからの偏りの理由を確定しなければならない。

4.適 切な経験を積んだ作業者を選定すること
もし可能ならば,時間研究の対象となる作業者は,その作業者の習熟曲線の「平坦」部分(例えば,図表4.3.5の60ユニットに始まる部分)に到達しているような十分な経験を積んでいなければならない。作業者は,過去に正常または正常以上の遂行度で規則正しく作業をしてきたような協力的な従業員として認められなければならない。

5.3つ の独立な時間研究の平均値を用いること
高度生産作業に時間標準を設定する場合,その時間標準に到達するまでに1つ以上の時間研究を実施するのがよい 。遂行度レーティングと母平均からの偏りのある要素作業経過時間の平均値の決定との両方による総誤差は,時間標準を計算するのにいくつかの独立な時間研究の平均値を用いることによって減少する。もちろん,経済的な理由で,必ずしもこの方法が許されるとは限らない。

レーティング訓練

良好な時間標準に対する鍵は,すべての現役の時間研 究技師を遂行度レーティングに正規に訓練することにある。時間研究員は,正しい標準(実際には未知)の±5%以内に時間標準を規則正しく設定するものと期待されている。しかしながら,もし時間研究員がその工場を特徴づける色々の作業を描いたフィルムまたはビデオテープを規則正しく遂行度レーティングして,ある遂行度であるものとして同意を得たものの±5%以内にあるのであれば,その時間研究員は労使双方が容認するような時間標準を設定することを,将来にわたって維持し続けるだろう。

会社は,その時間研究員の全員を正規に訓練する必要がある。これによって,作成された時間標準の妥当性が確保されるばかりでなく,また各時間研究員自身の仕事に関して終始一貫性の改善と同時に時間研究員間のレーティングの一致性をも確保するのに役立つ。

遂行度レーティングに最も広く用いられている訓練法は,その会社内で行われているものを特徴づけるような,種々の作業を示したビデオテープまたは映画フィルムを観測する方法である。このビデオテープまたはフィルム には,遂行度尺の全範囲が示されていなければならない。 各場面には既知の遂行水準が定められており,それがスクリーン上に示された直後に,数人の被訓練者はその遂行度を独立にレーティングする。その後,各 自のレーティング値を既知のレーティング値と比較する。その既知のレーティング値からかなり偏りのある被訓練者に対しては,その作業を再度示し,正しいレーティングのための原理について討論する。

時間研究員は,自分の成績記録をとるために,また訓練期間経過後の自分の向上度を知るために,レーティン ダ結果を図上に作図しなければならない。図表4.3.10は , 推奨される図式を示したものである。正確域から±5%以 内にある区域は,作業者の遂行度が120%を越えるか,それとも80%以下に落ちるに従って広くなる示されている遂行度が正常の0.85と1.15の間のどこかにある限り,正しいレーティングの±5%以内に遂行度レーティングをするよう徹底的に訓練された時間研究員を期待することができる。もし作業者の遂行度がこの範囲の外側にあれば,正しく遂行度レーティングすることがだんだんむずかしくなる。

会社は,レーティング用のビデオテープまたはフィル ムを広範囲に保管しておかなければならない。会社の視 覚教材を使用する場合,それらを色々の訓練期間に色々のスピードで示すことによって,より大きい融通性を得 ることができる。このようなわけで,時間研究員は,ある特定の1つのフィルムのレーティングに関する自分の記憶に頼ることができなくなる。なぜならば,前回の場面で示されたレーティング値と現在の場面のレーティング値とは異なるからである。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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