コラム・特集

2.2 習熟の数学モデル

IEハンドブック
第4部 作業の成果測定と管理

第2章 習熟曲線

2.2 習熟の数学モデル

習熟曲線の式は 一般に次式のように表される。

Y=KX-A乗         (1)

ただし ,

Y=1サ イクル当りの時間
K=第1サイク ルの時間
X=サ イク ル数
A=任意の与えられた状況に対する定数この値は習熟率から決められる。

log Y=log K ― A log X  (2)

したがって両対数方眼紙にこの式を作図すれば,4は勾配,κ は切片を示すことになる。この式の有用な特徴の1つは,X(サイクル数)が2倍になるごとに,y (1サ イクル当りの時間)が一定の割合で減少することである。これが通常「パーセント 習熟曲線」と呼ばれる拠り所となっている。例えば,生産量が2倍になるごとに,90%曲線に対するyの値は,前の値の90%となる。はじめの1単位のサイクル時間が10分であるとするならば,生産量を次々と2倍していくことによって図表4.2.1に示すような結果が得られる。

図表4.2.2は90%曲線を正方眼紙に作図したものである。図表4.2.3は,同じ式を両対数方眼紙に作図したものである。図表4.2.1,4.2.2および4.2.3からサイクル数が増加するにつれて習熟率が減少することが分かる。しかしながら,習熟は,多くの場合,ブト常に長い期間にわたって続く。この事実が,生産量標準の設定ならびに大量生産における費用低減の可能性に対して重要な影響 を及ぼす。昔はこの方程式は通常グラフを用いて解かれたが,対数を計算することができる電卓の普及によって,グラフを用いる必要がなくなった。最も典型的な計算例を以下に示そう。

1.生産量N1からN2までの平均サイクル時間はいくらか? サイクル時間を分で測定するものとし,AVを平均サイクル時間とすると。

・・・(3)

ここにN1はそのラン(一続きの生産)の始まりの生産 量,N2は終わりの生産量である。 図表4.2.1の条件,すなわちK=10分,90%曲線の場合,最初の50サイクルに対する平均サイクル時間はいくらになるか? これは次のようにして求められる。 a式(1)および1以外の任意のXの値を用いてAの値を決める。ここに4に関する解は未定である。

Y=KX-A乗

から,X=2と すると,y=9.0だ から

9=(10)(2)-4乗
log9=log10-A log2
A=(log10-log9)/log2=0.1520

b 式(3)に代入して

AV=10{ (51/2)0.848乗-(1/2)0.848乗}/(0.848)50

=10× (27.82-0.556)/42.40=6.43分

 

2 式(1)を用いたとき,第5サイクルのサイクル時間はいくらになるか ?
Y=(10)(50)-0.1520乗=5.52分

3.もし標準時間が3.5分 ,κが標準時間の25倍とするならば,90%曲線の場合 ,標準時間に達するためには, どれくらいのサイクル数が必要か? Sを標準時間としよう。
このとき

S=2.5SX-0.1520乗、X0.1520乗=2.5S/S=2.5

だから

logX=log2.5/0.1520

ゆえに

X=antilog(log2.5/0.1520)=415サイクル

 

.設問3において,作業 者が標準時間に達するためにはど れぐらいの日数がかかるか ? この問題に答えるために式G)の分子を用いる。Cを累積時間とすれば 。

・・(4) 

 

5.434日 (1952.98分 )の中,どれくらいの時間が訓練費用の対象として考えられるか? これには図表4.2. 4が役立つ。

習熟曲線より下の総時間は1952.98分であり,もし作業者が標準時間で課業を遂行したとした場合の時間は415× 3.5=1452.5分 であるから ,訓練時間は1952.98-1452.5=500.48分と考えられる

6.作業者が50サイクルの課業を遂行し,そののちの2週間にさらに150サイクルの課業を遂行したとしよう。この150サイクルに対する累積時間ならびに平均時間はいくらか? 図表4.2.5はこの状況を説明している。

この問題はいくぶん複雑である。なぜならば,作業者は作業の中 断によって,それまでに習熟したものをある程度忘れてしまうから である。これを「忘却」と呼ぶ忘却量は,中断が起こったときの作業者の習熟曲線上の位置の関数として求められる。作業者が第2のラン(第 回日の作業)を開始する忘却点に対する近似は,第1サイクルの時間と標準時間(S)とを直線で結ぶことによって得られる。 この直線は,次式で与えられる。

R=K-{(k-S)/CS}/CS×Xi   (5)

ただし
R=中断後の第1サイクルの時間
CS=標準時間に到達するまでのサイクル数,第1回目の50サイクルの作業から計算される
Xl= 中断後の最初のサイクルの通しのサイクル数

第2のランは51回目のサイクルから始められるから,P=10-00157(51)=920分。第2の ランの150サイクルに対して,920分が新しいKの値となる。

習熟率が増加するからAの値もまた変化する。 Aの値は、Sが365サイクルで達成されうものと仮説することによって推定される。すなわち、

3.5=9.20(365)-A乗
A=0.1638
150サイクルに対する平均値は
AV=9.20{(150+1/2)08836乗-(1-1/2)0.836乗/0.836(150)}=4.81min

C=AV×CY   (6)

ただし CYはサイクル数,Cは累積時間である。 C=481×50=722.16分。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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