コラム・特集

1.5 作業成果標準システムの保全

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理

第1章 作業成果標準 : 設定・成文化・活用・保全

1.5 作業成果標準システムの保全

はじめに
変化は,時間の次元と関数関係にある。今日真実であると信じられていることは明日には反証されるかもしれない。あたかも変化ということは,人類の活力であるように思われる。その経路を制約するような壁を作って,最終的にはそれを測定する。目標を作って,さらに高い目標水準を達成するための方法を考案するのである。ある適切な状況のなかにあって,変化を求める願望を有利に活用することができる一ことに企業において。ある1つの課業を完成するための時間あるいは方法を割り付けて,これらの限界に,壁に対するように,挑戦していくのである。初めのうちは,何をなすべきか,どのようになすべきか,どの機械工具を用いるべきか,許容完成時間はいくらかなどについて管理者は記述するだろう。ある作業環境のなかにあって,従業員が訓練され,その課業の明細を学習するのに十分な時間が費やされたならば,この挑戦が始まるのである。昨日存在していた仕事がそのまま今日も存在することは非常に少ない。生産作業者,設計者,工程技師は絶えず変化を追究している。これらの条件が与えられたとすれば,ある1つの作業成果標準は現行のやり方を反映していないかもしれない。作業成果標準は変化の影響を受けるのである。というわけで,実際に変化が生じたことを監査または情報伝達する精確な方法がなかったならば,作業成果標準システム全体が劣化していくことになろう。管理者は,作業割当てによって挑戦を開始する。発生する変化は微妙であるかもしれないが,それらの変化を総合するときは,最初割り当てられた仕事全般にわたっていえば有意な改善となるかもしれない。変化を作り出していく従業員はしばしば,新しいやり方を公開するのを嫌がるものである。その理由は,管理者がそれらのアイデアを取り上げて,それを搾取し,新しいより厳しい作業割当量を設定するからである。という次第で,作業者は新しい手法ややり方を隠すようになる。労使契約書はしばしば「作業者によって考案された工程変更は合法的な所得を削減するための方法として用いてはならないことを協定する」と定めている。しかしながらここに気にかかることがある。それは,注意深い従業員は作業時間を引き伸ばす。

すなわち8時間のうち6時間しか生産しないようなことをするかもしれないのである。これは,施設,機械の稼働率を低下させる原因となる。

以前に管理の行き届いていない作業成果標準システムのもとで働いた管理者は,日給制または何かその他の制度を選ぶかもしれないが,これは作業成果標準の劣化,偽造,その他の悪事が刺激賃金支払方式の窮極の状態であることを信じていることによるものである_実際には, 計測日給制であろうが,日給制であろうが,また刺激賃金制であろうが,非刺激賃金制であろうが,環境はこのような影響を受けている。どんな作業でも挑戦されている。作業成果標準がその挑戦を強めていることもあろう。管理目的のために作業が測定され,日標が設定され,手続きが実施に移されている場合には,一種のゲーム的な雰囲気がかもしだされる。ゲームは一種の賭けを意味している。見識のある管理者は,この特定の賭けに投資するために,まずは賭けをしなければならないことに気付いている。企業の管理者は,このゲームに打ち勝つために従業員がするかもしれない行動を恐れてはならない。この願望と活力とを最も有利に利用することができる。精確に測定された作業成果標準システムの大部分は実によく機能している。明らかに,最高級の自動車のように,万事正しく機能させるためには,作業成果標準システムに計画された定期的な保全が必要である。悪評が 流布しているようである 1つ の不良な作業成果標準システムが,25の良好なものと相殺している可能性がある。良好なものは,よく面倒をみられ,注意して保全されてきたものである。

作業成果標準の劣化の一般的な理由

 

作業方法の変化
作業方法や製品設計や作業工程が変化するに従って,与えられた1単位の作業の所要時間も変化する。動作順序,作業場内配置,材料の配送,その他の作業上の事項の変化は,作業方法の変化として分類することができよう。この種の変化は,作業者による調節を合意している。大部分の状況のもとで,従業員の職務内容や作業手順は管理者によって管理される。新入従業員は,前述したような手法を用いて課業を完成するよう訓練される精巧なシステムにあっては,コンピュータが両手動作順序をプリントアウトして,作業の進め方を提示する。

多くの場合,経験ある従業員は監督者と近密に連係して,新しい仕事の完成方法を設定する。窮極のところ,従業員は独りで作業しているのである.多くの場合,従業員は色々異なった作業方法を実験することから始めて,通常そのシステムを打開する方法を作り出すことに極めて鋭敏である。多くの場合,従業員はこれらの改善を固く守り,他の作業者あるいは管理者とこれらを共有することを嫌う。 作業成果報告書,現場監督者,作業成果標準担当員による監査などにより,これらの変化を見破ることができる。もしその仕事を再調査してみるとしたら,作業者は以前に定められた作業方法に変えるかもしれない。「自分たちの」手法を彼らに押し付けようとすることが対抗意識にそぐうのかもしれない。

このような状況は,苦情の種となり,ひいては調停ヘと導くことがある。これは,極めて爆発的な問題である。多くの労使契約では,作業方法に5%以上の変化がないかぎり職務を再調査することはできないことを規定している。このような制約はさらに進んで,5%以上の要素作業の変化があるときにのみ再調査することができることを規定している。その逐次的な関係は了承されていない。というわけで,要素作業1,3,5の5%以上の変化によって,要素作業2,4の再調査が承認されることにはならない。このような契約条項の解釈は,会社によって,また審判者によって違うかもしれない。このような制約条件が多くの労使契約に含まれることは,その問題の程度に対する証言でもある。従業員は,作業環境とか採用されている制度とは無関係に,賃率の切下げや職務割当て量の増大を恐れている。しかしながら管理者は,利益と市場的地位を改善するために変化していかなければならない。

これら2つの理念は衝突するのである。最も確実的な ところ,従業員の大部分は彼らの企業の成功のための一部分としての役割を果たそうと思っている。 管理者もその従業員がうまくいくことを念願しているこのことが競争状態でないと推論することは間違っているのではなかろうか。しかも,このような風土のもとで,事態は常に両者のために改善されてきたのである。

作業方法の変更は管理者と従業員との両方に影響を及ぼす。前述したように,自然発生的な変化はすでにして明白であるが, しかしそれを正すことはむずかしい。長年にわたって,繊細な変化がその仕事に生じている。このような「旬旬(ほふく)現象的な作業方法の変化」は通常1人の勢力範囲内にない。 従業員は,より高い賃金またはより適した職位を求めて新しい職務に異動していく。このように,多くの個人あるいは作業者集団全体は,以前に1つまたは一連の職務を経験してきたであろう。作業者が導入した作業方法の変化はそれぞれ新しいアイデアや作業方法の改善となっているかもしれない。その結果,その職務に従事するそれぞれの新入従業員が生産性を向上させるよき機会がある。

作業成果報告書は,変化の発生を教えてれる。監督者は定期的に現行の作業方法をチェックすべきであるが,また作業方法が同一でないことを報告することもできる。また,正式な作業標準監査制度によって,標準とは異なった作業方法を行っている。作業を見分けることもできる。その結果,作業を再調査して新しい作業成果標準を設定することができる。というのは,これらの累積された作業方法の変化は,ただ単に個人とか作業者集団に属するものではないからである。作業方法に変化が生じたことを思い出すとか知らせるために,厳格な手続きを定めることが肝要である_作業成果標準担当部門による監査については,日程計画を立てるべきである。監督者も作業方法の変化を知るべく 直観的に作業を監査することを要する。両者協同して,各作業者の利益のために生産性を上げることができる。

製品設計の変更

 作業成果標準は,作業方法が変化するに従って古くさくなり,陳腐化してくる *.管理者はある種の作業方法変化に対しては責任があったかもしれないが,通常それは短期間あるいは長期間のいずれかの作業者による独創力から出てきたものである。製品設計あるいは工程の変更は,主として管理者によってけしかけられる広い観点からすれば,作業成果標準は従業員または管理者によってもたらされる作業方法の変更のために陳腐化していくといってよかろう。 製造業においては,部品とか材料の変更は設計変更である。様式の変更―例えば,記載事項の数の減少とかその様式上の配置―は,非製造業における材料または設計の変更として限定されるだろう。 設計図面は通常,材料や部品の変更よりも先行する。工業における作業では,製品設計部門は予定されている設 計変更について作業成果標準担当部門に通報しなければならない多くの場合,このような変更は正式な通達をしないで簡単に処理されている。

作業成果標準は,機具,設備,その他の製造工程が変更されるとき大きな影響を受ける。小売りとかサービス業では,新しい値段添付機を購入し,出納係員はタッチ式あるいはタッチ・アンド・ルック式金銭登録機を用い, 古い形式のマイクロフィルム機を新しい多くの手作業を排除した形式のものと置き替えるだろう。鋳物工場では,丸形研削砥石を変更して,表面速度を増し,圧力棒を採用することによって,湯口の研削所要時間に大きな効果をあげることができよう。

情報伝達のまずさ

さらに,以上のような変更はすべて,作業成果標準の変更を伴わないで発生することがありうる。 通常会社は,通達なしに行われる変更に対する予防策としての正式な方法を備えている。手順表は,作業の順序や使用機械を示している。監督者は,作業成果標準に影響を与えそうな条件変化について知るよう正式な訓練を受ける。作業成果報告書も,作業方法に変化が生じたことを示すような成果差異を示す。作業成果標準担当部門による監査によっても変化を見分けることができよう。さらに,大部分の会社は,生産に影響を及ぼすような課題について議論する正規の会合をもっている。

このように通達なしに進行している。作業方法の変更に関するチェックはすべて, 1つの用語―情報伝達―でもって表現することができる。情報伝達に正式な方法を定めることは必須のことである。 IE管理者,監督者, 部門長が作業成果標準調査を開始したり権威づけをしたりする場合,情報伝達の方法を強いられる。これが苦情の種となる作業方法の変更はいまも発生しつつあり,また将来も発生し続けるだろう。管理者は,市場競争に打ち勝つために,その変更をうまく活用しなければならない。

作業成果標準システムの陳腐化要因

余裕時間の計算にまつわる問題

個々の作業成果標準は,作業測定システム全体の一部分である。システムがつまずけば,個々の標準全部が影響を受ける システム崩壊の1つの主要因は,余裕時間の誤った適用にある。1作業日は,生産時間と非生産時間とによって構成される。午前と午後の規定された休憩時間とか準備時間や清掃時間を含む若干の非生産時間は契約にうたわれている。3交替制の場合,非生産時間のなかに通常有給食事時間を含んでいる。

典型的な作業日は480分である。これらの非生産時間が1交替制の場合32分であることを契約にうたっているとしよう。このことは,作業者が480-32=448分 /日だけ作業することを契約したことを意味している。これは平均して考えると1時間が56分ということになる。1日のうちのある時間帯はほとんど60分間作業しており,他の時間帯では,とくに規定された休憩時間を含む場合,かなり 短時間になることもありうる。しかしながら,平均して作業可能時間は1時間につき56分ということが契約上定められていることになる。

その他の非生産時間についても契約にうたうことができる。 人的余裕,避けることのできない余裕,疲労余裕を含む作業成果標準システムも契約に定めることができる。人的余裕は,主として正常な肉体的機能を救済するための時間である。生産性の維持に障害となるもう1つの要因は,作業者の疲労である。この領域では,かなりの調査研究が行われてきた。広い観点からは,疲労は作業サイクルの長さ,職務,作業条件などによって変化する。避けることのできない遅れは,作業者の支配外にある作業中断である作業の形態,性質,種類が通常このような遅れ時間全体に影響を及ぼしている。

これらの3種類の要因―人的余裕,疲労余裕,遅れ余裕―は時間を消費し,生産性を制約している。人的遅れや避けることのできない遅れのために消費される時間は,サンプリング手法とか全日作業研究によって客観的に求めることができよう。疲労余裕時間に関しては, 主観が支配している。実務上は,10ないし17%の総余裕率が大部分の作業条件に対して相応であることが知られている。明ら かに,これらは一般論である組立ライン作業では,いうなれば規定された間隔で,あるいは必要に応じて救済される。というふうに「時間の余裕がある」かもしれない。ガラス・タンクの頂部での極端な熱間作業では,15分間作業,15分間休憩ということになっているかもしれない。余裕時間はできるだけ科学的に調査をし適用されなければならない。そのためには,成文化が必須要件である。

労使契約により,会社にとって作業者は平均して1時間につき56分間しか利用することができない。また契約上,人的余裕,避けることのできない余裕,疲労余裕の時間を,例えば生産時間の15%というふうに規定されることもあろう。ある1つの課業の完成所要時間が正常時間で389.5652分であると仮定しよう。この時間には余裕時間が含まれていない。余裕時間が生産時間の外延であるとすれば,389.5652分 *は15%ほど増大されて,448000分の許容時間となる。これは,契約上許容された総時間である。利用可能な作業時間56分に分割すれば,56/448 =01250個/時と計算される。その総日産量は,(8) (0.1250)=1.000個 /日となる。というわけで,15%の余裕時間は58.4348分/日に等しい。もし他の1つの部品に対する所要生産時間が正常時間にして25分であるとしても,総余裕時間は58.4348分/日のままである。ただし,計算は前述の方法による。

このようにし て計算された余裕時間は,加工品1個を生産するために必要な時間を外延したものと考えられる。その他の適用例では,15%が1日の総作業利用可能時間の一部分であると考えられている。この考え方による計算は,(0.15)(448)=67_20分 /日となる。作業時間は1時間につき476分に減少し,余裕時間は生産時間の1764%となる。生産するのに正常時間にして25分を必要とす る部品を考えてみよう。余裕時間は生産時間の外延として考えた場合,1時間当たりの所要個数は(56)/(25) (115)=19478個となる。余裕時間を1日の稼働時間に対する百分率として考えた場合,1時間当たり56/(25) (117647)=194040個の所要量となる。これは,全従業員ならびに全作業を考えるとき,有意な差となる。百分率を用いる代わりに,実際時間を用いているシステムもある。もし契約上,または統計的分析上,2400分が人的要求のために日々許容され,2022分が疲労のために,14.13分が避けることのできない遅れのために許容されるとしたら,作業のために利用可能な総時間は5845分だけ減少する。ここにその意図は明確であり,その実際時間は客観的に定められたことになる。さらに5845分が生産用として利用できないという考え方によれば,1日の総時間は58.45/(448.00-58.45)=0.15=15%だけ減少することになる。

余裕時間の計算は,労使契約の有無にかかわらず同一でなければならない。余裕時間は従業員に対するギフトではなく,作業のために利用することのできない時間を真に代表するものでなくてはならない。会社は,確実性をもって,各製品の費用と予想出来高を知りたがっ ている。余裕時間を正しく計算することによって,明瞭性が 増してくる。多くの会社は,余裕時間の計算は480分/8時間日に基づいて行うべきであると考えている。要するに,このような考え方は,正式の労使交渉で作業日から本質的に控除された時間を余裕時間のなかに取り戻そうとするものである。さらに,32分が作業に利用可能でないが,余裕時間の計算は480分に基づいて行われるこ とを考えてみよう。余裕時間を正常時間の外延として考えたときの生産性要件は,前記したように25分に対するものである。というわけで,480/(25)(1.15)=16.5716個/日,すなわち20715個 /時となる。1日の全時間の部分率として余裕時間を表現するとき,生 産所要量は20400個/時となる。明らかに会社は,作業には利用可 能でないとして本質的に労使交渉した余裕時間のなかで時間を稼いでいることになる。正式な小休止時間によって疲労を減少し,人的要求にも応ずることになろうが,小休止時間は主観的に取り消すことはできない.直接時間を用いることによって,多くの計算上の問題点や誤りを排除することができる。

適切に評価された作業成果標準を備えた刺激賃金制度は,125ないし135%水準にある良好な作業者にとっては 所得を増大るであろう。これらの同一の作業者に271%という賃金を支払うケタ外れの刺激賃金制度を考えてみよう。このような場合,余裕時間はピラミッド状に累積される。このような水準で作業するとき,従業員は正常作業者の2倍の余裕時間をもらうことになる。正常時間として25分を定めるならば,15%の余裕時間を含む28.75分となる。 271%で生産するとすれば,その課業は1063分で完成されることになる。生産1単位当り,この作業者は375分の余裕時間を稼いでいる。1063分で1個を完成することによって,1単位当り375分の余裕時間をも稼ぐ第2個目も同様に1063+375=1438 分に等しくなる。両者合わせると28.76分となるが,2 個分の余裕時間は稼がれたのである。この作業者はこの余裕時間分を生産のために使用し,この積み上げはさらに増大していくことになる。もし1つの仮説として,余裕時間分が別の小切手で支払われるとすれば,この問題は最小限にくい止められる。正常な刺激水準においてすら,それらの水準は均―には分布していない。このような分析は,作業成果標準システム全体に対して,余裕時 間を適切に解釈することが大切であることを示すためにのみ役立つものである。1つの例においては余裕時間が厳しすぎ,また他の1つの例ではゆるすぎるのである。いずれの場合にあっても余裕時間を誤って適用するときは,作業成果標準システム全体を弱体化することになろう。

工程時間に対する賃金支払い上の誤り

長時間機械サイクルの作業では,取付け時間=2分,機械時間=20分,取外し時間=3分といったようなものもあろう。 機械時間が一定の場合,その作業者は総時間のうちの大なる部分を刺激方式でかせぐことができない。もし取付け作業と取外し作業が正常より25%上の水準で遂行される。とすれば,5分間の(機械時間外の)外部時間は5分/125=4.00分となる。この場合,機械時間は不変である。 そしてこの作業者は,25/24=104,すなわち4%の刺激賃金を稼いだことになる。多くの適用例において,このような状況は刺激機会の損失を意味している。契約または方針によって,その作業サイクル全体を通じて刺激賃金を稼ぐ機会を与えるために,機械時間を,例えば125%に増大する。そうすると,この賃金支払対象サイクルは,5分間の外部時間プラス(20)(125) =25分の機械時間,合計し て30分の総サイクル時間となる。正常水準では,この作業サイクルは25分で完成される。25%の刺激水準では,このサイクルは24分 となる。ここでの考え方は明らかに,作業日の大部分の時間を占 める高価な設備を維持するために,均等な刺激機会と刺激とを与えることにある。

作業サイクルのうちの内部時間,すなわち機械時間は,追加作業用として活用することができる。この20分のサイクルの間に,この機械作業者はその機械の能率的な運転に必要な職務を遂行する必要があるかもしれない。「切りくず清掃」はこのような1つの職務である。他の1つに,注意時間がある。このサイクルのうちの重要個所で, 作業者は部品,機械,工具など万事うまくいっているかどうかを調べるためにかなりの注意を払う必要があるだろう。それ以外のあまり注意を必要としない時間部分では,作業者は次の加工物の前準備をしたり,加工済み品を計測したり,あるいは2台目とか3台目の機械を運転したりする必要があろう。

類似の機械を1台以上割り当てる場合,機械干渉モデルを二項定理を用いて調べることができよう。類似または非類似の機械の割当てモデルについても,ポアソン,指数,アーラン,シミュレーションなどの手法を用いて展開することができる。このような数理モデルをつくることは,機械干渉を調べるためである。1人の作業者に2台 以上の機械を割り当てる場合,第2の機械,第3の機械,または両者がその作業者によるサービスとか注意を必要とするときがある。1人の作業者が第1の機械で作業をしているとき,第2の機械とか第3の機械は待たなければならない。この機械干渉による待ち現象はそれら待ちつつある機械のサイクル時間を増大し,したがって利用可能な日々の生産時間を減少することになる。 機械干渉は,機械当り2%ないし25%の範囲にあるかもしれない。工程のモデルを作る場合,許容可能な干渉の程度を支配する要因は,主として人件費率に依存している。

総サイクル時間のうちの内部時間すなわち機械時間は,作業者がその他の作業活動を行うために利用することができる。現在一般に通用している考え方は,会社はサイクル時間全体にわたって賃金を支払っているのであるから,作業者時間を活用するほうがよいというものである。このことは,刺激賃金が機械時間部分にも支払われる場合とくにそうである。多くの裁定者が,内部時間は刺激水準ではなく正常水準でのみ「作業負荷」されるべきことを裁定している。このようなわけで,内部時間をどのように活用すべきかを確かめるためにこれらの裁定者の考え方を用いて計算を行う場合,正常な,あるいは平均の作業成果水準に決められなければならない。前述の会社の場合,内部時間の20分を正常水準で作業負荷することになろう。 通常,サイクル時間全体が十分に利用されることはなく,待ち時間が発生する。

このような固有の遅れ時間に対して,どのように作業者に賃金支払いをするかという問題は,作業測定分析者を悩ましている問題である。このことが,作業者に賃金の支払過剰あるいは支払不足を招く可能性がある。もしこの特殊な概念が誤って扱われるとすれば,作業成果標準システムは極度に退化することになろう。時として,作業成果標準システムが非常に数理的に精巧に作られていて,事実上100%の成果に対して140%ないし160%も与えることがある。

くり抜き側に追加工具を備えた可変穂先のねじ回しを考えてみよう。その組立工程では,作業者がこのねじ回しをひっくり返すと追加工具が次の選択のために台上に飛び出してくるとしよう。この作業サイクルのうち工具飛び出し部分は作業者の支配外にある。 逆さにしたねじ回しから穂先が滑り落ちて出てきた瞬間から穂先が作業台にぶつかるまでの時間が「工程時間」である。精巧な測定をもってすれば,この工程部分の時間測定をすることができよう。 既定時間方式を用いれば,左右両手がこの作業サイクルのうちの極端に短い経過時間中遊休していることを分離することができる。これが工程時間である作業者はこの経過部分を急ぐことはできなく,作業サイクルのうちのこの経過部分には刺激機会がない。

ある種の作業成果標準システムによれば,作業サイク ルのこの経過部分を,例えば25%ほど伸張させるべきである。というのは,作 業者待ち時間のために刺激機会が存在しないからである。この記述は簡単化されていて, 反応時間,日の移動,日の焦点合わせなどのような多くの事項を残している。しかしまたこれらの事項は,この種の分析ではある程度主観的事項である_刺激機会を与えるためにこの時間を伸張すべきであろうか。明らかにそうすべきでない。これは工程余裕の意味をもっていない。しかもこれは,若千の会社がその作業成果標準の適用に当たって行っていることそのものである。 作業分析のために極度に高速の写真手法が採用されたと 仮定しよう。この手法を用いれば,右手と左手が同時に静止する。すべての時間を分解することができる。これを合計してみれば,全作業サイクル時間のうちのかなりの部分となることもある。 非常に短いサイクルでは総時間の30%を占め,長時間サイクルではおそらく20%を占めることもあろう。これらの累積時間に対して工程余裕を支払うべ きだろうか。この場合にもその答はノーである。この後者の例は工程時間の精確な定義にそぐわないけれども,正確な作業サイクルを設定するに当たって,この概念が好ましく ない 状況を招くことがあることを例示するのに役立つ…

鋳物工場では,ジョールト(ふるい分け振動)サイクル,重力送リシュートから砂が鋳型まで到達する時間,圧搾時間,その他の多くの作業部分に133%の工程余裕を与えてきた。ジョールトエ程では,時間が作業者によって設定され,作業者はその全作業サイクルの間中砂を散布する。このように作業は制約されていない。同様に,作業者は砂の充垣工程,レバー引き,砂散布,シュートの振動作業を行っている。

板金作業では,ブレーキ,プレスの運転が安全装置によってある程度制約され,それが作業者の動作リズムを制止する可能性がある。またプレスが上下する時間部分の間,作業者は次の加工品を取り上げることに着手し,それを挿入するための前置動作を行う。作業者時間は機械時間よりも小さいから,この作業サイクルは工程余裕によって時間伸張される。なぜならば,機械制約のために作業者はより速く作業することができないからである。しかも,100%作業遂行度換算での作業者の作業時間部分は,機械時間のうちの95%の 間に行われていたのである。

各工程が正常時間にして1分に設定されている強制組 立ラインを考えてみよう。これは機械によって支配されているという理由で,作業者に125%を支払うべきであろうか。100%というのは外部作業,内部作業の両者に要求することができる。という裁定を想起していただきたい。しかしながら,この組立ラインは1分の作業工程ペースでは刺激給を与えていない。この種の適用では,組立ラインが通常スピードアップされるか,それとも単位時間当りより多くの加工対象が投入される。実際には,作業者は刺激給を稼ぐことになるであろう。しかしもしその工場の他の職場で作業サイクル中の機械支配部分に対して,工程余裕が与えられているとすればどういうことになるだろうか。この組立ライン作業者に対しても,100%ペースに対して刺激賃金を支払うべきではなかろうか。

これらのことはややこしい問題である。工程時間に対する賃金支払方式を設定するに当たっては慎重でなければならない。ある種の事例では,工程時間が時間伸 張されるばかりでなく,工程余裕も与えられている。ここでも,この種の計算誤差が契約上固着されてしまわないように用心しなければならない。工程余裕が最初に意図したところは,機械作業者が機器や製品を破損しないで,送りとか速さを増大することができないという事実に根拠をおいていた。工程余裕はまた,その作業サイク ルのうちの大部分の時間中の絶対的な監視時間を含意していた。この例では,物理的制約のために機械時間を増大することができないのである。 本質的に,その作業サイクルが固定されていた。その他の事例では,サ イクル時間を変えることができるから,このような制約は存在しない。工程余裕を誤って適用している多くの事例では, 機械担当の作業者は110%の遂行度で作業しているかもしれないが,その賃金は160%水準である。

刺激機会に関する契約事項の誤解釈

労使契約には,平均的な刺激賃金労働者が,刺激賃金労働に従事する場合,時間賃率の25%増しを稼ぐ機会が与えられていることを規定した条文または条項が含まれているだろう。この契約条文には多くの変形がある。大 部分の場合,その趣旨は極めて明瞭であって,平均的な熟練と平均的な努力をもって作業を遂行する。労働者は100%の賃金を稼ぐようにシステムが仕組まれていることを意味している。この場合,100%が正常として定義されている。このように定義された100%方式は必要に応じて25%機会を提供する。この契約は本質的に低位課業方 式を述べたものである。このような条文は解釈することが非常にむずかしいことに,作業成果標準システムに 精通していない人々にとってそうである。交渉中または苦情申立て中,会社は他の1つの解釈に知らずして同意するかもしれない。そしてこれが100%に対して125%を支払う結果となることもありうる。大多数の会社は現在このような立場にある。したがって,もし許容時間の乗数として125%が用いられるとすれば,人的余裕,疲労余裕,遅れ余裕として15%が用いられるとき,(1.15) (1.25)=144,すなわち44%の余裕となる。この積み重ねは,より高い値を用いるときには,さらにひどくなる。工程余裕の誤用と重なれば,その誤差は数倍も拡大される。

労使契約における「機会」条文は,もともと重要なものであった。これは,平均的な作業遂行度が観測されているとき,会社がより低い値の遂行度を評価しないようにするための1つの保護手段のつもりであった。これはまた,100%の遂行度で25%またはそれ以外の規定刺激賃金を稼ぐことを指摘するために,高度の危険性をはらんだ方式にも用いられた。これは,正常な作業遂行度で自動的に25%の刺激賃金を諸余裕に上積みして稼ぐことを意味しているのでは決してない。これらの問題は,次回の契約時に条項を十分に明確に定義することによって避けることができる。会社によっては,計算誤差を伴う作業成果標準を無効にするという契約中の条項に基づいて誤解を解こうとしている。また会社によっては,条文の合法性を検証するために少数の作業に計画的に狙いをつけるという裁定を選んだ。他の1つの方法は,他の作業者集団がその作業を受け持つまで,従業員に対するすべての現行の作業成果標準を固定し,本質的にそれらに赤丸をするというものである。

しかしとかくするうちに,機会要素がないままにすべての新しい作業成果標準が作成されることになる。 この問題は重大である.こ れは生産を縮小してしまう。これはもともと意図されたより以上の賃金を支払うことになる 。条文のなかには非常に厳密に書かれているものがあり,仲裁によって遡求権の与えられないものもある。現行の作業成果標準は25%縮減することができると信ずることは,真の意味において非実際的である。将来の作業 成果標準とか年数を経た作業成果標準は,このようなあおり上げた数値を用いないで作業研究されることもあろうが,しかしまずは,それを仲裁にかけて検証するか,労使交渉中にその文言を作り変えるとか,おそらくは組合との合意に達しなければならない。公明率直ということが大切である。競争会社より25%高い労務費の製品を販売することが,会社とか組合の最良策ではないのである。

作業成果標準担当部門の組織上の弱点

 多くの企業で,作業成果標準担当部門は組織上弱体である。この部門は,「賃率担当課」とか「時間測定課」とか「時間記録係」とかと称されている。生産作業者はしばしば,作業成果標準手続のことを「時間記録されること」だと思っている。ある種の作業では,そ の構造の 性質が非常に異なっているので,作業方法部門と作業成 果標準部門とが分かれている。それぞれが相異なる部門長に報告し,相異なる組織水準にある。ある1つの組織体では,その事務所が人目につかない部屋の隅にあって,落書きの刻まれた机の上に回転式計算機がおかれている。また他の組織体では,コンピュータの端末機がおかれ,床にじゅうたんが敷かれ,現代的な図書室もある。 賃率もかなり違う組織体によっては,学士号を要求しているところもある。その他多くの相違が見られるが,しかしこれら少数の事例をもってしても,かなりの数の企業が,未だにこの部門は基本的に重要でないと考えていることを例証するに十分である。

1つの作業成果標準を作成すれば,それで誰でもエキスパートとなる。作業者は,作業成果標準が正しくなく,かつ苦情の種となることを知っている。監督者は,作業成果標準がより多くの余裕時間を必要とするものと信じこんでいる。管理者は,「手取りの給料はいくらか」と尋ねる。労使関係担当部門は,中庸を懇請する。というわけで,1つ1つの作業成果標準が本質的に交渉されることになる。

このような実態は過去数年間にわたって減少してきた。けれども,それらはこの分野を悩ましていることの特徴を示している。管理者は,作業成果標準なるものが単位生産物当りの労務費を決めるものと誤って信じ込んでいる。現実には,その契約上拘束力のある決定を行うのは作業成果標準担当技師である。作業成果標準担当技師またはその部門長は一般に,労使交渉中関連情報を与えられない。このことが,刺激賃金機会に関する条文とか工程余裕手続とかが新規契約に不思議な姿となって現れる。理由のようである。 過去の問題点を是正するために,新しい言葉を幾度となく必要とする。にもかかわらず,関連情報に関して誰もその責任部門と情報交換していないようである。

作業成果標準システムを退化せしめている問題点は, 技術上,適用上,組織上の問題に分類されてきた。これら全部のうち,生産性に最も大き 影響しているのは組 織上の弱体に伴った問題である。ある1つの企業では,生産作業者はその定時作業量を5時間で完成しているかもし れない。また他の企業では,タイムカードをごまかして目に余るものがあるかもしれない。このような事例は,いくらでも拡張することができる。このような諸問題は,そのことが分かっていながらなぜ放置されているのだろうか。経営者は税理士の意見に従う。なぜならば, 法は遵守すべきであり,さもなければ罰せられるからである。経営者はまた技術者の意見を聴くが,ことに製造物賠償責任に関する話題について議論する場合にそうである。こういったような職能には外部から権力が与えられる。これらの職能は注意深く行動しなければならない。作業成果標準の実態がまずい場合,経営者は十分な注意を払うかもしれないし,そうでないかもしれない組織上強力な部門が設置されている。ならば,管理者は上述の諸問題をそれらが発生したそのときに社内的に修正しな ければならなくなる。

問題点の発見方法

 

フォーマルな監査法
どんな作業測定システムであろうと,あるいは特定の作業成果標準であろうと古くなっていくものである。昨日良好,明快で信頼のおける作業成果標準であっても,今日は全くがたがたなものになっているかもしれない。工夫力が変化を育み,その大部分は有益なものである。何が変化したか,そしてその変化の程度はいくらかを定 めるために,ランダムな,あるいは層別した監査手法を利用することができる。監査対象とすべき作業を特定する方法は,差異報告書と乱数発生法を用いて作成することができる。この作業選択手法は,工場全般あるいは部 門男 1に適用することができる。この手法においては,偏りを除くために予防措置が必要である。完全にランダムな監査であれば,売上高とか発生度数とは無関係に作業選択を行うであろう。 層別法は,売上高とか発生度数とかとの関連におい て,監査対象作業をランダムに選択することとローレンツ分析*とを結合して用いることができる。

要請監査はランダムではない。この手法は,過度の所得を示している作業を監査するものである。このような作業が選ばれる理由は,純粋所得ないしは不適当な所得対休止時間比率によるものである。この作業選択手法の問題点は,どんな成果水準が「それを襲撃するスパイ」派遣の要因であるかを作業者がすぐに感知するということにある。というわけで,作業者たちは彼らの稼ぎに蓋をするとか,幸運を偽装するようなその他の手段を用いるのである。監査対象の作業を定める他の1つの方法は,修正Z公式によるものである。仮説検定とZ分布とを用 いれば,コ ンピュータが,どの作業成果標準が本質的に 異常であるか,す なわち緩すぎるか厳し すぎるかを,変 動に基づいて識別し,プリントアウトしてくれる。この公式は,80%を正常として仮定したときのMDWに対してZ=084を 用いて修正してある。作業研究者のなかには,これらの計算にも統計理論を用いている人もある。 現行の作業成果標準の妥当性について公正な判断をするために,監査対象とすべき作業を決めるという概念全 体はきわめてむずかしいものである。作業成果の変動が 大きいということは,作業成果標準が正しく設定されていないために,緩すぎるかそれともきつすぎるかの可能性がある。これはまた,生産が釘付けにされるか,それとも 作業者の不満を示すこともありうる。事実上作業成果標準が全く正し いと思われるときは,コ ンピュータによって監査対象とすべき作業を指示してくれるだろう。 選択監査を採用しようとするときは,現場と良好な連絡関係 を保つことに勝るものはない。

 

これらの有用なシステム全部のなかで,無作為監査が最良であると思われる。無作為監査法によって,多くの二次的な作業を選ぶことができる。監査の推力は何倍にもなる。確かに主要作業にかかる費用は重要である。しかし 作業者の態度を考えるとき,主要な生産作業についてもまた非主要生産作業についても作業者は幻滅を感じるかもしれない。

時間研究法を用いる場合,不規則要素作業,遅れ,その他生産性を制約する可能性のある。要因の多くを含むに十分なだけの期間のフォーマルな監査でなければならない。要素作業の変動に基づいて時間研究の長さを求める。統計的な公式は,全くしばしば誤りを招くこれらの短期間調査では,遅れは正当であることを仮定している。 本質的に,これらの手法は要素作業時間の妥当性のみを考慮しているにすぎない。

フォーマルな監査過程で2時間の時間研究が行われたと仮定しよう。この時間研究中に,材料待ち,工具破損,生産命令等の解釈,不規則要素作業などの要素が発生しうる。もし例えば50回のこのような時間研究を行ったとすれば,100時間の作業分析を行ったことになる。しかしより重要なことは,これら50回の作業研究を合成してみるとき,完全な非生産時間を構成しているその実態を非常によく代表するものとして現出するだろう。 50回の作業研究から,生産時間と非生産時間の大部分を示した円図表を描くことが可能となる。したがっ て, 1回2時間の時間研究によってかなり良好な予報性をもっていることになる。もし15分間の時間研究を50回行ったとすれば,それは125時間分になる。非生産時間に関する予報を考えた場合,これらの時間研究を合成した姿は極度に偏りがあるだろう。長さ15分間の個々の時間研究では, 真の合成した姿を統計的に信頼することができないことになる。しかも,15分間の時間研究では要素作業の変動をほとんど 示すことができず,また公式によれば全く有意となることもある。

こ のこと は,統計的方 法をけなそうとするのではない。それは ,フォーマルな監査に従事している人々に 対する警告として役立つ 多くの作業で,循環要素作業以外の部分に変化が発生している。 短時間の時間 研究ではこのような変化を見出さないだろうし,誤っ て公正であるとみなされることもあろう。 1時間の時間研究に対して, 通常1ないし15時間の事務室での計算作業を必要とする。 経営コンサルタント会社では,通常作業時間見積りに1日当り2ないし3回の時間研究を見込んでいる。 したがって ,このような時間 的制約のために 多く の 監査が 大 急ぎ で行われると いう こと が容易に 分 か る。監査では , そ の 作業のすべての 局面が 前回の時間研究に規定されたとおりに遂行さ れているかどうかをチェックし なければならない。もしこのことが苦情の種となるのであれば , あるいはもし時間研究の結果調停に持ち 込むようであれば, 1回の時間研究を準備するのにかなりの時間がかかることになろう。管理のために監査をするというのに,なぜ努力をそそがないのだろうか。

統計的監査法
作業成果監査は,生産成果標準が不一致であるかどうかを確かめるためにおおまかに用いられる。 他の1つの手法であるこれはその手法の適用範囲の限りにおいて,1つの迅速な信頼できる方法である。 会社は,従業員,部門,全生産施設の成果水準に関する統計的データを作ることができる。このようなコンピュータによる分析によって,広範囲の情報が得られる。

会社発行の文書によれば生産作業者が110%の成果水準で生産していると仮定しよう。作業者の成果は期待はずれである。この作業成果標準システムは,おそらく25%の刺激機会を提供している。作業者は会社からの圧力によっても調子が出ないている。このシステムが契約にうたわれているとおりの25%機会を与えないために,作業者は苦情を申し込んでいる。 ここに会社は作業者を非 難し,作業者は会社を非難する。このような場合,作業成果評定監査によって,何事かまずい点がありはしないかどうかを探し出すことができる。 体温計は,何か実際体に悪いところがあることを指示してくれる。これは,「体調がよくない」という陳述を実証するものである。それはその原因を識別はしない作業成果監査も1つの実証手法である。

推定と仮説検定とは,この監査手続に用いられる手法である。 会社の記録によれば,生産従業員集団は平均じて110%を達成しつつあると仮定しよう。30種類の生産作業からなるランダム・サンプルの作業成果評定を行った結果,Ⅹ=122%,3=8%であった。t統計理論を用いて,P(119く μく125)=095の信頼区間が求められた。標準偏差が未知のとき,その代わりにsが用いられる。t分布は正常性と等質性とを要求する。ここで統計理論を詮索するつもりはない。こ こでの考え方は,30 種類の作業が成果評定されて,その結果,その真の成果水準が119から125%の区間のうちのどこかにあるという予測をしているのである。明らかに,成果評定者の妥当性とか生産作業者による偽造とかに関して議論が生じることもあろう。しかしこれらのことは,権威十分な監査手続の問題である。現実には,それは作業成果標準の設定時に存在する。この特定の事例では,問題は生産作業 者が平均して119から125%を稼ぐべきであるのに,なぜ110%しか稼いでいないのかということにある。

現行の作業成果標準システムを一見してみて,材料を取り出す要素作業に対して5分の遅れ余裕が与えられているが,これは1日3回 の段取替えに基づくも のであることが分かった。短時間の細切れ生産の場合 ,作業者は1 日当り7ないし9回の段取替えをするかもしれない。また会社は30分間の休憩を契約している。この特定の時間研究例では,正常時間が15%ほど拡大され,それを60分に分割するのであるが,これは本質的に休憩時間のうちの若干を取り消して遅れに必要な時間を濃縮するものである。

作業成果監査の背後にある考え方は,作業成果標準システムが既定の成果標準に従って,正しくあるいは誤って機能しつつあることをある種の客観性をもって確認することである。実際面では,作業成果標準システムが裁定のなかで承認されて,作業成果標準が緩すぎるかそれともきつすぎるかを定めるために用いられ,またシステム自体をより厳しく調べて矯正するというふうに扱われてきている。

既定時間標準の監査
既定時間適用の作業を監査日的のために選ぶには,前 述と同様の考え方や形式に従う。 時間研究による監査は 勧められないが,労使契約にその手続きを規定しているものもある。時間研究による検証を必要とする場合には,時間研究監査に対して勧められたのと同じ手続きに従う既定時間システムもまた微力である。外部要因は,時間研究における失敗原因と基本的には同じである。時間研究者のなかには,ある作業サイクルから他の作業サイクルヘと発生する。不規則性の理由を説明することに失敗する人がいる。例えば,あ る1つの部品を他の1つの部品に合わすとき,10回のうち7回しか完全に合わないことが見出されるかもしれない。しかもこの分析において,10回のうち3回その結合を修正するために必要な動作が総時間のなかに割り付けられていない。そのために作業成果標準が厳しすぎとなる。1つの手の動作の全部が他の1つの手によって制約を受けることを示す規定は,しばしばあまりにも厳しすぎる 40T MU=0.024分を必要とする。MTM分析について考えてみよう。もし分析 者が動作のなかにG2=5.6TMUのもちなおし型のつかむを誤って含めたとすれば,その誤差は5.6/40=14%となる。 多くの身体部位動作を含むあるMTM分析のなかには,比較的大きい変動を伴うものがある。これらのことどもは,技術的弱点であって,監査過程において取り上げられなければならない。 既定時間システムあるいは時間研究は通常,作業成果標準が分析者によって技術的に設計された作業方法に基づいてではなく,作業者の方法に基づいて設定されるとき失敗に終わる。既定時間システムは優れた作業測定ならびに方法設計の手法である。正しく適用されるときは , これらの手法は非常に優れている。しかしまたこれらの手法は変化や分析者の誤用に対して弱点がある。したがって監査は必須である。

作業者による生産制限を見分けるための監査ときとして,生産作業者はその生産性を釘付けにする。これは,作業者が産出高を故意に抑制していることを意味する。その例は,色々な生産環境に見られる。例えば組立ラインでは,作業者は労使交渉に先立って実態を立 証するためにも6カ月間も生産を切り詰める。ある自動車製造作業では,生産作業者は150%の水準まで遂行するであろうが,その後,その日は仕事をやめてしまう。保険請求の申立ては,規定された標準に照らして計測される。ここでも作業者は標準を満足し,その後は仕事をやめる。

このような状況はすべて管理者には分かっているけれども,彼らはときとして,このような状態を管理することに全く協力的でないように思われる。労使契約は,作業成果標準を作り直そうとする企図を制約するものであるかもしれない。労使関係によっては労働者を懐柔することを選ぶこともあり,本質的にそっぽを向いている。管理者はそのタイミングがよくないと思うかもしれないが, それは彼らが「裏口営業」の思想にとりつかれているからである。というわけで,作業者の思いどおりにいくことになろう状況によっては,わるいことに, 1人の生産作業者が以前にその施設を担当していた他の同僚に吹聴するだろう。他の1つの状況としては,受け持っている機械に十分な仕事がなく,生産作業者が大部分の時間離席することがみられた。したがって,彼らは1日分の仕事量を25日 かかって行うことがありうる。このような仕事の釘付け風潮はすべての分野で生じている電話修理工は,15時間分の作業が0.5時間で完成したために,1時間トラック内に坐っていることもあろう。 生産抑制は,多くの害をもたらすのである。施設とか機械が十分 に利用されない。作業者は必ずしもこのような目にあまる状況にあるのではないが,作業日を長びかせて楽な仕事を大事に守り続けているのである。このことは,管理者がその製造機能の管理体制を回復するために,生産性調査のための手法を用いている場合とく にそうである。

作業者が生産性を巧妙に抑制しているかどうかを定めることは,容易なことではない。そうとは分かったとしても,立証することができない。逆に,分からないかもしれない。このような状況のもとでは,ノンパラメトリックな統計的検定のうちの連の無作為性検定が,日々の生産水準がランダムでないことを判定するのに役立つだろう。 この検定は,連の理論に含まれるものであるが,この特定の適用例では時間と関係がある。作業者ペースによる 組立ラインの日別の生産性(個 /時間)が次のとおりであったと仮定しよう。

ここでは, 7個の符号変化がある。この問題に対する解は,仮説検定にある。 α=0.01と仮定すれば,4=-233。というわけで,-314<-2.33で,この特定の検定に関して無作為性の考え方は棄却される。

この検定結果に基づいて,作業成果標準担当者は,作業者が日々の産出量を抑制していることを薄々感じるか。もしれない 。これらの作業成果標準は苦情申立てのなかで疑間視されてきたかもしれず,生産作業者は裁定に先立って抑制されたランダムでない生産活動に従事しているかもしれない。 彼らはまた緩い作業成果標準を守りつ。つあることもありうる。明らかにこれは都合のよい状況である。なぜならば,彼 らの生産水準と高賃金が努力しないで達成できるからである 作業者は通常,どれほど の超過分があれば管理者が作業者の作業研究を始めるか についてよく 心得ている このようにして作業者は生産成果標準がきつすぎることも 指摘することができる 従業員は,そ れ以上の調査を省略するような低い水準点に生産を抑制するだろう。

この検定の結果,無作為性が判定されないことは,業者が故意に生産を抑制しているという結論を正当化するだろう 労使契約では通常,新規の作業成果標準が作成されるときの条件を規定している (作業方法,材料, 設計の)変更,事務上の誤り,その他の要因は,管理者がその作業成果標準を再調査し再設定することを契約上正当化するものであろう。生産制限すなわち釘付けは通常,変化に影響を及ぼす要因のうちの1つが存在することの合図である。この統計的検定は,作業者による産出量の抑制がありそうなときの1つの調査手段である。この検定に基づく作業監査によって,その作業成果標準が作業成果を真に反映していないことを立証するかもしれない。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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