コラム・特集

1.4 作業測定システムの活用

IEハンドブック
4部 作業の成果測定と管理

第1章 作業成果標準 : 設定・成文化・活用・保全

1.4 作業測定システムの活用

はじめに

 作業測定の分野は,年を追ってその適用範囲も広がりつつあり,技術的にも進歩しつつある。しかるに,未だにこの価値ある手法を採用していない会社が多数ある。その代わりに,それらの会社はその過去を頼りにしているのである。過去に行われてきたことが,そ れらの会社の考え方を支配しているのである。会社は,利益を唯一の目安としてそのようなやり方を継続するかもしれない。しかしながら,会社はその市場全体における占有率を失いつつも,利益をあげ続けることは全くありうることである。このような傾向はついには,その競争者から食いものにされてその会社を死に至らしめることになろう。100年,50年,さらには25年前の新聞を見られたい。 広告されていた大会社あるいは小会社の大部分は今日存在しない。50年前に上場されていて,今日でも「ニューヨーク株式取引所」に上場されている。会社数は比較的少ないダーウィンの主要論文の1つは,器官はその環境に適応しなければならず,さもなければ死滅するというものであった。これは,企業組織体についても当てはまるように思われる。組織体もまた適応しなければならな い。しかし適応に最悪の時は,恐慌時にある1つの類 比として,重荷を積載した1台のワゴン車が傾斜面上にあり,20人掛りでロープで動きを止めているとしよう。 そして瞬間の過失でそのワゴンが少し前に進んだとしよう。ゆるみの瞬間瞬間に,ワゴンを引き止めるのに必要な力は4倍になる。 他の1つの類比として,高速度扇風機はそれが急回転する前には容易に保持することができるかもし れないが,それがフル回転に達したのちに手を出せば指が切断してしまうことになろう。

ダーウィンの論文や例としてあげら れた物理の諸法則は会社にも 適用される。会社もまた精密な制御の枠内で,鋭敏で,適応性があり,融通性がなければならない。作業成果標準は産出量を測定するし,また管理機能に投入物を提供する。適切に適用された作業成果標準は,会社がその広範囲ならびに特定の管理領域の両方で迅速にして正しい分析を行ううえで役立つだろう。広範な見方からは,作業成果標準は,予算,原価計算,推定,予測, 品種拡張,見積り額の作成などの機能に役立つ情報の一助となる。特定的には,作業成果標準は,作業中断時間の分析,設備利用状況,仕事の流れ,労働力利用状況 ,設備配置,ライン・バランシング,マ テリアル・ハンドリング,監督能率の測定,作業方法,生産中断の最小化, 動作パターン,生産性監査,機械器具の整備,作業者の欠格条項,作業場配置などを通して能率改善のために用いられる。特定目的の管理に関係のあるこのような領域の全体は,もっぱら作業者の生産性を説明したり改善したり ることに係わるものである。これらの領域は,作業成果標準が最も大きい影響を及ぼす領域である。精密に設定された作業成果標準を用いることによって,会社はその競争的地位を即座に検証したり,はずみがつく前にすべりの潜在力を抑制する方法を展開することができる。

作業者の作業成果の分析

作業成果の不規則性の原因生産報告書は,精巧な作業成果標準に従って作業者の作業成果を測定する。この生産報告書を分析してみれば,なんらかの不公正がすぐに明らかになる。 もし ある作業者の所得のグラフが波形を描くとすれば,これは無頓着, 成果の備蓄あるいは作業成果標準の不規則性を示している。例えば,この作業者の作業成果百分率が2週間について 95, 115, 90, 117, 87, 128, 92, 118, 93, 114 だとしよう。仕事の連を主観的にみて,この数列は管理された生産性を示しているようにみえるだろう。 このような経過がn>20日続いたとしたときの連に関する統 計的検定によっても ,この数列がランダムな過程ではないことを検証することができる。

この種の連は,通常このように明確ではない。生産報告書を入念に吟味することによって,長期間にわたる見かけの管理状態を示し ており,作業者がある日1製品を作り,それを翌日の生産と結びつけていることがわかる。これは,生産作業者と監督者との共謀関係を示しているかもしれない。また,作業成果標準が正しくないとか, 生産作業者がその日々のタイムカードに偽りのデータを記入して作業中断時間を悪用していることを意味することもある。このような分析の目的は,管理者,作業者,作業成果標準,作業測定システムのいずれが間違っているかにかかわらず,誤りを判別し,修正処置を講ずることにある。間違いを当てこすることは,救済策とはなら ない。修正処置は,生産性増大の鍵である。

生産報告書を用いて作業を分析すれば,ある1人の作業者が常にグループの作業成果以下にあることが分かるかもしれない。監督的立場にある管理者が質問を受けた場合,その反論は,この特定の作業者の作業成果は確かに高度のものではないが,しかし,この作業者は100%よりわずかに高い作業成果を収めているから解職するわけにもいかないといった類のものであるかもしれない。類似の職務に従事している残りの作業者は,常に125ないし135%の所得をあげているかもしれない。多くの場合,監督者が新参作業者の訓練のために費やしている時間の程 度は最小限のものであり,それは全く命題計算みたいなものであリーこれは記号論理を用いて解かれる議論であるが一もし大部分の人間が泳ぐことができるならば,そしてもしそれが人間であるならば,それらを水中に放り出せと読み取ることができよう。

1つの典型的な場合であるが,ある1人の作業者が全体的には不適当であるが,しかし安定しているという指摘を受けた。生産性報告書によれば,他の作業者よりも40%下の作業水準であることを示していた。しかしこの作業者は1日中作業場に留まって,正常水準よりわずかに上で生産を行っているように思えた。それならば,なぜこのような矛盾があったのであろうか。この特定の作業者の訓練はこうであった。「他の作業者をしばらくの 間観察してみなさい。そしてその通りあなた自身やってみなさい。しかし正しくしなければなりません」そこでこの作業者は,7つの異なった作業工程に必要な釘の数の4倍ほど製品に釘打ちした。この場合,この特定の作業者は汗だくでその日の仕事を終えて,他の作業者が松の香りのする新鮮な製品を仕上げた。その40%減しかかせがなかった。

このようなことどのような作業にでも起こるのではない。と思うようでは,それは純真さにもほどがある。鋳物工場では, 1人の作業者が圧力棒で湯口をみがき,他の1 の作業者が品物をかぎなりに曲げる。制動装置の作業者が第1回の曲げを行って,第2回の曲げを行うために品物を定位置に移動させる。この間,他の1人の作業者が第1回の曲げをバック・ゲージに合わせて行い,次に品物をフロント・ゲージに合わせて前側に引っ張って最終の曲げを行う。これには,品物を定位置に移動させる必要はない。ある1人の作業者の作業成果が他の作業者の作業成果と比べて明らかに低いことが分かれば,作業分析者または管理者は直接現場を観察するための協調 的努力をすべきである。

能率尺度としての定時・残業・非稼働時間
生産報告書は,標準時間と実績時間とを比較できるものでなければならない。しばしばこれによって非稼働時間の指標を比率で与えることができる。その他の方式も実際上,非稼働時間データを表記している。定時作業時間を最小にすることが,大部分の作業成果標準システムの目的である。時には,定時作業成果の不能率が,機械別,製品別,作業集団別,監督者別,管理者別などによって層別される。この生産報告書は,残業賃金と日給とを比較して示すこともできる。定時作業は一般に,何も生産されなかったことをも意味している。生産報告書は, 要求に基づいて残業が行われる場合,定時作業量が大きいことを示すかもしれない。それは,残業のための水増 し 雇用要求であることもありうる。もし定時作業が標準時間に関して2:5の比率であるとすれば,残業に関しても同じ比率を仮定することは合理的でありうる。もし 残業時間を調査してみて定時作業が1:10の比率にあることが分かったならば,定時作業に関してより詳細な注意 を払わなければならないことになろう。

監督者やその他の現場関係の管理者は,このような問題点や悪用に対して基本的に責任がある。信頼できる作業成果標準に基づく生産報告書は,直接の注意を必要とする。これらの領域を速やかに指摘してくれる監督者は, 生産従業員より 以上の訓練を必要とする 監督者が誤った作業者を防御するのに急であるのと同様に,管理者は監督者を非難するのに急である。これら両者とも誤っている訓練された見識のある監督者は,自信を持って行動する。このことは,作業者と監督者との両方の能率を測定している。生産報告書を調べるすべての人々にとって自明のことである。

日給制・計測日給制・刺激賃金制の作業成果水準の比較
生産作業を記述統計学で分析してみると,日給制での作業成果は正規分布をしており,その平均値はレーティング値100%をかなり下回っているのが分かる。さらに,日給制のもとでの最高成績の作業者は最低成績の作業者の2倍の生産効果をあげている。計測日給制(MDW)での平均値も100%以下であるが,その作業成果分布はわずかに正方向にゆがんでいる。刺激賃金制での作業成果の分布は大きく正にゆがんでおり,その平均値は通常120%ぐらいである。 図表4.1.1に示されているデータを調べてみると,すべての生産作業者の集合のなかに,MDW級と刺激賃金制級の作業者を構成する極上の部分集合が存在していることが明確である。

これらの部分集合はランダムではない。会社は数年間かかって,刺激賃金制級の作業者を補充している。 ある新しく設立されたエアコンの工場は,作業成果標準の設定の基礎として既定時間システムを用いたのであるが,その生産労働力を安定させるのに7年間かかった。最初何回も選抜を重ねたのち,新規採用の従業員は訓練のために生産現場へ派遣されることになろう。労使契約のある会社は,特別に規定された訓練ならびに無資格判定制度を備えている。公式契約がない場合でも,明らかに良好な生産従業員に育てることが全くできないような新規採用従業員を,会社は無資格判定する必要がある。最初の段階で無資格決定するほうが容易である。というのは,まだ組合が介入していないからである。それより遅くなると,組合に加入しているからこの手続きは面倒になる。

主観的な無資格判定はまずい。客観的な無資格判定は,いくらか苛酷ではあるけれども,より良質の生産労働力を提供する。このやり方は,長年にわたってみた場合,公正である。生産報告書によって,公正な試行期間中に作業成果標準に到達しない作業者を見分けることができる。生産報告書によって,新しい職務に異動してのち作業成果標準に到達しない従業員を見分けることもできる。時には,以前に優良作業者であった人でも,よろめき始めることがある。この場合,その原因は作業環境外にあるかもしれない。ひょっとして,個人的健康がすぐれないかもしれないし,あるいは家庭に問題があるかもしれない。このような枠組みのなかで,生産報告書は , 会社が同情心をもって救済できるような問題点を見分けてくれよう。

作業成果標準の適用範囲に関連する問題点作業成果標準を作成するに当たって,推奨される伝統的な方法によれば,どのようにして加工対象が作業場に到着するか,その納入に誰が責任があるのか,それをどのようにして搬送するか,その搬送に誰が責任があるのか,などを作業分析者は調べる必要がある設備,物の流れ,機具配備,作業場の配置などを分析する。その手続き全体は,方法工学の領域に属する作業成果標準の分析者はすべて,作業成果標準を正式に設定するに先立って,上述のような分析を必須条件として含めなければならない。作業成果標準はしばしば,方法分析をしないままに設定される。このような性急さは,管理者が必要としている作業成果標準の適用範囲が原因となっていることがある。このような適用範囲概念はしばしば,作業成果標準を設定することを業としている。人々にとって勇気のしるしのように考えられている。適用範囲の広さということが,作業成果標準の質より以上に関心をもたれているように思われる。

コンピュータ時代は,多くの新しい管理方法をもたらした。在庫管理分析,予測,労働力の配置,材料表の処理,その他のソフトウエアを扱うためには,製品成長の各段階における予想生産性に関する多くの知識を必要とする。このことは,作業成果標準作成部門に巨大な圧力を及ぼした。このような動揺にあって,この部門は直ちに仕事に没頭したが,ことに製品の変更時にそうであった。そして「費用をかけても作業成果標準を」の考え方が普及した。この重荷が,個々の作業成果標準が不成功に終わった原因となった。というのは,それらが「現状のままの」作業条件で分析されたからである。多くの場合,適用範囲の拡大のために方法分析がなされていなかった のである。

誤った作業成果標準が費用および市場地位に及 ぼす影響
正確さは必須の要件である 作業成果標準は信頼のお けるものであり,かつ正しい作業方法を記述したものでなければならない。予測は,確実性のうえに「支えられて」いる。正しく設定された作業成果標準ならびに方法分析を用いることによって,会社はより多くの権威 *をもって市場に望むことができる。

職務の評価を定めるためには,労務費,製造間接費,材料費,一般管理費などを分析する必要がある。作業成果標準が誤っているとしたら ,この評価手続き全体をこわしてしまうことになる。「製造間接費Jは通常,直接労務費の関数として定められる。というわけで,1つの誤差が,他の1つの誤差を拡大する.作業成果標準は,生産能率の1つの尺度である。この情報を用いて,会社は次の四半期の労働量ならびに費用の予算の立て方を決定しやすくなる。このように将来に向かって計画する場合,予測が必要である。例えば,規模の拡張について決定する場合,予測性を改善するためには,労働と設備に関する分析を合成することが必要となる。生産性水準を定式化するために設定された方程式の核心は,労働産出量を予測するために用いられる項の中にある。作業成果標準は,予想生産性の個別的表現である。その信頼性は,作業成果標準設定過程全体にとって至上のものである。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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