コラム・特集

1.3 作業成果標準システムの成文化

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理

第1章 作業成果標準 : 設定・成文化・活用・保全

1.3 作業成果標準システムの成文化

 

はじめに

どのような目標設定システムにとっても,管理は必須のことである。管理者は目標を設定し,作業者が定められた生産水準を達成する 状況に基づいて全般的な予測を行う。この予測には,労働力予算・拡張計画・市場浸透などが含まれるだろう。このような予測における重要な変数の1つは労務費である。費用と時間とは関係がある。このようなわけで,労働者が正式な生産期待量に到達するか。それともそれを超過する能力は,キャッシュフロー・日程計画・在庫およびその他の重要な管理機能と直接の関係をもっている。

経営者は,このような作業成果標準を達成できるような労働力を求めて市場に出かける。 もし特定の作業成果標準が20個/時に設定され,その実生産性が16個 /時である。とすれば,人件費は25%増大する。生産性の低下は,施設や機械の不稼働を招く。在庫が増大し,したがって予測不可能性に対する緩衝在庫として作用する。多くの基本的な在庫方程式がアルファ (α )水準を採用している。

ここに,αは欠品確率に等しい。この不確定性をポアソンの予測方程式に組み入れれば在庫需要が増大するだろうが,これは作業成果標準がある水準に設定されていても 実際の生産性が低く,かつまたその変動が大きいからである。もしある部門が生産割当量を満足し,他の部門が満足しないならば,問題は複雑である。部門間のアンバランスが工程内在庫を増やすことになる。この在庫は,部分的に完成された部品である。工程内在庫は,他の在庫と同様に,資金を凍結するのであるが,それは在庫回転率を制約するからである。もう1つの作業成果標準の非常に重要な適用は,予測に基づく労働力計画の立案にある。精密な作業成果標準がなかったならば,予測能力はあまりにも確率論的になり,管理者は極端な処置に訴えなければならず,ひいては労働力の過剰採用につながる。 目標の達成状況について監視しなければならない。このようなわけで,ある1つのシステムが定められた計画に従って作動していることを書類によって調べるために諸会社が多くの種類の管理方法に頼っているのである。

生産報告書の分析

 

生産報告書の内容

生産報告書の情報は ,作業者・部門・工場の効率を監視するために用いられる。その各欄には作業活動を示し,各行には各欄に対する作業者の成果を示している。このような報告書の欄には,部門,従業員の氏名と番号,日別就業時間,直接作業,稼働時間,全体平均作業時間,全体平均稼働時間,作業時間,時間賃率,間接作業,職階,定時平均所得,定時所得,残業時間,部品番号,効率,生産量,交替別,標準時間,週間効率,週間稼働率などの欄がある。

あらゆる種類の会社は,このようなデータを生産報告書に記載するに当たって,それぞれの好みがあるようである。大部分の様式は通常,部門,従業員の氏名,時刻,その日の作業部品番号などを示した行で始まっている。 管理者はこれらのデータを用いて,その組織体が定められた目標に従って遂行している度合を確認しているのである。このような生産報告書は,ほぼ11インチ×15インチのページにぎっしり詰め込まれていて,非常にあさやかなものであるかもしれない。しかし,これらのすべての データは,もし投入情報が誤って入れこまれたとか偽って入れこまれていたと れば無意味なものとなろう。

データの偽造に関する問題点

データの偽造に関する問題点はひどいものであり,また一般に行われているものである。そこで大部分の組合契約あるいは従業員用マニュアルには,次のようなことを規定した条項がある。「従業員は,遂行された作業量を正確に報告する責任があり,また型式,数量およびその他の関連事項を会社が準備したタイムカードに記録しなければならない。その発生の都度監督者による承認がないかぎり,作業中断時間を記録してはならない 。」もし 作業成果標準システムが古くなったならば,従業員は所得を増するため,または生産を釘付けにするために 作業中断時間を用いることもあろう。逆にもし 作業成果標準が厳しすぎるならば,あるいはもし 賃金システムが莫大な賞与方式を採り入れているならば,所得を水増しするために作業中断時間を利用することもあろう。監督者は,以前に生産作業者であったろうから,いずれの状況においてもすぐにそっぽをむく。監督者はときとして管理者より以上に生産作業者との関係が深い。監督者は第一線にいる。すべてがうまくいっているように生産報告書が報告しているにもかかわらず,システムは管理外れにあるかもしれない。

作業中断時間の報告

作業中断時間は通常,異常事態の信号である。それは生産作業者によって悪用されるかもしれない。その結果とし て,管理者は作業中断時間報告を制限するような徹底的な布告を出すこともあろう。監督者は,自分が担当する課業上の事故を心配して,管理者側の諸規則を適用することに熱中しすぎることもあろう。このような一連の事態が発生すると,作業者は怒ってしまうかもしれな い。と くに作業中断時間が承認された場合にそうである。現実に発生する作業中断時間の理由を説明することが許されないとすれば,所得に大きく影響を及ぼすことになる。極端な場合,作業者は非常に無気力になり,実際に発生した事実を報告しなくなるかもしれない。

管理者は,かなりの量の作業中断時間が日々発生するものと考えている。管理者は作業中断時間に対して余裕時間を設け,また作業成果標準システムに正式に掲載さ れているより以上の限られた量を許容するであろう。しかしシステムはうまくいかない管理者の狙いとするところは作業者を監視することにあるのではなく,生産時間をはぎ取る事象を排除する方法を見出すことにある。正しい作業中断時間報告手続によれば,そのデータが表 記されて救済処置に役立つのである。

鋳物工場では,鋳型Iは注湯工をしのぐ極端に高い水準で作業するかもしれない。鋳型工はそれ以上鋳型を注湯ラインに充満させることができないから,作業中断を みんなに知らせようと努める。こうすることが,所得の増大に役立つのである。挽き肉作業では,チョッパー(肉切り),ミキサー,ブレンダーが極端に高い水準で作業をし,プラスチック・ケース入れ作業より進度が速い。この作業は刺激賃金制でないから,作業者は小休止をとる。ミーリング・マシン(挽き肉機)の作業成果標準は厳しすぎるので,作業者は6時間生産し,色々の作業中断時間または追加段取に3時間を向けている。作業者はその日の出足が悪く,その日の生産量を全部は報告しないかもしれない。成績の悪い日には,作業者は日給を支給される。翌日作業者は書類上前日から貯えておいた個数を報告する。これらの行為は,作業中断時間の用である。

そうではなくて作業者は,材料欠品,工具破損,組立用部品品質不良,安全装置不調,その他の理由で作業中断時間を正直に報告することもあろう。この場合,原因が分かっているならば修正することのできる色々の問題点がある。ふたたび強調しておかなければならないことは,作業中断報告書は生産上の問題点を限定するために,管理者がそれを活用することができるということである。もし作業中断時間の悪用がはなはたしいならば,ある特定の作業成果標準あるいはそのシステム全体がぐらついていることを意味することになろう。ある種の作業中断 時間が続くような状況では,それを調査して修正処置に結びつけることができよう。あまりにもしばしば管理者は作業中断時間を管理上または技術上の誤りと関係づけないで,不正行為と関係づけて考える。管理者の責任は,修正処置をすることにあるのであって,あら探しをすることにあるのではない。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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