コラム・特集

1.2 作業測定システムの確立

IEハンドブック

4部 作業の成果測定と管理

第1章 作業成果標準 : 設定・成文化・活用・保全

1.2 作業測定システムの確立

はじめに

時間,日,週あるいはその他の時間の単位が,従業員の成績のしるしとしての産出量を測定するために用いられている。これらの測定は,主観的なこともあれば客観的なこともある。 主観性と客観性とを区別する非公式な方法は,文章の後に置かれる言葉によって見分けることである「 … だと確信する」という表現は,通常主観的に表された文章の後に置かれる「……というのが事 実である」と いう表現は,通常客観的な陳述の後に置かれる。しかしながら,確信対事実に関して常に論争が生じるようである。こういうわけで,客観性は定量的であり,主観性は定性的であるということに決めておく。

さらにもう1つ言及しておかなければならないことがある。従業員成果の主観的測定は,意見,偏見,好き, 嫌いなどを表現している。客観的測定はおおよそ,識別できる産出物に限定される。フォーマルな作業測定がすべての主観性を排除すると考えることは正しくない。そして,その逆も考えてみなければならない。インフォーマルで定性的な測定は,従業員の不満足と企業危険とに大きく影響する。多くの出来事が従業員不満足の原因となる可能性がある。従業員は,まえもって分かっていて,かつ達成可能な目標を与えられるときは,その達成に好い方向に反応することが一般に知られている。 従業員がこのような目標に好意的に反応する場合,産出量は予測じやすくなる。このようなわけで,原材料在庫・工程内在庫・完成品在庫が安定してくる。 総して,従業員の成果が規定された標準に等しいかそれともそれを超えているときは,管理者は予測可能性が大きく,かつ危険が小さいという状況の中で管理運営することができる。

科学的作業測定によれば,従業員の作業を詳細に調べることができる。実績平均値またはその他の実績値を用いる手法は,課業を測定可能な部分部分に分割する方法 によって代替される。この方法によれば,課業を合成することができるし ,したがって容易にすることができる。よりよい方法がある。各従業員は,必要情報に接することを許され,作業方法に訓練される。このような適切な場面では ,従業員は管理者の助力のもとに目標を達成し , 一種の親密感がわく科学的作業測定は世界中で用いられている。その展望と利得は非常に大きく,営業,事務,製造,小売,サービスその他の業種で精密な目標を設定するために用いられている。本質的にいって,作業の測定はすべての分野に普及している。

工学的作業成果標準への移行

主観的な標準
多くの組織体はその初期段階においては,フォーマルな作業測定を用いて動いてはいない。このようなインフォーマルな状況のもとでは,生産作業者と管理者との関係は非常に密接である。このようなわけで,フォーマルな方法よりはむしろ親睦的な方法が作業者の産出量を支配することになる。組織体が成長していくにつれて, このような親密な構造が崩れていき,作業者はなにかしらその全体的な過程から離れていくように感じるようになる。意識的に仕事を切り詰める作業者はほとんどいない。親睦的な構造が変わってしまったのである。相互関係は変わってしまい,かつてはインフォーマルに仕事を分かち合っていたことが,いまやフォーマリティ(形式主義)によって置き換えられることになるであろう。明らかに,職場における作業者の人間的欲求は,かなりの注意を要する。管理者は,このような欲求を満たすよう理解し,助力しなければならない。しかしながら,かつては高度に生産的であったインフォーマルな構造は,いまやフォーマルなものとなり,しかもいくらか生産性が低いものになるであろう。制度,製品 ,そして作業割当が変わってしまったのである。監督者も変わってしまった。

経営幹部は数力月間も姿を現さないかもしれない。このようにして,このような状況のもとでは,意欲的な作業者も能力いっぱい生産しないかもしれない。というのは,日標が理解されていなく,日標設定に際して作業者が仲間入りしていないからである。

拡張しつつある組織体は,このようなインフォーマルな状況で操業を続けようとする。これまでそれでやっていけたからである。しかし,減退していく生産性は間もなく変化の必要性を指示するそして進化過程が始まる。 最初,主観的基準が日標設定の基礎となる。このような基準は作業者の容認するところである。あらゆる主観的標準には,なぜその主観的な標準目標を達成することができないのかを説明する主観的な理由があるように思われる。このようなやり方で操業する場合,管理者は規則の形で圧力に訴えなければならない。規則というものは , 主観的な作業成果標準がそうであるように,曲げら れるように作られているもののようである。そこで管理者は, 個々の標準を実績平均値によって表そうとする。

生産性設定のための平均値の使用
作業測定に関して企業が進化していく過程における第2の段階,すなわち実績平均値を使用することは,最もまずくなる可能性がある。平均値というものは,対等意識的な圧力が作用して,標準割当量以上の成果をあげる。人々の意気を消沈させるのである。平均値は通常,標準割当量以下の成果しかあげない人々をより高い水準に向けて刺激しないのである。そのような人々は,無関心だからそうなるのではなく,多くの場合無能力だからそうなるのである。平均値をもってしては,作業を分析することはできない。平均値をもってしては,作業成果の改善のために作業者を定められた方法に訓練することはほとんどできない。 平均値を用いて目標を設定するような管理者は,作業者を放任することとなる。このような運営の仕方をすると,作業者はさらに管理者から離れて, 恨みが重なってくるようである。そして管理者が作業者圧力を感じるにつれて,管理者は要求量を低くし,言い訳を受け入れ,あるいはうぬばれさせ,概して真の不良成果を避けてとおるようになる 。

平均値は役にたつが,しかし通常フォーマルな作業測 定を伴った手法の多くを必要とする。しばしば組織体は,その状況が独特なものであって,フォーマルな作業測定の手法がうまく適用できないと信じていることがある。これはあまりないことであるが,もし実績平均値を用いなければならないのであれば,それに先立って方法研究をも併用すべきである。管理者の責任は,日標を与えることのみならず,作業者を訓練,啓発,激励して生産割当量を達成させることにある。平均値をさらに上手に用いる方法として,過去の実績情報を時間経過との関連において統計的に分析する方法がある。この手法によれば , 習熟理論と投資効果の影響を受けて,標準を高水準に押し上げる傾向がある。ここでもまた,日標達成の矛先が誤って作業者にのみもろに向けられる可能性がある。

こんにち,平均値に基づいた多くの方法が用いられている。そのなかでもうまく成功している方法は,フォーマルな作業分析を継続的に併用しているものである。

フォーマルな手法の分析

作業成果標準を設定する最終の段階は,時間研究,既定時間システム,標準資料,コンピュータ援用標準資料などを含んだフォーマルな手法に関するものである。これらの手法のすべてが,作業評価のために精密な方法を採用している。これらの手法は生産性に役立つすばらしい手法ではあるけれども,「能率エキスパート」という汚名をいただいている。このような表現は,数十年も前に造語されたものであるが,こんにちでもなおこの分野につきまとっている言葉である。

時間研究 時間研究では,作業評価のためにストップウォッチまたは電子ウォッチを用いる。1つの課業を要素作業と称する基本的な作業遂行上の部分過程に分割する。これらの要素作業時間の合計が,作業者がその課業を遂行するための総時間を構成している。この総時間に,人的時間・避けることのできない時間・疲労時間が付加される。これらの時間は,その課業の所要時間を増大する。というのは,これらの時間が日々の不断の努力による生産性に対する障害となっているからである。ストップウォッチ時間に人的時間・避けることのできない時間・疲労時間を加えたものに,作業者の作業努力とか遂行度の尺度である遂行率と連結して用いられる。作業分析者はこれらを結合して,作業者や管理者に課業の所要時間、または1単位時間内の生産所要量を規定する標準を提供する。

課業を部分課業に分割して,方法研究をしやすくする。16の要素作業から成り立つ課業において,ある1人の作業者は他の1人の作業者よりも短い時間である1 つの要素作業を遂行するかもしれないが,第2の作業者は他の1つの要素作業では第1の作業者をしのぐということがありうる。要素作業を評価しつつある分析者は, 生産性を高めるような進歩要因をさらに見出すかもしれない。このような個々のよりよい作業方法を結合することによって,通常作業方法全体の改善に結びつく。このようなよりよい方法に作業者全員を訓練することによって、作業者生産性が向上することになる。もし課業をより小さい部分作業に分割して時間測定をし,どの作業部分がよりよく遂行されたかを調べなかったとしたら,上に述べたような利得は気づかないままになってしまうであろう。

 

ストップウォッチは,とくに未熟者にとって,時として立派な装置である。2時間以上「計時する」ような作業分析は,作業者によってしばしば誤解され,たちどころに拒否される。自身に対する責任をよしとしないような管理者は作業者に同情して,作業測定計画が敵意の風土のなかで行われるようになるであろう。測定は,運営を成功させるうえで至上のも のである。測定の必要性は,つまるところ個人的感情を抑圧するところにある。したがって,管理者は生産性増大のためにフォーマルな測定に訴えることとなる。その利得は何倍にもなる。達成水準が客観的に規定され,よりよい作業方法が確立され, 作業者と管理者との間に和が確立されるのである。

既定時間システム 既定時間システムを用いて作業者成果を測定し,改善するときは,より 詳細な作業分析を行うこと ができる。このようなシステムでは,作業者の主要な動作が動作要素によって規定される。時間研究における1つの要素作業は,10個ぐらいの動作要素から成り立っていることもあろう。これらの動作を規定し,それらの動作に時間を割り当てることによって課業を一連の動作に拡大し,それによって生産性の障害となっている多くの事態を検出し,改善することができる。 分析精度が詳細であるほど,作業分析に多くの時間を要することは明らかなことである。

既定時間システムによれば,フォーマルな時間測定を最小限にすることができる。ストップウォッチの使用は,工程時間かそれとも特殊な課業の研究に限られている。既定時間システムは,作業方法と称される動作や動作系列の改善のためにすぐれている。フォーマルな既定時間分析を遂行するための所要時間は,非常に長時間かかる。生産量・予想節約額 ・作業者の受容性がこの種の分析の使用を正当化することになろう。 問題にしている課業の性質によって,使用すべき手法,すなわち時間研 究であるかそれとも 既定時間システム あるかが決まる。 製造業においては,既定時間システムは組合によって拒否されることがあるかもしれない。というのは,長期間にわたる,通常不当な不賛成によるものである。とはいっても既定時間システムは引き続き採用されつつあり, 広範囲の普及をみている。

標準資料と計算機援用システム 標準資料を用いるのは,特定の設備または特定の製品について,同様の方法を用いて遂行される種々の課業に対して同族関係を見出そうと試みたものである。この手法を用いることによって,現場で現に遂行されている課業をわさわさ調べなくても作業成果標準を設定することができる。この方式を正しく用いるときは,非常に優れたものとなる.内挿法は時間設定のためには概して十分正確であるが,しかし作業者の訓練を必要とするときには不十分である。 標準資料にまつわる問題点は,外挿法を試みることにある。この場合,分析者は作業者の目標と予想価格を設定するために既定の資料から推定することになる。

計算機援用標準資料は,ある程度より精巧なものである。というのは,それが要素作業系列よりもむしろ動作系列の関係を探求しているからである。線形回帰・多重回帰・相関分析・F検定などの手法を援用して資料の諸関係を分析するのであるが,統計的方法をもってしては初めに誤っていたことを正すことはできない。 標準資料を正しく用いるためには,分析者は現場またはその課業に接触しなければならない。作業成果標準を定める主な 理由が,方法/動作分析にあることを想起しなければならない。 まずいことには,これは不在中に行うことはできない。分析者は,直接その課業を観察しなければならないのである。

測定方式の選定

主観的作業成果標準から客観的作業成果標準への推移

大部分の組織体は,主観的標準から始める。これはじばしば監督者の直観によるものである。しばしば,測定対象となっている従業員は測定基準あるいは各測定基準に割り付けら れている点数を理解していない。レーティング表を作ることによって測定基準に客観性をもたせようとする試みが,いまだに主観的に行われている。というのは,監督者の感覚が筆先に留まっているからである。

どんな組織体でも,良好な従業員関係を望んでいる。主観的標準は,その結束を破壊する 傾向がある。しかしながら組織体は,予言可能性によってリスク(危険)を最小にするために測定をしなければならない。また組織体は,日標を設定することによって生産性を改善するために測定をしなければならない。客観的標準の要点は,従業員が作業割当量を達成するために必要な方法と手順を作成することにある。というわけで,主観的標準がう まくいかないような状況のもとでは,組織体はより信頼のおける予測の基礎を確立するための方法を求めることになろう。このような移行を行うときは,疑義が流言を呼び,容易 ではないという感覚が生まれてくるかもしれ ない。というわけで,このような変化は公然と行われることが肝要である。 従業員は ,新しい制度について 公式に知らされなければならない管理者は,誰かが他の人に情報を広げていき,次いでその人がさらに他の人に情 報を伝えいくものと信じてはならない。その伝言は分解していくだろう。―おそらく好ましくないはね返りを伴って。

作業環境に応じた方式

サービス作業環境 主観的標準から客観的標準へ移行する場合,その作業に最も適合した作業標準システムを求めなければならない。ある種の職場環境によっては,ストップウォッ チ時間研究が適していないこともあろう。一般に,サービス機関はこの部類に属する。このような作業環境にあっては,従業員は心的な所得を本当は求めているかもしれない。ストップウォッチ時間研究は,このような精神過程を破壊する傾向がある。

このようなわけで,多くの組織体が割り当作業量を決めるために既定時間システムまたは標準資料を利用しようとするのである。 既定時間システムの洗練さが,サービス型の作業環境で作業している従業員にとって受け入れやすいようである。このような分野では膨大な量の資料が入手でき,新しい方式を実施しようとしている者の役にたっているアメリカでは多数の地域的あるいは全国的な会合があって,この種の特別なサービス型の作業測定領域に関する論文が得られ,さらに理解を深めようとしている人々のために開放されている。

事務・小売作業環境 事務あるいは小売の状況においては,ストップウォッチ時間研究に対する抵抗がなくなる。このことは,作業成果標準関係の諸手法が広く受け入れられていることを意味しているのではない。ストップウォッチ時間研究が役立っているのは,単に次のようなことを表しているにすぎない。すなわち,客観的標準に移行するという決定がなされたならば,そしてこのことが従業員に告知されるならば,方式が何であるかは一般に問題とならないのである。時間研究は信頼を受けており,速やかに実行することができる。時間研究の手法を用いるときは,多くの課業がそれぞれの作業成果標準を求めて分析することができ,その情報を標準資料として展開することができ,その設定過程を分析の対象となっている従業員にある程度たやすく説明することができる。ここで再び強調しておかなければならないことは,作業測定手法はその課業の所要時間を提供するのみならず,既定の目標を満足するような作業方法のパターンを与えることである。サービス作業においては,その作業は事務または小売作業におけるようには循環的ではないかもしれない。社会学的な見地では,既定時間システムがサービス作業の状況ではよりよく受け入れられるようである。また,そ の作業は完全な繰返し作業からかけはなれたものである。したがって,既定時間システムはこのような制約条件のもとでの状況に役立つのである。

事務および小売作業は,いずれの方式をもうまく利用することができよう。このような作業分野にある従業員は,正式に組織化され,また契約上の拘束を受けているだろう。その契約は,時間研究のみを用いることを約定しているかもしれない。また普通に見られる契約上の制約では,作業成果標準にかかわる論争事件の場合,既定時間システムはストップウォッチ時間研究によって検証されなければならないことを規定している。このような契約条項は製造業における協定により多く見出されるけれども,事務ならびに小売業においても一考に値することである。このようなグループを代表する労働組合は, 非常に大規模な組織体である。そのような労働組合は,作業測定を専門とする正式なIEスタッフを持っている。 このように,事務または小売業のための正式な作業成果標準を設定しようとするときは,もし契約が存在するなら,その契約に適合した作業測定方式を採用することが不可避なことである。

製造作業環境 製造はそれ自体独特のものをもっている。製造作業においては,作業測定が広く行われている。歴史的な展望からいって,作業成果標準は,主観的なものも客観的なものも含めて,製造作業においては根強いものがある。作業の歴史のある時期においては,労働力が満ちあふれて,長時間労働を採用することができた。

より高い生産性が要求されるときはいつも,単にその作業により多くの労働力を投することによってその場を切り抜けた。このような生産割当量達成のための人海戦術は,産業革命まで続いた「持てる国」という思想が労働力の不足を招き,その結果多くの移民がアメリカにもちこまれた。分業の諸手法が生産を加速するために用いられた。そこには,人間的な作業条件の改善をめざす傾向があった。人件費は,総合的な製品原価の一部分として増大した。作業に関する制約条件が,法律,行政,労働組合によって課された。このような一連の歴史的事件を通じて,作業能率が大いに必要とされ,というわけで時間・動作研究が作業成果を測定し改善するための手法として非常に重要となった。

もともと,測定に必要な諸手法は粗雑なものであった。ほとんどの作業が手作業であった。機械が作業サイクルの大きい部分を占めるようになってから,測定は精巧なものになった。人対機械の費用関係が増したからである。 産業が機械的なものから電気電子技術へと変化するにしたがって,またふたたび測定の精錬化が行われた。このような流れのなかで,伝統的な測定方法は精錬化され,新しい測定方法が確立され,作業時間の推移と密接して管理が行われるようになった。

このような作業成果標準の長い歴史とともに,製造作業は測定の原理によってかき乱されることが少なくなっている。 作業者の測定に対する態度は厳しいが,一方において他の作業環境に比べて製造業の作業者は作業測定制度に対していくらか受容的である。小規模の製造作業は,通常主観的標準から手掛ける作業の繰返し性が大きくなるにつれて,次第に客観性が追求されている。多くの製造業は,作業成果標準に関する限り,契約上の拘束を受けている。どの作業成果標準を採用するかを決めるに当たって,特別な契約上の用語を用いなければならない。また契約には,小休止・賃金支払方法・規律・ 余裕時間,ならびに会社の作業成果標準を制約する。その他多くの条項を規定するであろう。契約または労働組合がない場合,製造企業は完全に正式な作業成果標準と取り 組むべきである。その作業測定牛 1度が答えるべき最初の人は作業者に対してである―労働組合の有無にかかわ らず。

むすび

既定時間システムは,実際上あらゆる種類の製造作業に用いられてきた。しかしながら,支配的に使用されている方式は時間研究である。いずれの方式が採用される。にしても,そ の方式の実施移行計画を立てることが常に最善の策である。その実施移行が,工場全体に作業成果標準を確立するよりも,部門ごとに進められるほうがその作業測定方式がうまく展開していくようである。あらゆる課業およびあらゆる作業にすべての作業成果標準が 設定されるのを待つよりも,ある特定の部門のそれぞれの機械あるいは作業場にその作業測定法を確立していき,そのようなやり方で全作業に及ぶまで継続していくほうがその企業にとって進めやすい。明らかに,製 品の品種とか混合生産によって実施移行 計画の実行可能性が左右される。 最も悪いやり方は無作為法であり,それによればある種の先入先出法に基づいて作業成果標準が課業に定められていく.課業を要素作業に分割していくのに論理がなければならないのと同様に,部門内ならびに施設内での進め方に論理がなければならない。ときには,売上げ上位にある課業または製品を選ぶのが賢明である作業によっては,製品品種の20 %が売上げの80%を占めることもあろう。というようなわけで,このような作業にまず標準が設定されるとすれば,利益に及ぼす作業成果標準計画の効果はより速やか に実現することになろう 。

歴史的な視点からは,作業成果標準の実施移行過程は主観方式から平均方式へ,そして時間研究へと進んできている。ひとたび客観的方式が確立されたならば,既定時間システム,標準資料あるいは計算機援用標準資料がさらに精錬化されていくことになろう。このような過程は,十分な成功裡に時間研究を全く素通りしていくだろう。ここでふたたび強調しておかなければならないことは,今日支配的に使用されている方式は時間研究である。時間研究は陳腐化していない。それが正しく用いられるときは,非常に信頼のおける作業成果標準設定方式である。時間研究にみられる不公正事項の若干は,既定時間システムを用いて最小限に食い止められる。逆に, 既定時間システムの不公正事項をも見逃すことはできない。それぞれの方式は,それなりのよさを持っている。この分野の文献は多数存在し,それぞれの方式の長所短 所を説明している。選ばれた方式は,人々が常識を働かせること,人々と作業との関係,人々の欲求と志望,そして課業が首尾よく果たせることを心から願望している。そのような欲求を除外するものではないだろう。 作業成果標準が適切に適用され伝達されるとき,生産性の増大と従業員の幸福とがそこに存在するのである。もしかして採用方式がうまく働かない場合,その原因は外部にある。通常その方式自身が問題ではないのである。

動機づけと管理のためのシステムの選択

生産性の向上
作業標準システムは,精細な管理なしにはうまく機能しないだろう。ひとたび目標が設定されたならば,作業者は通常その目標を達成すべく努力をするものである。生産報告書の形で管理していけば,特定の従業員または 部門が規定された生産水準で作業しているかどうかを知 ことができる。この生産報告書は通常,従業員または部門が課業を遂行するために消費した実際時間,割り当てられた課業数,不断の生産努力に対する障害事項などの欄にデータが示される。生産報告書によっては15欄を設けていて,作業者・部門・課業に関するいろいろの情報を示している。管理者は確かに作業が有利な水準で遂行されつつあることを知りたいのであるが,この生産報告書の重要性は,単に作業者の成果責任にのみかかっているのではない。この生産報告書の主な目的は,日々の生産に対する障害事項を明確にすることにある。

見識のある管理者は,自 分の責任が遅れを排除すること,したがって作業時間をより多くすることにあることを心得ている。1作業日が,60%の生産時間と40%の非生産時間から成り立っていることもあろう。たとえある生産刺激方式によって従業員が予想生産水準よりも15% 上回る生産を行ったとしても,通常これによって非生産 時間が減少するとはいえない。従業員はその利用可能な60%の生産時間のなかで産出量を増大したことを意味しているかもしれないのである。もし生産報告書が40%の 非生産時間を区別するよう設計されているとしたら,管理者は生産上の遅れの原因となっている要因を見分けて , 比率を60:40から80:20に変えるかもしれない。 望むらくは,この追加された20%が,従業員によって前と同じ予想生産水準の15%増しで生産するために使われることである。作業成果標準は,この生産報告書の絶対必要な部分となっている。作業成果標準は,狙 いとする生産水 準を示している 企業は,従業員が予想生産水準を100%達成するとの想定のもとに生産原価ないしサービス原価を見積もっている。生産水準が低いときは,その分だ けその組織体または組織体が奉仕している市場によって吸収されなければならないのである。

賃金支払方式の比較

従業員が規定された生産水準で作業することを確保しようという試みのもとに,経営者は色々の形で誘因を準備することになろう。最も一般的に採用されている2つの方式は,MDWと金銭的刺激方式である。両者とも刺 激方式に属する。第1の 方式は,正常ないし平均の生産性要件にまつわる刺激方式である 第2の方式は,高度 の生産性と賃金とを関連づけたものである。

計測日給方式(メジャード・デー・ワーク方式;MDW)単純な日給方式は,通常客観的な作業成果標準のないままに従業員に時間給を支払う方式である。MDWも従業員に時間給を支払うが,その産出量が客観的に測定され管理される。純粋な意味では,作業成果標準は時間研究,既定時間システム,その他の作業測定手法を用いて決められる。これらの作業成果標準は,従業員や従業員を監督する立場にある人々に利用できる産出量を測定するために,また生産性を制約している要因を列挙するために管理が行われる。このような管理過程は, 順を追って続けられる。それぞれの従業員・集団・部門 には,個人的にかそれとも公示図表によって進行状況に 関する情報が知らされる。誘因は定められた目標を達成しようとする願望に向けられているのであるから,従業員・監督者。その他の管理部門はこの達成努力に向かって協働するのである。この連合努力が,労使間の意思疎 通と理解とをよくしていくのである。ひとたび目標が達成され維持されたならば,さらに高度の目標を達成するために上述のような全過程が科学的に押し付けられることになる。MDWの賛否両論とも大いなる信念をもって提議されている。その成否は,方式それぞれの純粋性よりもむしろ管理態度により多く依存しているものと思われる。

MDWが選好されて,その相棒である金銭的刺激方式よりもうまく機能しているような特別な事例がある。しかしながら,そこにはおきまりの法則はないというのは,もともと金銭的刺激方式の領域であったところで,ある種のMDW方式が例外的にうまく機能するからである。この逆のこともいえる。MDWは,広範囲に採用されている一種の刺激方式である。MDWの支持者は,MDW方式の維持費用が金銭的刺激方式の費用よりもはるかに少ないことを敏感に指摘している。その他の期待,例えば品質改善,調和のとれた労働環境,労働者の誠意などもMDW方式を採用する理由としてあげられている。作業成果標準の専門家のなかには,労働強度―公正な1日の仕事量が何であるかの概念一は,これら2つの方式を比べてみて,MDW方式に対していくらか小さくあるべきであるという見解をもっている人がいる。この考え方によれば,金銭的刺激方式における正常作業量の客観的尺度としての100%は ,一つの仮説として,MDW方式においては110%あるいはそれ以上とみなすこ とができる。要するに,金銭的刺激方式に対して客観的に作られた労働基準量に匹敵するものとしてではなく , むしろ「正常」作業者はいくら生産すべきかを客観的に決めるに当たって,MDWはいくらか低い生産性を要求しているのである。

このことは,普遍的に合意を得た考え方ではない。 多くの実務家が同一の労働基準量を主唱している。しばしば,MDWが金銭的刺激方式に先行している。逆に,失敗に終わったとか古くさくなった金銭的刺激方式がMD Wに置き換わることもあろう。 MDWが金銭的刺激方式 に先行している場合,金銭的刺激方式へ移れば,正常作業量が10ないし30%増大することを従業員に納得させることはむずかしいことだろう。初めからずっと,従業員は適用されている作業成果標準が公正かつ達成可能なものであることを知らされてきている。その上,作業成果標準をめぐって苦情と仲裁とがあったかもしれない。というわけで,ひとたび公正であると考えられている作業成 果標準が,いまやあまりにも安易に金銭的報酬を含むという主張は,作業者にとってある程度受け入れにくい。

MDWは,作業者が規定された目標に達しない場合の規律を必要とする。契約状況においては,段階的方法に従う。非契約状況においては,その方法はあまり正式なものではないが,いまだに存在している。MDWを適用する場合,従業員の期待達成水準は金銭的刺激方式に対するものよりも低いだろう。労働基準量を100%とする とき,MDWの期待値は80ないし90%であるかもしれない。金銭的刺激方式における期待値は,100%以上となるであろう。

動作時間測定法(methods time measurement;MTM)は ,一種の既定時間システムである。 時間研究を例外として,MTMはその他のどんな作業成果標準方式よりも広範に用いられている。作業と典型的に関連のあるすべての動作パターンを分類して,資格を保持している実務家が利用できるように,その動作時間がカード
上に表記されている。 MDW方式用とか金銭的刺激方式用とかいったカードはない。MDW方式を用いる場合,カードの時間値を変えるための修正係数もない。このようなわけで,両方の刺激方式に対して100%,すなわち正常値は同一である。同じことが時間研究に対してもいえる。100%の遂行率は,MDW方式または金銭的刺激方式を用いるとき同一であるべきである少数ではあるが多工場をもつ会社が,どの刺激方式を用いるかによって正常遂行率,すなわち100%の内容を変えるという選択を行っている。これはそれらの会社の独特の選択であって,作業測定職一般の運用理念として誤って構成されてはならない。

多くの会社がMDW標準を100%に設定し,この水準に合わせて規律を設けている。多くの裁定が,このやり方が正しい運用方法であることを確認している。 MDW方式を採用する場合,いくらか低い達成水準を採用するという考え方は社会的な問題である。いくらか低い達成水準を採用するいずれの課業方式にあっても,100%は容易に達成可能であり,「不当なストレスまたは疲労なしに明けても暮れても」達成または超越できるものである。 このようなわけで,MDWを採用する場合,いくらか低い成果水準を採用することは,選択の問題であって設計の問題ではない。80%ないし90%を採用することは,誤って正当化されている。なぜならば,100%を超える成果水準に対してなんらの金銭的報酬もないからである。まずいことに,このような考え方がMDWの労働基準量を低い方へ移行させたのである。MDW方式の産出量と金銭的刺激方式のそれとを比較するとき,そこには著しい相違がある。これは一般にいえることであるが,明らかに,少数の例外もある。MDWの労働基準量を低目に設定すること,本質的に例えば85%を100%とみなすことは,標準原価計算・価格設定・生産管理。 その他の管理 機能にとって便利なことである。しかし ,数年間にわたって作業者がこのように前もって低められた目標の85%しか達成していない場合,同じような社会的意味づけが,MDW労働基準量をさらにむしばんでいくとは考えられないと誰がいえるだろうか ?

保全費用が少なくてすむとか,より調和のとれた労働環境とか,労働者の誠実性とか,品質の改善とか,その他の理由によりMDWを正当化することは,普遍的に通用するものではない。もし85%の労働基準量が採用されるとすれば,これらの正当化の理由は,125%水準の成果をあげる金銭的刺激方式に比べて,多大な量の金を生みだすことにならなければならない。また,MDWを採用するには,より大規模なそしていくらか洗練された監督 スタッフを必要とする。多くの場合,MDWを採用するときは,調和のとれた労働環境と労働者の誠実性がよい と報告されている。しかし,も し90ないし100%水準が維持されていない場合の規律が訴えられるならば,上述の利点は極めて急速に消失する傾向がある。また,成果水準を低下した状況での作業者が,彼ら自身ではなく,会社または事業を痛めつけつつあることを考えてみよう。 MDWのもとでは,労働者に同じ賃金が支払われる。これを刺激方式が採用されている状況と比較対照してみよう 。この場合,低下された成果に対する賃金支払いの一部分は従業員のポケットからでるのである。考慮に値する他の1つの要因は,作業方法の変化あるいは作業成果標準の設定の誤りにある。従業員がMDW方式のもとで100%水準で作業していること,および作業方法の変化または作業成果標準設定の誤りが生じて,従業員はいまや115%水準で生産することができると仮定しよう。これらの条件のもとで,従業員は100%水準の産出量を維 持するだろう。このようなわけで,真の意味での生産性 は低下するのである。

金銭的刺激方式 規定された課業水準を超える達成成果に対して追加賃金を従業員に報酬することは,「金銭刺激的作業成果標準システムと広く称されている。金銭は,歴史を通じて1つの誘因として用いられてきた。 刺激策としての金銭を排除しようとする試みは,経済・哲学・神学の論文に討論されてきた。その実験は,と くに事業において,そしてとくに生産性に関して続けられている。非金銭的報酬は,団体精神が存在する場面にのみうまく作用しているかのようである。というわけで, ある1つの状況のもとでうまく作用しているこのような1つの方式を取り上げて,それを他の1つの状況に移転すれば,生産性の低下を招くかもしれない。金銭は普遍的に理解された交換の媒介物であり,このことが生産性向上のための1つの誘因として広範に利用されている理由でもあろう。

作業成果標準・方法工学・動作分析などが一般に普及して多くの金銭的補償方式の開発へと導いた。このような方式の大部分は,特別な緊密に監視された状況のもとでは成功した。 一般に,賃金支払方式は1対1・集団別・利潤分配などの方式に分類することができる。初期の特殊な方式として,「ハルシー方式」,「ローワン方式」,「テイラーの差別出来高方式」などがあった。労働環境が変化するにしたがって,これらの制度が修正されていった。その新しい方式として,「ガントの課業・賞与制度」と「エマーソンの能率・賞与制度」があった。公正な報賞制度を追求する手法はさらに精錬化されて,ふたたび変化しつつある労働環境に適応すべく,工場全体または企業全体を通して報賞を均等化する方式へと移っていった。「ビドーの点数制」,「ヘーネス・マネ方式」 ,「パー クハーストの差別賞与方式」は,このような均等化方式のうちの少数例である。これらの方式はすべて,綿密に監視され,また選ばれた状況のもとでは非常に効果があった。集団方式や集団賞与と個人賞与との組合せ方式も,一般に行われた特殊な報賞方式であった。 歴史的には,集団別方式が多く,あらゆる業種そしていつの世代にもそうであったと思われるふたたび強調されなければならないことは,これらの方式のすべてが特定の状況でのみ効果的であったということである。普遍的な報賞制度としては,その成功確率は極端に低かったのである。

今日,賃金支払方式の90%以上が1対1方式である。 1対1方式は従業員によって容易に理解され,また一般に他の諸方式に比べて競争心をそそるものである。1対1方式では,課業の成果水準が決められ,労働基準量を超えて達成した成果水準に直比例して個人個人が報酬を受ける。例えば,ある1人の従業員は標準よりも25%上回る成果をあげるかもしれない。この達成成果水準に対する直接的かつ比例的な支払額は,基本賃率$1.00ごとに$1.25になる。多くの場合,会社は刺激基本賃率と日給基本賃率を準備している。刺激基本賃率のほうが低い日給基本賃率を達成するためには,労働基準量より10%上回る成果水準を遂行しなければならないこともあろう。

その他のシステムでは,刺激基本賃率,日給基本賃率,賞与制などを準備しているかもしれない。比較のために$1.00を用いるとすれば,この種の方式では,従業員が制御することのできない遅れのために生産することがで きない時間に対して,従業員に100ドルを支払うことになろう。生産時間に関していえば,この従業員は(1.25 ドル)(0.40)=050ドルプラス賞与給の060ドル,その時間に対して合計110ドルの報酬が与えられることになる。このような状況のもとでは,作業者は課業成果水準を25%上回る水準で生産しているが,しかし基本賃率の10%上でしか報酬を受けていないのである。この種の方式は,しばしば生産性を減少せじめ,ごまかしを増長し, 監督者との共謀関係を生み出すのであるが,とくに中断時間に関してそうである。

これらの3種類の1対1支払方式は,このような多数のシステムのうちのごく少数である。これらの方式にも いくらか問題があり,生産性向上のための刺激策として,これらを効果あらしめるためには,かなりの注意を必要とする。

集団別方式では,規定された標準量を上回る集団の総成果量に基づいて個人別の賃金が支払われる。利潤分配方式では,一部分の賃金が支払われる。これらの方式は, 集団別あるいは個人別支払方式であってよい。例えば,刺激賞与の50%を会社に支給し,50%を従業員に支給する方式もあろう。1対1支払方式では,規定された課業成果水準から支給を始める。刺激給は,規定された成果水準を超える達成分に直比例して支払われる。例えば,生産性が25%向上すれば,規定された金額よりも25%増しの金額が支払われることになる。

一般に行われているシステムは,刺激給の支払いが基本賃金に始まる1対1方式である。この支払方式を用いるとき,100%が基礎賃金に等しい。標準より25%上の成果水準は,125ドル× (基本賃率)の支払いとなる。期待された水準よりも低くて80%の成果水準であれば,基本賃金が支払われることになる。 従業員の賃金は,100% を補償されているのである。大部分の1対1支払方式は,100%以下の成果水準が長期間にわたって続くときは訓練措置を講じられ,もしそれが続くようであれば解雇につながる。直接的基本賃率支払方式とは異なった1対1支払方式を採用している組織体では,通常,規定された公式の本来の方式,すなわち基本賃率を超える1対1支払方式に対して修正を求めている。直接1対1支払方式に対して他のいろいろの変形を採用している企業体は,とくに製造業は例外的である。特別な方式の採用は減少しつつある 歴史的には,それらの方式はかなりの保全作業を必要とし,数年にわたって期待された投資対生産性の比率を保持し続けていないようである。1対1方式はその普及性を持続しており,生産性に対する大きな刺激剤となっているようである。

賃金支払方式の要約 金銭的刺激方式は厄介であるかもしれない。逆に,実際に訓練手続を採り入れている。MDW計画は,等しく厄介である。他の1つの方式を求 めてある1つの方式の使用を中止するという傾向を示すデータは,統計的にいって正しくないようである。 金銭的刺激方式は,工業界において広く用いられている。製造業者は,フォーマルな作業成果標準手法の原理と実際に長い歴史をもっている。その能力をもって,製造業者は,作業成果標準と金銭的刺激方式とを結びつけることによって,生産性水準に本質的に「賭ける」ことができる。ひとたびその他の業界が作業成果標準に精通し不安がなくなってくるならば,それらの業界も金銭的刺激 方式を採用することになろう。今世紀の曲がりかどには , 作業成果標準が病院,保険会社,銀行,科学研究所,その他多くの,作業測定ができないと思われている領域に適用できることを誰が大胆にも宣言してくれるだろうか。また,自動車修理,食品雑貨貯蔵作業,肉切り,および 一般の保全作業を,金銭的刺激方式と結びつけられることを誰が大胆に予想してくれるだろうか。どの方式が普及するかについて仮説を設けるのは,時期尚早である。現段階でいえることは,フォーマルな作業成果標準の手法が多くの新しい分野に広がりつつあり,範囲も広がっていることである。

作業成果標準と職務評価との結びつき

賞与制刺激方式の問題点

大部分の作業成果標準の妥当性は,時間の経過ととも に減少していく 3年前に良好でぱりぱりした信頼のおけた標準が,いまでは正しくなくなっているかもしれない。作業場の様子が変わってきているかもしれない。作業方法も変わってきていることもあろう無数の出来事が以前には良好であった作業成果標準を古くさくしてしまう。

ある会社が,その作業成果標準が生産性を正しく反映していないと断定したとしよう。そのうえ,多額の賞与が日々の所得に加算されている。また,生産作業者は報告書を偽造し ,しかもそこの監督者は本質的にあべこベに見ているとしよう。この場合,その会社の作業成果標準システムは管理外れの状態にある。

この問題を正すためには,この会社はその作業測定スタッフを支援して,すべての現行の作業成果標準を再調査させることになる。このような状況の変化は,その賞与が巨額であるため,従業員の所得を厳しく削減することになろう。このような仮説的な状況のもとでは,新しい職務評価方式を実施するという条件で組合は同意することになろう。この職務評価手法を用いてすべての職務 を定量的に分析し,最終的には各職種ごとに新しい基本賃率を求めることになる。新しい作業成果標準方式が実施に移される場合,生産性に対する要求が非常に増大する。最初,生産性要求水準は20個 /時であった。その所得は,(0.40ドル)(200%)=0.08ドルプラス賞与0.60ドルであった。基本賃率100ドル当り,その従業員の所得は 140ドルであったから,40%の追加所得があったことになる。作業中断時間を有利に利用すれば,その所得はさらに020ドル増大することができる。というわけで,基本賃率100ドル当り,この従業員の所得は160ドルとなり,60%の追加賃金となる。

新しい職務評価方式を適用することによって,基本賃率ドル100ドルが110ドルに増大するとしよう。最初,基本賃率100ドルは刺激賃金の040ドルと賞与060ドルとから構成されていた。いまは100%の成果に対して,100ドルではなく110ドル支払うことになる。 賞与はなくなって,この会社は作業中断報告や記録類の偽造を管理することを決めた。適切に設定された賃金刺激方式は,基本賃率より25%ないし35%上回る所得となる可能性をもっている。 最初160ド ルすなわち160%を稼ぐことのできた従業員は,いまや,最初の基本賃率100ドル当り(110ドル) (135%)=1485ドルだけしか稼げない可能性を持つことになる。その上,作業中断時間が最小限に切り詰められたから,この従業員は1日中作業しなければならないことになる。このようにこの例では,基本賃率と生産性要求との両方が増大したことになる。

職務評価と買占め問題

このような状況のもとでは常に,新 しい作業成果標準・職務評価システムのもとで,以前の手取り賃金額を維持することによってこの制度の均衡を保ちたいという気持にかられる。少ないということは,労働者にとってあまりにも苛酷なことに感じられる。残業を削減する試みがある場合,とくに残業が乱用される場合には,産業界全般にわたって上述と同じ論法が用いられる。このような状況のもとで,新しい職務評価が実施に移されるときは,いつでもMDWを採用している会社がある。ある会社の理由づけによれば,早晩金銭的刺激方式に再び注目するだろうとしている。実際には,このような刺激方式への移行はめったにないし,会社によっては基本賃率が高くなったために生産性が低下したという事態に直面しているかもしれない。変化していく作業成果標準に対して作業者の同意を求めるために「甘くした」基本賃率は,時によっては擁護されている。他の1つの手法である。この戦略は,基本賃率の増大と生産性の増大に効果的な作業 成果標準の変更とを必要とする。このような状況のすべては,ある与えられた1つの施設である時期にはうまく機能した。その成功は,特定の瞬間の特別な環境と通常 結びついている。作業要求量が強化され,基本賃率が低下された事例がある。これらはすべて例外的なものである。結局のところ,会社は現実に直面しなければならないのである。

会社は,新しい作業成果標準を確立して,その企業が市場で競争的地位を保つことのできるような基本賃率と 連動させなければならない。 組合が係わり合いをもつときは,このような変更を交渉して新契約のなかにうたい 込まなければならない。もしこれらの変更が契約期間内に実施計画されるのであれば,組合は協力しなければならない。経営者は職務を再調査する権利をもっている。作業成果標準を変更する手続きは,労使間契約の枠内にある。論争が生じた場合,組合は正式な苦情を申し立てるであろうから,それが究極的には調停へと持ち込まれることもあろう。従業員が組合員でない場合の作業については,作業成果標準の変更をめぐる状況は通常より厳しいものとなる。新しい職務評価方式についても同じことがいえる。一般に組合のない状況のもとでは,組合との契約のもとに運営されている組織体に比べて, しばしばより制約の大きい主観的な規約がある。

これは,解決容易な問題ではない。もし作業成果標準が存在しないとすれば,大部分の難問は消滅するという ふうに会社は誤解していることがある。 ほぼ200社からなる1つの会社集団は,金銭的賃金刺激制度が日給制に比べて48%多い生産性を発揮し,MDWに比べて29%多い生産性を発揮することを見出している。この会社集団は,機械によって強度に制約されている。職務が機械に依存することの少ない状況のもとでは,上述の比率はさらに高い作業成果標準は,生産性に対して著しい影響を及ぼす.標準割当量をこせこせと設定するための費用は,想像されるわずらわしさのうちの若干に匹敵するものであるかもしれない。職務評価計画は,色々の職種間 の関係を明らかにするものである。賃金支払い方針によって,各職種ごとの基本時間賃率が決まる。作業成果標準によって生産性水準を予想することができる。これら3つの要素が適切に結合されて,従業員の賃金と会社の市場地位を競争力あるものに維持することができよう。

方式の立案,承認,スタッフの選択と訓練

新しい方式とか既存のシステムの改訂は,労使双方に通告されなければならない。このような原案は,提出用 の予備提案として成文化されなければならない。売込みの秘訣は巻き込みにある経営者は,財務,販売,その方式に影響を及ぼすようなその他の諸要因について広範な展望をもっている。経営者はまた,方式そのものを改 善するための具体的な勧告事項をもっていることもあろう。 経営者を巻き込んだならば,最初の障害物はそれほと際立ったものではない。ひとたびこのような変更が行われたならば,経営者と監督者グループは成文化された草案を最終的に見ておかなければならない。この報告書には,実施移行のための手法と時期が示されていなければならない。従業員またはその代表者は,次にその意見 伝達計画に組み込まれる。彼らは不服であるかもしれないが,しかし しばしばこのグループは改訂について新しいアイデアとか勧告案を提供するものである 再び,こ の報告書を書き換える 手順となろう 最終的にすべての人々がこの提案とかかわりをもち,あるいは周知されることになる。 公告のためのその他の手続きもふまなけれ ばならない。この過程は押し付けがましく,また人によっては恩着せがましく思えるかもしれないが,こうすることによって通常作業成果標準を静穏裏に設定することができる。

作業成果標準システムを開始し拡張し再構築するに当たっては,スタッフの追加を必要とする。スタッフの構成は非常に重要である。通常組織体は,作業成果標準と製品品種との両者に関してスタッフの経験水準を混合しようとする。若千のメンバーは,その製品知識のゆえに従業員グループから選ばれることもあろう。またこの分野における経験を求めて組織体外から採用されることもあろう。社内から選ばれた人々にとっては,正式な訓練が必要である。多くの組織体が自らの訓練機関とスタッフを持っているときには1対1ベースで新しいスタッフ・メンバーを訓練するであろうし,また内部訓練または正式な訓練センターでの訓練のために社外の専門家の援助を仰ぐこともあろう。どのような訓練方法が採用されるにしても,訓練が速やかにかつ正式に完成されることが肝要である。不適当に訓練された技師を現場とか作業測定を予定されている部門に派遣するとしたら,その分析者の評判とそれに作業成果標準計画の信頼性を損なうことがある 。誤って設定された作業成果標準を用いるときは,多くの費用がかかることになろう。ゆるい作業成果標準も1つの費用となりうる 作業成果標準の調停についても費用が発生しうる。最初の段階でスタッフを啓発する ために適切な時間をかけることによって,長期的には大なる利得を得ることになろう。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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