コラム・特集

5.9 機械干渉計算の古典的技法

IEハンドブック

第3部 メソッド・エンジエアリング


第5章 機械干渉:作業員への機械割り当て

5.9 機械干渉計算の古典的技法

機械干渉問題のいろいろな側面を扱うために,数多くの手法,グラフ,数式,チャート,表が開発されてきた。 機械干渉の平均的大きさを計算するものもあり,平均手扱時間,平均干渉時間, 1人または複数の作業員に割り当てられた機械の台数に対する機械効率(合計平均経過時間に対する実際平均生産時間のパーセンテージ)などのいろいろな関係を示すものもある。巡回時間,人的時間,メンテナンス時間,付随時間などの数値を考えに入れ一般化したものもある。

いくつかの手法およびそれに関連する仮定について , 次の第4部で示す。つづいて,各手法が有効であるところの仮定について議論する。後述する図表3.5.7および3.5.8は,色々な手法やモデルを要約したものであり,それぞれ,どのような場合に適用うるかを示した。

決定論的方法

この基本的な概念を示す簡単な例(john Mariotti, 個人文書,1981)から始めよう。以下の分析は,機械が同種であると仮定したものである。 機械へ加工物を置いたり,取ったりするのに,作業員が015分かかり,機械を検査して次の機械へ歩いていくのに005分かかるとする。いったん機械にかけられると ,機械は035分運転されるものとすると

P=035
S=015
W=005

手扱いは,定期的かつ一定である。作業員の歩行と検査 は,機械運転中に行うことができる。ただし,いつも可能というわけではない。一般に,サイクル時間が

C=S+P
のとき(干渉時間はない),1人の作業員に割り当てるべ き機械の台数は

N’=(S+P)/(S+W)=完全割当て

N’台 の機械について,作業員も機械もアイドル時間がないからである。 ここでは ,
N’=(0.15+0.35)/(0.15+0.05)=2.5

N’は整数ではないので ,割り当てる機械の台数は,NまたはN+1台となり, N<N'<N+1 この場合 , 2<25<3 である。(N台にするかN+1台 にするかという )実際の機械割当てについては,経済分析の結果いかんによるものである。N=2およびN+1=3の場合の作業員と機械の時間稼働状態をチャートにし みよう(それぞれ,図表3.5.2, 3.5.3)。

作業員が2台の機械を扱う場合,それぞれの機械のサ イクル時間は,
C=P+S tt I =035+015+0 0.50分
歩行はすべて,機械が動いている間に行うことができる。
作業員がアイドルである時間のパーセンテージは

1-O e={(0.5-0.4)/0.5}×100%=20%

どちらの機械にもアイドル時間はないことに気をつけてほしい。

1台当り1時間に何個の製品が作り出されるか見てみよう。

機械当り 生産量は

,Pr’=時間/C
=60分/時間÷05分/個/機械
=120個/時間 /機械

したがって,2台の機械によって達成される実際の生産量は

Pr=(120個 /時 間 /機械 )× 2台 =240個 /時間
次のように仮定する。
Cl=労働賃率=1400ド ル /時間
CN=機 械運転コスト=1500ド ル /時 間 /機械
したがって,製品1個当りの作業員コストは,(1400ドル/時間)/(240個 /時間)=0058ドル/個 ,1個当りの機械コストは,〔 (1500ドル+1500ドル)/時間〕/(240 個/時間)=0125ドル/個 1個当りの合計コストは

0058ドル+0125ドル=0183ドルとなる。
一般に,N台の機械とすると1個 当りのコストは ,
Cost N=Cl+NCN/60×N/C
最後に,作業員に対する人的時間(昼食,休憩など) をとることが認められる。作業員が,15%の時間をとると仮定すれば,調整後のサイクル時間は,(05)(115) =0575分 /個 /機械となり,数量についても,これによって調整され計算される。

作業員に3台の機械が割り当てられた場合も,分析によってさらに同様の情報を見出すことができる。 この場合,作業員は絶えず歩き回るが,機械は定期的にアイドルとなる。2台の場合と同じく,作業員は機械が実動中に巡回を行うが,3台の場合は,歩行時間がアイドル時間すなわち干渉時間を引き起こし ていることに注意されたい。この場合

C=P+S+I =035+015+01
= 0.60
生産量は , Pr=(60分/時間÷0.6分/個//機械)×3台
=300個/時間

1個 当りの作業員コストは,(1400ドル/時間)/(300個/時間)=0047ドル/個.1個当り機械コストは , (3× 1500ドル/時間)/(300個 /時間)=015ドル/個となる.1個当りの合計コストは,0197 ルである.一般に,もしN+1(たとえば3)台とすれば, 1個当りコストは

Cost N+1= Cl+(N+1)CN /〔60(N+1)〕 /〔 (N+1)S〕

ここでは,作業員がアイドルにならず,機械のほうがアイドルになるため,サイクル時間が,C=(N+1)Sであるからだ Cost N/Cost N+1>1の場合,N+1台の機械の割り当てがよく,Cost N/Cost N+1<1の ときは,N台の割り当てのほうがよい。

人的時間のために15%の時間が認められれば,3台の機械に対する調整後のサイクル時間は,(06)(115)= 069分 /個 /機械となる。

2台の場合には(生産個数が少なくなるため),1個当りの作業員コストは大きくなることがわかる。3台の場合には(生産数量は多くなるが,必要とする機械台数も多いため),1個当りの機械コストのほうが高くなる。1個当りの合計コストは,2台の場合のほうが小さい。

このような分析は,種々の質問に答えるのに便利である。たとえば,次のようなものである。すでに2台の機械を所有しており,もう1台を購入するのに4万ドルかかるものと仮定しよう。労務コストだけを考え,このイニシャル・コストを回収するには,最低何個の製品をつくらねばならないだろうか 答えは40,000ドル/(0058ドルー0047ドル)1個当り=3,636,364個である。

次のようなロジカルな質問もある。もし,3台目の機械を購入したら,この新しい機械のために使った金額を何年間で埋め合わせすることになるか。答えは,3,636,364個 /〔 (300個 /時間 )× (8時間/シフト)(2シフト /日 ) ×(240日 /年 )〕 =316年となる。 これでは,新しい機械の購入が望ましいとはいえないかもしれない。

このやり方は,完全に決定論的である。すべての時間値は一定であり,定期的である機械は同種のものであり,故障しない。ここでの例は,後で他の手法の使い方を示すときに用いる。もちろん,それぞれは仮定が異なるものもあるだろう 。生産時間や手扱時間が一定ではなくランダムであるかもしれない。平均生産時間とは,手扱いと手扱いとの間の平均時間となるランダムに停止が起こるとすれば,生産時間Pとは,停止間の平均時間となるからだ。

予想作業負荷分析

ある台数の機械を割り当てたときの作業員の予想負荷分析をもとにした手順である。この手法では,機械効率 (干渉時間を知る必要がある )によってウエートづけされた生産の平均時間(生産時間,手扱時間,干渉時間の合計)を,作業員の予想作業負荷(ここには,手扱い,歩行.付随時間を含む)で割算し,1人の作業員に割り当てる機械台数を求める。

一見,この手法は完璧に思えるのであるが,Nを選ぶためには干渉時間を知っていなければならないという欠点をもっている。さらに, Iを測定または計算する。 前にNを知らねばならないというものである。この問題のため,与えられたNに対してIを計算するいろいろな方法 (公式,グラフ,表)について,もっと研究しなければならないことが分かる。

この手法の多くは,いろいろな仮定のもとに,Nおよびλの関数としてIを出すという簡単な記述によるものである。

 

機械干渉公式

初期の頃の技法の1つに,ライトによって開発された公式がある。これは,次の項目の関数として機械干渉 (平均手扱時間のパーセンテージとして)の大きさを決めるものである。

X=P/S=1/ρ =平均手扱時間に対する平均生 産時間の比率

2 N=1人の作業員に割り当てる機械台数 ライトの式は,電話回線混雑の問題へのフライの解を適用したものである。

必要とする仮定は,次の通り. 1 手扱時間は一定である。2 機械は,作業員によってランダムに手扱い,すなわち応対される。

ライトの公式は , I/S × 100=50{〔 (1+XN)²+2N〕_(1+x一N)}

この公式は,実績収集した1,100時間以上もの現場データの分析を経験的にチェックしたものである調査は, 4つの異なった業種の8種類の機械について行っており, 一般的な調査とみなしている。また, 1人の作業員に6台以上の機械を割り当てる場合に,この公式が正確であると結論しており,6台以下の割り当てには正確ではないとしている。そして,ライトは,機械が6台またはそれ以下の場合に用いるための図表3.5.4で示した経験的な曲線を作成した。ライトの公式にしたがえば,2台から5台の機械に対する曲線のほうが1に ついて小さな値となり,6台の場合,グラフと公式との結果が限界点を除いて一致している。

例として, 1人の作業員に70台の機械が割り当てられたとしよう 。単位アウトプット当りの平均生産時間は , ストップウォッチ研究により150分 ,平均手扱時間は5 分と決められた。そこで,平均干渉時間(平均手扱時間のパーセンテージとして)は ,

I/S × 100=50{〔 (1+X一N)2+2N-(1+X― N)〕
=50(l+I50/5.0+140)1/2ー(1-+I50/5.0-70)
=3987.7%

そして,次のことが分かる(平均値,分 )

生産時間(1個当り)            150.00
手扱時間(人 的時間,走行時間等を含む)    5.00
干渉時間(39.88× 50=1994)       199.40
合計時間(70台のとき )         354.40
1台当りの時間(354.40/70=5.06)      5.06

作業員(労務コスト)と 機械(生産コスト)の両方へのコスト割当てをベースにして,1人の作業員に割り当てる機械の経済台数を求める例は,カーソンらによって与えられている。コスト情報が与えられれば, 1人の作業員に割り当てる機械の経済台数が,グラフ(図表 3.5.5参照)から読み取ることができる。ここで必要なインプットは,労務コストに対する生産(機械)コストの比率,および,手扱時間に対する生産時間の比率(P/S=1/ρ )である。

1965年に,スミスはライトの公式を修正し,次の式を出した。

I/S× 100=50{〔 (N-1.5-X)2+2(N-1)〕1/2 +(N-1)) 1/2+(N-1.5-X)}

この公式によって得た解とパーム,アシュクロフト,ライトらによって得た解とを比較すると,スミスの公式は, パームとアシュクロフトの公式にもっとも近いことがわかる。

ここで,先の例でのN=2とN=3の両方についてスミスの公式を適用してみる。この問題に対しては,歩行時間W=005と手扱時間S=015とを組み合わせ,

S=015+005=02
P=035
X=P/S=0.35/0.2
N=2

平均手扱時間のパーセンテージとしての干渉は

I×100」/S=50(〔 (N-1.5‐X)2+2(N-l)〕1/2 +(N-1.5-X))
=50{(2-1.5-0.35/0.2)2+(1)1/2+(2-15-175)}
=50{〔 1.5625+2〕1/2-1.25}
=50(1.887-1.25)
=50{0.637}
=31.873
したがって
I=(03187)(02)
=0.064分 

停止がランダムに起こるという性質は,決定論的システムでは全く無かった状況であるが,そこに干渉時間がどのように加わるか注意されたい。作業員が3台の機械を受け持っている場合も平均干渉時間を同様に計算できる。

I×100/S=50{(3-1.5-1.75)2+282)+1/2十 (3-15-175))
=50(2.016-0.25} =88.278
したがって ,
I=(0883)(0.2)
=0.177分

ランダムに停止が起こるという性質は,干渉時間の大きさを増加させる傾向をもっている 。先の決定論的に扱った3台の機械の場合は,干渉時間は,01分 にすぎなかった。

アシュクロフトの方法

1950年 にアシュクロフトは,つぎの項目の関数として機械効率を決める表を作成した。

1.Y=S/P=ρ=平均生産時間に対する平均手扱時間の比率

2. N=1人の作業員に割り当てる機械の台数仮定は,次の通りである。
1.手扱時間は一定(機械を同種のものとみなしているため)。
2.機械はランダムに応対される。
3. 各機械の停止間 時間は 指数分布をしている。アシュクロフトの公式や表では, 1人の作業員にN台の機械を割り当てる場合,時間当りの平均生産時数を機械のアウトプットとして測っている。この値をANとすれば,機械効率は次のようになる。

Me=An/N

アシュクロフトの2表を ,本章付録の図表3.5.A1と3.5.A2に示す。オコナーの文献には,さらに付加的な表やグラフが載っているアシュクロフトの式から導きまとめたものにエイロンがある。先の例でのデータを用いると

Y=S+W/P=0.2/035=0.57

付録にある図表3.5.A1から補間して求めると,
A2=117
A3=153

これらの値は,それぞれ2台の場合,3台の場合について,1人 の作業員に割り当てられる時間当りの平均機械時数である。これらから

Me(N=2のとき)=117/2
=0585
Me(N=3のとき)=153/3
=0.51

もちろん ,一般的にも,3台よりも2台のときのほうが,干渉時間が小さいことから「機械効率」の では高いはずである。 ただし,3台のほうがアウトプットは多く,2台のときは作業員のアイドル時間が多くなる。また,3台のときのほうが2台のときよりもコストがかかる。

確率をベースにしたモデル

この技法は,次のように二項分布(第13部第2章参照 ) を用いて,干渉時間の変動性を考えたものである。

D=Prob〔 N台の機械のうちのある1台が,ある与えられた時点で停止〕
1-D=Prob〔 N台の機械のうちのある1台が, ある与えられた時点で実動〕
N台の機械のうちn台が,ある時点で停止する確率は ,

ただし,グループ1は ,n台の機械(停止機械)が入る。グループ2は ,残りのN―n台の機械(実動機械)が入る。そこで,もし機械がそれぞれ独立であれば、 Dn=Prob〔 N台の機械のうちn台 が停止〕 (1-D)n=Prob〔 N― n台 の機械が実動〕平均干渉時間は,次のように計算される。もし,N台の機械のうちn台が停止していると,n-1台 の機械は待たねばならない(干渉のため)。したがって

In=Prob〔 N台の機械のうちn台が停止〕×干渉 待ちの数および ,
3台の停止機械による平均干渉時間は,次のように計算される。6台の機械のうち3台が停止しているため,2台が(干渉により)待たねばならない。したがって, 3台の機械停止による平均干渉は , 13=PrOd〔 6台の機械のうち3台が停止〕× 干渉 待ちの数 =008192(2) =016384 干渉を計算するためのワーキング表が作成される(図表 3.5.6参照)6台の機械があるので,機械当りの平均干渉パーセンテージは,次のようになる。I=0462/6=0077=7.7%
また ,手扱時間の平均比率Sは, S=D―I=0.2-0.077=0.123=123% このモデルの仮定は,

1.機械はランダムに応対される。
2.手扱時間はランダムに分布しており,全機械の平 均手扱時間はSである。
3. 機械は独立に停止する。

ジョーンズは ,機械当りの干渉(合計時間の平均パーセンテージで表示)とアイドル時間(合計時間のパー センテージ表示)とを次の項目の関数として計算する公式を導いた。

 

 

 

 

 

1 作業員の機械当り平均手扱時間で合計時間のパー セント表示の S′ (すなわち S′ =S/C) 2.N=1人の作業員に割り当てる機械台数

Iについてのジョーンズの公式は,次のようにして導かれる。
1. (1-D)N=PrOb〔 N台 の機械すべてが実動〕 =Prob〔f/F業 員がアイド ル〕であった。
2.したがって, 1-(1-D)N=PrOb〔 1台以上の機械が停止〕=Prob〔作業員が働いている〕。
3. 〔1-(1-D)N〕 /N=作業員がそれぞれの機械について手扱いを行う合計時間に対する比率。これは,S′ (1-I)でもある。
4. どれかの機械 が 停止する確率は , D=S′ (1-I)+I* *1人の作業員が1台 の機械のみを扱っている場合は,平均パーセン テージ手扱時間は S′ であり ,機械には全く干渉アイドルがない。1人の作業員が実際に何台かの(N台の)機械を扱うために干渉を考えねばならなくなる。この場合,平均パーセンテージ手扱時間は,S′ (1-I)であり ,したがって,平均停止時間は,D=S + I=S′ (1-I)十 1である。
5. ステップ3および4より ,  S’(1-1)=D-I=1-(1-D)N/N
したがって,平均パーセンテージ干渉は , I=D=1-(1-D)N/N
この公式による 数表は,本章末付録の図表3.5.A3にあげている。ここでは,どのような仕事の割り 当てであっても,それぞれの機械が必要とする手扱時間は,同一のものと仮定している。
すなわち,機械は同種のものとしている。ジョーンズは,その後の論文で ,この仮定を緩和しており,2台から10台の機械を1人の作業員がランダムに応対する機械割当てのシミュレーションを行 っている。ここでの結果は,機械干渉と作業員のアイドル時間で表している。平均手扱時間をいろいろと変えた機械割当てについて, 100通りのシミ ュレーションを行った結果,ある与えられた機械台数に対し ,機械当りの平均干渉は,割り当てられた機械の平均手扱時間が増加するにつれ,それとは異なった度合であるが減少することが示唆された。前述の表(図表3.5.A3)の干渉値を修正するための調整係数が導かれ,利用便宜のためグラフ化している。この式と表は,メイナードに掲載されている。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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