コラム・特集

3.9 分析手法の応用

IEハンドブック

第3部 メソッド・エンジエアリング


第3章 分析図法

3.9 分析手法の応用

諸手法の選び方
解説や情報伝達の手段として,これら分析手法を使う場合,どの手法を選ぶかは,使う目的から容易に判断できるものである。しかし作業方法の分析の場合 , 改改善すべき問題や解決アプローチが,あまり明確でない研究初期に,どの分析手法を使えばよいのかを決めるのはむずかしい。 そこで,適切な手法を選ぶためのヒントをつぎに述べよう。

これまでの説明にあるように,分析手法は3種類に大別され,それぞれの代表が,流れ工程分析,連合作業分析,および流れ線図であった。

各工程 ,またその構成単位であるアクティビ ティは ,それぞれ一連の単位作業や要素作業から成り立っている。そもそも現在の作業方法というものは,これら構成単位の,ある1つの組合せにすぎない。 現在の方法を形成するかりそめの組合せ順序の呪縛から逃れて,発想を転換させるには,流れ工程分析が有効である。

この手法を使うと,現在の作業方法における構成単位 (すなわち,アクティビティ)個々の改善だけでなく, それらの組み合わせや順序の変更による。 改善案が出やすい同じ種類に属する他の手法,たとえば事務工程分析から作業員工程分析に至るまで,いずれも 同じ狙いに使うことができる。

別の種類の分析手法である連合作業分析は,同時に行われる。いくつかのアクティビティの,時間的差異の明確化に有効である。人であれ機械であれ,あるいはどの身体部位であれ, 2つ以上の対象で構成される。工程や作業で,各対象間の作業バランスの改善に,これはきわめて便利である。

分析手法の第3の分類である流れ線図は,流れ工程分析とか,材料運搬や作業域内の物の流れの分析に対する,補助的情報として作られる。

分析のレベル
方法研究において,工程の流れは時系列的にいくつか の部分に分けられる。たとえば,作業,運搬,検査,遅れ,保管という5種類の符号を使ったステッ プに分けるのか,流れ工程分析である。さらにこれら各ステップをオペレーションに分割するのが,作業員工程分析である。 手作業のオペレーションをさらに分解すると ,両手作業分析となる。一層の細分化が必要なら,最後はサープリッグを単位とするサープリッグ分析,あるいは,他の基本動作分類と時間値を組み合わせた分析(サイモ・チャート)が使われる。

連合作業分析で代表される別の分析手法のグループにも ,同じような分析の細分化がある。すなわち,大きさの順に連合作業分析,両手作業分析,サープリッグ分析 , さらにサイモ・チャートと続く。

このようにどのレベルで改善研究をするのか,つまり分析レベルの決定は重要である。

分析単位が粗ければ,個々の単位の改善があった場合, 改善メリットは比較的大きいのが普通である。たとえば流れ工程分析では,1つのオペレーションがまるまる「排除」された場合は,サイモ・チャートにおける1つのサーブリッグの「排除」よりも,メリットが大きい。

しかも作業の分解が細かければ細かいほど,検討すべきデータが増え,研究時間の不足から個々の検討がなおざりになる。 同じ理由から,サイクル時間の長い作業の分析は,粗くなければならない。また,両手作業分析よりも,右・左手の区別をしない作業員工程分析のほうが望ましいし,場合によっては,人タイプの流れ工程分析のような,より粗い分析のほうが優れている。

研究対象製品の生産量やその作業の永続性も,作業分析のレベルに関係する。サイモ・チャート のような詳細分析は,多量生産で継続性の大きい作業に限るべきである。

しかしながら,いつでも粗い分析がよいと言うわけではない。 流れ工程分析のような粗いステップ分割では , その分析単位1つの改善でも,それを実現するのに,高額の投資を必要としたり,革新的な技術開発が前提となる場合さえある。

それに比べて両手作業分析では, 1つの分析単位の改善には,前記の場合より改善案を出しやすいし,必要な投資額も少なくてすむ。

要するに,両手作業分析のような詳細分析をする前に , まず流れ工程分析や人―機械分析 (マン・マシン・チャート)のような粗い分析を先に試みるべきで,その逆をしてはならない。

分析目的を明確に現在の方法を分析する前に,その目的を明確にしておく必要がある。すぎている何を改善するのか? 労働生産性の向上か,時間当り生産量の増加か,そのプロジェクトの所要期間の短縮か,製 造期間の短縮か,それとも,何か別の改善目的か ?

何でも良くなればよいということでは,何も良くなら ないことさえある。仮にうまくいったとしても ,せいぜい分析効率の悪い微少改善が,少しばかりできる程度であろう。なぜなら,分析手法の選択,記録や分わ方法, あるいは代替案の選定などは,改善目的によって変わるからである。

たとえば流れ工程分析の目的でも,工数節減もあれば 製造期間の短縮などもある ネットワーク分析といっても,プロジェクト 期間の短縮ばかりでなく ,クリティカル・パス以外の経路上での工数節減もある。また連合作業分析でいえば,作業バランスの向上や工 数節約ではなくて,機械稼動率の向上や生産量の増加を目的とする場合もある。 改善アプローチや解決方法は,目的によって少しずつ違うのである。

「平準化」した事実
方法工学に関する多くの図書では,現在の作業方法の 分析をするとき ,実際の観測に基づいて,真の事実をつかむことの重要さを強調している。すなわち ,実際に起こっていることを書くのであって,起こっている。 はずだと分析者が思っていることを記すのではない,と教えている。

これは現場を調べないまま ,記憶や想像で分析図を書くことを戒めている点では ,まことに当をえた主張である。 しかしそのこと は ,現在の方法をスナップ写真をとるように書け,つまり ,たまたま目撃した現実を , 無差別に記録せよ,といっているわけではない 分析図に記される。 事実とは,現場における「生ま」の事実ではないのである。

分析者は作業方法自体に関心を払うべきで,特定作業員の勤務態度や作業指導上の不具合点などは,別の問題である。対象作業員の気まぐれや不注意,あるいは技量未熟などで歪められた現実の作業方法は,分析者の判断で分析図作成の際に修正すべきである。

製造現場において1日 の就業時間のなかで,作業員にとっては不可避的な作業中断やトラブルが起こり,順調な生産が阻害されることがある。たとえば,機械不調や材料欠陥などがそれである。このように稀に起こるトラ ブルなども,現在の作業方法を表示する分析図からは , 除いておくべきである。

改善案も同じ考え方で書けば,修正された現在の方法と改善案同士の比較は,理論的にも筋の通ったやり方である。 要するに,現在の方法は記憶や想像ではなくて , 実際の現場観察に基づいて書くべきであるが,現在の方法自体の真の姿を表現するには,収集した事実にたいし , 分析者の判断による手直しと修正という ,「平準化」を予う必要がある。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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