コラム・特集

2.5 作業方法の最適化

IEハンドブック

第3部 メソッド・エンジエアリング


第2章 動作研究

2.5 作業方法の最適化

動作研究の目的をくり返して言えば,分析は次のような結果につながっていく作業方法を求めていくことである. それは,(1)生産に当たって単位当り時間を少なくする. (2)作業者に要求する努力度を軽減する. (3)ムダ,スクラップや仕事のやり直しを最小限にする. こういった目的は仕事や作業域の特徴を変えることによって,人間の行う活動を有効性の高いものにもっていくことであり,ブF能率を避け,筋肉の疲れを減らすことになる。

詳細をよく確かめることは,図表化することによってできることであり,それが撮影した活動について必要な変更に対して疑間を投げかけることになる. 最適な作業方法を開発することは,創造性と対象にしている仕事の内容をよく知っていることによってなされるものである。

はっきりとしたムダな方法はすぐに改善する関係する人たちが参画していることによって,興味を持ってもらうことになり,新しく提案される方法の受入れをよくすることに役立つ。

技術者は製造プロセスの特性,機械装置の機能についてよく説明をうけるのが普通である. 人と機械でいえば,人の特性というのは簡単に理解できるものではないトラブルは,仕事の方法をよく理解していないこと,あるいは変更についてよく考えていないことによって起こることが多い. このことがエルゴノミクスを開発,発展させることの必要な基本的な理由である. 以下に述べる色々なことを総合的によく考えるべきである。

動作経済の改善
1923年に F.ギルブレスが,その研究成果として動作 経済の原則を発表した.ギルブレスのリストは,R.バーンズその他の人たちによってその後拡大され,組み替えが行われたものをここで紹介するが,それは三つのカテゴリーに分けられる。

・身体の使用に関する原則
・作業環境に関する原則
・時間消費に関する原則

身体の使用に関する原則は次のとおりである。

1 両方の手や腕はスムースに,連続して,曲線を描いて動かさなければならない一曲線からなる動作は,コントロールがあまり必要でなく,コントロールを要する動作よりも容易で速い. 小さな部品を容器に投げこむ動作は,ネジを締める動作(高いコントロールを必要とする)よりも時間は少なくてすむ 突然動作を止めたり, 急激な方向の変更は仕事のリズムを崩してしまう。

2 両方の手は,同時に,リズミカルに,反対方向へ対称的に動き,それらの動きは同時に始まり,終わるのが望ましい_リズムにのった同時動作は望ましい動作経路であり,習慣となっている型である。こうした動きは, 肉体的な特性や身体のバランスについての自然な動きであるということは,望ましい標準動作手順に従って, すべての作業者が作業をするように指導すべきである。

3 現実的な範囲内で,動作はもっとも短い移動距離 で行えるようにすべきである_胴から離れたところで両手が動くことは,正確性が低くなり時間も多くかかることになる_手をのばすや運ぶは40cm以内にし,肩や胴を使う動作の必要性を少なくすべきである. 体を曲げる,かがむ,体の移動,持ち上げる,それに歩くといったものは,サイクルの中に起こらない,あるいは少なくなるように考えるべきである。

4 両手は生産的な仕事に使うべきである‗この原則は,ボートを漕ぐ,タイプライターを打つ,あるいは楽器を使うような活動の例でよく説明される. 望ましくない形をいえば,手をバイスや保持具のように使うことである. 手は取付具やクランプを足で操作することによって開放することができる. 立った位置で足を活用できない仕事をするときには,他の身体部位によって操作できるものを考えればよい。

5 視覚を必要とするときには,標準視野内におさめるように考える_一眼は両手の仕事の方向に向ける作業者の前で仕事ができるようにするのがよい. 部品は容易に取り扱える視野におく,そして作業域中心の左右に配置する. もし,仕事が制限された範囲におくことができれば,眼の固定位置を最小限にすることができ,眼の移動距離も最小とできる.視覚コントロールで動作を終わらさなければならない動作は,同様のもので肉体的に停止あるいは,標準の視野内で行える動作よりも多くの時間を必要とする。

6 身体部位毎の固有の筋肉の動きの特性を生かして, 動きを考えるべきである。上腕や脚の上部はスピードと正確性,下部は力と安定性を備えている. 異なった筋肉グループの使用で,それぞれに中断を与えることは, 使わない筋肉を休めることになる。

7 必要とする力は最小限にすべきである一惰力を使うことは良いことである.けれども,筋肉の力を超えるような惰力は最小限にすべきである. 部品は持ち上げるよりもすべらせるべきである. 孔は手で動かせる取付具で位置決めをすることができ,取り扱う重量を軽減してくれる. 目につかない持ち上げる仕事は避けよ「最近の作業環境では,人間の扱うもっとも重いものといえば,その人の体重そのものである, …大抵の場合,取り扱う物体よりもそれを扱う身体部位の重さのほうが重要である .… …,91ポンド(0.45kg)の物を扱うのに11ポンド(5kg)の移動となる。

作業環境に関する原則は次のとおりである

1 作業域は動作経済をよく考えて設計すべきである。工具,部品および材料は固定した場所に配置すべきである一こうすることによって動きに慣れができて, 安全上も長所となる仕事はよく慣れた安全な動作パターンとする工具を工具ホルダーにあらかじめ位置決めしておけば,その都度見つけなくとも使うことができる.材料や部品は,余 計な判断をしなくてもよいように,使用する順序に配置をしておく_作業をする位置の高さは, 坐った位置でも,立った位置でも都合のいい高さに設定する。

2 工具や装置はエルゴノミクスのことをよく考慮して設計し,選択すべきである―工具や機械のハンドルは,できるだけ広く手のひらが接触するように考える。 ネジ回しのようなトルクを必要とする工具,直線的な力, 工具を前腕でねじるというようなもののハンドルを考えるプライヤー,対角線カッターというものは,手首を回すことなしに,その作業を行うことができるようにハンドルを設計するレバー,手回しハンドル,そ の他機械の操作は,もっとも少ない身体部位間の関係で,最大限の機械的利点が得られるように考える。親指で操作できる大きなきのこ型の制御ボタンは,指の操作がやり易いように設計する。分析者はエルゴノミクスの考えを取り入れて,厳密に工具や装置の配置を考えるべきであり, さもなければ作業者に受け入れられないようなものになってしまうかも知れない.特定の工具を使うとか,その効用といったことは,よく作業者に説明をしなければならない。

3 材料の取扱い方法は,時間―重量係数を考えて判 断すべきである一機械装置は,重い物の持ち上げに使うべきである.スライド,ガイド,ストッパー,クランプ,ホイスト,ェジェクター等の機械装置は,時間と同様,作業者の必要な努力の双方が少なくてすむように作業域内の諸関係を考える。運搬用具,たとえば容器,コンベアは,その部品や材料を使う位置に近づけておく重力を使った用具は,終わった仕事や,スクラップ,不良品等を早く処理することに役立つ。部品や材料は容易に取り出せるように,しかも部品を傷ためないように,あらかじめ決めた位置に配置する。

時間消費に関する原則は次のとおりである

1 どんなとまどいも,中断も疑間をもつべきである―普通よく起こる避けることのできない遅れは,何か他の作業を行わせることができる. 汎用金型のセットをするという作業の場合, しばしば遅れが発生するので,フタを動かすという作業をそこに入れる。サイクルタイム中のすべての時間に仕事を割り当てるべきである。作業者は2台以上の機械や装置を動かすことができる。

2 動作の数は最小限にすべきである―最小のステップあるいは要素の動作パターンは,最小限の所要時間となる.要素やステップの排除 ,それらの結合は,仕事の内容を低減改善するための2つの方法である. もし,ある与えられた同じ仕事を行うのに,人によって異なった動作パターンを実行しておれば,よい方法を1つ選びそれを実行させるべきである. いろいろな作業方法の研究は,望ましい方法を見つけだすのに必要なことである。

3 一度に1つ以上のものを処理できるようにすべきである―多くの小さな組立ては,「 左および右手」取付具で2個ずつ処理することができる. この方法はリズムを与え,体のバランスに望ましい。

動作の低減と時間のバランス
 多重活動分析やフィルム分析,特に経過時間写真が , 複数人数作業や,人一 機械作業の実態を集めたり,分析をする方法である. ここでは,この種の動作/作業方法の改善をする方法を示す. すでに紹介してきたように, 個々の活動のつながりを調整することを考え,すべては 価値を高める. 時間を増やすことであり,またアイドルや遅れを低減することである。価値をつけ加える時間は, 仕事のつながり の部分であり,それがその製品を作り, その価値を増すものにおきかえていくことである。

フィルムと図表による分析は,各作業者や各機械が, アイドル,取扱い,段取および価値をつけ加える時間を分析して示すことである. チャートによる分析は,2人あるいはそれ以上の作業者が1つのチームになって遂行している動作サイクルを分析するのに,あるいは人と機 械の関係を分析するのに活用する。たとえば,2人がトラックに重いコインの袋を積み込んでいる,作業者がこわれた針の交換をしているというものである. この種の活動は,仕事のつながりの中で,そのつながりをかえるということはむずかしい. 一方,機械とは関係なしに独立した仕事をしている, あるいは,グループの他の人によって仕事が行われているようなときには,その仕事のつながりを変更することがしばしばできる, あるいは,仕事は大きな待ち時間の人にもっと与えるという方法もある。

フィルム分析の最初は,仕事のサイクル全体に対して, 個々のチャートを作ることである. すると,そこからどの作業者の仕事がもっとも多くて,誰がもっとも少ないのかということが判る. ということは,どのように仕事を配分すべきかということを示したことになる. 仕事のバランスをとるように,改 めて仕事の配分をすることは, 仕事のサイクルを短縮し,1個当りの生産の合計時間を低減することである。

次には,作業者に男 1の人をつけ加えて配置することである. カッターで雑誌の裁断をする人―機械の作業では, 2人の作業者を使って,約2倍の作業をするようになったのである. これはネックを動かして,新しくカッターを追加購入してネックが排除されたのである. 作業者には,アイドルよりも,仕事をするように指導すべきである. 作業者は,その仲間のすべての人が,同じ量の仕事の負荷になるようにして,互いに協力しあうことを望んでいる。

次に人一 機械活動について考えてみる. 段取時間の短縮によって,1人の仕事の内の大きな部分を,生産の仕事に向けることができる. 段取時間は次のようなことで最小限にすべきである。

・工具の標準化で段取を簡素化する。
・クイックアクション・クリップや位置決めピンを取付具につける。
・工具,取付具や刃物等必要なものを仕事に先立って与えておく 。
・段取指導書を与える.

機械が生産時間を増やすためには次のようなことを考える。

・取付具で材料を保持するのに,エアークランプを使う。
・テーブルを始動,停止による 「カッティング ・エアー」を低減するために,切削の始点,終点に送りをかける。
・スーザンあるいはシャトルというような取付けを設置するときには,機械サイクル中に取り付け,取り外しを行う。
・サイクルタイムを短縮するように,作業のつながりを見直す。
・1つよりもそれ以上のクイックチェンジ・ツールホ ルダーを活用する。

 フライス盤作業は,2つの異なった平面の切削である。この場合,テーブルがサイクルタイム中に上下できなければならない. 2つの加工をするために, 1サイクル当りに1回のテーブルの移動が必要であった. たとえば, 部品1のA面を切削,部品2のB面を切削し,そのA面 の切削を考えてみよう. 作業者は機械加工中に次の部品を準備しておくことによって,機械はいつも切削状態におくことができる。

加工完了品を取り除き次の部品をセットするので,機械は作動準備をするまで待たされる。
機械の仕事の流れはいつも質問の対象である.スピード,送り,切込み深さ,切削回数,仕上げ公差等は設計図に従ってチェックする. 技術者は取付具がしっかりしたものである かどうか,あるいは振動吸収ダンパーをつけて機械のスピードや送りを高くできるようにすること が必要である. こうしたことは,動作分析の範囲を超えたものかも知れない,けれども ,インダストリアル・エンジニアは,費 用―効果指標を 求めるべきである
図表3.2.9は 動作研究で改善をした種々の例を示している。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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