コラム・特集

2.12 既存の職務を再設計するためのプロセスと戦略

IEハンドブック

第2部 職務とジョブ・デザイン

第2章 職務設計

2.12 既存の職務を再設計するためのプロセスと戦略

既存の組織は,経営戦略,技術および組織構造の再検討によって,職務再設計をうまく開始するが,通常動かすことのできない多くの制約がある.職務再設計は,しばしば組織がその環境から生ずる要件に合わせるために行う,変革の連続的流れのほんの一部にすぎない。職務再設計の目的の1つは,将来の再設計のニーズに対して1つの先例を作る経験を提供することである.

設計者は,組織に対して対外的なものも内的なものも,過去も未来も,すべての関連する変革力を識別すべきである.通常,職務設計の努力を基礎付ける諸力の複雑なシステムがあるアルミニウム溶鉱炉において,転職率の増加,労働者雇用のむずかしさの増加,技術の陳腐化および職場安全,健康状態,少数者と婦人に対する平等な雇用機会に関するより進歩的な政府規制は,最も肉体的負担のかかる,そして望ましくないタスクのいくつかを自動化する努力を生み出した。

新しい自動化技術はそれほどマンパワーを必要とせず,新しいタスク群を必要としていた.しかし新しい技術それ自体は,転職,雇用,効率といった組織の問題を解決しない.したがって, 職務再設計は,新 しい技術を適応させることのみでなく,より魅力的でチャレンジングな職務を創造することや,組織が広範囲の転職率でも機能できるように,労働力の柔軟性を高めたりすることや,そして転職によって生じる欠員とは関係なく,個人の準備状態と連動した訓練と昇進にも向けら れた。

再設計された職務に対する従業員の提案と反応は,彼らの過去経験と将来に対する期待によって影響される.ある工場では,従業員は職務再設計を,昼食の退出時を記録する時間を失う必要のないように,第2のタイムレコーダーを請願することによって達成されるものと理解した.労働生活の質の改善により基本的な側面があったということは,彼らの経験を超えていた.以前に引用したアルミ ニウム 溶鉱炉において,職務再設計は溶鉱炉職 務の地位の差を生じなかった。

従業員のほとんどは新しい機会と新しい技術を喜んで受け入れたが,彼 らの以前の役得の喪失について不平を言う人もいた。職務が変えられた従業員も,職務が変えられなかった従業員も,ともに態度が改善された.なぜなら,後者の集団は,差し迫った変更を期待して待ち,彼らの職務は,いま,未来を持ったからである。

再設計のフェーズは,新設計のそれらに類似しているが,次の事柄が加わる。
・既存の職務担当者と組合の代表が,再 設計プロジェクトのタスクフォースに普通含まれる.時に,再設計 チームのメン バー構成は,組織の「斜めの断面 」を代表している.誰も直接の上司と共にはその委員会にはいないように,代表された階層の様々なレベ ルの人からなっている。

・もしいくつかの別個の再設計プロジェクトが考慮されているとすれば,それぞれはそれ自体の設計タスクフォースを持っている.

・1つの運営委員会がそのプロジェクトを調整する.再設計においては,実施計画がかなり重要である.そして実施上の問題が,設計決定に付随して考慮される。おそらく,実施の最も 重要な側面は,変革の所有権(ownership of change)である.
提案された再設計を実行し,それと共に生きる責任のある人々は,その変革が彼ら自身の関心と努力から生じたことを感じるべきである。提案に対する広く行きわたった献身が,その究極的成功の致命的要因である。
それには2つの理由がある。(1)その再設計との感情的一体化とその提案を実行に移すための努力を発揮する願望.(2)その影響を十分に推定しそして最小化するために,すなわち個人に対する影響の不確実性を低減するために,十分に再設計の詳細を理解すること,である。職務担当者にとって,多くの方法が再設計に貢献する上で役立つ。これらは,「名義的集団手法」,っ まり, バリアンス分析を含むソシオテクニカル分析,再設計原理,そしてQWL特性を含んでいる。

コンサルタントの役割
新設計においても再設計においても,職務設計コンサ ルタントは,伝統的なエンジニアリング・コンサルタントの役割とはきわめて異なった役割を持っている。この設計プロセスは,多くの側面を持っており,多くの関係者を含んでいるので,コンサルタントは次の5つの基本的機能を遂行する。

訓練と指導
職務設計の原理と分析方法を,設計決定を行う設計タスクフォースと運営委員会のメンバーに教える。コンサルタントは職務を設計するのではなく,むしろ職務設計の努力を通じてその原理を指導する。

過程の推進
コンサルタントは設計のすべてのフェーズにおいて,その過程を計画したり,推進するのを援助する たとえば,運営委員会とタスクフォースのメンバーが,彼らの役割に慣れていないなら,コンサルタントは 必要に応じて,こ れらの問題を明確にするのを援助し , 彼らと共に働いて彼らを援助する

調 停
たとえば,会社と組合といったいくつかの別々の制度が,そ の再設計プロジェクトに関係している 場合,コンサルタントは,設計と実施に対して合意を得るために,中立者および仲介者として行動するかもしれない。

研 究
職務設計の結果の評価は,コンサルタントが特定の訓練と経験を積んでいる研究方法を必要とする かもしれない。そのような場合,コンサルタントはデータを収集し,分析し,そのチームに対して役立つ報告書を提出するかもしれない。

変更代行者
革新的な職務設計が発展するにつれて,コンサルタントは,その組織の他の部分へこれらの革新の運搬者として行動する.この役割はここでは,「専門家」の役割というよりは「アイデア仲介者」の役割である。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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