コラム・特集

2.8 職務設計のタイプ

IEハンドブック
第2部 職務とジョブ・デザイン
第2章 職務設計

2.8 職務設計のタイプ

未設計の職務
確かに,職務を設計する1つの方法は,職務を「混乱状態のように成長させる」ことである。職務設計へのこの自由放任のアプローチは,産業革命(1780)以前の生産システムを特徴づけていた。職務あるいは,むしろ「職業」もしくは熟練の集合は,代々ほとんど変化しないでゆっくりと出来上がった。職務へのタスクの特定の割り当て,タスクの実行のための工具と技法,そして品質標準は,熟練を習得した人々によって取り出された「目見当」に基づいていた。彼らは,親方職人の連合もしくはギルドによって強化され,統制されていた。今日でさえ,多くの職務設計は,伝統か生じている。実例として,医者と看護婦の役割は,単に医学の技術の拡張としては設計されていない。これらの職務設計もまた, 法令と医者および看護婦のギルドによって,今日では保護されている社会的伝統に基づいている。

おそらく,設計されていない職務の最もよく知られた批判者は,フレデリックW.テイラー(Frederic W.Taylor)であった。彼は伝統的な目見当は,職務設計の決定をなすためのより綿密な方法よりも劣るということを主張した。テイラーが主張しているように,伝統はほとんど統制実験によってテストされていないし,試行錯誤のきわめてゆっくりとした危険なプロセスを通じてのみ改善されている。テイラーはこのことを,作業方法の改善を促進しない社会支援システムによるだけでなく,職人の科学教育の欠如にもよるものであるとした。1890年から1910年にかけて,テイラーは,彼の科学的管理法 (Scientific management)の体系の一部分として,職務設計への別のアプローチを開発し続けた。

職務の機械モデル
産業革命の間に生まれた機械は,職務設計に2つの主要なインパクトを与えた。第1のインパクトは技術的なものであった。新しい機械の急増は全く新しいタスク,したがって,新しい職務設計を意味した。第2のインパクトは,社会的なものであった。エンジニアと発明家は,その時代の英雄であり,工学と物理科学の観点が,社会システムの設計に効果的に応用されるという楽観主義が支配していた。組織は,機械的歯車と同様に,人間歯車をその中に含む精密な自動機構としてみられるようになった。最も記述的なたとえは,精巧な時計仕掛けとしての組織のたとえである。

機能的専門化
組織の機械へのたとえは,機能的専門化 (functional specialization)の職務設計原理を結果として生み出した。この原理は,1790年 にアダム・スミス (Adam smith)とチャールズ・バベッジ (Charles Babbage) によって考え出され,100年後にテイラーによって洗練された。この原理は過去の伝統をこわして,人々に仕 事を割り当てる上で,経済的基準のみが使用されるべきであるという,当時の急進的な命題から生まれた。このことを簡単に言えば,仕事は(短期的に)最も安い方法に基づいてのみなされるべきで,熟練を分解もしくは細分化すべきであるということを意味していた。

スミス,バベッジ,そして後にテイラーは,職務をできるだけ細かく精密に設計すべきであることを,所有者と経営者に主張した。経営者と監督者が作業者を統制するためには,精密な規定が必要であった。この原理の論理的拡張によって,個人の欲求から生じるタスクはすべて,専門化された「人事」職務に任されるようになり,組織のニーズから生じるタスクは,事務とスタッフの職務に,そして生産のニーズからのみ生じるタスクは,生産職務に任されることになる。専門化はさらにいっそう進められている。保全の要求のすべては,保全職務に割り当てられ,検査タスクのすべては,検査員の職務に割り当てられている等である。タスクの割り振りを導く機能的専門化に関連した原理は,1つの職務の中のタスクは,すべて同一の技能レベルであるべきであるということである。

機能的専門化の強く主張する利点は,わずかな知識と技能が最も広い使用に適用されうるということである。その欠点は,定着させたり,調整するのにコストのかかる極端に細分化された労働力である。1つの生産工程において,多くの専門作業が必要とされている時の職務境界間の情報の損失や,そして最大限にその組織に進んで貢献する意欲を低下させる。狭く袋小路の職務によって疎外される職務担当者,などを生み出す。

これらの欠点は,いわゆる「職務近視」あるいは「これは私の職務ではない」症候群と,時々言われるものを結果として生み出す。問 題に気付いている人は,それが職務によるものではないとして,それを忘れ去ってしまうので,いくつかの欲求は満されないままである。これが事実らしいこの欲求を処理することを要求する職務についている人は,問題が十分に大きくなるまでそれを知らない。さらに,専門家は組織の実際の要求に応じてというよりは,自分自身の作業負担に応じて問題を無視したり,作り出したりする。職務近視眼の別の徴候は, 理想的な場合には相互訓練と自発的問題解決に向けられる人間のエネルギーが,個々の専門家を保護したり,強化したりすることに向けられるようになることである。

決定論的職務明細化
組織と職務の機械モデルから生じる別の原理は,決定論的職務明細化(deterministic job specification)の原理である。機械の設計においては,偶然のままにされるものは何もない。エンジニアは,個々の細部を明細化する。この類推によって,職務の設計において設計者は,個々のタスク,動作,相互作用といった職務のあらゆることを規定し,従業員に自由裁量の余地を残してはならないという要求を理解するかもしれない。この類推は誤っている。予期しない事象によって,従 業員は職務明細から故意に逸脱すること,すなわち自由裁量を行使することが必要となる。「順法闘争」あるいは「敵意ある従順」という事象は。人々が職務にそして定型的職務にさえも持ち込む最も重要な要素が,自由裁量であるかもしれないということを示している。

英国では,鉄道労働者は数年前ストライキをする代わりに,彼らの職務記述書と標準操作手続で多かれ少なかれ要求されていることを正確に実行することによって, 列車の運行をかなり妨害した。労働者は,働きにやって来る時,家庭に自由裁量を置いてきてしまって,鉄道を動かすのをやめてしまった。同様に,ニュージャージー州では,警察が自由裁量のどんな行使もしないで,すべての交通法規を実施し,かくして主要道路の流れをうまく停止してしまった。

もちろん,何らかのやり方で従業員が苦情を表明するのを,何とかして防ぐことのできる職務設計のモデルはない。しかしながら,このことが,自由裁量を制限する理由にはならない。一連の職務は,単に職務の明確にされた側面もしくは規定された側面のみによってでなく, 自由裁量を行使する従業員の能力と意欲によって,組織目標を達成することができるのである。

テイラーのアプローチ
組織と職務の機械モデルは,フレデリック W.テイラーによって最も洗練された形で発展していった。彼は 人間作業の価値自由の科学(value― free science)が存在し,その科学を発展させることが,自分の使命であるという展望の下に,彼のアプローチを基礎づけた。テイラーは,特定の職務担当者に期待される仕事の量についての問題が,日の出と日没の計算と同様に,すなわち科学的に決定されるときを自信をもって予測した。

テイラーの「科学」の本体は,タ スクあるいは熟練を最も単純な諸要素に分解することであった。これらの要素は,次に時間の単位で測定された。アダム・スミスとチャールズ・バベッジの,仕事を人々に割り当てるための経済的基準を使用して,タスクもしくは動作当りの最小時間が,タスクを作り出し,割り当てるための唯一の基準となった。この実践によって,機能的専門化と決定論的職務明細化の原理は,究極にまで押し進められた。

テイラーはさらに,組織的タスクは,彼の科学的シス テムを管理するために,専門家と監督者の新幹部に割り当てられることが必要であること,従って実行と計画 (考えること)を分離する組織原理を付け加えることを主張した。それゆえ,テイラーの職務設計は,仕事の実行と仕事の計画および概念化を分離してしまった。テイラーの批判者にとっては,この分離によって仕事の根本的な非人間化が生じたことになる。にもかかわらず,テイラーの科学的管理法の原理が広く適用されて70年後においても,職務の自由裁量の要素はもとに戻されていない。その必要性の認識が,現在高まりつつある。人間作業の価値自由の科学というテイラーの誤った概念は,今日 では急速に排除されている非人間的作業の基礎となった。

社会的・技術的要件
機械モデルに従って職務を設計するためには,多くの社会的そして技術的決定が必要である。エメリー (Emery)は,4つの要件をあげている。

第 1の要件 は,運搬装置の開発と設置である。この古典的な例は,ヘンリー・フォード(Henry Ford)の自動車組立コンベヤである。運搬装置は,(1)それぞれの作業者が1つの夕スクのみを実行することができるように,作業者が仕事をしなければならない対象を運搬する。そして,(2)管理者が,それぞれの作業者の行動,この例では仕事をするペース,を直接統制することを可能にする。

第2の要件は,製品(あるいはサービス)とそれを作るために使用される手段を標準化することである生産工程は,多くのタスクに細分化され,そしてそれぞれのタスクは,作業者に割り当てられて職務となるのであるから,作業者は組織の互換性部品となる。標準化は,規定された明細もしくは規範が,作業者,顧客そして来談者が直面するであろうすべての事例に適用できるように, 綿密な計画過程を必要とする。注文製品と注文サービスが必要とされ,技術的不確実性の条件が広まっているとすれば,標準化はおそらくコストー有効性が低いであろう。

第3の要件は,「ラインバランシング」に内在する固有の決定である。単一タスクからなる一連の職務は,正確な数の人間要素が単位時間当りに,正確な数の製品もしくはサービス・アウトプットを生産するように設計されている。これらの数は,主要なシステムの再設計をしなくては,拡大も縮小もすることができない。したがって,このことが組織の柔軟性を制約することになる。人的なものであれ技術的なものであれ,このシステムを「不均衡」にするどんな故障も,全体工程の故障をひき起こす。故障によって,生産作業者の強制的な遊休が生じる。この故障は,設計それ自体によってひき起こされるのであるから,このような遊休は,短期的には「避けられない遅れ」として許されることになる。長期的には, 高価な失業保険の要求と社会的分裂を伴う一時解雇が生じる。精密にバランスされた生産ラインは,予期しない欠勤に対して弱くもある。したがって,剰余作業者を利用することが必要となる。

第4の 要件は,綿密な監督職務を開発することである。 組織と職務の機械モデルに人々を定着させるには,強制的監督者が必要となる。監督者のみが組織的タスクを引き受け ,作業者は単一の生産タスク職務を実行するので, 多くの監督者と監督者層は,仕事を調整し,必然的に生じる人間的そして技術的不確実性を扱うことが必要となる。

職務拡大と職務充実
第2次世界大戦中,複雑な設備を含む大量の軍事資材を生産する必要から,労働力の早急で大規模な増加が必要となった。その結果,産業労働に未熟練で未経験の人々が流入してきた。軍事関連産業での職務設計の機械モデルヘの広く行きわたった信頼が,このモデルの限界の発見を生み出した。研究者たちは,「 職務拡大」(job enlargement)と「職務充実」(job enrichment)と呼ばれる職務設計への新しいアプローチを開発した。

職務拡大においては,機能的専門化と決定論的職務明細化の原理は,多少修正される。それぞれの職務を単一タスクにすることや,で きるだけ仕事を細分化するように努力する代わりに,職務拡大はタスクを大きなグループに分類し,職務担当者にある程度の自由裁量を認める。コナント(Conant)とキルブリッジ(Kilbridge)は , 職務拡大が非生産的仕事と組立ラインのバランス遅れを減少し,製品品質と作業者満足を高め,そして労務費を節約し,生産の柔軟性を高めるので有益であると報告した。今日の作業者の欲求と期待を仮定すれば,職務拡大は1950年代の挑戦に対して適切であったけれども,1980年代の挑戦に対してもそうだとはいえない。

作業者モチベーションの心理学的研究から,フレデリック・ハーズバーグ(Frederic Herzberg)は,作業者満足へのアプローチとし て職務充実を開発した。この概念によれば,1つの職務は,生産タスクのみでなく,その作業に関連する段取り,スケジューリング,保全そして統告タスクをも含まなければならない。さらに,それぞれの職務担当者は,彼の作業に関連する資源と責任を与えられるべきである。職務充実は,タスクの「水平的」割り当てのみでなく,「 垂直的」割り当てを伴うものであり,その結果,1つの職務は単に多様なタスク を含んでいるのではなく,計画と統制のタスクそして広範囲の技能レベルを含んでいるということを,ハーズバーグは強調した。職務充実の中心的基準は,職務が職務担当者にチャ レンジを与えること,そして職務担当者は,自分自身の個人的達成度をはかることのできるフィードバックを与えられるべきであるということである。

プラスチック鞄工場は ,鞄製造部門の職務を充実しながら,自 動鞄製造機械の台数を3倍にした。充実されていない職務(図表2.2.4)は ,機械の前部に必要なタスクを1つの職務集合に,後部のタスクを別の職務集合に区分していた。前部の職務は多くの熟練を必要としていたので,「オペレーター」と称される地位は,給料の高い男性が配置されていた。「検査―包装工」と称される後部の職務は,給料の安い女性が配置されていた。機械に対する仕事の多くは,故障と誤操作を扱うことであった。それぞれのオペレーターが, 1つ の特定の機械に伴うタスクをすべて遂行するように割り当てられるならば,これらの故障や誤操作はかなり低下させることができるだろうと考えられた。職務の再設計(図表2.2.5)に加えて,新しい給与支払計画が導入され,作業者は全員,時間給ではなく月給を支払われた。男性も女性も新しく充実されたオペレーター職務につけられた。その結果,その会社は,生産性と職務満足の両方を高めたのである。
職務拡大と職務充実は,仕事め人間化を高めただけでなく,人的資源のより有効な利用の方向への大きな段階を示した。しかし,職務拡大も職務充実もそれぞれ重大な欠陥を持っている。これらのアプローチは,職務間の関係を明示的に考慮していない。ワンマン/ワンジョブの分析単位は,組織の機械モデルを維持している。これらのアプローチはいずれも,職務(作業タスクとは別に), 強制的な作業環境,そして将来について人々がいだいている欲求や期待を扱っていない。

自主統制作業チーム
ロンドンのタビストック研究所の研究者たちは,1950年代において英国の炭鉱の研究を開始して,職務設計個人だけでなく,集団を組み入れることを目的とした一連の文献を発表した。この文献は,米国で平行した研究を引き出し,そしてソシオテクニカル・システム理論(sociotechnical systems theory)として知られるようになった。この文献は,自主監督チームという近代的職務設計の代替案を生み出しただけでなく,さらに重要な自主統制 作業単位(self-maintaining work units)の基礎的原理を生み出した。

組織は,かなりの自治的サービス単位や生産単位,もしは「小型会社」として働くことのできる部分に分割される。これらの組織の部分や単位はそれぞれ,その構成員の欲求の多くのみでなく,サービスや生産のニーズと組織のニーズを満たすために必要な,すべてのタスクおよび資源を持つように設計される。ある場合には,自主統制作業単位のすべてのタスクを,1つの職務に組み入れることが可能である。これは,近代的職務設計の根本であるかもしれない。しかしながら, 1人の人に対して作業単位を設計すれば,そ の人の健康,パーソナリティ, 有効性等の人間の変動性に対して弱くなる。いつもではないとしても,多くの場合,人々の小集団に対して自主 規制作業単位を設計すること,したがって自主統制的組織単位を作ることが望ましい。このようにすれば ,集団の協力と凝集性といった自然の力によって,その作業単 位内で生じる人間的,技術的不確実性を緩和することができる。

クシオテクニカル・システム理論の第2の原理は,最小重要明細化(minimal critical specification)である。これは決定論的完全職務明細化の機械モデルに対する全くのアンチテ ーゼである。この自主統制作業単位は,できるだけ多くの柔軟性と自由裁量を認める ように設計される職務設計者は作業単位が全体組織の部分として機能するように,絶対的に重要な最小限度のことのみを明確化する .他の職務設計の決定は,作業チームの構成員の経験に基づいて,作業チームが行使する選択権として残されている。このやり方で,生産,組織 ,個人の要求を下位の意思決定プロ セスで統合することができる。ごく最近の組織の職務設計のいくつかでは,自主統制作業チームが,組織の学習,相互訓練,同僚カウンセリング,内部調整,そして不確実性への適応に対して責任を持っている。典型的に明細化される職務設計の決定と,作業チームの選択権として典型的に残されている。それら 図表2.2.6に列挙している。

自主統制チームの実例
自主統制作業チームの使用は,自動織機の導入に伴ってインドの織物工場でなされた現場実験によって例証される。ライス(Rice)は ,エンジニアが設備を配置し, 狭いタスクに基づいて人々に労働負荷を割り当てるために,自動織機の綿密な時間研究をしていたと報告している。これらの織機は,非自動的織機によってすでに達成されていた数量と品質レベルを生産することも,まして期待された改善を達成することもできなかった。自動織機工場は,240の織機を持っており,仕事は10の単一タスク職務に分割されていた。

・織工は,約30の織機を扱っていた。
・充電工は,約50の織機のサービスをしていた。
・打ち工は,約70の織機を扱っていた。
・門衛,布運搬工,保全工,そして補助の保全工が,112の織機に割り当てられていた。
・糸巻き運搬工,触覚―動作調整工,注油工,掃除人。
そして湿気調整工がそれぞれ,224の織機に割り当てられていた。

これらのタスクは,かなり相互依存しており,それで生産の連続性を維持するためには,最大限の調整が必要であった。しかしながら,作業者―機械の割り当ては,組織の混乱を生み出していた。それぞれの織工は,充電工の8分の3,門衛の4分の1,布運搬工の8分の1な どに関係しなければならなかった。直結保全を実行する保全工は,織工からは分離した監督チャネルを通じて工場管理者に所属していた。それで,故障したり,他のトラブルが生じた時には,誰の織械が優先権を持つべきかを確定する基準はなかった。

一連の特定の織機群の操作と保全に責任を持つ自主統 制集団を設定するために, 1つの再設計が行われた.織物工場の機能的というよりはむしろ地理的な分業によって,相互関連する職務の人々の間の関係を規則正しくさせる相互作用パターンが生み出された。それで,個々人は彼らのチームの生産に対して責任を持つことができた。この再設計は,コンサルタント,監督者,そして管理者との議論に基づいて,作業者自身によって提案されたこの統合整理されたチームは,1人の交替制監督者に属し,その交替制監督者は工場管理者に属した。

これらの変革の結果,60日の作業日の後には,効率は平均80%から95%に高まり,そして損害は平均32%から20%に低下した。職務設計の変革がなされなかったその織物工場の別の部門では,効率はしばらくの間70%に低下し,80%以上には高くならなかった。損害は平均31%のままであった。そこで工場全体が変換された。そしてその改善が永久に維持された。改善されることが明白になった時,多くの非自動工場に,統合された織機集団を導入するための1つの方法が見出された。以前には組合によって拒否されてきた3交替制を,その時導入するこ とができた。織機集団内での地位の格差は減少された。未熟練の作業者は,熟練作業者の役割を学習する機会を与えられた。その結果,昇進経路が作り出された。賃金は,コストの低減とともに実質的に高められた。

矛盾のない社会的決定と技術的決定

自主統制作業チームは,矛盾のない社会的そして技術的決定を必要とする。スウェーデンのボルボ・カルマールエ場では,チーム型式の職務設計を支持するために,自動車組立の新しい技術が開発された。コンピュータ監視搬送機によって,それぞれの作業集団は,そ れ自身の作業を配置し,作業ペースを統制することができた。ボルボ社では,新しい技術は伝統的な組立ラインよりも10%ほどコストがかかるだろうが,柔軟性が高まり,作業者モチベーションが高くなることによって,このコストは償われるだろうと推定した。オ ラングのフィリップス社では,U型の組立ラインである「生産アイランド」で,テレビが組み立てられている。このラインでは,組立 作業者は,互いに相互作用し,協力することができる。

新しいポリプロピレンエ場では,プロセス制御コンピュータは,意思決定を下すよりも決定を援助する情報を表示している。最終決定の責任は,作業チームに与えられている。この設計は,そのシステムを流れる多くの管理不能変数に含まれている技術的不確実性のために選択されたもしこれらの変数が統制されるようになれば,大きな経済的利点が生ずるだろう。この実例では,経済的成功は学習に関係していると考えられた――作業者が統制することを学習することのできる変数が多ければ多いほど,それだけ効率は高くなる。

賃金支払計画

3つのタイプの賃金支払計画が,チーム職務設計を支持するために使用されてきている。最初のタイプは,もともとヨーロッ パで使用されていた集団出来高払いである。チーム全体に総額が支払われ,次に内部決定に従って個々のメンバーに支払われる。

第2のタイプの賃金支払計画は,「集団ボーナス」と呼ばれている。工場全体にそれが使用されるならば,それはスキャンロン・プラン(Scanlon plan)である。ここでは個人は伝統的な基準で支払われるが,彼らのそれぞれのチームがある生産日標もしくはコスト目標を上回ったり,コストの節約につながる方法改善を創案した時には,チームにボーナスが支払われる。

第3のタイプの賃金支払計画は,「技能による支払いもしくは知識による支払い」と呼ばれている。タスクと技能――職務全体ではなく――が等級づけられ,次に訓練と試験のための標準が開発される。個々人の支払いレベルは,彼らの示した技能と知識に応じて決定される。このシステムは,個人がチームのあるタスクを遂行し,そしてそれらのタスクを他のチームメンバーに訓練することを資格づけるのに役立つ。しかしながら,この支払差は,他のチームメンバーに対する権限を与えるものではない。というのは,チームは同僚集団として働き,合意による意思決定をするからである。

作業チームの利点と欠点

自主統制作業チームの主な利点の1つは,個人の欲求と組織の要求の変動を調節する小集団の能力である。複雑で多くの技能を要するタスクを好むメンバーもいれば , 単純なタスクを好むメンバーもいるし,多様なタスクを好むメンバーもいる。チームメンバーは,彼らが適切な 知識,技能,資源,柔軟性,そして社会的支援を持っているならば,相互に受容できる解決案を発展させることができる。これらの解決案は,しばしば職務交替(job rotation)とフレキシブルな作業配置を含んでいる。この分権化された参加的意思決定過程によって,強制されることなく,従業員が決定を受容する確率を高めることになる。

自主統制作業チームが彼らの潜在力を発揮するためには,メンバーはかなりの社会的熟練(social skills)を持たねばならないし,そしてかなり高い感情的成熟度に達していなくてはならない。現在の労働力は,ホワイトカラーもブルーカラーも,チーム職務設計にとって必要な社会的,感情的素養を十分に持っている。さらにチーム職務設計は,技術的訓練のためだけでなく,社会的訓練のための社会的支援システムを提供すべきである。新しい工場で新しい労働力が活動を始めるに先立って,社会的,組織的熟練とチーム開発の訓練を40時間かそれ以上の時間受けることは珍しくない。補修活動と問題解決講習会がしばしば提供されている。

チーム職務設計の欠点の1つ は,チーム構成のやり方に不適切な場合があることだ。チームメンバーがチーム間とチーム内の問題を扱うためには,大きな社会で生じた葛藤が,その組織あるいはチームに入り込むのを最小にする行動がとられるべきである。アメリカ南西部のある新しい工場では,サブ・チームが徒党の区分によって,これはたまたま人種上の区分でもあったが,自主選択された。活動を始めた数日内に,全体チームに凝集性が生まれタスクの完全な理解が発展する前に,チーム内に人種 上の含みをもった問題が生じ始めた。古い深く根さした 外部社会の葛藤によって,チーム内部の問題解決過程が妨害されているのは,その構成にあることを認識した。

内部組織が人種と徒党の区分を横断するように,したがってその部分間に仕事中心のコミュニケーション連結を作り出すように,サ ブ・チームにそのメンバーを配置した。

自主統制作業チームは,合意による意思決定(consensus decision making)の 実践的理解を発展させることが重要である。チーム意思決定の最も重要で困難な領域の1つは,チームの成員性の規範もしくは標準に合わな い(過度の欠勤,他人を援助する意欲の欠如等)メ ンバーを内部で扱う領域である。チームが合意による意思決定の方法を発展さ せるためには ,管理者は無視するのでもなく,また干渉するのでもないやり方でチームを 扱わなければならない。チーム職務設計を支持する上で,促進的マネジメント・スタイ ルが社会システム要件の1つである。

マト リ ッ クス 構造

マトリックス組織(matrix organization)の概念は,大規模な航空会社でもともと作られたものである,航空プロジェクトの異なる部分間の相互関係の複雑さと,航空会社が直面している大きな技術的不確実性とが組み合わさって,その組織を自律的な小型会社に区分することを不可能にするかもしれない。マトリックス構造では,人的資源は二重の組織構造によって管理されている。これらのうちの1つは,機能的専門性もしくは技術に,他の1つは特定のプロジェクトもしくは学際的問題に基づいている。このことを図表2.2.7に 示し ている。

キン グド ン (Kingdon)は ,「作業者Jが博士号をもった工学分析者と,科学修士号をもったコンピュータ・プログラマーから構成されているマトリックス職務設計 (matrix job design)を報告した。機能的監督者は,名目上は同質の専門家集団に責任があったが,プロジェ クトの割り当ては,必要な場合には機能部門から科学者を「雇う」プロジェクト・マネジャーによって決定された。この実践は「ジョブ・ショップ」と呼ばれた。異質な専門家集団は,しばしば「こうもりの洞穴」として知 られる場所で数週間共に働いた。重要な問題が解決された時のみ,彼らはそこから出てきた 。

いくつかの最近設計された製造工場は,生産作業集団内にマトリックス構造を設定し ている。1つの実例として,技術的タスクと生産責任が,1チ ーム4人から28人のメンバーからなる5つの自主統制作業チームに割り当てられた。チーム間の調整を必要とする組織的タスクを扱うために,それぞれのチームの代表者を共に集めるためにマトリックスの概念が使用された。それぞれのチー ムでは,品質管理コーディネーター,コミュニケーション・コーディネーターそして安全コーディネーターのようないくつかの「コーディネーター」の役割を満たすために,1人のメンバーが選ばれた。こ れらは専任の義務ではなかった。組織と生産の要求に合致するように,メンバーの時間を割り当てることは,それぞれのチームの共同責任であった。時々,すべてのチームの品質管理コー ディネーターは,工場の品質管理マネジャーと会合し , 安全コーディネーターは人事マネジャーと会合した。それぞれのチームのコミュニケーターは,毎日作業マネ ジャーと会合した。すべてのチーム(管理者を含む)からの特別の代表者からなる特定のタスクフォースが,エ場全体の様々な問題を解決するために作り出された。

マトリックス構造は,職務設計のうちで最もフレキシブルな形態であるが,これは作業者と管理者の双方にかなり大きい要求をする。これらの要求は,権限の交差径路のあいまいさから生じている。多くの人はマトリックス構造での職務担当者に応じた自由と責任によっ て成長するが,一方より厳格に構造化された責任のない職務を好む人もいる。管理者は時にマトリックス職務構造を管理する社会的スキルを欠いているし,彼らは部下のと特定の固定集団に対する継続的な権限を持たないシステムでは不快である。マトリッ クス構造は大きな要求を課すが,職務がそのように設計されている組織への十分に資格ある志願者を,注意深い採用方法によって選び出してきた。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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