コラム・特集

2.5 タスクの割り振りを制約する社会的・技術的決定

IEハンドブック
第2部 職務とジョブ・デザイン

第2章 職務設計

2.5 タスクの割り振りを制約する社会的・技術的決定

技術的決定
技術的決定は,職務を設計する上で選択権を与えるか,もしくは排除するたろう。スイッチやメーターの位置あるいはコンピュータの入力と出力の様式のような明らかに簡単な決定でさえも,技術的資源を特定の作業ステーションに割り当てる。したがって,生産工程を統制するための手段の物理的位置によって,職務へのタスクの割り振りは制約されてしまう。たとえば,出荷と入荷タスクが1つの物理的位置で行われるように,工場の鉄道到着と荷積み用ホームを建設することが有効であると考えられる。しかしながら,最近設計されたある製紙工場では,この計画は職務設計に不適切だと考えられた。というのは,望ましいアウトプットを達成するために,品質 と時間のインプットを管理して,原料を製品に変える責任を従業員の集団に認めなかったからである。出荷と入荷の両方を行うための単一の鉄道到着ホームと荷積みホームを建設することが,純粋な技術的観点からすれば,望ましかっただろう。より広いシステミックな観点が勝利し,別々の到着ホームと荷積みホームを建設することによって,余分のコストが多くかかることになる。

あまりにしばしば,エンジニアは職務設計基準にはほとんど目をくれないで技術的システム設計をしている。この無視を基礎づけているものは,「技術的決定主義」のイデオロギーである。このイデオロギーの下では,技術は社会的考慮とは別個に,そしてそれによって制約されずに発展しておリーまた発展すべきであること一そして,社会構造はその結果が逆機能的であろうとなかろうと,技術的シズテムに適合しており,また適合すべきであるということを,この技術的決定主義のイデオロギーは意味している。技術的決定主義の愚かさは,1972年のオハイオ州ローズタウンのチェブロレット・ベガエ場の事例を引用することによって示される。「世界で最 も技術的に進歩した組立ライン」であると1970年には言われていたけれども,その工場は,労働不満,怠業,欠勤および放置によってまもなく動かなくなった。これは1972年のストライキで最高点に達した。このストライ キは,若年の都会の労働者に対する職務設計の結果に集中していたので,国家的注目をひいた。若年の都会労働者は金銭だけでは十分ではないと主張し,労働組合支部の指導者は非人間的職務と目がくらむほどのスピードを公然と非難した。その時以来,いくつかのGMの部門は,より因習的な基準だけでなく,職務設計要件に合致する技術的システム設計を開発する方法を探し求めた。多くの産業において,長いコンベヤによってかつては特徴づけられていた組立技術は,U型形態,バッファステージそして自己推進式の組立運搬装置になった。これらの技術革新は,職務をより柔軟にし,そして興味をひくものにするという欲求によって部分的に刺激された。

技術と職務構造の間の関係に関する経験的文献を再検討して,デイビスとティラーは自己実現の予言が作用しているようにみえるということを結論した。人々は信頼でき,知性的で,そして多様性とチャレンジを願望するという仮説に従って設計された生産システムは,これらの仮説を反映する職務を生み出す。同様に,技術的システムが,人々が信頼できず,彼らは孤立させるべきでありごくわずかのタスクしかできないという仮説に基づいて設計されるならば,これらの仮説は,これらの仮説自体の実現を保証する技術選択を生み出し ,次に元の根拠のない仮説を強化することになる。

社会的決定
社会的決定は,職務中のタスクの配分を偏らせることができる新しい食品加工工場の設計者は,生産職務の中に訓練タスクと操作タスクの両方を組み入れた。その結果,作業者は互いに相互訓練することができた。他の工場では,非公式にのみ作業者が技能と知識を分かち合うことを助長する社会支援システムによって,このことは制約されていた。新しい設計では,給与レベルは個人の特定時間の特定の作業割り当てとは関係なく,個人が習得した技能とタスクの数に応じて等級付けられた。このような報酬構造の下で,作業者は相互訓練によって, 柔軟性に対する組織の要求に合致しながら,同時に給与と昇進に対する自分自身の欲求を満たしている。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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