コラム・特集

2.4 タスクを作り出す社会的システム決定と技術的システム決定

IEハンドブック
第2部 職務とジョブ・デザイン

第2章 職務設計

2.4 タスクを作り出す社会的システム決定と技術的システム決定

図表2.2.1は職務設計の基礎となる種々の社会的決定と技術的決定を示している 。これらの決定がいかにタスクを作り出すのかと いうことがここで再検討されている。これらの決定がタスクをひとくくりにして職務にまとるのにいかに影響するか,そしてそれらの決定がいかに職務を連鎖していくかということが後に議論される。

技術的決定
技術は物理的そして情報的資源から成り立っている。そしてそれらによって人々は体系的にある望ましい結果を得ることができる。人間の歴史を通じて,技術の偶然の発見と技術の目的的で,骨の折れる開発の両方の出来 事がこれまでにあった。現代においては,今まで以上に技術開発は人間と職務についての暗黙的な仮定に影響されている。

たとえば,デイビスとテイラーは,機械と「人間―機械」要素で構成された技術的システム設計を報告した。このシステムでは,エアゾールスプレー缶を一杯にして蓋をする部分的に自動化された多くの機械が平行に並んでいる。1人のオペレーターに担当されているそれぞれの機械は,オペレーターが互いにコミュニケーションできないように配置されていた。円形のコンベヤベルトに乗って,オ ペレーターの所に運ばれてきたまっすぐな缶の上にある大きな穴に,チューブを挿入するのに,オペレーターの時間のほとんどは費やされた。第2のそれほど頻繁でない介入―これこそがオペレーターの存在の基本的理由である―は,必要ならば,自分の直前の柱につ いている停止スイッチを押すことであった。機械のどこかに顕著な故障が生じた場合,オペレーターはその機械を停止し,そしてその問題を解決するのに援助を求めることが期待されていた。

この職務設計は,作業者がこの生産システムの中で人間一機械要素になることを要求している。作業者は機械で簡単にすることのできるチューブ挿入という,技術的には不必要で退屈なタスクを孤立して遂行していた。問題を検知し診断するという主要なタスクが人間の日と耳を必要とし,それらを雇うことによって会社は遊ぶことのない1組の手を獲得するという単純な理由から,缶にチューブを挿入するという人間のタスクは作られた。この「不完全」な技術開発は,技術の状態と設計者が持っている人間についての仮説に基づいているとはいい難い。サーボ機構装置と自動遮断のための遠隔検知と制御機構の開発に成功していないことが,極端につまらない職務設計を生み出す主な要因であった。おそらく,設計者が目と耳と手を持った社会的存在(つまり人間)の欲求を考慮したならば,また違った技術的設計が生まれたことであろう。

前の事例とは対照的なのが,ある食品加工工場の設計の事例である。現在の技術では,貨車から原料の入った袋を手でおろし,ホ ッパーにその中身を落とすまで貯蔵しておくためのパレット上に,その袋を積み上げるというタスクがあった。このタスクから後は,自 動設備が製品を選り分け,料理し,加工し,包装していた。この工場では,荷 おろしと積み上げタスクは男性によって行われていたが,自動設備の操作は主に女性によって行われていた。このことは ,多くの理由から受け入れられなかった。1つの理由は,その作業のすべての段階を学ぶ機会を持ちたいという全員の願望があったことである。最高経営者の支持によって,設計者は原料の大きな包みに対して産業界全体にわたる転換を開始し,その結果,この工場のすべての定型的な人間タスクは,男性によっても女性によっても行われるようになった。

社会的システム決定
おそらく,タスクを作り出す一連の社会的決定のうちで最も劇的な事例は,合衆国政体の構成であったろう。政府代表者は一般的に選挙されるべきであるという当時の急進的な基準は,選挙を行う上での多くのタスクを作り出した。より小規模では,食品加工工場は ,社会的支援システムが,同僚のパフォーマンス評価プロセスの管理と促進に関係する,組織的タスクを作り出したことになる。雇用の方法についての決定は,人的資源を利用して職務を充足するだけでなく,職務保証,経歴機会,対人関係に関する従業員の期待を刺激する。監督,報酬,昇進,葛藤解決のための方法の選択は,彼ら自身のタスクを規定する。食品加工工場では,一連の社会的決定は作業者によって遂行される一連のタスクの確認に結びつき, いわば自分の職務の一部分と認識される。たとえば,問題解決,カウンセリング,タ スク割り当てスケジューリング, 帳簿記録,作業チーム間と交替制間のコミュニケーション,会議の召集と指揮,安全性の調整,保証の調整,訓練などがそうである。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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